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4. 「三位一体の改革」による公立保育所運営費等の一般財源化について
 
〔公立保育所運営費の一般財源化〕
 
(1)保育所運営費については、今回の「三位一体の改革」の趣旨を踏まえ、公立保育所は地方自治体が自らその責任に基づいて設置していることにかんがみ、この運営費の一般財源化を図ることとしたもの。
 
(2)公立保育所運営費の一般財源化に当たっては、これに見合う適切な財源措置が講じられるよう地方財政当局に要請している。
 なお、児童福祉施設最低基準については、費用負担の問題とはかかわりなく、児童の健全育成を図るための保育環境を確保する観点から定められているものであることから、公立保育所運営費の一般財源化がなされた以降においても引き続き、基準の遵守義務を負うものである。
 
(3)民間保育所については、市町村が設置する公の施設とは異なり、運営費の国庫負担に関し、今後とも引き続き国が責任を持って行うこととしている。
 
(4)待機児童ゼロ作戦への影響については、
ア 公立保育所運営費分の国庫負担金の一般財源化相当額については、それに見合う適切な財源措置が講じられる予定であること
イ 保育所整備に対する支援は、公立・民間含め、今後とも引き続き行うこと
ウ 延長保育など多様な保育サービスの提供のための政策的な補助金については、公立・民間含め、今後とも引き続き補助を行うこととしているので、待機児童ゼロ作戦に支障が生じることはないと考えている。さらに、平成16年度においては、待機児童解消のための保育所緊急整備の経費の上積みや、特定保育事業の拡充を図ったところであり、引き続き、待機児童ゼロ作戦を強力に推進していく考えである。
 
(中略)
 
7. 保育対策等について
 
(1)待機児童ゼロ作戦の推進について
 都市部を中心に依然として保育所入所待機児童が多数いることから、平成13年7月6日の閣議決定「仕事と子育ての両立支援策の方針」等に基づき、「待機児童ゼロ作戦」を進めているところである。
 このため国においては、昨年10月に開催した「社会連帯による次世代育成支援に向けて・今後の保育のあり方に関する全国シンポジウム」において、待機児童の解消に向けた地方公共団体の取組事例を紹介するなど積極的な取組をお願いしているところであるが、以下の点に留意の上、待機児童の解消や多様な保育需要への対応について、更なるご配慮をお願いしたい。
 待機児童ゼロ作戦等を計画的に推進していくためには、国、地方公共団体双方における密接に連携した取り組みが必要であることから、昨年に引き続き、待機児童解消に向けた取組等についての調査を行うとともに、待機児童が多い市区町村に対してのヒアリング等を実施したいと考えているのでご協力をお願いしたい。
 また、平成15年7月16日に公布された改正児童福祉法により待機児童数が50人以上の市区町村等は保育計画(待機児童解消計画)策定することとされたところである。
 具体的には、平成16年4月1日における待機児童数が50人以上いる市区町村等は、平成17年度を始期とする保育計画を平成16年度中に策定することとなる。該当する自治体は「児童福祉法に基づく市町村保育計画等について」(平成15年8月22日雇児発第0822008号)を参考に計画の策定をお願いする。
ア 待機児童ゼロ作戦推進のための予算措置について
(ア)保育所運営費について
 平成16年度予算案においては、待機児童ゼロ作戦を推進するため、保育所受け入れ児童数を約5万人増加させることとしており、所要の財源措置を講じることとしている。
 
(イ)保育所の整備について
 新エンゼルプランに基づく多機能保育所等の整備及び待機児童ゼロ作戦による保育所の受入れ増は、平成16年度で終了するが、昨今の保育需要等に鑑み、平成17年度以降についても都市部を中心に一定程度の待機児童が存在することが想定されることから、引き続き多機能保育所等の整備に加え、保育所受け入れ児童数の増大を図ることとしている。
 このため、与党合意に基づく少子化対策として、待機児童の多い市町村を中心に保育所の緊急整備を行うため、平成16年度限りの経費として150億円を上乗せした299億円を計上している。
 ついては、待機児童解消に向けた保育所の創設、増築、分園の設置等を図るほか、新エンゼルプランに基づく多機能保育所の整備等、保育所整備について積極的な取組を図られたい。
 
