5. 受賞事業の特徴(概要)
☆パートナーシップ大賞
車いすの集配・はこび愛ネット
NPO: 「飛んでけ!車いす」の会
企業: 札幌通運
車いすのリサイクルを、NPO「飛んでけ!車いす」の会が企画し、札幌通運が運送会社の特色を生かして、車いすの運送と保管を担当し、海外旅行者の手でベトナムをはじめとしたアジア諸国の障害者に直接届けるという、ユニークなシステムによって成功した事業。
NPOはその推進、およびコーディネーター役を担い、企業は労働組合が作ったきっかけをトップの良識で企業全体の事業とし、社員もボランティアとして積極的に関わっている。海外旅行に行く若者たちを、アジアの障害者に直接車いすを届けるというボランティアに導く役割も果たし、帰国後はNPO活動に参加する人も多いという。多くの人たちを事業に巻き込みながら、それぞれに何らかのメリットや気持ちのよさを提供している仕組みづくりが高く評価された。
課題を残すとすれば、NPOがボランティアの要素を大切にしながら、どれだけ事業型のNPOへと脱皮できるか、またその時、どの程度企業側にメリットやインパクトを与え続けられるか、という点であろう。一方で企業も、たとえ担当者が変わろうと、組織としていかにNPOを支え、新たな展開を図ることができるかが求められるだろう。互いのミッションとどうバランスを取っていくかが注目すべき点になる。
◎パートナーシップ賞
こども科学実験教室
NPO: 発見工房クリエイト、オンライン自然科学教室ネットワーク実験室
企業: アジレント・テクノロジー
子どもの理数離れが懸念される中、ひとりでも多くの子どもたちに科学の楽しさを見直してもらおうとオンライン自然科学教育ネットワーク実験室と発見工房クリエイトという二つのNPOが、アジレント・テクノロジーとパートナーシップを組み、児童を対象に実験教室を八王子と神戸で開催している。
共通のミッションのもと、NPOは教室の企画・進行とその要員の派遣を、企業はボランティア要員の確保と実験材料費、旅費等の経費を提供し、互いの専門性やノウハウを効果的に補完し合っている。
今回の事業では、発見工房クリエイトは、企業側から科学技術の専門知識を持った従業員が多数ボランティアとして参加するという人的な支援を得た。またオンライン自然科学教育ネットワークも、実験教室に参加した親子とともに、普段あまり接することのない企業人と直接触れ、より専門的な立場からのアドバイスを得られたことで、NPO自身の活動自体も活性化し、組織を成長させることができた。企業内部での従業員の意識改革にも貢献している。
環境アニュアルレポート共同企画
NPO: 環境文明21
企業: 日本電気(NEC)
企業の社会的責任度を示すものとして、一般消費者や従業員をはじめとした幅広いステークホルダーに向けたディスクロージャー誌として注目されている環境アニュアルレポート(環境AR)。この協働事業は、NECが例年作ってきた環境ARを、より身近で信頼性・透明性・専門性の高いものにしようと、企画段階から第3者機関であるNPOの環境文明21に関わってもらうことにしたもの。1999年秋に始まり、2000年度版、2001年度版、2002年度版と、共同制作が継続されてきた。
環境文明21は、循環型社会を築くために、価値観・社会経済システムを変えていこうと活動する環境NPOである。NECのような大きな企業が変わってくれることに大きな意義を見出した。
NEC側は、NPOの専門性と見識から学び、環境文明21側も、協働事業を進める間にNPOとしてのマネジメント能力を高める一方、生産現場などを視察して環境と経済の調和がいかに難しいかを実感としてつかむことができたという。
3年間のプロジェクトは一段落し、今後の新たな協働のかたちが模索されている。
チャリティクリスマスカードによる紛争・被災地域の子ども支援
NPO: 子供地球基金
企業: 三井住友海上火災保険
NPO子供地球基金が世界中から集めた子どもの絵を使って、三井住友海上がクリスマスカード等を制作し社内外で販売、その収益金をチェルノブイリやコソボなどの紛争・被災地域の子ども施設に寄付するというもの。近年では社員およびその家族などのボランティア協力を得て、手編みセーターを作り、子どもたちに届けるという事業も行っている。
十数年にわたって継続し発展してきたこの事業は、アイデアと素材を提供したNPO、それを社内で展開した企業、それぞれの事業担当者2人の功績に寄るところが大きい。もちろん、紛争・被災地域の子どもたちを勇気づけ、企業内部の社員たちのボランティア意識を醸成し、家族をも自発的に巻き込んでいくコーディネーターとしての役割をいかんなく発揮していることも大きな評価ポイントとなった。
この事例には、素材を生かすアイデアと、それを楽しく社内に展開していくノウハウが多く詰まっている。さらに十数年にわたって蓄積・継続・発展させてきた実績がいかに企業文化として定着していったかが分かる。
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