日本財団 図書館


3 地域活動・放課後児童の保育についての実践例
 現在、保育所併設ののぼり児童館において表題の実践を行っていますので、のぼり児童館の活動について説明します。のぼり児童館は保育所併設型児童館事業の指定を受け、宇治市内での唯一の児童館として平成8年(1996年)4月に子ども未来財団(現在は厚生労働省主管)の助成を受けて開館しました。平成14年12月の増築後、現在の敷地面積は723.96平方メートル、建物面積は701.75平方メートルと大きい児童館になりました。利用対象者は0歳から15歳までの児童とその保護者です。開設時間は午前9時〜午後6時までとなっています。主な事業は、午前中に在宅で子育てされているお母さん達の子育て支援として親子サークルを行い、午後からは放課後学童保育事業や地域の子ども達が自由来館しています。
【地域の中の文庫活動】
 その他に子育て相談や和太鼓・卓球・母親クラブなどのクラブ活動を行っています。
 また地域文庫として児童館に隣接しているアンデルセンのぼり文庫もあります。この文庫は平成12年9月に地域のボランティアの方の運営により開設しました。絵本6000冊の蔵書があり学童クラブの子ども達も一緒に貸出日のお手伝いをしています。貸出日は毎週水曜日の15時から17時、土曜日の14時から16時です。平成14年度の利用状況は149名の登録がありました。利用者からは『虫や魚の図鑑があって、その中の虫を捕まえたことがある。虫とかの名前が分かるし面白い』『文庫の受付で、印を押すのが楽しい。子どもがいっぱい来て面白い』『借りて帰った本を子どもに読んであげると、全部内容を覚えてしまいます。私もいろんな本を見るのを楽しみにしています』との感想が聞かれます。またそういう声にボランティアの方もがんばれるとおっしゃっています。
 平成14年度の入館者総数は一般入館者数(親子サークルなど含む)が7104名で、学童クラブ出席者17826名、合計24930名となっています。児童館で行っている事業は表題の事業なので、大きく地域活動と学童クラブ事業に分け、またその中の地域活動については、児童館行事と子育て支援事業の親子サークル活動の二つに分けて、実践例を述べていきたいと思います。
 
I 地域活動
(1)児童館行事
【みんなワイワイ、ガヤガヤ】
 児童館行事は宇治市政だよりや、京都新聞山城版タウンタウンのコーナー、ポスター、案内のチラシを製作・配布することにより広報をしています。
 では、平成14年度児童館行事について述べていきます。
 5月8日に親子体操教室を2、3歳の幼児とお母さんを対象に2階の体育館で行い、25組の参加者がありました。11月25日にも同様に親子体操教室を行い、参加者は14組でした。講師は専門の親子体操指導員の先生にお願いし、フラフープくぐり・マーリングを頭に載せバランスをとって歩く・体操の器具などを使ってのサーキットトレーニング(跳び箱にのぼりジャンプして下りる・鉄棒にぶら下がる・マット・平均台・トランポリン)・音楽に合わせて親子ダンスなど、お母さんと一緒に体を動かしました。お母さん方から「広い場所でいろんな体操の器具を使う機会があって嬉しい」とか「体を動かすことによって子どもの行動が積極的になることがわかった」などとても好評でした。
 次に6月22日に小学生のオセロ大会を行いました。106名の出席者があり、オセロ盤を16台使用し、保護者(12名)や高校生のボランティアの方に審判などを手伝ってもらい、学年別に抽選をしてトーナメント形式で試合をしました。一ヶ月ほど前から大会に向け館内のあちこちでオセロをしている子ども達を見かけましたし、おうちの人と毎日のように練習をしていた子もいたようです。そのせいか当日は白熱した試合が多く繰り広げられ、参加者の中には負けて泣き出す子もあり4年生がなぐさめるという事も見られました。
