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(5)児童クラブ一年間の行事
[よさこい踊りに参加]
 七尾市の和倉温泉では、夏に「よさこい踊り」という地域のイベントがあります。
 「よさこい踊り」は、保育園の年長児・保護者も参加してよさこいを踊ります。
 踊りたいという子どもが集まり、自主的に参加することにしています。
 練習は夏休みが中心ですが、6月頃から放課後の練習となり「何でこの暑いのにー。外で遊びたい。またかー・・・」とにかく文句が出ます。そんな子どもを励まし、父母会のメンバーにも応援してもらいながら練習をします。
 本番が近くなり、保育園児との合同練習では動きは違います。踊りが華やかになり、保育園児と一緒に踊る姿に、保育士や保護者から「さすが小学生は違う」なんて言われると、照れながらも意欲的な態度で練習に参加するようになってきます。
 参加しない子どもは、踊りを見守り応援することにしています。踊る子も、踊らない子も目標は同じなのだと認識してもらい、できることをする。特によさこいはコンテストで順位がつく行事なので、応援も踊る以上に大切なのだと知らせています。
 和倉よさこいまつりに出演して4回目の今年は、準優勝を取りました。発表の時、子どもが両手を握り合わせて「優勝できますように」と祈る姿は初めて見ました。「やったぁー」と準優勝のアナウンスに飛び上がる子、泣いている子、抱き合う子の姿を見て、コンテストでの順位は自分ひとりの力ではなく、みんなで力を合わせたことで勝ち取れたことを現実として体感でき、素晴らしい経験となったと思いました。その事を子ども以上に私達大人が実感したのです。
 地域の行事に参加する事は大変だけど、それをやり遂げる過程で学ぶことは沢山あるという事を感じます。
 
[運動会参加]
 秋の一日、保育園の運動会です。卒園児、保護者、園児が楽しみにしています。
 児童クラブもアトラクションに参加。リレーは力の入る種目です。保育園の種目の中で競争を意識し保護者、幼児、保育士が真剣に応援する姿は熱気があり力強さを感じます。自分の力を精一杯出して走る子どもの姿は、参加者全てに感動すら与えてくれます。
 
[保育園の発表会に出演]
 いろいろの行事に参加する事も、小学生ともなると簡単にさせるというわけにはいきません。「先生が勝手に決めたことだ」と必ず言います。その時は、その言葉を否定するのではなく、友達と協力し合い何かをする事の楽しさ、大勢の人に見てもらう時の自分が感じる喜び、楽しさを話してみます。
 また、いろいろな活動を発表することは自信につながり、やり終えた時の達成感をクラブ員全員で味わおうと勧めていきます。みんなの力が集まれば何事も楽しい、と感じてもらいたいのです。
 児童になると騙しはきかないけど目標を掲げやり始めると互いに助け合うなかで友情が深まり信頼関係が深まります。
 指導員・保育士も大人だから、という概念を持たず共に過ごす仲間として出来る事がなんであるか。ここに来る子どもの一番身近な大人として、経験や知識を伝える。補助できることをする。この姿勢が大切だと思います。
 小学校1年生から4年生、その年によっては6年生がいました。異年齢の活動として定着した発表会です。児童クラブの活動を保育園の保護者にも紹介する機会となっています。
 
[発表会プログラム]
平成11年3月
 クラブの一年間の生活紹介、4月からの行事や日常の遊びを発表します。一人一人が原稿を書いて緊張した面持ちで話していました。
平成12年3月
 太鼓の発表。保育園で園児と一緒に習った成果を見てもらいました。
平成13年3月
 詩吟「あー七尾城」を踊りました。この踊りから伝統文化を知り、七尾の歴史に関心を持つきっかけにもなりました。着物に袴姿の子どもは、最初の頃は照れたりしていたのですが、立派に踊ることができました。
 この踊りは、クラブでこれからも伝承していきたいと思っています。退所した子が「教えにきてあげる」という言葉を聞いた時、この活動が定着してきたという実感をもちました。
平成14年3月
 詩吟と合唱団という二つのグループで出演。4年目ともなると子どもが発表する内容を計画するようになり、子ども自身が楽しんで参加できました。
平成15年3月
 4月から何をしようかが話題にあがります。異年齢で共同発表会に望むことは小学校では経験がなく、児童クラブだから互いに学年など気にせず目標にむかうことができ、その協調性は確実に養われてきています。
 かつてはどこにでも見られた子ども同士のつながりは薄れてきています。子どもが互いに関わりをもつ機会が少なくなっていく中、この発表会参加はずっと続けていきたいと思います。
 
