5. 「PSCパートナーシップ評価」の基本コンセプト
作成した当初は、まだまだ手探りの状態でしたが、私たちが考えた「パートナーシップ評価」のコンセプトは、(1)評価の目的を明確にすること、(2)評価の効用を明確にすること、(3)実用性を重視すること、の3点でした。
まず「目的を明確にする」というのは、「評価」によって企業とNPOがより効果的なパートナーシップを組むことを支援するという私たちPSC本来の目的を明確にすることになります。「評価」の裏側には、協働事業では常にパートナーという相手が存在し、互いにその有効な関係を求める、いわば「関係性への欲求」「改善への欲求」があると考えられます。
「パートナーシップ評価」は、「評価」が間に介在することによって、パートナー間の関係やそこから拡がるネットワークがより効果的に促進されることを願う「ネットワーク志向評価」でもあります。「評価する」ということが、ネガティブな印象をぬぐい切れない面がある中、私たちは評価を「よりよい社会を実現するための“ツール”」と位置づけようと考えました。
つまり評価の仕組みがあることで、より有効なパートナーシップが実現し、互いの役割分担が明確となり、企業もNPOも互いの持つよさを生かしあえる。その結果として最小限の資源で最大の効果を生み出すパートナーシップが可能となる。その恩恵は、企業やNPOのみならず社会全体にももたらされる−という基本コンセプトです。
2番目の「評価の効用を明確にする」というのは、その効用として、(1)NPOと企業のマッチングにおける相互組織へのフィードバックを行う、(2)パートナーシップにおける互いの課題を認識し合い、これらの課題を解決に導く、という二つの側面を大切にしたいとの考えです。そのために、パートナーシップの相手としてふさわしいか、相手に何を求めるのかをそれぞれが確認すること、また、相手にとって何が問題となっているのか、うまくいっていないとしたら何がミスマッチなのか、そうした課題を発見することに大きな意味があるのではないかと考えています。
3番目の「実用性を重視する」というのは、本来、大事なのは「評価」そのものよりも、「評価」によってパートナーシップが推進されることであり、そこに重点を置いて「評価」方法の開発を進めたということです。評価する前に敬遠されるような膨大なものではなくても、あるいは極言すれば、目的を達成することができれば、必ずしも評価の精緻さは重要ではないのではないか、と考えています。
なぜなら、「評価」はあくまで一つの限定された見方であって、「普遍」でもなければ「完璧」もありません。人によって、時代によって、観点によって、価値観によって、それぞれ、異なるものであり、相対に過ぎないということを、評価するもの自身が知っておくことが必要だと考えます。従って、私たちの評価も、これが唯一絶対であるなどといった排除の論理はとりません。あくまで、ある時点において、ある視点でとらえた「評価」によって、事業を検証し、協働事業推進を目指すという位置づけで行いました。「パートナーシップ評価」をそれぞれにフィードバックすることによって、事業の改善へ導き、互いに楽しめるものになることを願いました。そのために日常的に行える実用的な評価方法を目指してきました。
私たちが作った最初の「評価シート」は、A4用紙1枚にまとめ、記入時間もあまりかからないよう配慮しました。もちろん、自分たちが心込めて真剣に取り組んでいることには、担当者もいろいろ悩んだり考えたりしながら付けることでしょう。そうした「想い」が反映されるよう、もちろん自由記入欄も設けました。それらを読み取るのがまた愉しいのです。できるだけ少ない時間と労力で、互いの価値をそれぞれにとっての意義あるレベルで認識できれば、評価は十分生きてくると考えられます。
企業とNPOが互いにパートナーとして協働事業を行う場合、協働事業を始める前にできればそれぞれの目的や違いを知っておくことが大切です。
まず「協働事業を始めるにあたって」の指標は、企業・NPO双方が、以下の点を明確にしているのかどうかを、事前にチェックします。既に始まっている事業については、これらが明らかになっていたかどうかを振り返ってもらいます。
(1)何を実現したいのか
(目的・ミッション) |
何を実現したいのか、協働事業で目指すのは何か、それはそれぞれの組織のミッションにどう合致しているのか。 |
(2)自分に足りないものは何か
(自己分析・自己評価) |
現状において、協働を実現するために、自分に足りないものは何かを認識しているか。 |
(3)相手に何を求めるか
(補完役割への期待) |
自分や自分の組織にとって足りないものを相手にどう埋めてもらおうとしているのか、求める役割は何か。 |
(4)相手を選ぶ基準
(優先順位) |
協働の相手を選ぶ時の基準は何か、何を優先するのか。 |
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そして、協働事業が終わった時、あるいは中間時点で、以下の4つの側面から、それぞれ2〜3項目ずつ、計10項目のチェックを5段階評価で行っていただきます。
(1)目的達成度 |
実現度・合致度・影響度 |
(2)自己満足度 |
補完度・成長度・愉快度 |
(3)役割期待度 |
分担感・助け合い度 |
(4)発展性 |
発展性・継続性 |
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各自がこれらについてチェックした時点では、一つの協働事業における「企業から見たNPO評価」であり、「NPOから見た企業評価」です。これらをつき合わせて初めて「パートナーシップ評価」になるわけです。
●パートナーシップ評価(協働事業推進のための指標) (2000.9 作成)
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