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第2分科会
子育てが苦手な保護者への対応
助言者 羽室 俊子(元セゾン星の子保育園保健師)
提案者 西 由貴子(東大阪市・玉串保育園園長)
司会者 小山よしえ(東大阪市・フタバ学園園長)
 
レクチャー
子育てが苦手な保護者への対応
羽室 俊子(元セゾングループ星の子保育園保健師)
 
プロフィール
 
1936年 東京に生まれる
1959年 東京大学医学部衛生看護学科卒業
 
 
1983年〜セゾングループ星の子保育園 保健婦(12年)
1995年 退職 フリー活動に入る
 
現在 港母子保健連絡研究会代表、「赤ちゃんとママ」お手紙相談室担当保健師、岩手県立大学看護学部非常勤講師(家族ケア論)山梨大学看護学部非常勤講師(小児看護)全国保育園保健師看護師連絡会会員、東社協保育士会保健部会会員、若い研究仲間との研究活動と学会報告、子育て支援ボランティアetc.
日本保育園保健学会機関誌「保育と保健」編集委員
 
ひとこと/
 学生時代から、女性が仕事と子育てを安心して両立できるように、保育の仕事に看護職も参加できたらという夢を描いていました。願いはかなったのですが残念なことに勤務先が閉園となってしまい、以後、保育園看護職の応援団を自認しています。
 
保育園保健関係の著書/
乳幼児健診と保健指導 共著 医歯薬出版
健康保育ハンドブック 〃 ミネルヴァ書房
保育小児医学 〃 新読書社
発達障害児の指導 共訳 医学書院
ママのユーウツにさようなら 共著 赤ちゃんとママ社
 
 子育てを身近に体験するどころか、子どもの遊ぶ姿を目にする機会も少なくなっている現代において、子育てに不安を感じ、自信がないという大人が急増しているといわれています。
 子育ては、大変だけれど楽しいという保護者も多い一方で、本音は苦手という保護者がいて、その上に苦手とは思っていないような保護者も増えているようです。
 保育園の子育て相談に求められているのは、子育てが苦手な保護者をはじめ、ちょっとしたことから虐待予防まである保護者とのかかわりで、保護者自身が親役割としての子育て能力を高められるように支援することであると思います。
 
1. 子育てが苦手な保護者、家族
1)保護者が自分は子育てが苦手だと感じている
(1)苦手だから支援を求める行動をとる
(2)苦手だけどガンバル→子育てがツラクなる
(3)苦手で放棄してしまう→子育てがイヤになる
2)保育園が、あの保護者は子育てが苦手らしい、と思う
(1)子どもの養育が不適切なことが多い
(2)子どもとのかかわり方が上手くない
(3)対人関係が苦手
(4)子ども、保護者に障害や病気がある
(5)子育てが楽しそうでない
3)子育てが苦手らしい保護者を見出すキッカケ
(1)2)の各項を手がかりに
(2)家庭環境、夫婦の子育てについての思い(価値観、信念)を知る
 レッテル貼りをしてはならないが、見すごさないために、おつきあいしてみなくては、きいてみなくてはわからないことが多い。
 
2. 保護者自身の子育て能力を高める支援
1)保護者の持つセルフケア機能を高めるように働きかける
2)カウンセリングマインド(受容と共感)で信頼関係を築く
3)知識や情報の提供
4)保護者の子育てを肯定的にとらえての支援
5)子どもとの関係に楽しみが見出せる体験の機会の提供
6)担当者が特に心がけること
(1)言葉を大切に使う
ねぎらい、支援意志の明確な表現、情報を引き出す言葉かけ
(2)自分の価値観をおしつけない
(3)自分一人で背負いこまない、保育園が行っている支援活動という認識
 
3. 保育園だからできる支授活動
1)保育体験
(1)みずから気付く機会、相談する機会、支援を得られる機会
(2)親性、親役割を学んだり再認識したりする
2)助言、相談
(1)日時を設定しての相談と日常保育活動の中での助言・相談
(2)保護者のニーズによる相談と保育者のニーズによる相談
(3)職員の専門性を活用した対応と他機関と連携した対応
 
 子育てが苦手な保護者への支援目標は、子育てが得手な保護者にすることではないと思います。
 苦手なことを頑張っている保護者が、自分の頑張りを評価できること、そして、少しずつ子育ての楽しさを感じるようになることを最初の目標に支援したいものです。
 
提案要旨
子育てが苦手な保護者への対応
西 由貴子(東大阪市・玉串保育園園長)
 
1. はじめに
 そもそも子育てとは、子どもの時代から自然に身に付けられていた親になるための生きた体験を準備しながら大人へと成長してきたはずなのに、親自身が複雑な人間関係を避け、たとえば自分が慰められたい時だけ寄りかかれて、後は煩わしい人間関係を避ける、そういう世相のなかで育ってきているところから、自分の親を見て、または家族との関係から親になるための準備が不十分であることが影響しているように思われます。ところが希薄な人間関係の中で育った大人にとっては子育てというのはそう都合よくはいきません。「こんなはずじゃなかった」と親たちは、子育てに対して息苦しさやしんどさを感じ、育児不安も膨らんでしまうのでしょう。
 そこで「子育て能力を高めるため」保育所がサポートできることについて事例をもとに考えてみました。
 
2. 子育てが苦手とは
・子育てに自信がない
・子どもの行動を制止できない
・自分で決めることができない
・子どもが泣き出したらパニックになる
・泣く子どもが嫌い
・マニュアル通りにいかないことに不安を抱く
・子どもに見透かされている
・自分を卑下する
・子どもの話がちゃんと聞けない
 
3. 事例の検討の仕方
1. エピソードを具体的に把握する
2. エピソードの中の子どもの言動をどう解釈するか(子どもの悪い点だけではなく、正常な部分も含めて理解する)
3. 問題性のある部分を取りあげる
4. 問題性のある部分の背景を考察する→仮説が生まれる
5. 仮説を確かめるための情報収集(圏内で繰り返していないか、家庭の様子を聞く)
6. どのような場面でどのような工夫をすればよいか考える(子どもが覚えている不適切な行動パターンを変える)







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