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現代いろは考「な」
なんでだろ〜う、なんでだろ〜う
 洗濯機や掃除機の普及が家事労働の軽減に寄与したように、十九世紀から二十世紀にかけて作られたさまざまな「機械」は、人間の負担を軽くしていった。それにあわせて、社会のシステムも人間が楽できるように変わっていった。
 このことは、本当に人間に幸せをもたらしたのだろうか?と疑問に感じることがある。というのも、社会のさまざまなところで、少し前ならこんなことはなかった、こんなことはしていなかった――ということに出会うようになったからである。なんでだろ〜う、なんでだろ〜う・・・。
 だいぶ前にマンションから二階建ての一軒家に引っ越したときのこと。しばらくの間、二階への階段の昇り降りを大きな負担に感じた。夕方になると太股あたりがだるくなるのである。妻に聞いても同じだと言う。二人して「歳かな?」と話していた。しかし、半年もすると、平気になった。体の動きが慣れてきたというより、筋肉が鍛えられてきたのである。
 それまでも階段の昇り降りをしていなかったわけではない。通勤途中に駅や歩道橋で階段の昇り降りをしている。階段に不慣れなわけはない、と思っていたのだが・・・。
 街中にある階段と家の階段を比べてみた。段数は圧倒的に街中の階段(歩道橋など)のほうが多い。二階分の階段といっても、ふつうの家の三、四階分の高低差がある。どこが違うか、一段の高さである。家の中の階段はスペースが限られているので、一段ごとの高さが高い。急な階段である。だから、階段を昇るときに足をしっかりと持ち上げ、力を入れて体を持ち上げ、反対の足を一段上の段に踏み出さなければならない。当然足への負担も大きくなる。
 つまり、歩くことの延長でなんとなく昇るのではなく、しっかりと一段一段昇らなければならなかったのである。そのためあまり使っていなかった筋肉を使うことになり、負担に感じたのではないかと考えた。使わないものは退化する、を実感したのである。
 そういえば、スポーツクラブというのも奇妙な存在に思える。テニスや水泳のように設備や場所が必要なスポーツを楽しむのは理解できるが、動くベルトの上を歩きつづけるというのは、わざわざお金を払ってすることとは思えない。車を使うのをやめて、歩けばいいのにと思ってしまう。
 健康を維持するために、お金を払ってまで運動をするようになったのは、そんな昔のことではない。日常の生活の中で体を動かさなくなったから、体を動かすための場所=スポーツジムに行くようになったのだ。朝起きてから夜眠るまでの間に、いくらでも体を動かす場面を作ることができると思うのだが、現代人はあえて目的にあわせて使い分けるのである。よいことなのか、悪いことなのか・・・。
 ものを持ち上げる・下ろす、運ぶ、動かす、歩く、――二、三十年前までは、生活のいろいろな場面で体を動かすことがたくさんあった。
 例えば寝具。今に比べればはるかに重く、それを毎朝たたんでは押入れにしまい、寝るときには引っ張りだして敷いていた。風呂から出るときに体を拭くのも、手拭いをしっかりとしぼって使っていた。乾いたバスタオルでひと拭きということはなかった。しぼるという行為がなくなっている。家の拭き掃除も科学雑巾にとってかわられ、しぼる、バケツを運ぶという体の動きはない。
 暮らしが楽に、便利になるにしたがって、体を動かさなくなってしまった。負担から解放されたのだから、嫌なこと(負担)を忘れたいという気持ちは分かるが、忘れてはいけないこともある。それは、人間の体というのは動かすことが前提になっていて、それを使わないでいると退化してしまう、ということである。
 歩くことも少ない、手先や指先を使ってなにかをすることも少ない、荷物を持ち上げることも少ない――便利な世の中、体が「なまる」要素はたくさんある。
(えびす)
 
 
 
