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3. 勤労青少年ホームを巡る現況
(1)就業支援事業に対する需要増
 1. で述べたとおり、女性求職者が増加している。求職者については、
・各種職業資格セミナーや職場での心得を学ぶセミナーなどの受講
・専門家(キャリア・コンサルタント等)への個別相談
・雇用保険受給者に対するハローワーク(職業安定所)主催の説明会への出席
・事業所への求職活動
など就業に向けて様々な活動が必要となることが多い。
 勤労青少年ホームにおいて、上記の各種セミナー、専門家による相談事業が取り組まれている。しかしながら、上記の通り運営に係る国庫補助制度がなく、また、市区町村に関しては、国や都道府県と比較して、就業支援事業に関するノウハウが少ないこともあり、一般に、社会的需要が高くなってきているにもかかわらず、勤労青少年ホームにおける就業支援事業に係る取り組みは少ない場合が多いようである。
 都道府県・政令市・中核市においては、母子寡婦福祉法の平成14年改正法に基づき、母子家庭等就業・自立支援センター事業の実施が法定化されたところであり(福祉部局が所官している例が多いものと思われる)、また、単独事業(労働部局が所官している例が多いものと思われる)によっても就業支援の取り組みが進みつつあるようである。
 
(2)求職者(乳幼児を養育する者)の就業支援事業への参加と一時保育
 妊娠・出産等を契機として仕事を中断した者が仕事を再開しようとする場合又は専業主婦が新たに仕事を始めようとする場合、(1)の就業支援の機会の確保とともに、乳幼児を持つ場合、その間子の養育をどうするかが問題となる。
 一般的に、就業に向けた各種のこのような受講機会及び就職活動は、数ヶ月の一定期間、かつ断続的なものとなることから、都市部における実態として、認可保育所入所ができない場合が多い。((注)の目黒区における保育所入所基準の例を参照)
 そこで、養育する子の一時保育が必要となるが、本誌の読者には周知のとおり、特に都市部では一時保育が不足している。このように女性求職者に対しては、各種就業支援事業とセットで一時保育を提供する必要がある。
 ちなみに、各種求職活動については、活動期間が断続的である場合が多いほか、各求職者によっては求職活動実態が少ない場合もあり、市区町村の保育所入所事務の現場では、その実態把握に苦労しているようである。
(注)目黒区における保育所入所基準の例(抄. HPより)
〈資料(B)参照〉
 
資料(B)
保護者の状況(同居の親族その他の者が児童の保育に当たれない場合)
類型 細目 基本指数
居宅外労働 外勤
(居宅外自営含む)
週5日以上就労し、かつ、昼間7時間以上の就労を常態としている場合 10
週5日以上就労し、かつ、昼間4時間以上7時間未満の就労を常態としている場合 9
週3日以上就労し、かつ、昼間7時間以上の就労をとしている場合 8
週3日以上就労し、かつ、昼間4時間以上7時間未満の就労を常態としている場合 7
その他 上記に掲げるもののほか、就労の態様から明らかに保育に欠けると認められる場合 7
求職 求職のため昼間に出かけることを常態としている場合 7
居宅内労働 自営 昼間7時間以上の就労を常態としている場合 9
昼間4時間以上7時間未満の就労を常態としている場合 8
内職 昼間7時間以上(月間の平均時間とする。)の就労を常態としている場合 8
昼間4時間以上7時間未満(月間の平均時間とする。)の就労を常態としている場合 7
 
4. 「勤労青少年ホーム事業の推進のための託児場所の確保について」の発出
 3. (1)及び(2)のような状況を受け、今般、次の通り、就業支援を推進するために勤労青少年ホーム内の余裕スペースにおいて一時保育の機能を設ける場合について、補助金適正化法に基づく補助金国庫返還は不要であることを通知をもって周知されたものである。なお、言うまでもないが、勤労青少年ホーム全体を保育所に変更する場合は、国庫補助の返還が必要である。
(注)「勤労青少年ホーム事業の推進のための託児場所の確保について」
〈資料(C)、(D)参照〉
資料(C)
能形発第0901001号
平成15年9月1日
都道府県労働福祉主管部(局)長 殿
厚生労働省職業能力開発局
キャリア形成支援室長
 
