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第3分科会
国際化の中の保育
助言者 谷口 正子(大阪国際大学教授)
提案者 栗本 広美(東大阪市・白鳩保育園理事長)
司会者 奥田 妙子(大阪市・港保育所所長)
レクチャー
国際化の中の保育
―多文化を持つ保護者への対応方法―
谷口 正子(大阪国際大学教授)
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プロフィール
1942年 北海道札幌市に生まれる
1965年 北海道大学医学部薬学科卒業
札幌医科大学生化学助手、講師、助教授を経て
1988年 帝国女子短期大学幼児教育科(現・大阪国際大学短期大学部) 教授
1997年 大阪国際大学 人間科学部 教授
著書(国際化・多文化理解に関するもの)
(1)「幼児のための多文化理解教育」(翻訳 谷口・斉藤 明石書店)1997年
(2)「在日外国人のための母子保健」―日本に生きる世界の母と子―
第8章 幼児の多文化理解 医学書店 1998年
(3)「多文化共生保育― Q&A」大阪保育子育て人権情報研究センター 2003年
報告書
「多文化子育て調査報告書」―11カ国語による外国人保護者対象アンケート調査― 2001年
※調査結果は英語、韓国朝鮮語、中国語に翻訳し出版 国際文献社 2003年
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(1)外国出身の方が増えています。
1980年代後半より多くの方々が短期あるいは長期に滞在するようになりました。外国人登録者数も今や200万人にも達しようとしています。子どもの出生率を見ても、例えば大阪では13人に1人がご両親あるいはどちらかが外国出身者です。その多くは子どもを保育所・幼稚園に預けており、異なる文化の中で子ども達はもちろん、保護者も園生活や日常の保育全般で大変な苦労を重ねています。
(2)保護者はどんなことに困っているのでしょう―アンケー卜調査をしました。
大切なことは、多文化をもつ保護者たちの現状を知り、どんな手助けが必要かを把握し、それに添って子どもおよび保護者を支援することです。そのため、私たちは、園生活は勿論、日本の子育て全般に関する11カ国語の質問紙調査を、子どもを園に通わせる外国出身の保護者対象に行いました。65カ国2003人の回答が得られました。これまで母語での調査は非常に少なく、こうしたアンケート調査そのものに対する感謝も綴られています。
(3)調査結果から多文化をもつ保護者への望ましい対応方法を考えてみました。
集計した調査報告書には、日頃の保育士への感謝の言葉が見受けられる一方、園や日本人保護者、また日本社会全体に対しての要望・疑問・批判なども多く記されました。
また日本人の親の"孤育て"にも増して、身近に相談する親や親戚・友達もなく孤立する親たちの姿も浮き彫りにされていました。次頁に調査結果と望ましい対応方法の一部を示します。
子どもとのかかわり
・予想をはるかに超えるストレスを知る
・子どもの心の安定のために信頼を得ること
・子どもの要求を察知する努力を惜しまない
・日本語の理解を促す行動を多くとる
・子どもの文化を互いに大切にする
・孤立やいじめのないような配慮をする
・保護者の信頼を得る
望ましい保護者への対応方法
相手の言葉に耳を傾ける努力・姿勢
・異なる文化をもつ子どもへの特別な配慮
・ゆったりとした心の余裕
・熱心なあまりの緊張感はよくない
・周囲・全体の協力
コミュニケーションについて
・うまく話せない
・会話は出来ても手紙や連絡帳は読めない
・手書きの文字は読めない
・ルビを打つ・ローマ字で書く
・言葉は分かっても文化の違いとして聞いてもらえない
・先生が忙しそう:じっくり耳を傾けて欲しい
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