(ウ)待機児童解消のための新たな取組等について
 平成16年度予算案においては、待機児童解消に向けた新たな取組として、
(1)特定保育事業の対象年齢を3歳未満から就学前まで拡充するとともに、
(2)駅前保育サービス提供施設等設置促進事業においては、「駅から近い場所」という要件を緩和し、市町村が保育サービスの供給に効果的と判断した場所に設置する場合においても補助対象することにした。
 また、送迎保育ステーション事業及び家庭的保育事業、認可化移行促進事業についても、必要な予算計上を行っているので、積極的な取組を図られたい。
 
イ 新エンゼルプラン推進のための予算措置について
 新エンゼルプラン関連経費についても、低年齢児受け入れの拡大を図るほか、延長保育、休日保育、一時保育等についても必要な予算計上を行っているところである。
 各地方公共団体においては、それぞれの地域における保育ニーズを的確に把握し、計画的なサービス提供体制の整備に努め、地域住民のニーズに応えることができるよう保育施策の充実に積極的に取り組まれたい。
 
(2)特別保育事業について
 保育所における特別保育事業については、待機児童ゼロ作戦や新エンゼルプラン等に基づきその推進を図ってきたところである。
 平成16年度予算案においては、引き続き国の役割として計画的に実施すべき事業について重点化を図り、必要な予算を計上しているところである。
 各都道府県・指定都市・中核市においては、管内市町村及び保育所が地域における多様な保育需要に対する積極的な取組を計ることができるよう、特段の配慮をお願いしたい。
 主な改正内容は次のとおりである。
 
ア [待機児童ゼロ作戦関係]
 
(ア)特定保育事業の拡充
 週に2、3日程度、又は午前か午後のみ必要に応じて柔軟に利用できる保育サービスを提供する特定保育事業について、対象年齢を3歳未満から就学前まで引き上げる。
 
  <15年度>   <16年度予算案>
・対象児童 3歳未満 就学前
・対象児童数 11,100人 28,800人
・補助単価(月額)      
3歳未満 週2日程度 18,500円 18,320円
週3日程度 26,300円 26,000円
3歳以上 週2日程度 - 9,400円
週3日程度 - 13,500円
 
(イ)駅前保育サービス提供施設等設置促進事業の拡充
 待機児童の解消などに積極的に活用できるよう、設置場所に関して要件を緩和する。
 
<15年度>   <16年度予算案>
駅等から近い場所 市町村が保育サービスの供給に効果的と判断した場所
 
イ [新エンゼルプラン関係]
 
 新エンゼルプランに基づく各事業については、着実に推進を図ることとしており、延長保育、一時保育などの一部事業については、取組状況を踏まえ、さらに目標値を超えた予算を計上している。
 また、地域子育て支援センターについては、計画どおり目標値分の予算を計上しているところである。
 
  <15年度>   <16年度予算案>
(ア)延長保育の推進 11,500か所 13,100か所
(イ)休日保育の推進 500か所 750か所
(ウ)地域子育て支援センターの整備 2,700か所 3,000か所
(オ)一時保育の推進 4,500か所 5,000か所
 
 一方で、限られた財源の中で、効果的に事業を実施していくために、乳児保育促進事業については、補助対象月数を6ヶ月から3ヶ月に重点化したところである。
 
(3)「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」について
 
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(平成15年6月27日閣議決定)において検討することとされた「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」については、待機児童解消を始め、地域の子育てニーズに幅広く応える観点から検討を行うこととしている。
 「総合施設」の検討スケジュールについては、平成16年度中に基本的な考えを取りまとめた上で、平成17年度中に試行事業を先行実施するなど、必要な法整備を行うことも含め様々な準備を行い、平成18年度から本格実施することとしている。
 これを踏まえ、現在、文部科学省との間で事務レベルによる協議を行うとともに、社会保障審議会児童部会における議論を開始したところである。
 
