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―児童虐待防止―
社会的養護のあり方に関する専門委員会の報告書のとりまとめについて
厚生労働省雇用均等・児童家庭局
家庭福祉課
○設置の経緯等
 
 本年6月18日にとりまとめられた社会保障審議会児童部会「児童虐待の防止等に関する専門委員会」の報告書においては、虐待を受けた子どもに対する支援の在り方の基本的な方向性が示された上で、保護を要する子どもに対する社会的養護(社会的に保護を要する子どもに対する支援)の在り方全般については、より広範な議論が必要との指摘がなされた。
 この指摘を踏まえ、社会的養護に関して更に検討を深めるために、同部会に「社会的養護のあり方に関する専門委員会」(委員長 松原康雄明治学院大学社会学部教授)を設置。
 同専門委員会においては、家庭的養護や施設養護、社会的養護の質の向上などについて8回にわたり議論・検討を重ね、10月27日に報告書がとりまとめられた。
 
○報告書のポイント 〔社会的養護のあり方に関する基本的な考え方〕
・社会的養護の役割は、子どもの権利擁護を基本とし、子どもの安全・安心な生活を確保にとどまらず、心の傷を抱えた子どもなどに必要な心身のケアや治療を行い、その子どもの社会的自立までを支援すること
 
・そのためには、子どもを中心におきながら、家族の再統合や家族や地域の養育機能の再生・強化といった親も含めた家族や地域に対する支援も、社会的養護本来の重要な役割として担っていくことが必要
 
・こうした認識の下、当面の具体的な取り組みとして、(1)より家庭的な生活環境を可能とするケア形態の小規模化、(2)ケア担当職員をはじめとした職員の質・量の充実、(3)ケアに関する児童福祉施設の創意工夫を促す仕組みの導入、(4)ケアの連続性に配慮した乳児院・児童養護施設の年齢要件の見直し(5)自立期も含めた里親の活用促進に向け、里親の心身両面での負担軽減の仕組みや里親の責任の明確化、(6)年長児童の自立に向けた自立援助ホームの拡充や施設退所後の相談・助言、更には生活拠点の確保や就労への支援(7)最適な支援のための子どもや家族の実態把握・評価(アセスメント)の充実、(8)里親と施設、児童相談所等と施設の協働(9)家族再統合等に向けた家族(親)への支援・指導、などが指摘された
 
○取り組みの方向性
2. 家庭的養護(里親・里親によるグループホーム等)のあり方
・里親制度は愛着形成や社会性の涵養を図ることのできる意義深い制度
・このため、乳幼児期から自立期に至るまで里親を活用できるよう仕組み
(例 里親によるグループホーム)の工夫
・里親の心身両面での負担軽減に向けた支援の強化
・里親に対する研修体制の充実
・親権の一部代行など、里親の責任等の明確化
などが必要
 
3. 施設養護のあり方(施設サービス体系のあり方等)
・中長期的には、より家庭的なケアの提供を基本とした上で、各施設の本体施設に、高度な支援が可能な専門職員を配置する方向を目指すべき
・こうした将来的な方向を見据え、ケア形態の小規模化を進めると同時に、専門的支援機能や在宅支援機能、一時保護機能など地域の拠点としての諸機能も充実・強化
・可能な限り子どもに対するケアの連続性に配慮し、乳児院及び児童養護施設で受け入れる子どもの年齢要件の見直し
・これら一連の取り組みに必要な職員の確保
・また、施設に対する措置費の支弁についても、個々の施設における子どもの状況、子どものケアに関する施設の創意工夫や努力といった取組みを反映した支払方法に見直し
などが必要
 
4. 家族関係調整及び地域支援
・児童福祉施設は、家庭復帰や家族再統合に向けて、子どもへの支援のみならず、家族への支援や親権者との関係調整を適切に実施
・施設を退所し、地域で生活する子どもについて相談、助言といったアフターケア(施設退所後のケア)の充実
・養育に関する専門知識、経験を生かし、地域の子どもやその家族(里親を含む)に対する支援
などが必要
 
5. 年長の子どもや青年に対する自立支援
・児童福祉施設を退所した子どもなどの自立を促していくためには、生活拠点の確保と就労支援が重要
・このため、施設退所後等の当分の間や求職期間中の生活を支えることが可能な実効ある制度的対応
・児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)の設置促進や機能の強化
・里親、児童福祉施設や自立援助ホームについては、18歳、20歳といった施設等の対象年齢から外れた者であっても、相談・助言など必要に応じた支援を継続すること
などが必要
 
6. 社会的養護の質の向上
・虐待の防止の徹底など、子どもの権利擁護のための取り組みの強化
・児童相談所・福祉事務所や児童福祉施設において、子どもや家族の十分な実態把握・評価(アセスメント)、自立支援計画の策定等を推進するとともに、第三者による評価の実施を促進
・社会的養護関係者の養成・研修の充実
などが必要
 
7. 学校教育など関連分野との連携
・社会的養護の枠内の取組みだけではなく、学校教育など関連分野の関係者の社会的養護に対する深い理解やそれに基づく適切な対応が、こうした保護を要する子どもの減少につながるとの視点が重要
・特に学校教育との連携については、児童福祉施設における学校教育の保障、虐待を受けた子どもの特性に関する学校関係者の理解の促進といった、社会的養護関係者と学校関係者の双方向の連携・協働の推進
などが必要
 
 以上のような取り組みの方向性を重ね合わせれば、これからの目指すべき社会的養護の仕組みの姿としては、おおむね別添案のような見取り図が考えられる。
 
○今後のスケジュール
 児童虐待の防止等のための都道府県、市町村の役割、児童相談所のあり方については、児童部会において議論が行われており、児童虐待の防止等に関する専門委員会及び社会的養護のあり方に関する専門委員会の報告も含め、これら全ての議論を11月中旬を目途に集約し、児童部会として制度見直しの基本的な方向を取りまとめる予定。
 
○専門委員会の位置付け
 
※ 社会保障審議会運営規則(平成13年1月30日社会保障審議会決定)
第8条 分科会長又は部会長は、必要があると認めるときは、それぞれ分科会又は部会に諮って委員会を設置することができる。
 
これまでの開催経緯
○専門委員会
第1回 平成15年5月23日(金)
第2回 平成15年6月30日(月)
第3回 平成15年8月1日(金)
第4回 平成15年8月28日(木)
第5回 平成15年9月19日(金)
第6回 平成15年9月29日(月)
第7回 平成15年10月14日(火)
第8回 平成15年10月27日(月)







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