次世代育成支援に関する当面の取組方針
平成十五年三月十四日
少子化対策推進関係閣僚会議
 
1 目的
○政府においては、平成十一年十二月に中長期的に進めるべき総合的な少子化対策の指針として「少子化対策推進基本方針」を策定し、以後、「新エンゼルプラン」、「仕事と子育ての両立支援策の方針について(平成十三年七月閣議決定)」に基づく「待機児童ゼロ作戦」等により、子育てと仕事の両立支援を中心として、子どもを生みたい人が生み育てやすいようにするための環境整備に力点を置いて、様々な対策を実施してきたところである。
○しかしながら、平成十四年一月に発表された「日本の将来推計人口」によれば、従来、少子化の主たる要因であった晩婚化に加え、「夫婦の出生力そのものの低下」という新しい現象が見られ、現状のままでは、少子化は今後一層進行すると予想される。
○急速な少子化の進行は、今後、我が国の社会経済全体に極めて深刻な影響を与えるものであることから、少子化の流れを変えるため、改めて政府・地方公共団体・企業等が一体となって、従来の取組に加え、もう一段の対策を進めていく必要がある。
○このため、昨年九月には厚生労働省において「少子化対策プラスワン」を取りまとめたところであり、今般、これを踏まえて、政府として本取組方針を定めるものである。
 
2 基本的な考え方
○本取組方針の基本的な考え方は、家庭や地域の子育て力の低下に対応して、次世代を担う子どもを育成する家庭を社会全体で支援―「次世代育成支援」―することにより、子どもが心身ともに健やかに育つための環境を整備することである。
○具体的な対策の枠組みとしては、従来の「子育てと仕事の両立支援」に加え、「男性を含めた働き方の見直し」、「地域における子育て支援」、「社会保障における次世代支援」、「子どもの社会性の向上や自立の促進」という四つの柱に沿って、総合的な取組を効率的かつ効果的に進めることとする。
○また、次世代育成支援対策を進めるに当たっては、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭を築き子どもを生み育てること等の意義についての理解が深められ、かつ、子育てに伴う喜びが実感されるように配慮するものとする。
○政府・地方公共団体・企業等が一体となって、国の基本政策として、計画的に次世代育成支援を進めることにより、家庭や地域社会における「子育て機能の再生」を図り、子どもを生みたいと思う人が理想どおりの数の子どもを生み育てることができる社会の実現等を目指す。
 
3 今後の推進方策
○4に掲げる各般にわたる施策を推進するため、平成十五年及び十六年の二年間を次世代育成支援対策の基盤整備期間と位置づけ、一連の立法措置を講じる。
○平成十五年においては、地方公共団体及び企業における十年間の集中的・計画的な取組を促進するための「次世代育成支援対策推進法案」を提出する。
 同法案においては、国が指針を策定した上で、市町村及び都道府県並びに事業主が行動計画を策定するための枠組みを整備するとともに、各地域において多様な主体による次世代育成支援のための取組が推進されるよう地域協議会の設置等の措置を講じる。
 併せて、地域における子育て支援の強化を図るための「児童福祉法改正法案」を提出する。
○平成十六年においては、
(1)児童手当制度に関する支給対象年齢等の見直し
(2)より利用しやすい仕組みとするための育児休業制度等の見直し、
(3)多様な働き方を実現するための条件整備、
等について、幅広く検討を行った上で所要の法案を提出する。
○さらに、平成十七年度からの市町村、都道府県、事業主の行動計画の円滑な実施を支援するほか、今後の少子化や対策の進展状況等を踏まえつつ、必要な取組方策について引き続き検討する。
 
4 基本的な施策
 
(1)すべての働きながら子どもを育てている人のために
ア 男性を含めた働き方の見直し、多様な働き方の実現
 
 男性を含めた全ての人が、仕事時間と生活時間のバランスがとれる多様な働き方を選択できるよう、働き方の見直しのための取組を進める。
 
(ア)家庭の子育て努力を支援するため、次の取組例等について、経営者や職場の一層の意識改革を進めるとともに、「次世代育成支援対策推進法案」に基づく事業主行動計画の策定等により、企業における自主的な取組の促進を図る。
・出産後も育児をしながら働き続けられる職場づくり
・子育て期間における残業時間の縮減(例えば、一日当たり一時間以内を目指す)
・子どもが生まれたら父親が休暇を取得(例えば、五日間)
・子育てしている人への企業内の協力体制の整備
・妊娠・出産や育児休業取得を理由とする不利益取扱いや嫌がらせの防止
(イ)働き方の選択肢を広げ、「多様就業型ワークシェアリング」の普及を促進するため、短時間勤務や隔日勤務などの導入について、業種ごとのモデルの開発・普及を図りつつ、社会全体で取り組む。
(ウ)ライフスタイルに応じた多様な働き方を支援するため、パートタイム労働者の働き方に見合った公正・均衡処遇の在り方及びその推進方策について検討を行い、早急に結論を得た上でその普及を図る。また、パートタイム労働者の社会保険の適用拡大を行う方向で検討する。
(エ)ITを活用したテレワークについて、適正な労務管理のためのガイドラインを策定するとともに、モデル都市の指定・支援、テレワークが手軽に実施できるようなコンテンツ(映像、音声等からなる入門学習プログラム)の整備など、その推進を図る。
 
イ 仕事と子育ての両立の推進
 
 子育てと仕事の両立支援をより一層推進するため、政労使含めた社会全体での具体的な取組を展開する。
 
○育児休業取得率等についての社会全体での目標値(※)を踏まえ、平成十六年度末までの間の集中的な取組とあわせ、「次世代育成支援対策推進法案」に基づく事業主行動計画の策定等を通じて、個々の企業や勤労者の実情に応じた子育てと仕事の両立支援のための実効性のある取組を推進する。
 
(・男性の育児休業取得率 一〇%
 ・女性の育児休業取得率 八〇%
 ・子どもの看護のための休暇制度の普及率 二五%
 ・小学校就学の始期までの勤務時間短縮等の措置の普及率 二五%)
 
・次世代育成支援対策推進センターによる事業主に対する相談・援助の実施や、適切な計画の策定・実施を行った企業の認定等を通じ、企業の自主的な取組を奨励する。
・企業の「仕事と家庭の両立のしやすさ」を示す両立指標を活用した企業診断による相談援助、特に優良な企業の取組の公表・表彰など家庭にやさしい企業(ファミリー・フレンドリー企業)の普及促進を図る。
・男性を含めて育児休業の取得促進に積極的な企業に対する育児休業取得促進奨励金を創設する。
・経済産業省と厚生労働省の共催による両立支援推進会議を開催し、産業界に対して取組の推進を要請する。
・育児休業を取得しやすい環境づくりのための広報・啓発・指導を進める。
・仕事と育児の両立を支援するファミリー・サポート・センターの設置を促進する。
 
ウ 保育サービスの充実
 
 「待機児童ゼロ作戦」を推進することに加え、パートタイム労働者の増加など働き方の多様化に対応した保育サービスを充実する。
 
(ア)待機児童ゼロ作戦を一層推進するため、一定の待機児童を有する市町村及び都道府県における解消計画の策定の義務付けを児童福祉法に規定する。公設民営の推進、分園や設置主体の規制緩和等による保育所の整備等により、都市部における保育所等の受入れ児童数の増加を図る。
 また、延長保育、休日保育及び夜間保育の普及を引き続き図る。
(イ)パートタイム労働者の増大等に対応して、多様なニーズに合わせた保育サービスを提供する。
・パートタイム労働者等のための特定保育事業(三歳未満児を対象に、週二〜三日程度、あるいは午前か午後のみの保育サービスの利用)の創設・推進
・保育ママ(保育者の自宅で少人数の保育を行う家庭的保育事業)について、利用者の必要に応じた、利用日数・時間の弾力化
・複数企業間の共同設置を含め、事業所内託児施設の設置の推進
・幼稚園における「預かり保育」の推進
(ウ)放課後児童クラブについて、幼稚園等の積極的な活用を含め、その充実を図るとともに、障害児の受入れ等を推進する。
(エ)多様な教育・保育ニーズに応える観点から、地域を指定し、総合的な調査研究を行うなど、幼稚園と保育所の連携や就学前教育と小学校の連携を推進する。
 
(2)子育てしているすべての家庭のために
ア 地域の様々な子育て支援サービスの充実とネットワークづくり等の推進
 
 専業主婦家庭やひとり親家庭を含めたすべての子育て家庭のために、「次世代育成支援対策推進法案」に定める「地方公共団体の行動計画」等に基づき、多様な子育て支援サービスを充実するとともに、地域の子育て支援のネットワーク化を推進する。
 