(4)保育所の規制緩和に係る取扱い等について
 
ア 保育所の規制緩和に係る取扱いについて
 保育所については、従前より、設置主体制限の撤廃、賃貸方式の導入、分園方式の導入、短時間勤務保育士の導入等の規制緩和を行い、また、平成13年の児童福祉法改正により、公有財産を活用した保育所の設置又は運営を促進する規定を設けるなど、地域の保育需要に柔軟に応じられる体制の整備に努めてきたところである。
 これらの措置を受けて、各地方公共団体において地域の保育需要に応じた保育サービスの提供に努めていただいているところであるが、待機児童が多く存在するにもかかわらず、株式たとえば会社を始めとする社会福祉法人以外の民間主体による保育所の設置認可を認めないなどの対応をとっている地方公共団体が見受けられる。
 各地方公共団体におかれては、これまでに実施してきた各般の規制緩和措置を踏まえ、地域の保育需要に的確に応えた保育サービスの提供が行われるよう、適切な対応をお願いしたい。
イ 構造改革特区第3次提案への対応について
 構造改革特区に関する地方公共団体等からの第3次提案(平成15年6月1日〜6月30日の間に募集)を受けて、(1)公立保育所における給食の外部搬入方式の容認、(2)幼稚園と保育所の保育室の共用化の特例を可能としたところである。
 これらについては、年度内に関係通知を発出し、本年4月1日より特区計画の認定申請の受付けを開始する予定であるので、御了知願いたい。
 
(5)保育士試験、保育士登録について
ア 保育士登録について
 保育士登録については、各都道府県の積極的な取組により円滑な実施が図られているところであるが、今春、全国で指定保育士養成施設を3万数千人が卒業することから、新年度に保育士として就業するに際して遅滞なく登録が完了するよう迅速な対応をお願いする。
 
イ 保育士試験について
 平成16年度の保育士試験は、指定試験機関制度を最大限に活用した統一試験が実施できるよう各都道府県と調整を図ってきたところであるが、試験内容の平準化及び試験合格者の均質化を図る統一試験の実現に向けて指定試験機関としての指定準備を進めている社団法人全国保育士養成協議会に対する指定について積極的な検討をお願いする。
 
(中略)
 
9. 児童福祉施設等の整備及び運営について
 
(1)児童福祉施設等の整備について
ア 施設整備費については、特別養護老人ホーム等の介護関連施設、待機児童解消のための保育所、在宅福祉サービスの基盤となる障害者施設等の整備を推進するため、平成16年度予算(案)として1,304億円が計上され、これら施設の整備の着実な推進を図ることとしている。
 
イ 国庫補助基準単価の改定
 国庫補助基準単価については、公共工事コスト縮減や建設単価の動向等を総合的に勘案し、公立文教施設並びにより▲3.5%の改定を行うこととし、平成16年度予算(案)から改定する。
 なお、平成15年5月に策定された「公共工事コスト構造改革プログラム」は、公共事業の全てのプロセスをコストの観点から見直すものとして、平成15年度から平成19年度までに15%のコスト縮減を目標とされているところであり、社会福祉施設整備費もこれに例外なく適用され、国及び各都道府県市における積極的な取組みが要請されているものであることから、各都道府県市はもちろんのこと、社会福祉法人等に対しても積極的な取組みについて指導願いたい。
 また、平成16年度事業分のうち、平成15年度以前からの継続事業については、当該事業開始年度の基準単価を適用することとするが、平成16年度以降に渡る継続事業については、該当年度の基準単価を適用することとするので了知願いたい。
 
