第2分科会
保育所における看護職の役割
助言者 遠藤 幸子(全国保育園保健師看護師連絡会会長)
提案者 鈴木 久美(小平市・白梅保育園看護師)
司会者 羽室 俊子(元セゾン星の子保育園保健師)
保育所における看護職の役割
遠藤 幸子(全国保育園保健師看護師連絡会会長)
プロフィール
北里大学附属高等看護学院卒業
臨床看護を経て、1980年から保育園看護師として現在に至る。
全国保育園保健師看護師連絡会 会長
日本保育園保健協議会 常任理事
日本小児保健協会 評議員
[著書]
・「育児支援とフォローアップマニュアル」 (共著)金原出版
・「特別保育実践講座私たちの乳児保育」 (共著)日本保育協会
・「子育て相談の手引き」 (共著)日本保育協会
・「児童福祉施設における保健衛生マニュアル」 (共著)財団法人 日本児童福祉協会
・「最新保育保健の基礎知識」 (共著)日本小児医事出版社
1. 保育園保健への関心の高まり
「保育園(所)保健」という言葉が使われ始めてどれくらい経ったのだろう。「小児保健」「学校保健」はあっても、保育園に限定した保健は比較的新しい。それは、乳児保育に端を発している。さらに、近年の保育ニーズの高まりと、さまざまな保育の展開(低年齢化・長時間化・保育対象児童の拡大化など)により、これまで以上に健康に目が向けられている。
2. 保育園保健について
・「保育所保育指針」にみる保育の基本
保育所は、乳幼児が、生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごすところである。保育所における保育の基本は、家庭や地域社会と連携を図り、保護者の協力の下に家庭養育の補完を行い、子どもが健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境を用意し、自己を十分に発揮しながら活動できるようにすることにより、健全な心身の発達を図るところにある。
・看護職(保健師・看護師)が配置された経緯
・看護職数:平成13年度 全保育園の22.5%に配置があり。その数5,000人弱。
3. 保育園看護職の役割
配置条件によって異なる保健活動
・独立配置の場合
・保育士要員内配置の場合
・自治体配属による巡回の場合
4. 看護職における今後の課題
保護者や保育者に必要とされる看護職をめざして。
資料1. 「全国保育所の保健活動の実態調査」 − 看護職配置と保健活動 −
平成12年度 厚生科学研究(主任研究者 高野 陽)より
対象内訳:2472施設(看護職独立配置203・要員内配置206・配置なし1813・不明15)
看護職配置状況別(%)
|
全体 |
独立配置 |
要員内配置 |
配置なし |
1. 健康診断結果の家庭への連絡 |
全員に連絡 |
80.7 |
87.2 |
77.2 |
80.4 |
異常や病気のある子どものみ連絡 |
18.9 |
12.3 |
22.8 |
19.2 |
2. 家庭向け「保健便り」の定期的刊行 |
はい |
48.1 |
89.2 |
72.8 |
40.7 |
いいえ |
49.0 |
9.9 |
23.8 |
56.3 |
3. 入所時面接による健康状態の把握 |
全員 |
82.7 |
90.6 |
85.9 |
81.4 |
気になる子どものみ |
13.4 |
7.4 |
13.6 |
14.1 |
4. 予防接種未接種 |
嘱託医の指示で保護者に接種を勧める |
6.2 |
15.3 |
10.2 |
4.7 |
保育所の方針で保護者に接種を勧める |
8.8 |
22.2 |
16.5 |
6.5 |
保護者の意向に任せる |
78.9 |
58.1 |
69.9 |
82.2 |
接種を勧めない |
2.9 |
1.0 |
1.5 |
3.3 |
5. 罹病時の対応ある
5-1. 登園についての取り決めない |
ある |
64.2 |
77.3 |
70.4 |
62.0 |
ない |
28.7 |
17.7 |
21.8 |
30.7 |
5-2. その決め方(「ある」限定) |
市区町村で決められた通りにしている |
12.8 |
22.3 |
9.0 |
11.9 |
嘱託医と相談して決めた |
6.5 |
12.1 |
13.1 |
4.9 |
かかりつけ医の指示に従うように決めた |
66.8 |
53.5 |
64.1 |
69.0 |
保育所職員のみで決めた |
9.8 |
5.7 |
9.0 |
10.5 |
5-3. 対応方法(複数回答) |
保健室など別の部屋で、安静にする |
29.2 |
46.7 |
39.2 |
25.8 |
屋内遊びにとどめる |
87.0 |
92.4 |
87.3 |
86.3 |
活発な運動遊びをしない |
82.1 |
85.3 |
84.0 |
81.4 |
散歩に行かない |
75.5 |
83.7 |
81.8 |
73.8 |
プールに入れない |
84.2 |
90.2 |
86.7 |
83.2 |
5-4. かかりつけ医が処方した薬の与薬 |
医師の指示通りに与薬している |
68.6 |
53.7 |
75.7 |
69.4 |
医師の指示通りではないが、与薬している |
9.2 |
7.9 |
6.3 |
9.7 |
保育所での与薬はしない |
19.3 |
36.9 |
16.0 |
17.7 |
6. 保健センターや保健所への健診の結果の問い合わせ |
している |
31.5 |
30.5 |
23.8 |