(ア)地域における様々な子育て支援サービスを推進する。
・児童福祉法に「地域における子育て支援事業」を位置づけ、市町村による子育て支援サービスを推進
・専業主婦家庭の急病、育児疲れの解消等に対応した保育所など身近な場での一時預かりサービスを推進
・子育てサークル支援や育児相談を行う「地域子育て支援センター」の設置を推進
・子育て中の親子が集まって相談・情報交換・交流ができる「つどいの広場」の設置を推進
・地域において育児の相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進
・シルバー人材センター等の地域の高齢者やNPOによる多様な子育て支援サービスの充実や世代間交流の推進
・幼稚園における園庭・園舎の開放、子育て相談、未就園児の親子登園等の推進
・各種の子育て支援サービスの場として余裕教室等公共施設の余裕空間、関係施設等の活用を推進
・商店街の空店舗を活用した子育て支援施設や親子交流施設等の設置の推進
(イ)地域における子育て支援のネットワークづくりを導入する。
・児童福祉法に市町村の事業として「子育て支援総合コーディネート事業」を位置づけるとともに、地域における多様な子育て支援サービス情報を一元的に把握する「子育て支援総合コーディネーター」により、利用者への情報提供、利用援助等の支援を行う。
・子育て支援の具体的な事業プログラムの企画立案等を行う「子育て支援委員会」の設置
・子育て経験のある方等を子育て相談や子育てサークルの支援を行う「子育てサポーター」として養成・配置することを推進
・子育てネットワークづくりや、子育てネットワークの運営等を行う人材の養成のための研修カリキュラムの開発等の調査研究を推進
・子育て支援サービス情報を提供する子育てマップや子育てガイドブックの作成・配布
・子どもの事故予防のための調査研究等の推進
(ウ)小児が地域においていつでも安心して医療サービスを受けられるよう小児医療を充実する。
・休日・夜間における小児救急患者の受け入れなど、小児救急医療体制の整備を推進する。
・危険な状態にある妊産婦や未熟児等に対応するため、周産期医療のためのネットワーク整備を図るなど、周産期医療体制を充実する。
・若手小児科・産科医師の確保・育成に関する総合的な研究を進めるとともに、引き続き、小児医療についての診療報酬上の措置について検討を行う。
・小児の特定慢性疾患について、治療の確立と普及を図るとともに、小児慢性特定疾患治療研究事業の在り方について、引き続き検討する。
(エ)母子家庭等の自立支援を推進する。
・母子家庭等対策について、平成十四年に成立した「母子及び寡婦福祉法等改正法」に基づき、きめ細かな子育て生活支援サービスの展開と就業支援・養育費確保策など自立のための支援を推進する。
・平成十四年度内に、改正された母子及び寡婦福祉法に基づく基本方針を策定するとともに、養育費取得手続等を定めた「養育費ガイドライン」を取りまとめ、自立支援体制の整備を図る。
・子育てと生計の担い手という二重の負担を負う母子家庭の特有の事情を考慮し、在宅就労を促進する観点から、平成十五年度において、母子家庭の母の就業機会を創出できる可能性の高い先駆的な事業を促進するための特定事業推進モデル事業を実施する。
・養育費に係る債務等少額定期債務の履行を確保するため、平成十五年において、弁済期が到来していない債務についても差押えを可能とするなど、民事執行制度の改正のための関連法案を提出する。
(オ)児童虐待防止対策を推進する。
・児童虐待防止について、発生予防からアフターケアに至る一貫した取組を推進するとともに、医療、保健、福祉、法律等の専門的見地から、解決すべき課題と方策について引き続き検討する。
・医療、保健、教育、警察など地域の関係機関や地域住民の幅広い協力体制を構築する。
(カ)障害の原因となる疾病の予防等を図るとともに、障害児及びその家族への支援を推進する。
・障害の原因となる疾病等の適切な予防及び早期発見・治療の推進を図るため、妊産婦、乳幼児に対する健康診査や学校における健康診断等を推進する。
・こころの健康づくり対策として、児童思春期における心の問題に係る専門家の確保及び地域における相談体制の充実等を図る。
・障害児の健全な発達を支援する観点から適切な医療及び医学的リハビリテーションを提供し、豊かな地域生活を送ることができるようデイサービス等の充実を図るとともに、家族に対する支援を行う。
 