勤労青少年ホーム事業の推進のための託児場所の確保について
 
 平素より、勤労青少年福祉行政の推進につきましては、格別のご尽力をいただき厚くお礼申し上げます。
 さて、雇用情勢の厳しい中、児童の養育を行いながら就職を希望する者等に対し、就職相談、職業能力の向上のために必要な措置、雇用情報の提供等各種就業支援の積極的提供が求められているところです。また、このような各種就業支援について、児童の養育を行いながら就職を希望する者等による利用を容易にするための措置として、託児場所の確保が求められています。
 母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本方針(平成15年3月19日厚生労働省告示第102号)においても、都道府県及び市区町村が講ずる就業支援講習会等の就業支援策の拡充、受講者のための託児サービスの提供に対し、国が支援することとされています。
 このような事情に鑑み、勤労青少年福祉施設整備費補助金の交付を受けて設置した勤労青少年福祉法(昭和45年法律第98号)に基づく勤労青少年ホームにおいて、各種就業支援事業を推進する一環として勤労青少年ホーム内に託児場所を設置する場合においては、下記の事項に留意のうえ、その運用に遺漏のないようお願いするとともに貴管内関係市区町村に対してご周知いただくようお願い申し上げます。
 
 
1 目的
 勤労青少年ホームを設置する市区町村において、勤労青少年ホームにおける各種就業支援事業を推進するに当たり、児童の養育を行いながら就職を希望する者又は現に就業する者等が、当該事業の利用、求職活動等を行いやすくなるよう勤労青少年ホームにおいて託児場所を確保することを目的とすること。
 
2 関係事業との連携
 勤労青少年ホームを設置する県・市区町村においては、県・市区町村の自主的な活動に加え、都道府県労働局、都道府県等と連携して、各種就業支援事業を推進していくものであること。また、各種就業支援事業の実施形態や地域の実情等に応じて、勤労青少年ホームにおいて託児場所を確保し、託児サービスが提供できるものであること。
 
3 補助金適正法上の手続き
 厚生労働省から勤労青少年整備費補助金の交付を受けて整備された勤労青少年ホームにおいて、各種就業支援事業を推進するための一環として勤労青少年ホームに託児場所を設置する場合には、勤労青少年ホームの設置及び運営についての望ましい基準(昭和48年労働省告示第36号)3条5号に基づく付帯事業として、託児に係る施設・設備については、同基準6条第5号に基づく付帯施設・設備とすることができるので、この場合は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第22条の規定に基づく大臣承認手続きは不要であること。
 
資料(D)
勤青ホームにおける各種就業支援と一時保育の連携
 
(次号へつづく)
 
 
 
