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―保育園を考える親の会から[32]―
保育園のケガが対応・決まり事
保育園を考える親の会
 
 保育園を考える親の会が本年の六月に実施した会員アンケートでは、子どもが通っている保育園のケガ対応や決まり事についての感想を聞いています。今回はその結果をお伝えしましょう。アンケートの総回答数は一五八通でしたが、質問は現在保育園に子どもを預けている方を対象に聞いているため、卒園児の保護者などは無回答となっています。
 
ケガをしたときの対応
 「あなたの保育園では子どもがケガをしたときの対応はよいほうだと思いますか?」という質問に対して、下表のような回答状況となりました。
 「イエス」と答えた保護者が約九割を占め、回答者の利用する保育園では、おおむねケガ対応が整っていることが推測されるものの、「ノー」と答えた保護者も、重複回答を含めて一割半はおり、その内容が気になります。
 「イエス」と答えた人に、どんな対応について「よい」と感じているか聞いてみると、
●ケガ対応でよい点
 (記入された要素を抽出・分類して集計しているため、複数回カウントされている回答もある。以下同様)
 きちんと状況を説明・報告してくれる 六一通
 手当をきちんとしてくれる 二七通
 謝罪がある(責任の所在が明確にされる) 二三通
 病院に職員(看護師)が連れて行ってくれた 一六通
 すぐに連絡をくれる(職場への電話) 一四通
 (保育園のケガでの)通院に親の代わりに付き添ってくれる 四通
 看護婦さんがいるのが安心 三通
 ほか、一〜二票ずつだった内容では、「対応がていねい」「過剰なほど手当をしてくれる」「大きいケガのときは担任がお迎えを待っている」「園長先生が挨拶にきた」「すぐに保険の手続きをしてくれた」「登園時に体をチェックする」などがありました。大きいケガが起こった保育園の保護者の一人からは、「全家庭に状況説明のお便りが配られ、臨時保護者会が開かれて、対応策を園と親とで意見交換した」という園の対応に納得した声が寄せられています。
 「イエス」と答えたものの、不満を書いている回答もあり、「気づかなかったと説明する保育士には不信感」「スタッフにより対応の仕方がちがう」などの指摘がありました。また、ケンカによるケガについて「子ども同士の関わりについては説明不足」「子ども同士によるとき、適切な判断がされている」という不満・満足両方の声が聞かれました。
 子ども同士のけんかについては、保護者によってさまざまな意見があります。ケガの対応に不満な保護者の意見の中にも「加害者の親に伝えてほしい」というものがありました。子どもの社会性の育ちを考えれば、ケンカの体験はある程度は必要であることを保護者にも伝えなくてはなりませんが、やはりケガがないように保育士の目が行き届いていることが求められるでしょう。とはいえ、小さなケガにあまり神経質になっては子どもを自由に遊ばせることができないのも事実。このような点については、保護者との信頼関係を厚くし、日常の子どもの遊びのようすを見てもらって、理解してもらうことも必要となってきていると思います。
●ケガ対応で不満な点
 目が行き届いていない 四通
 担当以外の時は対応があいまい 三通
 ほか、「連絡がなかった」「謝罪がない」「謝罪だけで説明がない」「適切な手当がされていない」「他のクラスに大きなケガがあったときにひた隠しにした」「頭より上のことはすぐに連絡がほしい」など、園側の連絡や説明に関する不満が多く聞かれています。また、「保険がきかなかった」「病院に連れて行ってほしい」「二度目以降の受診も園にお願いしたい」「ケガがたえない」「再発防止をしてほしい」などの声もありました。
 
