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―人口問題研究―
南ヨーロッパ諸国の出生率の動向と近接要因の変化(その2)
西岡 八郎
(国立社会保障・人口問題研究所)
 
 前号では、南ヨーロッパ諸国の出生率の動向および出生率水準に影響を与える近接要因について報告した。今号はそのつづきを報告する。
 
3)平均出産年齢(第1子平均出産年齢)とコーホート平均出産年齢
 平均出産年齢は、1960年から1979年、1980年代前半にかけて低下、若年齢化したが、その後は上昇し、晩産化の一途をたどっている(図9)。第1子出産年齢では、各国とも平均出産年齢に先んじて、それぞれ2、3年程度早く1970年代後半より上昇に転じている(図10)。各国の1999年の数値(かっこ内は第1子平均出産年齢)は、ギリシャ28.9歳(27.3歳)、イタリア30.4歳(28.7歳、いずれも1997年)、ポルトガル28.6歳(26.4歳)、スペイン30.7歳(29.0歳)となっており、ギリシャ、ポルトガルで比較的低く、イタリア、スペインでは極めて晩産化が進行している。スペインの場合は、日本の29.6歳(28.0歳、1999年)よりも、さらに1歳近くも高齢となっている。
 
図9 女子平均出産年齢の推移
出所)Council of Europe, 2002. 日本は、厚生労働省統計情報部『人口動態統計』により国立社会保障・人口問題研究所が年齢別出生率を基に算出したものであり出生数を用いた平均年齢とは異なる。1970年以前は沖縄県を含まない。
 
図10 女子第1子平均出産年齢の推移
出所)Council of Europe, 2002. 日本は、厚生労働省統計情報部『人口動態統計』により国立社会保障・人口問題研究所が年齢別出生率を基に算出したものであり出生数を用いた平均年齢とは異なる。1970年以前は沖縄県を含まない。
 
 コーホートの出産年齢でこの動きをみると、イタリアでは1948年出生コーホートで最も低く(若く)、ほかの3国は1954〜58年頃に生まれた世代で最も低年齢となっている(図11)。最新年次のコーホートの平均出産年齢はギリシャ27.1歳(1966年出生)、ポルトガル27.6歳(1966年出生)、イタリア28.4歳(1962年出生)、スペイン28.8歳(1964年出生)である。
 南欧諸国では結婚・出産の若年化から上昇へ転じるタイミングの変化は、1970年代半ばから始まった期間合計出生率の低下の途中かあるいは後で起きていることは注目される。すなわち、平均初婚年齢は1970年代後半から1980年代前半までの早婚化、それ以降の晩婚化という変化を経ている。
 
図11 コーホート別平均出産年齢の推移
出所)Council of Europe, 2002.
 
 結婚・出産のタイミングを示す指標は、多くが北西欧諸国の後を追う形で推移しているが、イタリア、スペインのいくつかの指標は北西欧諸国の数値を超え、出生率についてはこれら諸国に比して一段と低下した。
 また、今までみてきた結婚年齢や出産年齢が、家族形成ステージとの関係でどのように変化しているかをみたのが図12である。そのなかで、スペインの女性のライフコースをみたのが表1である。この表は(1)結婚年齢の上昇、すなわち晩婚化、(2)初産年齢や、(3)平均出産年齢の高年齢化など個別の結婚・出産行動から、(4)結婚から第1子の出生までの期間、(5)第1子出産年齢から全出産の平均年齢の差、(6)結婚年齢から全出産の平均年齢の差を算出し、出産間隔などから出産タイミングの変化を示してある。
 
図12 初婚年齢および出産年齢の推移
 
イタリア
 
スペイン
出所)Council of Europe, 2002.







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