32.4 |
していない |
62.8 |
64.5 |
70.4 |
61.7 |
6-1. 対象児は
(「問い合わせしている」限定) |
全園児について問い合わせ |
7.9 |
3.2 |
8.2 |
8.3 |
気になる子どものみ問い合わせ |
90.6 |
96.8 |
89.8 |
90.0 |
7. 園児の母子健康手帳の活用 |
全園児の保護者にみせてもらう |
18.6 |
54.2 |
29.6 |
13.3 |
必要な園児だけ |
24.1 |
27.1 |
32.0 |
22.9 |
承諾した園児だけ |
1.9 |
3.0 |
3.9 |
1.5 |
見せてもらっていない |
53.2 |
14.3 |
32.0 |
60.0 |
|
資料2. 「子どもの健康に関する保護者アンケート」
平成13年度 厚生科学研究(主任研究者 高野 陽)より
対象内訳:36施設(公私立各18か園、計2,504人)
看護職配置状況別(%)
質問事項 |
選択肢 |
全体 |
看護職有 |
看護職無 |
園に健康状態を文書等で連絡する |
はい |
60.7 |
67.9 |
53.3 |
いいえ |
38.9 |
31.7 |
46.2 |
園医の名前を知っていますか |
はい |
53.8 |
63.9 |
43.4 |
いいえ |
45.1 |
35.4 |
55.0 |
園医に会って話す機会がありますか |
はい |
12.7 |
18.9 |
6.4 |
いいえ |
66.6 |
62.2 |
71.1 |
わからない |
19.3 |
17.8 |
20.8 |
保育園に看護婦は必要か |
はい |
66.0 |
85.6 |
46.0 |
いいえ |
15.9 |
4.1 |
27.9 |
わからない |
17.0 |
9.5 |
24.7 |
保育園の保健活動について |
非常によい |
21.0 |
29.5 |
12.3 |
大体よい |
58.7 |
54.6 |
62.9 |
少し不安 |
10.6 |
8.3 |
13.0 |
かなり不安 |
1.2 |
1.0 |
1.5 |
わからない |
7.0 |
5.7 |
8.3 |
「保健便り」の内容は役に立つか |
はい |
73.8 |
83.9 |
63.6 |
いいえ |
1.5 |
1.2 |
1.9 |
わからない |
12.1 |
9.6 |
14.5 |
便りはない |
11.9 |
4.9 |
19.1 |
感染症が発生した時、保護者に連絡があるか |
文書で連絡あり |
33.0 |
38.6 |
27.3 |
口頭で連絡あり |
12.6 |
9.4 |
15.8 |
掲示される |
39.1 |
41.1 |
37.0 |
連絡はない |
5.4 |
2.9 |
8.0 |
わからない |
9.5 |
7.6 |
11.4 |
内服薬を投与してくれるか |
希望はすべて |
45.7 |
36.7 |
54.9 |
決められた病気は |
3.9 |
4.5 |
3.3 |
医師の指示書 |
12.6 |
17.1 |
8.0 |
口頭で医師の指示を伝えると |
10.0 |
8.2 |
11.8 |
投薬は一切しない |
19.3 |
23.3 |
15.2 |
わからない |
7.6 |
9.5 |
5.8 |
|
保育所における看護職の役割
鈴木 久美(小平市・白梅保育園看護師)
保育園に、看護職が配置されるようになり、「保育園の保健」という意識も随分定着してきたと思う。しかし、看護職のおかれている現状は、独立業務として保健業務に専念できるところと、0歳のクラスに位置づいていながらの活動と、各自治体、保育園によって様々です。また、最近は看護職の雇用形態も変化しつつあります。
私が、初めて勤務した保育園は、0歳児の定員を9名に増やしたことにより、初めて看護師を採用したという園児数120名の園でした。私にとっても職員にとっても0からのスタートで保健業務への取り組みの経過を報告します。そして、現在勤務している園は、開設当初から独立配置で看護職業務が確立している園です。この二つの園の経験から、どう保健活動を展開していくか。また今の時代にあった看護職の役割の検討をしていきたいと思います。
1 保健業務への展開
クラス内配置における活動
○1年目〜1歳児15名クラスへ。(保育士3人+1)
☆保育園の看護師とは?臨床との違い。
☆体調不良児、感染症への対応
☆与薬について。
☆全国保育園保健師看護師連絡会とのであい。
○2年目 0歳児9名(保育士3名+1)
☆0歳児保育とは?
☆疾患に対しての情報提供(O-157(腸管出血性大腸菌)SIDS)
☆熱性けいれん・アレルギー児(食物アレルギー)への対応
○3〜4年目 0歳児9名(保育士3名+1)
(クラス内で保健業務の時間を作れる。)
☆幼児クラスへのかかわり。
☆ケガ、発熱時などの報告が定着してくる。
☆新入園時面接、障害児面接への参加
○5〜6年目 0歳児9名(保育士3名+1)
(専属配置ではなくなる)
☆保健業務の時間がみとめられる
☆保健指導(虫歯予防、風邪予防の集会)
☆「園でのはみがき導入」にむけての検討
☆感染症マニュアル・SIDS対策、(チェックリストの作成)
2 独立配置における活動
☆保健計画
☆会議(リーダー会議、0歳離乳食会議、アレルギー児会議)
3 今後の課題
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