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保育時評
音楽フェスティバルに参加
山内 五百子
 
 京都の有志の保育園によって、開催されるようになり今年で第二四回を迎える「京都幼児音楽フェスティバル」。第一回の開催にえらばれた会場は京都会館第一ホール。京都市内で最も収容人員の大きい会場である。幼児の発表会の会場としては、「えっー、京都会館?」まず最初に、皆が圧倒されそうな印象を受けた記憶がありました。三十か園のみんなの力が集まってスタート出来たのでしょう。
 本園も、第一回より参加の回を重ねています。最初の参加曲は忘れもしません「森のくまさん」、「ドレミのうた」でした。楽器も園で使用していた小さな楽器などでした。
 今では、回を重ねるごとに楽器も少しずつ増えて、グレードアップした楽器を子どもたちが演奏できるようになってきました。参加各園ともに音楽に対する指導のコンセプトを持って指導され、選曲、編曲、楽器編成などと同時に子どものレベルにあわせて創り上げてこられます。
 本園では、人格形成の基礎が育つ幼児期に音楽を通じて感性を豊かに育て、自分自身で楽器を演奏できることの喜び、かつ、みんなの一つ一つの音が重なり曲を奏でる“合奏”の素晴らしさ感じ取ってほしいと願って、園全体で取り組んでいます。合奏は、何よりも子どもたちが楽器を演奏できることで大きな自信を持つことができる、すばらしい共同活動だと確信します。
 わが園では、子どもたちが練習する期間、耳で聞きしっかりと心にとどめる曲なので、クラシックの中から親しみのある曲を選曲します。今年は、ビゼー作曲のカルメンより「ハバネラ」「カルメン」です。今も保育室から演奏するメロディーが聞こえてきます。楽譜を見ることなく、歌うように暗譜をしている自信に満ちた輝く顔の子ども達です。
 子どもたちの合奏の取り組みについては、賛否両論がありますが、子どもたちが自分に自信を持つことが子どもたちの生きていく大きな力になると信じて、今日も子どもたちと保育者みんな一緒にフェスティバル当日を目指している端山保育園の二月です。
(京都市・端山保育園長 山内五百子)
 
―会議:厚労省―
 全国厚生労働関係部局長会議が、平成十六年一月二〇日・二十一日の両日にわたり、厚生労働省講堂で開催された。次に、少子化、児童福祉に関する部分を抜粋して紹介する。
 会議の冒頭、大塚義治厚生労働事務次官が次のとおり挨拶を行った。
 「我が国においては、急速な少子高齢化の進行、経済の低迷と厳しい財政状況、ライフスタイルの多様化など、二十世紀の社会保障制度が前提としてきた諸条件は大きく変わりつつあり、このような環境の変化に対応し、将来にわたって持続可能で安定的な社会保障制度を構築するため、不断の制度改革を行っていく必要がある」「また、急速な少子化の流れを変えるため、『次世代育成支援対策推進法』等が成立したところであり、平成十六年度においては、全ての市町村・都道府県や大企業等において行動計画の策定が進められることになる。市町村及び都道府県の行動計画が地域住民の声を適切に反映した実行性のあるものとなり、特に地域における子育て支援事業の充実・強化が図られるものとなるよう、ご尽力願いたい。さらに、本年は次世代育成支援対策関連三法案として、児童手当制度、児童福祉法及び育児休業制度等の見直しについて、所要の法案を今国会に提出するなど更なる対策を推進していく」
 「国と地方に関するいわゆる『三位一体の改革』については、平成十八年度までに国庫補助負担金四兆円程度を目途に廃止。縮減等を行うとの方針が決定されている。このうち、平成十六年度においては、国全体で一兆円程度の廃止。縮減等を図ることとされ、厚生労働省関係の国庫補助負担金については、地方公共団体の意向も踏まえながら、公立保育所の運営費負担金の一般財源化等の見直しを行うこととした。これらに対しては、所得譲与税等必要な財源措置が講じられると聞いているが、各都道府県におかれても、これらの施策が後退することのないよう、所要の予算の確保等にご尽力お願いしたい」
 伍藤忠春雇用均等・児童家庭局長は以下のとおり説明を行った。
 「昨年は次世代育成支援推進法が成立し、十六年度中に国、地方、各企業に行動計画を策定していただく。厚生労働省自身も事業体であるので、計画の策定に向けて検討している。全国の主要な事業体の全てが次世代育成支援のための計画を作っていただくという壮大なものだ。特に私どもが力を入れなければならないのは、企業の計画づくりである。法律では従業員三〇一人以上の企業に計画の策定を義務づけており、それ以下の企業では努力義務となっている。ご理解をいただくことは大変なことであり、初めての試みなので課題は多いが、全力をあげて取組むこととしている」
 「具体的には地方の労働局を通じて直轄で行うこととしており、企業に対する啓発活動に全力をあげる。自治体としても地方全体の計画という観点から、都道府県の行動計画を作っていただく必要がある。このことを認識していただき、企業の計画づくりに側面からのご支援をいただきたい。特に企業の計画づくりでは、少子化対策の当面の取り組みということで、昨年閣議決定した地域における子育て支援や仕事と子育ての両立支援、社会保障における次世代育成支援など五つの柱を掲げている。これらのうち、行政が関与できる部分については、児童福祉法の改正など制度の整備や予算化等によりかなり進めている。しかし、五つの柱のうち難しいのは、男性を含めた働き方の見直しであり、企業における計画づくりだ。これは仕事優先の職場の構造改革で、一朝一夕にはいかない。日本の社会に根強く横たわっている基本的なことにメスを入れることは難しいが、幅広い視野を持って取組んでいただきたい。今国会に児童手当法、児童福祉法、育児・介護休業法の改正案を提出するための作業を進めている。昨年と今年は、このような制度の見直しを行う基盤整備の期間と位置づけており、これらの法案を成立させていただきたい」
 「十六年度予算案においては、少子化対策について、十五年度の税制改正に関連して特に少子化対策ということで通常の予算とは別枠で国・地方を通じて二五〇〇億円を投入する。具体的には二〇〇〇億円を児童手当の充実に、その他の少子化対策として、地域における子育て支援事業や児童虐待防止対策の充実、不妊治療の経済的支援などに五〇〇億円を投入する。児童・子育ての予算は、社会保障の他の分野に比べて貧弱であるとの指摘があり、全体としては改善すべき点はいろいろあるが、今回の予算では、このような特別の予算を計上して、かなりの底上げができたのではないか。これらの予算が実行あるものとなるようご配慮願いたい。財政が厳しいなかでの思い切った措置であり、執行面でも可能な限り工夫をしなくてはならない」
 
伍藤忠春雇用均等・
児童家庭局長
 
 「三位一体改革については、補助金の国から地方への移管が課題となった。結論として、最も大きな財源の振替では、公立保育所運営費の一般財源化が取り上げられた。これについては、法案を提出して行うことになるが、財源措置については総務省から所得贈与税に関する法案が出されることになっている。自治体間の財源のばらつきについては、地方交付税で措置されることになっている。市町村、特に町村では、これらを不安視している向きもあると聞いている。今回の三位一体改革は、従来から進めてきた一般財源化と異なって、財源手当をすることを前提として取組んでおり、その面では、事態の推移を見守っていただきたい。また、財源論だけでは、国民や利用者からはわかりにくいし、理解もされていない。その前提で、公立保育所運営費の一般財源化は地方の強い要望であり、このような機会を利用して、公立保育所のサービスの向上につなげていただきたい。従来から民間保育所の方が、延長保育などで優れているといわれており、公立保育所をどのような方向にもっていくかが課題である。待機児童ゼロ作戦も進めているが、これを決定した時には、できるだけ公設民営化を進めていくことも謳われている。公立保育所がどうあるべきかについては、一般財源化になったことを生かして、サービスの向上の視点を持っていただきたい」
 
資料:社会・援護局
 
(平成16年度の社会福祉施設について―改善事項―)
 
社会福祉施設等設備整備費の施設整備費への統合
 社会福祉施設等設備整備費については、施設整備費と設備整備費の国庫補助申請事務の一本化により施設設置者等の事務負担軽減等を図るため、設備整備費の一部を施設整備費に統合することとした。
 
 
 統合にあたっては、初度的な設備であって、施設と一体的に整備され、かつ、施設に固定されるもの、及び設備を整備することにより施設の設計に影響を及ぼすものを施設整備に統合し、その他施設整備に統合できないものについては措置費の弾力的運用による対応を検討している。
 また、初度的な設備以外の施設整備へ統合できない業務省力化設備等一部の設備については、従来どおり設備整備費での対応となる。
 なお、設備整備費については、将来的には、措置費の弾力的運用により廃止の方向で検討する予定であるので了知願いたい。
 
(以下、雇用均等・児童家庭局関連資料)
全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)資料(抜粋)
1. 次世代育成支援対策について
 
(1)次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定等について
ア 平成16年度末までに、すべての都道府県、市町村及び大企業等は、「行動計画策定指針」に即して次世代育成支援に関する行動計画を策定。実効性のある具体的かつ総合的な行動計画とすることが重要。
イ 市町村は、本年8月に保育・子育て支援事業に関する特定14事業の数値目標について都道府県に報告。都道府県は、市町村の数値を取りまとめ、本年9月に国に報告。
ウ 現行の新エンゼルプランが平成16年度末に終了することを受け、これらの数値目標を踏まえ、本年末には17年度からの新たなプランを策定。
 
(2)平成15年度税制改正に関連した少子化対策(2,500億円)について
 平成15年11月19日の与党合意に基づき、国・地方を通じて総額2,500億円の少子化対策の施策を推進。
ア 児童手当の充実
 児童手当の支給対象年齢を平成16年4月より、就学前から小学校第3学年修了までに引上げ。
イ その他の少子化対策
(ア)地域における子育て支援事業の充実
 つどいの広場事業の拡充・改善、病後児保育の拡充、育児支援家庭訪問事業及び子育て支援総合推進モデル事業の創設 など
(イ)児童虐待防止対策の充実
 児童養護施設の小規模化の推進、里親支援の充実 など
(ウ)不妊治療の経済的支援
 医療保険が適用されず、高額の医療費がかかる配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成
(エ)新たな小児慢性特定疾患対策の確立
 重症者に重点化を図るとともに、対象疾患群を10疾患群から11疾患群に拡充、入通院にかかわらず対象など
(オ)待機児童解消のための保育所の緊急整備(16年度限り)など
 
(3)少子化社会対策大綱の策定について
 本年5月を目途に、少子化社会対策基本法に基づき、政府として少子化に対処するための施策の大綱を改めて策定。
 
2. 次世代育成支援対策関連三法案について
 
(1)これまでの取組
ア 平成15年3月に、政府として「次世代育成支援に関する当面の取組方針」を決定し、平成15年及び16年の2年間を次世代育成支援対策の「基盤整備期間」と位置づけた。
イ 平成15年には、次世代育成支援対策推進法等が成立し、次世代育成支援対策を総合的に推進する体制が整備された。
 
(2)今後の予定
 更なる次世代育成支援対策を推進するため、平成16年通常国会に次世代育成支援対策関連三法案を提出する予定。
 
ア 児童手当法の改正
(児童手当の支給対象年齢を小学校第3学年修了まで延長)
イ 児童福祉法の改正
(児童虐待防止対策等の充実、新たな小児慢性特定疾患対策の確立)
ウ 育児・介護休業法等の改正
(育児休業期間の延長、看護休暇の権利化等、より利用しやすい仕組みとするための育児休業制度等の見直し)
 
3. 児童虐待防止対策について
 
(1)全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談件数は、近年急増していたが、平成14年度は前年度に比べ若干の増加にとどまっている。これは市町村における虐待防止ネットワークなど地域における虐待防止に向けた取組の定着なども因と考えられるが、直ちに収束傾向に入ったことを意味するものではない。
 現状は依然として、児童相談所の職権による一時保護の増加など困難なケースの増加、また、児童養護施設等に入所する児童に占める虐待を受けた児童の入所の割合も増加するなど、本問題は依然として早急に対応すべき社会的課題。
 
(2)今後の児童虐待防止対策のあり方の基本的な考え方
ア 予防から自立までの切れ目ない支援
イ 待ちの支援から支援を要する家庭への積極的アプローチに転換
ウ 家族再統合・家族養育機能の再生を目指し、親も含めた家族を支援
エ 虐待防止ネットワークなど市町村の取り組みを強化
 
(3)平成15年11月17日に取りまとめられた社会保障審議会児童部会報告書を踏まえ、議員立法による見直しが検討されている児童虐待の防止等に関する法律の改正にあわせ、児童虐待などの児童とその家庭をめぐる諸問題に適切に対応できるよう、児童相談体制の強化および児童福祉施設・里親のあり方等の見直しを行う「児童福祉法の一部を改正する法案案(仮称)」を、次期通常国会に提出する予定。







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