5. 小樽の外来昆虫
小樽のカブトムシ
カブトムシは本来、北海道には分布していなかった昆虫ですが、この30年ほどの間にほぼ全道で見られるようになりました。ペットとして本州などから持ち込まれ、飼育されたり養殖されたりしていたものが野外にも定着したと考えられています。昭和50年代には赤岩の北山中学校付近に養殖場があり、閉鎖後もしばらくカブトムシの繁殖が見られたようですが(北海道新聞小樽版、1983年4月16日)、現在このあたりではカブトムシは見つからないようです。
カブトムシは子供たちに人気のある生き物ですので、各地でいろいろな規模で持ち込まれ、そこから何度も逃げ出していったと考えられます。北海道のカブトムシは、本州以南のいろいろな地域から持ち込まれたものが混在しているという状況だといえるでしょう。現在では北は稚内から東は斜里や網走といったオホーツク海沿岸にまで生息地が広がっています(喜田和孝氏、私信)。
小樽市内のカブトムシの捕獲・目撃地点
小樽では10年〜15年くらい前から、野外でふつうにカブトムシが見られるようになったようです。生息地は蘭島や忍路、塩谷といった西部に偏っており、札幌に近い地域では見られませんが、最近では中央部の天狗山周辺などでも見つかっており、分布は少しずつ広がりつつあるようです。また、小樽を含めた後志地方は、全道でも特にカブトムシがたくさん見られる地域の一つで、後志管内の20市町村のうち、11市町村でカブトムシが見つかっています(小樽市博物館調べ)。
カブトムシの幼虫は堆肥など、腐った植物質を食べて成長しますが、小樽周辺のカブトムシも木の皮などを発酵させて作った堆肥の中で育つことが多いようです。堆肥を作っているところでは、5月ころ、堆肥を攪拌する作業中にたくさんのカブトムシの幼虫が見つかることがあります。また、チップ工場のチップ積み場や土場のおがくずなどでも発生しているようです。
生息地は、樹皮やチップ、家畜の糞尿などの堆肥の材料が手に入り、堆肥の生産がさかんな地域や、実際に堆肥を使う農地の周辺に集中しています。小樽では農地が集中する西部地区が中心ですが、最近では勝納川上流のような山奥でも、かなりの数の成虫が採集されています。彼らは徐々に森林の生態系の輪のなかに入り込みつつあるのかも知れません。
北海道でのカブトムシの侵入が、在来の生き物にどんな影響を与えているかということは、よくわかっていません。しかし多くの昆虫の餌資源である樹液は、森林の中でも限られた場所でしか得ることのできないものです。餌場をめぐる競争によって在来の昆虫が受ける影響は決して小さいものではないはずです。
後志地方のカブトムシの分布状況
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