日本財団 図書館


提案要旨
食物アレルギー除去食などの特別食
田中眞智子(川崎市立土橋保育園園長・管理栄養士)
 
 保育所機能の多様化、育児支援の観点から、給食の場面において一人一人の子どもに応じた食事に関するニーズはますます高まっている。
 平成12年11月「保育所における給食の在り方に関する調査」(回収率54.6%、回答2,456保育所)結果では、食物アレルギー・アトピー性皮膚炎などによる除去食の実施54.8%、該当児童がいる場合は実施32.9%と9割近くの保育園で実施していた。また、体調不良児や障害児のための配慮食対応は59.2%の保育所で実施していた。
 保育所保育指針において、アトピー性皮膚炎対策では「安易な食事制限やみだりに除去食を提供せず、必ず嘱託医などの指示を受けるようにする」、病気の子どもの保育では「嘱託医などに相談して、適切な処置が行えるように配慮しておくことが望ましい」とされている。現場において適切な特別食とは、またその記録について考えてみたい。
 
(1)除去食の実施状況
 除去食の対応を現在実施している保育所は54.8%あり、対応人数は1〜5人が84.2%であった。6〜10人8.6%、11人以上1.6%あった。はたしてこれだけ多くの児が本当に除去食を必要としているのか、集団給食の場で多くの対応が可能なのか(職員数・施設・設備など)検討が必要である。
 
<表1> 除去食実施の判断
保護者の申し出により 48.3%
主治医より診断書を提出 44.5%
嘱託医の了解の上で 1.4%
主治医より診断書、嘱託医の了解 1.7%
 
 <表1>に示すように、除去食の実施にあたり保護者の申し出のみで実施している保育所が半数近くあるが、みだりに実施するのではなく医師の指示を必要としたい。
 除去食の調理は「すべて保育所で調理」54.2%、「保育所で困難な場合は家庭から持参」31.4%、「食べられる物は給食から、他は家庭から」6.8%であった。食事を楽しみにする子どもの心の問題も踏まえ他児との違いを最小限にする配慮や、誤食のないよう留意することが必要である。
 献立の作成者は栄養士の配置率が低いことから調理員が約半数を占めていた<表2>。成長の著しい乳幼児期であることから、継続的に提供する除去食献立は適切な栄養管理が必要である。献立から該当食品を除去するだけではなく、献立の変更・代替食品の対応・家庭との連携・健康状態の把握など、必要に応じ市町村福祉行政担当栄養士・地域の保健センター栄養士等に相談できる体制作りが望まれる。
 
<表2>除去食献立作成者
保育所栄養士 25.8%
市町村栄養士 11.1%
保育所調理員 47.5%
保育所看護職 0.3%
保育所保育士 1.8%
 
 除去食の実施期間は「定期的に主治医に受診、相談する」35.5%、「保護者の申し出があるまで続ける」55.9%であった。解除・変更についても実施の判断と同じく「保護者の申し出により」が48.3%と多かった。
 保育所で除去食を提供しているにもかかわらず、家庭で該当食品を摂取している例も聞かれ、主治医・嘱託医の診断のもと同じ対応ができることが基本である。また、除去食を実施すると、解除することへの不安から保護者がむやみに継続を希望する例もある。
 除去食の実施中は定期的に主治医若しくは嘱託医に受診し指示に従うこと、皮膚を清潔にするなど生活面も見直し、除去食を優先するのではなく、なるべく食べられる方向に視点をおき、子どもの心理的負担を軽減する最善策を検討したい。
 
(2)体調不良児の対応
 体調不良の子どもに対し59.2%の保育所で給食対応しており、その内容は<表3>に示す。対応は「保護者の申し出により」81.5%「子どもの様子により」81.2%であり「医師からの依頼」は49%と低かった。同一症状で配慮食の実施日、数は<表4>に示す。長期化にわたり食事対応が必要な場合は、子どもの健康状態や体力への不安も考えられるので医師の指示が必要といえる。
 
<表3>配慮食の内容
下痢の時、その回復期の配慮食 90.0%
風邪症状の時、その回復期の配慮食 52.4%
障害児向けの食事 31.3%
 
<表4>配慮食の日数
1〜2日 75.6%
3〜4日 11.4%
5日〜 1.7%
 
 病気回復期の食事については登所時に保護者からの申し出や家庭の様子から、子どもの受け入れに関わる保育士が食事対応の必要性を判断し、所長・看護職・栄養士・調理員との連携で実施されていた。また、保育中に体調不良となった場合も同様の流れで対応されていることが予測される。
 
(3)障害児の対応
 <表5>に示すように、障害児の対応は3割の保育所で実施しており、対応している人数は1〜5人が大半を占めた。障害の種類や程度を把握して、きめ細かな食事対応を行っていた。
 
<表5>障害児食の内容
ぺースト・ミキサー食 10.3%
とろみを付ける 29.0%
粗刻み食 39.5%
盛り付けの配慮 25.7%
食事量の加減 47.1%
味付けの配慮 23.7%
 
(4)チェックシートについて
 保育所栄養士・看護職の配置率が低く、嘱託医の来所回数も少ないことから、一人一人の子どもに即した適切な食事対応を行うためには、その手助けとなる問診表が必要であると考える。また、第三者評価基準において記録の整備が求められている。研究班ではチェックシートの作成を試みたので、各施設にて必要に応じ活用を提案したい。(除去食確認シート・受託時間内食事対応シート・回復期における食事対応シート等)
 子どもにとって最善策を行うために、職員間の意思統一は不可欠である。日頃から子どもの健康把握を適切に行い、保護者に対しても我が子をきちんと把握できるような援助を心がけていきたい。
 
除去食確認シート(1)
 
除去食確認シート(2)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION