開会式
主催者挨拶
日本保育協会
日本保育園保健協議会
講演I
座長 菅原重道
(日本保育園保健協議会副会長)
演題 児童福祉の動向と保育所
―次世代育成支援について―
講師 山縣 文治(大阪市立大学教授)
プロフィール
昭和29年広島県生まれ。大阪市立大学生活科学部卒、大阪市立大学前期博士課程修了。大阪市立大学生活科学部助手、現在同大学教授。
日本子ども家庭福祉学会理事
日本保育学会理事
全国夜間保育園連盟顧問
大阪市社会福祉審議会委員
厚生労働省次世代育成支援施策の在り方に関する研究会委員
主な著書
『新しい子ども家庭福祉』ミネルヴァ書房
『児童相談所で出会った子どもたち』ミネルヴァ書房
『児童福祉施設と情報公開』ミネルヴァ書房
『家庭児童相談室で出会った親子』ミネルヴァ書房
『保育サービス再考』朱鷲書房
『社会福祉用語辞典』ミネルヴァ書房
『ウェルビーイング事始め』有斐閣
『現代保育論』ミネルヴァ書房
『社会福祉論』全国社会福祉協議会
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1. 保育所が歩んできた道
2. 保育施策に拍車をかける3つの法律の動向
1)少子化社会対策基本法
2)次世代育成支援対策推進法
3)児童福祉法の改正
3. 現代の保育サービスに求められている5つの課題
1)就労と子育ての両立支援
2)地域子育て支援
3)多様な供給主体の参入促進
4)公営保育所改革
5)社会的信頼の確保
4. 次世代育成支援と保育所の果たす役割
子ども家庭福祉の動向(2003.9.1)
1. 少子化対策プラスワン(厚生労働省2002.9)
(1)位置づけ 少子化の流れを変えるため、少子化対策推進基本方針の下でもう1段の対策を推進
(2)主な取り組み ・すべての働きながら子どもを育てている人のために(男性を含めた働き方の見直し 仕事と子育ての両立推進 保育サービス等の充実)・子育てをしているすべての家庭のために(地域子育て支援サービスの推進とネットワークづくり 子育てバリアフリー 社会保障における次世代支援 教育に伴う経済的負担の軽減) ・次世代を育む親となるために(親になるための出会いふれあい 子どもの生きる力の育成と子育てに関する理解促進 若者の安定就労や自立した生活の促進 子どもの健康と安心・安全の確保 不妊治療)
2. 保育所の入所円滑化対策の実施に対する会計検査院の意見表示について
(厚生労働省2002.10)
会計検査院の改善措置に対する厚生労働省の回答を都道府県、指定都市、中核市の保育所運営担当者に対して説明したもの。
(1)会計検査院の改善指導は、現行の入所の円滑化に関する制度運用に対して意見が示されたものであり、これに要した保育所運営費国庫負担金の返還を求めているものではない
(2)定員内で保育の実施を行うことが原則である旨を改めて明記する
(3)「恒常的」について、待機児童の動向及び施設運営に与える影響に考慮しつつ、具体的な年数等を明示する
(4)新たに、定員改定を行う場合には、地域の保育需要に関して市町村の意見を求める旨を加える
3. 待機児ゼロ作戦の推進方策について(児発 1017001号通知 2002.10)
(1)設置主体制限の撤廃等について(認可外保育施設の認可化促進)
(2)保育所分園について(定員規制および分園数規制の緩和)
(3)入所の円滑化及び各種特別保育事業の実施について
(4)地域資源の活用について(送迎保育ステーション、駅前保育施設、商店街の空き店舗等を活用した保育サービス等提供施設)
(5)余裕教室の活用について(公立学校の建物を保育所に転用する場合の補助措置)
(6)公設民営について
(7)保育所整備計画の策定等
4. 平成13年度社会福祉施設等調査の結果発表(厚生労働省 2002.11)
(1)保育所の入所率が初めて100%を超える
(2)引き続き、公営保育所は減、民営保育所は増
(3)入所児数は、公営、民営共に増で、193万9千人
(4)延長保育は、公営26.4%、民営69.3%
(5)乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設は入所児増、障害児関係施設は入所児減
5. 中間報告(中央教育審議会 2002.11)
(1)就学時期の弾力化の検討
(2)幼小、小中、中高など学校間の連携の推進
(3)地域が学校運営に参画する新しいタイプの学校の設置検討
(4)教育振興基本計画の検討