 夏休み工作教室として、8月1日に『石こう粘土貯金箱作り』、8月5日に『シャドーボックスのクマの壁掛け作り』を行いました。宇治市政だよりによる広報のおかげで、石こう粘土の貯金箱作りは参加者が120名と非常に多かったです。参加者の8割くらいが低学年生であったため、付き添いのお母さんやボランティアの大学生達に補助をしてもらいながら、空き缶に石こう粘土でピカチューやペンギンの形をした貯金箱を作っていました。できた作品は8月6日に絵の具で色塗りをしました。シャドーボックスのクマの壁掛け作りは、3、4年生の女子を中心に55名が参加しました。クマの絵柄をカッターを使って切り抜く作業では、カッターを使ったことがなく戸惑っていた子もいましたが、講師に指導してもらい一生懸命に取り組んでいました。
【先生、この魚生きてるの!!】
 次に8月18日には恒例の琵琶湖の北小松水泳場に魚とりに行きました。投網や刺し網でブラックバス・モロコ・ヨシノボリ・稚鮎を取りました。投網の投げ方が分からないお父さんばかりで、教えてあげたら稚鮎がたくさん網にかかり、面白くなり夢中で取ってらっしゃいました。私自身がそれを教えることにより非常に熱心に魚とりを楽しんでいらっしゃいました。子ども達は各自持ってきた虫取り用の網で魚を取っていましたが、面白いように取れ、昼食にはみんなで取った稚鮎をから揚げにして食べました。お母さん方の中には魚に触るのが嫌で、はらわたを抜く作業が出来ない方がおられましたが、子ども達は、逆に初めての経験で積極的に作業をするという姿が見られました。から揚げのお代わりが多く、二百匹以上もの鮎があっという間になくなりました。午後からは思い思いに湖で泳いだり、すいか割りをしたりと、参加者大人38名、子ども37名、中高生のボランティア5名での楽しい一日となりました。この行事に関しては毎年家族そろって心待ちにされている方が多く、保護者同士の親睦も図れるので継続して行っていきたいと思います。
【演技者と一体の感動】
 続いて7月25日に児童館巡回児童劇の一環として、劇団アトムによる『アトムの遊びはアンデルセン』の人形劇を上演してもらいました。会場設定や駐車場係、受付、後片付けは、のぼりクラブの3、4年生が手伝いました。283名という参加者があり、小学生が約半分を占め、乳幼児サークルの親子が出席者の4分の1を占めていました。子ども達は「面白かった」「もっと見たい」と言っていましたし、お母さん方からも「とても感動した」と好評でした。プロの人形劇が観劇できたことは、子ども達の心に深く残るものがあったと実感しましたので、また機会があれば巡回事業の児童劇を上演して欲しいと思いました。また整理券の配布をしていたのですが、少しでもたくさんの方に見て欲しいとの思いから少し多めに配っていたために、当日こちらが予想していたよりかなり多くの方が見に来られ、クーラーの効きが悪くなり少々息苦しく感じるくらいの混雑になりました。次回からは、会場の大きさと収容人員の把握をきちんとしなければいけない、と思いました。
 夏休み期間中は、宇治市社会福祉協議会より中・高・大学生のボランティアを延べ38名受け入れました。子ども達は少し大きいお兄さんお姉さん達とのふれあいがとても楽しそうで、その人たちにまとわりついて遊んでいました。ボランティアの方の中には、子どものあしらい方の難しさを言われる方もありましたが、相互にとてもよい体験が持て、今後もボランティアは積極的に受け入れていきたいと思っております。
 9月30日には、映画会を行いました。上映作品は平成14年度子ども映画祭から『かわうそ親子の冒険』『クマのミナクロと公平じいさん』『あかりになったかたつむり』の3本でした。親子サークルの参加者が多く、95名の参加者となりました。この日に限りかわいそうな内容の映画が多かったのですが、幼児の参加も多いので、次回からは上映時間だけでなく、作品内容を検討し、明るく単純な作品も取り入れたほうが良いと思いました。