[地域世代間交流]
★中学生、看護学生、地域の婦人団体、子育てセンターの親子との交流活動
 児童クラブはいろいろな人たちとの交流の場にもなっています。子どもたちは、保育園との交流をきっかけとして誰とでも仲良く遊ぶことができます。
 核家族の子どもが多いせいか、兄弟の少ない子どもは小さい幼児と関わる事を、とても楽しみにして遊んでくれます。
 未就園児の親子も、児童クラブの子どもに親しく声をかけ、遊びを共にしてくれます。クラブの子を見て、我が子の成長を重ねているようです。子どもは、乳幼児との関わりが自由にできる場があり、良い経験になると思います。
★婦人団体との交流
 七尾更正婦人団体の方との月に一回の交流も、3年目になります。
 昔のあそびの伝承、製作、自然物を利用した遊び、一緒に山の寺へいく。座禅、貝合わせ、お手玉作り、子どもと職員は、優しさと親しみのある遊びの体験ができるので訪問を楽しみにしています。
 また、ボランティアで慰問に行き、詩吟や歌のプレゼント、地域の空き地に花壇作り、野菜作りなどの活動もしています。子どもはどの活動も喜んで参加しています。
 今後も、児童クラブだけの人間関係ではなく、地域の人とのかかわりをもっと広げていきたいと思います。
★中学生との交流
 平成13年から七尾市内の中学生を受け入れています。授業の一環として職場体験「わくワーク体験」、今年で3年目になります。
 体験学生の一人は、小丸山児童クラブに小学1年から6年まで在籍していました。本人が児童クラブに行きたいと言い、通っていたのです。その子が中学2年生になり、職場体験としてここを選び、その感想を書いた中から一部の文を紹介します。
(1)『僕は、職場体験でチャイルドケアハウスヘ行って来ました。そこでいろいろな事を学びました。
 実際に仕事をしてみるとものすごく疲れるだろうと思っていました。肩車、おんぶ抱っこ、もう一日中といっていいほど、こればっかりでした。でもこんなに疲れていても、ただ1つ言える事があります。それは「嬉しい」という事です。何故かと言うと、自分を見て寄って来てくれる、これは、とても嬉しいことだと思います。3日間という、短くそして長い時間を、充実して過ごせたと思います。先生方は、僕たちにとても気を使ってくれました』以下省略
 
 社会の中で人間関係が希薄となり、人とのふれ合いも少ない環境の中、見も知らない子どもが自分に愛着を示し、体ごと飛び込んできてくれたことが嬉しかったのでしょう。私達は、いつも側にいて、「先生ー」と言われるのが当たり前になっていた事をこの中学生の「うれしい」と書いた感想で改めて教えられ、保育の意義を感じたのです。
 もう1人の、初めて児童クラブを経験した中学生の感想も紹介します。
(2)『僕は、最初にこの仕事がそんなに疲れる仕事ではないだろうと思っていました。でも実際はそんなに甘いものではありませんでした。すごく疲れるし、気も使う仕事でした。僕らが疲れていても子どもたちは「遊ぼう、遊ぼう」と話し掛けてくるのです。でも、疲れていても元気な子どもたちが近くに来ると「もう少し頑張ろう」とやる気がでてくるのです。だから、チャイルドケアハウスの先生は今までこの仕事をやってこれたんだと思いました。でもこの仕事は絶対に気を抜けないと思います。だって、この仕事は、子どもの命を預かっている仕事だからです。この仕事をしている時はとても気を使いながらやらなければならないと思います。・・・今度このような人の命を預かる仕事を受け持った時、もっと注意深く子どもの行動を見張っていようと思います』以下省略
 
 以上より、中学生が「命」「仕事の喜び」そして何より子どもと関わる事で気持ちが温かくなり、『子どもって可愛い。大切にしよう』という気持ちを持つことができたことがわかります。児童クラブの子どもは、中学生、地域の人、ボランティア、支援センターの親子との交流によって、いろいろな人間関係を築き、心も体も成長しています。







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