・遊びの中で様々な体験を通じて、生きる力の基礎を培う幼児教育の充実
・多様な教育・保育ニーズへの対応
・幼稚園の子育て支援機能の充実
・幼稚園・保育園と小学校以降の教育との連携の強化
6. 子育て支援政策に関する提言
(社会経済生産性本部・子育て支援政策研究会 2002.11)
(1)子育て支援は「子育ての自由拡大」と「子ども」の視点重視を
(2)生涯学習の観点から子育て支援と教育政策の統合を(保育も教育サービスの一つと位置づけ、教育で所管すべき。ニュージーランドやスウェーデンを先例)
(3)児童手当制度の抜本的な拡充を(支給制限の撤廃、義務教育終了まで給付、第1子最低1万)
(4)公設民営化の積極的な推進による保育サービス供給の促進と効率化を(民間企業参入は認可保育所制度とは相容れない。公設民営化と企業参入を区別してとらえること)
(5)保育サービスの質を確保すべく、すべての保育施策に共通の評価システムを
(6)世代間ワークシェアリングの発想で働き方の改革を
7. 児童虐待防止市町村ネットワーク事業の実施状況(厚生労働省 2002.11)
平成14年6月時点で、3,240市町村中、702市町村が既設置。323市町村が計画中。機能は、児童虐待防止機能に特化しているものが4割、他の機能も持たせているのが6割。中身は、子育て支援4割、いじめ3割、障害児支援3割、権利擁護2割5分、配偶者暴力対策2割5分など。関係機関は、保育所8割5分、児童相談所8割弱、小学校8割弱、中学校7割、警察7割弱、幼稚園6割など。
8. 幼保問題の基本方針(閣議決定 2002.12)
(1)幼稚園と保育所の連携を可能な限り容易にする方向で厚労省、文科省協議
(2)幼稚園教諭資格をもつものが保育士資格を取得しやすくする方向で平成15年度中に協議
(3)幼稚園と保育所の制度間のあり方や運営に関わる経費負担について検討
(4)保育所の調理室設置に関わる義務付けについて、その必要性を検討するとともに、社会福祉施設等に対する施設整備補助負担金のあり方について検討
9. 規制改革を加速的に推進する「12の重点検討事項」(総合規制改革会議 2003. 2)
12の重点検討事項の5番目に、「幼稚園・保育所の一元化」を示す。
(1)施設設備基準の統一(保育所のみに義務づけられている「調理室」の設置義務の廃止など)(2)資格配置基準の統一(幼稚園教諭と保育士)(3)入所対象の統一(保育に欠ける子のみならず誰でも可能に)
10. 保育分野の規制改革(厚生労働省 2003. 2)
幼児数の減少で集団保育が困難な状況にあり、幼児の健全育成上特に必要があると認定を受けた市町村対象で、共用化指針における施設において、原則として定員の範囲内で以下の条件で認める。
(1)児童福祉施設最低基準をみたしている(2)保育士と幼稚園教諭と両方の資格を有している(3)保育所保育指針と幼稚園教育要領に沿った活動である。
11. 次世代育成支援に関する当面の取り組み方針(閣講決定 2003. 3)
既出と相違なし。
12. 保育サービス価格に関する研究会報告書(内閣府 2003.4)
(1)待機児童対策(公立保育所の効率化の促進 規制緩和による競争条件の緩和 3歳以上の幼保一体的運用)(2)サービスの質の向上(認可外保育所の質の向上のための補助金サービス評価)(3)保育料の格差是正(直接補助方式)(4)情報開示
13. 社会的養護の在り方に関する専門委員会の設置(児童部会 2003.5)
社会的養護のあり方について 施設養護のあり方について 家庭的養護(地域ケア)のあり方について 年長児童に対する自立支援について 社会的養護の質の向上 その他
14. 青少年の育成に関する有識者懇談会報告書(内閣府 2003.4)
保育所と幼稚園の一体的運用 企業・母親自身・中高年者などの多様な子育て支援活動のネットワーク化
15. 今後の初等中等教育改革の推進方策について(諮問)
(文部科学省・中央教育審講会 2003. 5)
小学校就学年齢の弾力化
16. 総合規制改革推進会議による文科省・厚労省ヒアリング(2003. 5)
(1)幼稚園の設置主体(文科省:学校法人等に限定することの妥当性を主張)(2)「保育に欠ける」要件(厚労省:幼稚園との関係により要件の妥当性を主張)(3)幼保一元化について(文科省:目的の相違をベースに否定的見解 地方における幼保一体型施設の紹介 厚労省:機能の相違をべースに否定的見解 相互連携で対応可能元化では多様なニーズに対応できない)
17. 預かり保育の実施状況(文部科学省 2003. 6)
・公立37%、私立85%
・実施日数5日以上 公立49%、私立91%(実施園中)
18. 国庫補助負担金等整理合理化方針(2003. 6)
重点項目の改革工程
(1)近年の社会構造・就業構造の著しい変化等を踏まえ、地域において児童を総合的に育み、児童の視点に立って新しい児童育成のための体制を整備する観点から、地域のニーズに応じ、就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする。
(2)児童の教育一保育に従事する者は、当分の間、それぞれの資格を認めることとしつつ、将来的に幼稚園教諭と保育士の双方の資格を併せ持つことを要することとし、当面、双方の資格が取得しやすいような方策を講ずる。
(3)(1)及び(2)の実現に向けて、関係省庁において平成18年度までに検討するとともに、関連する負担金の一般財源化など国と地方の負担の在り方について、地方公共団体の意見を踏まえ、上の検討と並行して検討を進め、必要な措置を講ずる。
19. 少子化社会対策基本法(2003. 7)
(1)急速な少子化が21世紀の我が国の国民生活に深刻かつ多大な影響を及ぼすものであることにかんがみ、長期的な視点に立って的確に対処するため、少子化社会において講ぜられる施策の基本理念を明らかにするとともに、国及び地方公共団体の責務、少子化に対処するために講ずべき施策の基本となる事項その他の事項を定め、もって国民が豊かで安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的。
(2)基本理念
・少子化に対処するための施策は、国民の意識の変化、生活様式の多様化等に十分留意しつつ、時代の社会を担う子どもを安心して生み育てることができる環境を整備することを旨として講ぜられなければならない。
・少子化に対処するための施策は、人口構造の変化、財政の状況、経済の成長、社会の高度化その他の状況に十分配意し、長期的な展望に立って講ぜられなければならない。
・社会、経済、教育、文化その他の施策は、社会の少子化の状況に配慮して、講ぜられなければならない。
20. 次世代育成支援対策推進法および児童福祉法改正(2003. 7)
(1)次世代育成支援対策推進法
・10年の時限立法
・国が指針を示し、地方自治体および事業者に行動計画の策定を求める
・次世代育成支援地域対策会議の設置
(2)児童福祉法改正
・子育て短期預かり事業、居宅子育て支援事業、子育て支援相談事業、子育て支援コーディネーター事業などの法定化(市町村を実施主体)
21. 次世代育成支援施策の在り方に関する研究会報告
(少子化対策推進室付研究会 2003. 8)
(1)要保育認定をセットにした直接契約方式の検討(バウチャー制度は不適当) (2)公設民営化、公営保育所の民営化による待機児対策の推進 (3)地域子育て支援の推進(地方交付税の活用 ソーシャルワーク機能の強化) (4)財源構造の見直し(国、都道府県、市町村が全体でプール等を例示 一般財源化に否定的) (5)新たな財源確保として年金制度とのリンク・共助視点の財源確保 (6)幼稚園等との連携強化
平成16年度厚生労働省予算概算要求
(1)子育て支援対策の拡充
地域子育て支援センター(2700→3000) ファミリーサポートセンター(355→385)
(2)多様な保育サービスの推進
延長保育(11500→13500) 休日保育(500→750) 一時保育(4500→5000)
保育所地域活動事業(9498→10048) 保育所の受け入れ枠(200.0万→204.5万)
(3)養護関係
専門里親(75→124) 小規模児童養護施設の整備 小規模分園型母子生活支援施設の整備
(4)新規少子化対策
子育て家庭地域支援事業(子育て中の親子が相談・交流できるつどいの広場や一時預かり事業) 育児支援家庭訪問事業(養育困難家庭への育児・家事援助や具体的な技術指導) 子育て支援総合推進モデル事業(モデル自治体指定)
平成15年度文部科学省予算
・子育て支援ネットワークの充実
・親と子の育ちの場推進事業(新規)
・新しい幼児教育の在り方に関する調査研究
・預かり保育推進事業+休業日預かり保育推進事業(新規)
・幼稚園の子育て支援事業
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