 11月9日には、小学生卓球大会を学年ごと男女別に試合を行い、参加者得点係・審判係は4年生以上の子ども達でしました。また卒館生で、現在中学校の卓球部に所属している子が手伝いに来てくれました。参加者は41名でした。卓球台は児童館遊戯室に常設し、普段から小学生同士だけでなく自由来館の中学生たちとも練習をしていたので、かなり上達している子も多かったのです。当日は試合の緊張感からか焦ってしまったり、簡単なミスをしたりして、いつもの実力が発揮できずに試合に負けて悔し涙を流した子もいました。優勝者が決まったあと、最後に保護者の方や卒館生の中学生と優勝者との親睦試合をしました。互角以上に戦う姿にお父さん方もびっくりされていました。
【みんな集まれのぼりっ子】
 11月17日に、地域事業の一大イベントとしてコワトピアのぼりフェスタを、のぼり児童館・登り保育園・登り助育センターの共催で行いました。参加者は2000人以上ありました。まず事前にフェスタのチラシを地域の住民の方に配り、ポスターも要所に貼り、のぼり児童館・登り保育園・登り助育センターの子ども達には、わたがし・紅茶・ゲーム券の招待券を渡しました。内容は登り助育センター各教室の発表や児童館の親子サークルの作品展、のぼりクラブの写真展示、また石こう粘土の作品の即売もしました。模擬店はきつねうどん・たいやき・たこやき・フランクフルト・わたがし・紅茶・シュークリーム・いかせんを販売しました。ゲームコーナーではイライラ棒・サイコロリン・ルーレット・ラッキーゲーム・輪投げ・射的・ヨーヨー釣り・エアーソフトガン・ストラックアウト・ビンゴ・魚釣りなどを行いました。当日はどこから子ども達が来るのかと思うほどゲームコーナーに列ができ、終了時までずっと途切れることがありませんでした。お手伝いには園の保育士を含む大人42名、中・高・大学生のボランティアが15名、保護者のお手伝いが60名と大変大規模なイベントになりました。毎年のぼりフェスタを楽しみに待っている子ども達が多いので、地域の人たちみんなと力を合わせ今後も色々工夫しながら続けていきたいと思います。
【静かにしろよ!】
 12月7日には、北摂ウィンドオーケストラ37名による『ふれあいクリスマスコンサート』を実施しました。参加者は285名のうち大人が75名ありました。受付・駐車場係・会場設定はのぼりクラブの3、4年生が手伝いをしてくれました。曲目は『ディズニーメドレー』『ドラえもん』『クリスマス・フェスティバル』など子どもたちの知っている曲を演奏していただきました。子ども達参加型の企画として、子どもが前に出てタクトを振ったり、楽器に直接触ったり、みんなで一緒にメロディーを口ずさんだり、観客みんなで指揮の練習をしたりしたので、会場がとても盛り上がりました。子ども達からも「毎年来て欲しい」と好評でしたし、乳幼児サークルのお母さん方からは「小さい子を連れてコンサートに行くことが不可能なのに、この機会に一緒に子どもを連れて参加でき、とても感動しました」と、とても喜んでもらえました。また楽団の方からは「間近に子ども達が歌っていたり、目を輝かせて演奏を聴いてくれていたりする姿を見て、改めて音楽の楽しさを感じることができ、今後の勉強になりました」と言っておられました。
 平成15年1月18日には、かるた大会を28名の参加で行いました。小学生低学年の参加が多かったので、百人一首ではなく、いろはかるたでカルタとりをしました。のぼりクラブを卒館した子ども達がお手伝いに来てくれ、カルタの読み手をしてくれたり、審判をしてくれたりしました。
【直滑降でヨーイドン】
 2月8日には、福井県今庄365スキー場へ観光バス2台でスキーに行きました。地域にはスキー教室があまり無く、恒例になっているこの行事に遠方から参加する子どもも多く、大人34名、子ども63名の参加でした。親子での参加者が多く、小さい子ども達はソリで遊んだり、保護者の方と一緒に思い思いに遊んだりしていました。3年生以上はスキーの講習を初級・中級・上級のクラスに分け、専門のスキー講師に指導してもらいました。中・上級のクラスの子ども達はリフトに何回も乗りましたし、初級クラスの子ども達も最後に一度リフトに乗ることができ、スキーの面白さが分かってきたころに講習が終わりました。往復のバスの中では、じゃんけんゲームやクイズをして過ごし、スキーだけではなくその時間も楽しかったようで「来年も絶対行く!」と言う子ども達ばかりでした。また3月26から28日には2泊3日で志賀高原へもスキーに行きました。
(2)親子サークル
【一週間が長いなぁ】
 年齢別に3つのグループに分けています。各教室とも時間は午前10時から11時半まで行っています。0歳から1歳半までの子どもとお母さんを対象にした『赤ちゃん広場』、1歳半から2歳半までの子どもとお母さんを対象にした『つくしグループ』、2歳半から就園前までの子どもとお母さんを対象にした『たんぽぽグループ』に分けて行っております。『赤ちゃん広場』は毎月火曜日3回開催し、手遊び・赤ちゃん体操・母親ストレッチ体操・園庭遊び・専門の先生による育児相談などを行っています。登録者数は65組あり、平均22組ほどの出席があります。「一日を二人きりで過ごすよりも、多くの友達と触れ合って話をして楽しく過ごせることが嬉しい」とか「親のストレス解消になっています」との声がありました。『つくしグループ』は毎月月曜日3回開催し、自由遊び・手遊び・つみき遊び・コーナー遊び・製作(紙コップを使ったおもちゃ作り・七夕工作・ミノムシ工作・おひなさま作り・クリスマスバック作り・作品展工作作り)・絵の具遊び(手形押し・メダル作り)・楽器遊び(音楽に合わせて体を動かす・マラカス遊び)・運動(マット・かけっこ・体操)・運動会(リレー・かけっこ・玉入れ・障害物)・園庭遊び・散歩(弁当持ちでどんぐりひろい)・映画会・新聞ちぎり・育児相談などを行っています。登録者は82組があり、平均23組ほどの参加がありました。「とても充実していて親子共々楽しい」とか「ご挨拶・お返事が楽しみで名前を呼ばれると嬉しそうに『ハイ』と言えるようになりました」「子どもも親も楽しみにしていていろんな子ども達に出会え、刺激ができてとても良かったです」との声がありました。『たんぽぽグループ』は毎月水曜日3回開催し、自由遊び・手遊び・製作(ケンダマ作り・お店屋さん品物作り・動くおもちゃ作り・七夕飾り・マラカス作り・クリスマス飾り・こま作り・作品展工作作り)・楽器遊び・運動(サーキット・マット・平均台)・園庭遊び・新聞ちぎり・運動会(リレー・障害物・かけっこ・玉入れ)・お買い物ごっこ・散歩(弁当持ちで公園へ)・絵本の読み聞かせ・映画会・育児相談などを行っております。登録者数は68組あり、平均28組くらいの参加があります。お母さん方は「毎回児童館に行くのを楽しみにしており、家では出来ないことを教わるのでとても嬉しい」との声が多数聞かれます。
 各サークルともに園庭遊びは非常に人気があり、見慣れない遊具があったり、おもしろい遊具を使って遊べたりするので毎回大変心待ちにされています。今年度については、園庭遊びのときに大型紙芝居を園の保育士によって実施してもらっています。
 総評として、参加者が全体的に育児ストレス・育児不安をもっておられ、それが子育ての大変さにつながっていると痛感しました。在宅で子育てされているお母さんのケアとして、親子サークルに来ていろんな人とお友達になり、他人の子どもとの関わり方を見るにつれ、少しでも子育てが楽しくなるように、今後も親子サークルの広報活動、内容の充実を考えていきたいと思います。また親子サークルでの園庭開放日以外に、登り保育園園庭開放を年17回行いました。保育園の安全な園庭を開放し、自由に遊んでもらい、親子の交流の場所にしてもらうという目的で行っています。実施方法は、宇治市政だより・宇治子育て情報誌・掲示板などで広報しています。受付で名前と住所を記入してもらい、10時から11時半の間に自由に園内の遊具を使って遊んでもらっています。保育園には乳児専用の広場もありますので、0歳から年齢に応じて遊び場を選ぶことができます。また、園児の様子を見るだけでとても刺激的だという声がありました。14年度は、夏の暑い日は参加者が少ないと思い、企画しませんでしたが、楽しみにされている方が多かったので、次年度からは企画したいと思います。







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