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3. 「物流の街」小樽と外来生物
 近世以降、小樽はニシンの漁場として開け、本州との間に人と物の往き来が活発になります。かつて忍路湾の岸を埋め尽くしていたスモモや、現在も街なかに見られるキリなどは、ニシン漁やそれに続く北前船とともに小樽にもたらされたものだと考えられます。
 そして19世紀末、北海道の開拓と近代化が本格化すると、小樽への人と物の流れはいよいよ劇的な増加を見せます。鉄道の敷設、防波堤の整備は石炭やニシンなど北海道の生産物を道外へ搬出することが主目的でしたが、これらは道内各地へ運ばれる農産物などの物資を受け入れる玄関口としても、小樽をクローズアップすることになりました。
 こうして北海道の海の玄関口として発展した小樽は、今も海外を含め各地から物資の集まる街です。鉄道や道路など輸送経路の整備も早くから進み、それに乗って無数の荷物と人が行き交ってきました。それに紛れて各地の生き物も頻繁に小樽へ運ばれてきたと考えられます。
 また、街のにぎわいにともない、小樽は早くから都市の整備が進みました。都市化の進んだ人工的な空間と、盛んな物の流れは、外来種の定着に都合のよい環境を提供しつづけてきたと考えられます。
 特に植物は、古くから多くの種類が小樽に入ってきたようです。中には小樽で初めて見つかって、全道、全国に広がった例もあります。
 
手宮地区の石炭積み下ろし場 昭和初期
[小樽市博物館所蔵]
 
札幌国道の掘削工事 昭和初期
[小樽市博物館所蔵]
 
 
忍路湾に集合した北前船 明治時代
[小樽市博物館所蔵]
 
物と人でごったがえす小樽駅 明治〜大正
[小樽市博物館所蔵]
 
 
小樽の物流関係年表
1873年 (明治6) 銭函―札幌間馬車道開通
1875年 (明治8) 小樽―函館―東京間定期航路開通
1879年 (明治12) 小樽―銭函間馬車道開通
1880年 (明治13) 幌内鉄道(手宮―札幌間)開通
1882年 (明治15) 幌内鉄道(札幌―幌内間)開通
1889年 (明治22) 小樽港は特別輸出港に指定
1894年 (明治27) 小樽米穀外鰊肥料取引所設立
1897年 (明治30) 小樽移民休憩所開設
1899年 (明治32) 開港場に指定(国際貿易港となる)
区制施行(函館、札幌と同時)
1900年 (明治33) 小樽―稚内間定期航路開設
1904年 (明治37) 北海道鉄道(小樽―函館)全通
1907年 (明治40) 小樽―樺太間定期航路開設
1908年 (明治41) 北防波堤完成
1911年 (明治44) 手宮高架桟橋完成
1922年 (大正11) 市制施行「小樽市」となる
1923年 (大正12) 小樽運河完成
1936年 (昭和11) 若竹町に石炭積み込み施設完成
1937年 (昭和12) 第一埠頭完成
1950年 (昭和25) 第二埠頭完成
1955年 (昭和30) 札幌国道舗装工事完了
1970年 (昭和45) 新日本海フェリー就航
1971年 (昭和46) 札幌自動車道開通
1972年 (昭和47) 中央埠頭完成
1981年 (昭和56) 欧州間定期貨物航路廃止
勝納埠頭完成
1994年 (平成6) 国道5号長橋バイパス開通







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