ウ 社会福祉施設等設備整備費
 社会福祉施設等設備整備費については、施設整備費と設備整備費の国庫補助申請事務の一本化により施設設置者等の事務負担軽減等を図るため、初度的な設備整備費を施設整備費に統合することとしたところである。
 統合にあたっては、施設と一体的に整備され、かつ、施設に固定されるもの及び設備を整備することにより施設の設計に影響を及ぼすものについて、施設整備に統合することとしたところである。
 
エ 児童福祉施設等の整備について
(ア)地域小規模児童養護施設の整備について
 被虐待児等を家庭的な環境の中で養護する地域小規模児童養護施設の運営費については平成12年度に創設されたが、今後、その推進を図るため、平成16年度から施設整備費の対象とするので、積極的な整備の推進に努められたい。
 なお、この場合の単価は、本体施設と同様の補助基準単価を適用する予定である。
 
(イ)虐待を受けた児童の受け入れ態勢整備の推進について
 社会福祉法人が児童養護施設の改築等や情緒障害児短期治療施設、児童家庭支援センターの創設の際の費用を独立行政法人福祉医療機構から借り入れた場合の借入金の無利子及び融資率の特例措置については、虐待を受けた児童の受入体制を整備する観点から、引き続き平成16年度末まで実施することとなったので、管内市町村及び社会福祉法人への周知方をお願いしたい。
 
オ 平成16年度の整備方針等
 社会福祉施設等施設整備費は、ここ数年、補正予算と当初予算により各都道府県からの整備需要に応じた予算額が確保されてきたところであるが、平成15年度においては政策的な観点からの補正予算が編成されなかったことから、平成16年度は、当初予算のみでの対応となり、さらに、平成15年度からの継続事業が予算額の約5割強を占めていることから、新規事業の国庫補助の採択は極めて厳しい状況にある。
 平成16年度においては、限られた財源を効率的かつ有効に活用する見地から、施設整備の事業内容及び整備計画等を十分精査した上で、真に必要な施設の整備に厳選願いたい。
 なお、原則として、次の内容のものを優先的に整備する。
(ア)施設利用者に対するサービス提供にとどまらず、広く地域に開かれた在宅福祉の推進拠点としての機能を果たすもの。
(イ)土地の有効活用等を図るもの。
 特に、都市部における用地取得の困難性から施設の高層化を図るなど、高齢者等が利用する社会福祉施設を中心市街地等の利用しやすい場所に整備を図るものや、文教施設等の利用も含め各種施設の合築、併設を行うもの。
(ウ)過疎、山村、離島等において、適切な入所者処遇と効率的な施設運営が確保できるもの。
(エ)地すべり防止危険か所等危険区域に所在する施設の移転改築整備を行うもの。
(オ)木材の積極的活用を図るもの
 入所者等の精神的なゆとりと安らぎのある生活環境づくりや資源循環型社会の構築に寄与していくため、施設の木造化、内装等への木材の利用や木製品の利用等その積極的な活用を行うもの。
 また「社会福祉法人の認可について」(平成12年12月1日障第890号、社援第2618号、老発第794号、児発第908号)、「社会福祉法人の認可等の適正化並びに社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の徹底について」(平成13年7月23日雇児発第488号、社援発第1275号、老発第274号)等を踏まえ、協議対象施設の選定及び法人審査についても万全を期されたい。
 
カ 社会福祉施設整備の再点検
 平成9年3月31日に取りまとめた「施設整備事業等の再点検のための調査委員会報告書」で明らかにしたとおり、補助金交付対象施設の明確化、各都道府県市が行う公共工事に準じた契約手続、一括下請負の禁止などを補助金の交付の条件とすることによる建設工事の適正化等の措置を講じ周知徹底を図っているところである。
 各都道府県市におかれては、施設整備業務の更なる再点検、都道府県部課長会議等での指導の徹底や未然防止策の検討など再発防止対策に万全を期されたい。
(以下略)







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