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―両立支援と一時保育―
市区町村立勤労青少年ホームにおける両立支援策の推進と一時保育について(2)
厚生労働省官房国際課長補佐(前職業能力開発局育成支援課長補佐)西川 隆久
 
1. はじめに
2. 勤労青少年ホームとは
3. 勤労青少年ホームを巡る現況
4. 「勤労青少年ホーム事業の推進のための託児場所の確保について」の発出(以上12月号)
5. 最近の国の施策(以下本号)
補足、求職活動について
5. 最近の国の施策
 2.(1)及び(2)のような状況に関連して、次のような立法、予算措置が行われているところである。参考のため紹介する。
(1)「母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針」(平成15年厚労省告示第102号)において、母子家庭の母及び寡婦の能力開発に資するため就業支援事業の拡充、拡充に当たっての公有施設の有効活用、受講者のための一時保育の実施に関して国が自治体を支援すること、がそれぞれ規定された。
 
●母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本的な方針
第2
2.母子家庭等及び寡婦の生活の安定と向上のために講ずべき具体的な措置に関する事項
(2)都道府県及び市町村が講ずべき措置に対する支援
(2)就業支援策
ア 母子家庭等就業・自立支援センター事業の実施・連携(実施主体:都道府県、対象:母子家庭及び寡婦)
(a)就業に関する専門的な知識や相談経験のある者による職業相談から就業支援講習会の実施、就業情報の提供、母子自立支援員をはじめとする就業支援関係者の研修等、一貫した就業支援サービスを提供したり、母子生活支援施設と連携を図りながら、母子家庭及び寡婦の地域生活の支援や養育費の取決めを促進するための専門相談を行う母子家庭等就業・自立支援センター事業を実施
(b)就業支援講習会の拡充
 母子家庭の母及び寡婦の能力開発に資するため、就業支援講習会を大幅に拡充して実施、具体的には、
・就職に結びつく確率の高い内容の講習を重点的に実施
・求職活動や起業のノウハウについて講習を実施
受講者のために託児サービスを提供
・講習会の実施に当たり、公共職業能力開発施設、女性就業援助センター等既存の施設を有効に活用
(d)都道府県は、母子家庭等就業・自立支援センター事業を実施するに当たっては、都内の市町村と十分な連携を図りながら実施
 
(2)「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法」(平成15年第126号)により、母子家庭の母の就業に関する状況を踏まえ、就業支援に関して特別の配慮を行うべきことが法定化された。
 
●母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法
(母子家庭の母の就業の支援に関する施策の充実)
第二条 厚生労働大臣は、この法律の施行の日から平成20年3月31日までの期間に係る母子及び寡婦福祉法第11条第1項に規定する基本方針については、母子家庭の母の就業に関する状況をふまえ、その就業の支援に特別の配慮がなされたものとしなければならない。
3 母子及び寡婦福祉法第11条第2項第3号に規定する母子家庭及び寡婦自立促進計画を策定る同号に規定する都道府県等は、対象期間に係る自立促進計画については、基本方針に即し、母子家庭の母の就業の支援に特別の配慮がなされたものとしなければならない。
 
(3)児童福祉法平成13年改正法第56条の7により保育サービスの提供に関して、公有財産の積極活用が法定化された。
 
●児童福祉法
第56条の7 保育の実施への需要が増大している市町村は、公有財産の貸付けその他の必要な措置を積極的に講ずることにより、社会福祉法人その他の多様な事業者の能力を活用した保育所の設置又は運営を促進し、保育の実施に係る供給を効率的かつ計画的に増大させるものとする。
2 国及び都道府県は、前項の市町村の措置に関し、必要な支援を行うものとする。
 
(4)平成15年度より、特別保育事業である一時保育促進事業の実施について、保育所のみならず、公共的施設における実施も可能であることとされた。なお、既存施設については、乳幼児の保育を想定した構造、環境を有していないケースがあることから、必要に応じて改修等を行うことになるであろう。
 
●「特別保育事業の実施について」の取扱いについて(平成12年3月児保第9号保育課長通知)
2 一時保育促進事業について
(3)事業の実施
(1)職員については、実施要綱で保育士を配置することとされているが、施設の実態に応じ、適宜、事業担当職員以外の職員の協力を得て実施することは差し支えないこと。
 また、毎日の利用がないような一時保育実施保育所にあっては、事業担当保育士が配置されていない場合でも、児童福祉施設最低基準第33条第2項及びその他の補助金等の配置基準を超えた保育士が配置されていれば事業の実施について差し支えないこと
(2)実施要綱の3の(2)の(2)において、「事業を実施するための専用の部屋を確保して実施することを原則」とされているが、確保できない場合には、保育所の空き部屋、空きスペース又は児童館等の公共的施設の空き部屋等を利用して実施しても差し支えないこと。
 なお、・・・職員については、保育士を2名以上配置すること。
 
(注)参−厚生労働委員会 平成14年11月19日
○藤井基之君 今回、改正法(注. 母子寡婦福祉法改正法)の28条で、母子家庭の自立支援のための環境整備の一環としまして、母子家庭の児童の保健所への入所に関する記述がございます。母子家庭の児童の保健所への入所に関しては特別の配慮をすることになっていると、こういうことでございますが、これは具体的にはどのような方策をお考えなのでしょうか。
 また、保育所への入所選考に際しての特別の配慮には、母子家庭の母が就労・求職活動、職業訓練等を行っている場合については、これらの活動を行っている他の家庭の児童と比較して優先的に取り扱うというようなことを想定しているわけでありますけれども、その具体的な方法、基準についてはそれぞれの市町村がその実態に応じて適切に対応してもらいたいと、こういうようなことでございます。
○副大臣(鴨下一郎君) 今回の改正では、安心して子育てができるサービスと生活の場の整備、こういうような大きな柱がございますけれども、母子家庭の皆さんが安心して子育てして、そしてさらに働くというようなことができるようにできるだけ児童の保育所への入所を適切に行っていきたいと、こういうようなことでありまして、特に今回の法案においては、保育所への入所選考に際して、市町村は母子家庭等の福祉が増進されるように特別の配慮が必要であると、こういうようなことを規定したところであります。
 
参−厚生労働委員会−7号 平成14年11月21日
○大脇雅子君 市町村は保育所の入所に関して母子家庭等に対する特別な配慮をしなければならないことの具体的内容として、求職中の母子家庭の母親も保育所に入所させることができるということでございました。しかし、現在求職中の場合で子供を保育所に入所できる期間は2か月というふうに言われておりまして、それを過ぎると退所しなければならないということで、場合によっては不本意な条件でも就職せざるを得ないという事実も指摘されております。
 求職中の子供の入所期間についてどのような基準を設定しておられるのか、具体的な運用について弾力的な運用が図られているのかどうかについてお尋ねします。
 
○政府参考人(岩田喜美枝君) 保護者が求職中の場合であってもその子供を保育所に入所させることができるのは、前回御答弁申し上げたとおりなんですけれども、厚生労働省としては、こういった求職中の子供の保育所への入所期間について例えば2か月といったような期間を、制限を設けているというようなことは全くございません。
 委員からこういう御質問があるということで、早速幾つかの自治体の状況を聞いてみましたけれども、自治体の中には入所期間の目安として例えば2か月とか3か月という一定の期間を設けているところがあるようですけれども、事情を聞いてみました幾つかの自治体はすべて言っておりましたけれども、これは入所期間を制限するという趣旨ではなくて、求職活動が続いているという状況を把握するために定期的に状況をお伺いしているという形で運用しているというふうに言っておりました。
 
補足. 求職活動について
 求職活動については、市区町村の保育入所事務の現場では、その実態把握に苦労しているようであり、国会でもやりとりが行われているところである。
 一方、雇用保険手当支給事務の現場でも同様の問題を抱えており、平成14年9月から、手当申請に当たって求職活動の実態をより具体的に記載するよう申請様式の変更がなされた。
 保育所入所にせよ、雇用保険の手当にせよ、求職に係る意思を実際に有し、求職活動を実際に行っている者への給付である点で共通している。
 一方雇用保険手当支給事務は、国の機関であるハローワーク(職業安定所)において行われているが、保育所入所事務は市町村で行われている。求職者の中には、専業主婦など雇用保険手当の支給対象者でない者も多い。夫婦の場合、雇用保険手当支給に当っては、別々に要件を満たしているかどうかを判断するが、保育所入所においては、夫婦その他同居の親族を一体として要件を満たしているかどうか判断する、といった違いがある。
 しかし、雇用保険手当支給事務の運用については、保育所入所事務においても参考になると思われる。
 
(注)厚労省職業安定局記者発表資料(抄)
平成14年9月20日から
失業認定が変わります! 〜基本手当を受給される方・事業主の皆様へ〜
 
 求職活動の内容を具体的に記載いただくことになりました。
 
<雇用保険の基本手当とは>
 雇用保険の一般被保険者の方が離職された場合、ハローワークに求職の申込みをしていただき、受給資格が決定された方については、失業の認定を行った上で、雇用保険の基本手当が支給されます。
 この給付は、労働者の方々の失業中の生活の安定を図り、求職活動に専念していただき、1日も早く再就職していただくために支給されるものです。
 
 「失業」とは、離職した方が、就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態にあることをいいます。
 基本手当は、この「失業」している人に対し支給されるものです。
 基本手当の支給を受けるためには、原則として4週間に1回ハローワークに来所して、失業の認定を受けなければなりません。
 改正された失業認定申告書により、求職活動の状況、就職、内職の状況などについて、正しく申告し、失業の認定を受けてください。
 
〔改正のポイント〕
☆ 失業認定において、雇用保険制度の趣旨に基づき、求職活動を行っている状況を具体的に確認するために必要な改正を行いました。
 
☆ 基本手当の支給を受けるためには、失業の認定を受けようとする期間中に、原則として2回以上の求職活動(就職しようとする意思を具体的かつ客観的に確認できる積極的な活動をいいます。)その実績が必要となります。
 また、自己都合などで退職された場合、離職理由によっては、待期期間満了後3カ月間は基本手当が支給されませんが、この期間とその直後の認定対象期間をあわせた期間については、原則として2回以上の求職活動の実績が必要となります。
 ここでいう求職活動の範囲は、次のとおりであり、単なる新聞、インターネットなどでの求人情報の閲覧、単なる知人への紹介依頼だけでは、この求職活動の範囲には含まれません。
(1)求人への応募
(2)ハローワークが行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、各種講習・セミナーの受講など
(3)許可・届出のある民間機関が行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、求職活動方法等を指導するセミナー等の受講など
(4)公的機関等が実施する職業相談等を受けたこと、各種講習・セミナー、個別相談ができる職業説明会等の受講、参加など
(5)再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験の受験
 
<注意>
 本来は、基本手当を受けられないにもかかわらず、虚偽の申告などにより基本手当の支給を受けようとした場合には、不正受給としてそれ以後の支給がすべて停止され、厳しい処分が行われます(次の給付も同様です。)。
 次のようなことは、絶対に行わないようにしてください。
 (1)求職活動の実績がないにもかかわらず、失業認定申告書にその実績について虚偽の申告をする
 (2)就職や就労(パート、アルバイト、日雇、試用期間なども含みます。)をし、また、自営を開始した場合に、そのことを失業認定申告書で申告しない。
 (3)内職や手伝いをした事実や収入をかくしたり、偽った申告をする。
 
(注)改正前の失業認定申告書(抄)
 
失業認定申告書
 
改正後の失業認定申告書(抄)
 
失業認定申告書







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