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小樽の帰化植物
 
コムギ(イネ科)
栽培逸脱
港などでこぼれだしたものがたくさん野生化しています。道ばただけでなく、中央分離帯などでも群落が見られることがあります。
2003年6月 港町埠頭
 
 
キショウブ(アヤメ科)
ヨーロッパ原産
さまざまな場所で見られる美しい花で、園芸用としても植えられます。
博物館の駐車場脇にも誰が持ち込んだのか、6月頃に花が見られます。
1999年6月17日 奥沢水源地
 
 
ナガハグサ(イネ科)
ユーラシア大陸原産
ケンタッキーブルーグラスと呼ばれる、世界中で使われている牧草、芝草です。
どこにでも普通に見られる雑草になっています。
2003年6月 色内2丁目
 
 道ばたなどでよく見かけるタンポポのほとんどは、ヨーロッパ原産の外来種です。小樽では、セイヨウタンポポ、アカミタンポポという2つの種類がよく見られます。他にもタンポポによく似た植物で「タンポポ」という名前のついた植物が3種類ほど見られます。
 これら外来のタンポポの他に、小樽にはエゾタンポポという在来のタンポポが生息しています。長橋なえぼ公園などでは、林内に群落を見ることもできますが、外来のタンポポと比べると圧倒的に少数派です。
 よく外来のタンポポに追いやられて在来のタンポポがなくなったという話を聞きますが、これは最近では誤りだと考えられています。在来のタンポポが生息していた畑や雑木林などの環境が失われたこと、都市化が進み、外来のタンポポの生息に適した明るく開けた環境が増えたことが、この「入れ替わり」の主たる原因です。これは、タンポポだけに限ったことではありません。都市環境の拡大は、帰化植物が爆発的に増えたことの要因の一つだと考えられています。
 日本で見られる外来のタンポポは、染色体のセットを3つもっている三倍体と呼ばれる特殊な植物で、花粉による生殖能力をもちません。その代わりに無融合生殖という方法を使って単独で種を作ることができます。それに対してエゾタンポポは二倍体(通常、生物は二倍体)で、花粉が他の花のめしべについて種をつくります。
 
エゾタンポポ
花の付け根の部分(総包片)がセイヨウタンポポのように反り返りません。葉の形も少し異なります。
 雑木林の中や林縁に生息しています。セイヨウタンポポよりも花期が短いので見つけるのはなかなか困難です。
2002年5月10日 長橋なえぼ公園
 
 
 外来のタンポポにも時々受精能力をもった花粉ができることがあり、在来のタンポポとの間に雑種をつくることがあります。この雑種は基本的には三倍体となり、外来タンポポの特徴を備えています。よく見かける外来タンポポのなかには、このようにして在来タンポポの遺伝子を取り込んでいるものが少なくないといわれています。
 
 スギの少ない北海道では、花粉症の原因としてシラカバやハンノキが有名です。しかし、これらの樹木は春にしか花粉を飛ばさないので、それ以外の季節は違う植物が原因になっています。
 特に6月、北海道は一番よい季節ですが、ひどい花粉症に毎年悩まされる人が少なくないはずです。この時期、花粉症の原因として一番多いのは、カモガヤやナガハグサといったイネ科の帰化植物です。これらは牧草として日本に導入されたものが逃げ出し、今や小樽では最もふつうの雑草としてはびこっています。
 また、セイタカアワダチソウが花粉症の原因になるとして嫌われたことがありますが、これは間違いです。セイタカアワダチソウは目立つ花とたくさんの蜜で昆虫を呼び、彼らに花粉を運んでもらう「虫媒花」です。ですから花粉を遠くまで飛ばすことはできません。風によって花粉を飛ばす花「風媒花」は、昆虫に受粉を頼らないため、一般的に色味の少ない地味な花をつけます。
 
カモガヤ
6月から7月頃の花粉症はほとんどこの花が原因です。花粉症はスギのイメージが強く、草の花で花粉症になるとは思わない人が意外と多いようです。
 同じ時期に綿毛を飛ばす、ポプラやヤナギが濡れ衣を着せられることも少なくありません。
2003年6月 色内2丁目







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