―談話室―
医は仁術
 中高年の皆様が複数集えば、必ずや年金や健康に関する話。行きつけのおソバ屋さんでも、同様。アルコールを介して、時には可笑しく、時には切なく、ピーチクパーチク。
 「年金」では、職業、男女、更には年齢層(ネンキン暮らしの方、受給年齢の近い方、比較的若い方と、大きく三つのグループに分かれる)で、考え方が交錯。話題の中心が難しい局面に来ると、仕事柄、視線が向けられてくる。社会保険の仕事は、経験もなく、知識もお寒い。「皆さんと同じ条件」との弁解もなかなか理解して頂けない。二階建てと三階建て、特別支給と繰上げ・繰下げ支給、加給年金と女性の年金、支給停止、財源問題など、具体的なケースでの突っ込みがあると、折角の好物の「鍋焼きうどん」もクタクタ。世代間扶養の話なんか持ち出そうものなら、お兄さん達から、ぶっ飛ばされそう。制度も経過的なものも多く、複雑。ともかく、「生半可の知識で、知ったかぶりをして、軽々しくお話しすべきではない」と決めている。そんなことで、出来る限り話題の核心のおソバに近付かぬよう、「うどん」に集中するようにしている。
 そこに行くと、「健康」の話は、老若男女で比較的共通している。制度的な話よりむしろ、自らの健康状態、医療機関の医師等のスタッフやサービスの評価、薬、健康のためになる食品やスポーツの話などが、中心。それ故、職業、年齢層で、大きく意見の分かれるようなことはない。特に、テレビの健康番組を良くご覧になっている方や医療機関への入通院の経験者等が、話題を提供。当方、医師でも何でもないので、振られるようなことはない。「うどん」を啜りながら、気楽に側聞。その中で、医療機関からサービスの提供を受ける側の「遠慮のない」話は、結構面白い。ドクターや看護師さんの白衣の下や白い巨塔(?)の中の喜怒哀楽や人間模様や人間性が、何気ない会話の中から、垣間見えて来る。これまでは、医療を提供する側からの見方となりがちだったが、「中高年度」も進んで来ると提供を受ける側となる機会も多くなり、提供を受ける側から「合の手」を打ちたくなるお話しも多くなってきている。特に、医療スタッフに関しては、ナイーブになりがちなので、そういうものが多い。
 そんな中、ここ一〜二年悩まされていた歯の治療が、先週で一応の片が付いた。幼少の頃から「中年」となるまで、虫歯などの経験もなく、歯医者サンとは無縁だった。「中年」に仲間入りし頃、「虫歯」になり、初めてクグった歯科医院に緊張した。更に、齢を重ね、四〜五年前、これまでの「過信」が仇となり、歯茎からの出血、痛み、グラグラを感ずるようになってしまった。食事も痛くて食べられず、いたシカたなく、麺類や軟らかいものにシフト。止むを得ず、意を決し、前の職場近くの歯科医院を訪問。若い歯科医師のもとに、歯科衛生士さん(技工士の方がいたかは、不明)などが五〜六人の歯科診療所だった。次は、職場が変わったため、家の近くの歯科医院を訪問。六〜七台の診察台がまるで選挙のときの「投票台」のように並び、七〜八人のスタッフがいた。おそらく歯科技工士さんもいたと思う。そこでは、専ら、歯磨きの指導を受けた。結局、筆者の歯磨きが不真面目だったのか、一本の歯が崩れしままに、症状安定。その後、再び、出血、痛みが生じたため、職場の診療所で暫定的な治療をしていただき、職場の近くの歯科医院を紹介して貰った。
 その歯科医院は、歯科医師と歯科衛生士さんの二人で、切盛りしていた。最初予約した当日、仕事の都合で行けるか否か怪しくなって来たので、直前にキャンセルを申し入れたところ、えらく叱責された。次の予約の日に、恐る恐る参上。行ったら本当に丁寧に診て頂き、説明もして頂いた。筆者のために割いて頂いた所要時間は、四〇〜五〇分。これではキャンセルすれば、迷惑をかけるのも当然。爾来、予約には気を使い、遅れぬよう頑張った。行く度ごとに、コンピュータやフイルムを介しての丁寧な説明や、ハミガキの大切さの指導を受けた。その際には、コンピュータを使いこなす「赤ひげ先生」を感じた。結局、ブリッジをかけ、歯ギシリによる傷みをマウスピースにて予防との話し。「寝ても切歯扼腕するほど、歯ギシリする筈がない。カミさんからの指摘もない」と具申したが、多くの人(七〜八割?)は無意識にしているとのこと。劃して、夜な々々、マウスピースを装着して、睡眠。
 こうして、歯科医師の方だけでも五人の先生に関わった。それぞれの方は、五者五様。他の医療機関にも、アカデミックな方、人間味のある方など、様々なお医者さんがいる。ともかく、患者には不真面目な方や不心得者もいるが、科学(技術)や経営(合理性)に終始する「先生」は、苦手。医は、仁術。生身で、ナイーブな患者にとって、少しでも「赤ひげ的」な精神を持った「先生」が多くいることが望まれる。
 中高年の皆様、くれぐれも健康には留意いたしましょう。
(S・O)18







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