納得がいかない決まり事
 「あなたの保育園で、納得いかない『決まり』はありますか?」という質問に対して、下表のような回答状況となりました。
 「ノー」つまり「納得がいかない決まり事はない」と答えた保護者が約六割だったのに対し、「イエス」と答えた保護者が約四割を占めました。
 「イエス」と答えた人に、どんな決まり事に不満か聞いてみると、それぞれ多種多様な事柄が出てきました。分野別に眺めてみましょう。
●保育日・保育時間関係(十一通)
 この関係が最も不満が多く、「行事が全て平日」四通、「行事日に午後の保育がない」二通など、保護者が仕事を休みにくい状況が表われています。「育休中は保育料を払っていても、春休み、夏休み、冬休み期間は自宅保育」「母親が病気でも土曜日は保育してくれない」など園側の対応に疑問が感じられることのほか、「親が休むとき預かってくれない、保育時間が短くなる」「育児休業中は四時までに迎えに行く」ことへの不満については、保護者や子どもの状況によって判断が違ってくるかと思われました。
 認可保育園は、厚生労働省によって日曜祝祭日以外は十一時間まで開所するのが標準とされていますが、その保育日・保育時間フルで全児童を預かれるようには人員配置されていないことを考えると、受け入れをなるべく絞りたい園側の事情は理解できます。しかし、厳密に「保育に欠け」てなくても、個々の子どもや保護者の事情によっては保育の必要がある場合も多く、杓子定規な対応に納得がいかない思いをする保護者は多いようです。応益負担のしくみがないだけに、園と保護者の間で何らかの共通認識がないと、こういった不満をかえって大きくする可能性があると思いました。
●与薬・病気関係(六通)
 与薬について「与薬してもらえない」が三通。「与薬について看護師が口うるさい」という声も。病気について「発熱時の登園禁止」「園の嘱託医の登園許可証がないと登園できない」の二通。
●持ち物やふとん関係(九通)
 「週一回の朝のシーツかけ」への不満が二通、「昼寝用のふとんの持参」「布団のクリーニング代が保護者会費で出ていること」への不満など、ふとん関係が目立ちました。ほか、「朝のおしたくの指示が細かいこと」「週末に着替えを全て持ち帰ること」「使用済みのオムツの持ち帰り」「雑巾を一家族三枚持参すること」「プールカードに押印すること」などなど。もっと見直せるのではないかと思われることと、必要性についての保育園の説明が不足しているのではないかと思われることがありました。
 
質問 イエス ノー 無回答数 有効回答数
ケガをしたときの対応はよいほうか 112(88.2%) 21(16.5%) 31 127(100%)
納得がいかない決まり事はあるか 51(42.1%) 70(57.9%) 37 121(100%)
* 重複回答を含むため、合計が100%とならない。
 
●服装等の関係(六通)
 「女の子のスカート禁止」「登園時のベレー帽の着用」「水泳帽の指定」「天候に関係なく、五月末まで長袖冬服冬帽子でお迎えまで待つこと」「外出時に靴下をはかないこと」「名札を付けること」
●手作り品(二通)
 「手作り品(布団カバー、ノートカバーなど)があること」「手作り品がサイズ指定などが担任によってまちまちであること」
●お昼寝関係(二通)
 「年長までお昼寝時間があること」「昼寝の強制」
●虫よけ対策(二通)
 「虫除けスプレーを預かってくれない」「虫除シート(虫除けスプレー不可)」
●給食関係(二通)
 「主食の持参」を不満とする声が二通。
●コミュニケーション関係(六通)
 「二歳児クラスから連絡帳がなくなる」が二通のほか、「時間外の先生とのコミュニケーションができない」「謝恩会に先生が参加してくれない」「お迎え後、速やかに退園をさせられる」など。
●保護者組織関係(四通)
 「保育園が父母会をつくることに消極的」「懇親会をやらせてもらえない」「父母に配られるプリントが検閲されること」「父母会の予算等について園長の承認がいること」などの声がありました。
 保護者組織は、保護者が横のつながりをもち、子育てを支え合っていくという意味でも必要なものだと思いますが、保護者自身が忙しさのために保護者会活動を敬遠する傾向もあり、今後のあり方が問われていると思います。自立した(負担の少ない)保護者会組織が、園と対等に、園と協力しあっていける関係で存在できるのが理想的だと思うのですが。
●保育内容(六通)
 「二才児に朝の挨拶を何度も強要すること」「行事中心であること」「キリスト教の園で教会へ行くことを示唆された」「行事等で園歌を歌わされる」など園の保育方針が問われるもののほか、「お昼寝前に汚れていなくても全身着替える」「降園前のうがいと手あらい(家に帰ってやったほうがよい)」という生活習慣に関するものがありました。
 
