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保育界(平成15年12月号)

 事業名 保育活動の推進
 団体名 日本保育協会 注目度注目度5


―人口問題研究―
南ヨーロッパ諸国の出生率の動向と近接要因の変化(その1)
西岡 八郎
(国立社会保障・人口問題研究所)
 
1. はじめに
 世界で出生率が最も低い国々のなかには、イタリア、スペイン、ギリシャ、ポルトガルなどの南欧諸国が含まれている。これらの地中海沿岸諸国では合計特殊出生率(以下、「出生率」とする)が1.10台にまで低下し超低出生力状態にある。
 南ヨーロッパの国々が、他の欧米先進諸国に比較して出生率の低下が遅れて始まっていること、女性の社会進出が比較的新しいこと、伝統的な家族観をもっていることなど日本との共通点も多い。今後日本の出生率が南ヨーロッパ並に1.0に追る一段と低い超低出生率に向かうのかどうかといった、日本の将来の出生率を見通すうえでも、超低出生率をもたらした人口学的、社会経済的、あるいは政策的要因を探ることには意義がある。本稿では、南ヨーロッパ諸国の出生率の動向と低出生力の背景にある近接要因について、スペイン、イタリアの例を中心に報告する。
 
2. 出生率の動向
(1)出生率水準の推移
 1970年代半ば以降の南ヨーロッパにおける出生率の低下は、人口置換水準(replacement level)を一気に下回る勢いで非常に急激かつ短期間に生起した。これは、他の北西欧諸国が長い期間かけて出生力転換をなし得た状況とは異なる。
 南欧諸国の出生率の減退傾向を1960年以降の推移で示したのが図1である。人口置換水準の2.1を切るのは、イタリアが最も早く1977年(1.98)、スペイン1981年(2.04)、ギリシャ1981年(2.09)、ポルトガル1982年(2.08)の順である。
 国別にみると、スペインでは1960年代中頃まで出生率は2.5〜3.0の水準であったが、1960年代中頃(1964年)の3.01を戦後出生率のピークとしてその後なだらかな低下が始まった。それでも1975、76年には2.79程度であったが、70年代後半から出生率の低下は一気に加速し1980年には2.20に達した。以降も一貫して減少し1990年には1.36まで低下、1990年代も徐々に低下し1998年には1.16にまで落ち込み、これを底にして1999年には1.20、2000年1.24、2001年1.26とやや持ち直しているが、日本よりもさらに低い水準にある。
 
図1 合計特殊出生率の推移
出所)Council of Europe,2002.ギリシャとイタリアの2001年は、Eurostat,Statistics in focus,Theme3-17/2002.日本は、国立社会保障・人口問題研究所の算出による。
 
 イタリアでは、第二次世界大戦直後に出生率は低下したが、1950年代には出生率は2.3程度で安定していた。これが1960年代初めのベビーブーム(1964〜65年)には2.7近くに上昇する。この時期をピークに以後減少し1970年代初めには2.3〜2.4程度、1977年に人口置換水準を切ると1980年には1.64、1985年には1.42、その後1992年まで1.3〜1.4と低位で安定した状況が10年近く続いた。その後1996年の1.19まで再び低下し、1997年以降わずかに反転上昇し、2001年には1.24と回復基調を示している。
 ポルトガルは、南欧4カ国の中では最も出生率が高く、1962年に3.23あり1971年までは3.0台を維持していた。その後の10年で置換水準近くまで低下(1981年2.13)し、それ以降1995年の1.40までほぼ一貫して低下、1996年から反転し2000年には1.55まで回復したが、2001年には1.46へと再び低下している。
 ギリシャはポルトガルとは逆に南欧4カ国のなかではもともと出生率は低めで、1967年の2.43がピークとなっている。1967年から1982年(2.02)までのほぼ15年間は2.0台の出生率を維持していた。また、ほかの3カ国よりやや遅れて1980年代に入ってから急速な低下が始まっている。しかし、その後は1999年の1.28までほぼ一貫して低下し、2001年には1.29となっている。
 南欧諸国の出生率にみられる共通の特徴は、おおむね1970年代後半(ギリシャは1980年代前半)から始まった人口置換水準を下回る出生率の低下は、ほぼ10年程度で1960年代の出生率ピーク時の半分程度にまで低下するという短期間に極めて急激な低下を経験したことである。二点目として、イタリア、スペインでは、1.10台という北西欧諸国が経験したことがない超低出生率にまで低下したことがあげられる。最後に第三点目として、イタリア、スペイン、ポルトガルについては、ここ2〜3年出生率はやや持ち直しの兆しがみられることである。
(2)年齢別出生率の変化
 出生率水準の変化を年齢別の出生率パターンによって観察したのが図2である。
 イタリア、スペインの出生力低下が始まった1970年代中頃から後半には、出生力のピークは20歳代後半にあり、20歳代を通じて高い。前の2ヶ国に比べ少し遅れて出生率の低下が始まったギリシャ、ポルトガルでは、1975〜1980年代前半頃は20歳代前半が出生力のピークで、20歳代を通じて高く、イタリアを含めて10歳代後半の出生率もこの年代としては比較的高い。スペインでは1970年代前半には30歳代前半の出生力が20歳代前半と同程度の高水準にある。1970年代後半から1990年代前半にかけての急激な出生力低下の過程で、20歳代前半の出生力は一気に低下し、25〜29歳代も依然として低下を続けている。一方、30歳代前半の出生力が1980年代中葉を底にして漸増傾向にある。ボトム時の20〜30%程度回復しているが、そのスピードは緩やかである。30歳代後半の出生力は30歳代前半の数年後に底がきたが、こちらも増加傾向にありイタリアやスペインでは20歳代前半の出生力と拮抗するか、これを越えている。
 南欧諸国における1970年代後半から1990年代前半にかけての人口置き換え水準を大きく割り込む低下は、20歳代が出産の開始を遅らせたことや30歳代の出生抑制などが要因となっている。1990年代後半から南欧諸国では出生率の低下が一息つき低位安定、あるいは回復の兆しがみられるが、これは20歳代を通じて今日まで継続する出生力の低下に対する、30歳代の出生力の回復傾向が寄与している。しかし、今のところ北西欧諸国ほどの増加には至っていない。これは、単純に「回復」傾向、あるいは出産開始の遅れへの「キャッチアップ」効果(第2子以降の出産への)とみるかは問題のあるところで、たとえば、スペインでは、出生力のピークが20歳代後半から30歳代前半に移行し、30歳代後半の出生力が20歳代前半のそれを上回っていることを考えると、依然として「晩産化」が継続している影響と考えた方が適当かもしれない(日本の出生力のピークはまだ20歳代後半にある。後述のコーホート完結出生力が置き換え水準を大きく割り込んでいることもキャッチアップとは考えられない理由である。近接要因については次節で扱う)。
 
図2 女子年齢別出生率の推移
 
イタリア
 
スペイン
女子1,000人当たりの率.
資料)UN,Demographic Yearbook.
 
(3)出生順位別出生率の推移
 出生率水準の変化を出生順位別の出生率でみたのが図3である(データの制約上、イタリアの出生率が急激に低下する時期と多少ずれている)。出生率は1970年代後半から2000年にはイタリア、スペインでは半減し、ギリシャ、ポルトガルでも出生率は著しく低下したが、パリティ別の出生率にはっきりと変化をトレースしている。
 イタリアでは、1970年に第1子の出生率全体に占める割合は38.7%、第2子については30.8%、1〜2子の占める割合が69.5%である。スペインの場合は、TFR2.79の1975年には第1子比率38.0%、第2子30.1%であり、68.1%を第2子までで占める。イタリア、スペインでは出生率の低下し始める時期に、第3子以降の高パリティの出生がそれぞれ30.5%、31.9%と全出生率の3割以上を占めていた。
 その後の変化を最新の数値でみると、イタリアでは、第1子比率は50%、第2子も37%と2子までに87%に達している(1997年)。スペインでも、第1子51.7%、第2子36.7%で、これらの合計は88.3%を占める(1999年)。南欧諸国では3子以降の高出生順位の出生が12〜15%程度にまで低下している(日本の場合2000年データで、第1子比率は48.7%、第2子36.4%)。いずれにしても、南欧諸国では、高パリティの出生(3子以上)が激減し、1〜2子に集中したことも出生率低下に寄与した。
 
図3 出生順位別合計特殊出生率の推移
 
イタリア
 
スペイン
出所)Recent Demographic Development







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