まとめ
 「ケガの対応」と「園の決まり事」は、保育園を考える親の会で最もよく話題にされる事柄です。
 特に「園の決まり事」に関する保護者の言い分については、保育園側からもいろいろな意見が出る内容だったと思います。一部のものは、求められているサービスのどこまでが基本形として提供されるべきものなのかが曖昧であったり、そのサービスを子どもに負担なく提供するための運営費が出ていなかったり(あるいは応益負担が必要であったり)、といった制度上の課題を反映していたと思います。
 しかし、多くの保護者の不満は、保育園の硬直的な対応や説明不足に向けられています。「前例がないと言われること」「決まりが知らないうちに変わっていた」という不満を書いた保護者もいました。
 ともすれば、園は「親の言うことを聞いていたらキリがない」という対応になりがちですが、保護者がそれを必要とする理由や事情はそれぞれに異なっており、保育園が保護者の背景を知る努力も必要ではないかと思います。また、前例踏襲で行っていることに、本当に合理性があるのか、あるとすればそれをどのように保護者に説明するのか、ということをきちんと考えていくことが、今後の保育園に求められていると思います。
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。
(保育園を考える親の会代表 普光院亜紀)
 
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。
 
写真・もとしろ保育園
 
 
 
叙勲受章者
瑞双 岡崎子(大阪府 現・めぐみ保育園園長)
歸山祐子(東京都 元・みのり保育園園長)
加藤愛子(岩手県 現・愛宕保育園園長)
鎌田正人(香川県 元・敬愛保育園園長)
岸 正道(徳島県 元・二葉保育園園長)
佐々木淺子(京都市 現・愛友保育園園長)
重實靜枝(茨城県 現・恵泉保育園園長)
谷口子(奈良県 現・西大寺保育園園長)
同前千代子(岡山県 現・妹尾保育園園長)
西田豊子(熊本県 現・つくし保育園園長)
長谷川正敏(三重県 現・船江保育園園長)
山崎良淳(鹿児島県 現・厳淨寺保育園園長)
脇谷英孝(島根県 現・第二慶照保育園園長)
和田マサ(福島県 現・梁川中央保育園園長)
瑞単 安部常枝(香川県 現・岡野松保育園保育士)
石川君代(宮崎県 元・のゆり保育園主任保育士)
内山トク(山口県 現・愛児園平川保育所主任保育士)
梅山登志江(群馬県 現・白百合保育園主任保育士)
永徳フク代(茨城県 現・さくら保育園副園長)
及川 敏(岩手県 現・たんぽぽ保育園園長)
佐原綾子(愛知県 元・二川東保育園主任保育士)
霜降靖代(神奈川県 現・渕野辺保育園主任保育士)
新宮佳子(兵庫県 元・宝塚さくら保育園主任保育士)
鈴木友子(宮城県 元・亘理町立亘理保育所所長)
武安ヨシ子(鹿児島県 現・日当山保育園主任保育士)
永見光代(大分県 現・さくらんぼ保育園園長)
本田悌子(北海道 現・函館市松陰保育園園長)
水野圭子(愛知県 元・豊南保育園主任保育士)
森本ちか(三重県 元・多気町立仁田保育所所長)
山内光子(愛媛県 現・みなと保育園園長)
山代惠子(熊本県 元・つぼみ保育園主任保育士)
山城美和子(北海道 現・追分保育園主任保育士)
吉田賀野子(兵庫県 元・有岡乳児保育所主任保育士)
米田光惠(愛知県 元・東浦町立石浜西保育園園長)
和田貞子(青森県 現・三戸保育園主任保育士)
木五 吉岡壽惠(京都市 現・わかば園園長)
褒章受章者
藍綬 林 顯秀(岐阜県 現・宝林保育園園長)
古田喜美子(岡山県 元・順正保育園園長)
 
写真・もとしろ保育園







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