イ 家庭教育への支援等の充実
 
 育児不安の増大、児童虐待の急増等の背景として「家庭の教育力の低下」が指摘されていることを踏まえ、子育てについて学ぶ機会等の提供を進める。
 
(ア)子どもの発達段階に応じた子育て講座を全国的に実施するとともに、子どもの発達段階に応じたきめ細かな「新家庭教育手帳(仮称)」を作成・配布するなど、子育て情報の提供を推進する。
(イ)思春期の子どもを持つ親向けの新たな家庭教育ビデオを作成し配布する。
(ウ)育児に不安を持ち、孤立しがちな親等が子どもの健康やしつけなどについて学び、親として子育てに自信を持つことができるようにするための教育・支援プログラムを作成し、その普及を図る。
 
ウ 子育てを支援する生活環境の整備
 
 妊婦や乳幼児を連れた人が安心して外出等できるような環境整備を行うとともに、子育てを支援する良質な住宅・居住環境を整備する。
 
(ア)官庁施設をはじめとする公共施設や公共交通機関、多数の者が利用する建築物、さらに公園、デパート、劇場などを妊婦や乳幼児を連れた人が快適に利用できるよう、バリアフリー化を推進する。
・官庁施設等の公共施設や鉄道駅等の旅客施設において、段差の解消(エレベーターの設置等)や誰にも使いやすいトイレの設置を推進。
・低床式路面電車の整備やノンステップバス等の導入を促進。
・高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に基づく義務付け措置の円滑な実施及び建築物設計者等向けのガイドラインの作成
・「次世代育成支援対策推進法案」に定める「地方公共団体行動計画」及び「事業主行動計画」に基づき、公共施設等への託児室、授乳コーナーの設置及び乳幼児と一緒に安心して利用できるトイレへの改修等子育てバリアフリーの取組を推進。
・「子育てバリアフリー」マップの作成・配布や、公共交通機関や宿泊施設等のバリアフリー状況についての情報提供を推進。
・子連れ家族の優先的な入館、料金割引サービスの普及を促進するため、関係業界に対して要請。
(イ)共働き夫婦等の買物代行、家事手伝い、子どもの幼稚園等への送迎等、生活支援輸送サービスの普及を推進する。
(ウ)子育てを支援するゆとりのある住宅の確保を支援する。
・融資制度による住宅取得の支援
・特定優良賃貸住宅制度の活用や都市公団による良質なファミリー向け住宅の供給の促進
・高齢者等の住宅資産の活用による良質なファミリー向け住宅の供給の促進
(エ)公共賃貸住宅による多子世帯の支援を行う。
・既設の公社等の住宅の改善・更新による良質な賃貸住宅の供給
・公営住宅、特定優良賃貸住宅における事業主体の判断による多子世帯等の優先入居
(オ)保育所等を併設した住宅等の供給を促進する。
・公共賃貸住宅の整備や市街地再開発事業等における、住宅等と保育所等の子育て支援施設の一体的整備の推進
・総合設計制度の活用による保育所等の設置の促進
(カ)職住近接の実現により共働き世帯を支援する。
・都心の既存オフィス等のファミリー向け賃貸住宅への転用等の促進
・大都市地域等の既成市街地において、職住近接型の市街地住宅の供給と良好な住宅市街地の整備を総合的に推進。
(キ)妊婦や乳幼児を連れた人が安心して通行することのできる道路交通環境を整備する。
・交通バリアフリー法に基づき、バリアフリー対応型信号機の整備や歩道の段差、勾配の改善等歩行空間のバリアフリー化を推進
・交通事故が多発している地区を中心に、信号機や光ビーコン等の整備や交差点改良等を重点的に推進するとともに、ハンプやクランク等車両速度を抑制する道路構造の整備等により、通過交通の進入抑制や速度抑制、交通流円滑化等を推進
・自動車と歩行者の通行を時間的に分離する歩車分離式信号の運用、携帯端末装置を通じて歩行者青時間の延長等を行う歩行者等支援情報通信システム(PICS)の整備等を推進
 
エ 再就職の促進
 
 出産や育児のために仕事を離れた者で就業意識が高いものへの再就職支援を推進する。
 
(ア)キャリア・コンサルティングと人生設計、家族計画等のライフプランニングに関する相談を組み合わせ、総合的なコンサルティング等を実施する。
(イ)午前中のみ、午後のみ、土日、夜間などの育児時間に配慮した柔軟な訓練コースの設定を行うなど、職業訓練機会の確保を図る。
 
オ 社会保障における「次世代」支援
 
 子どもは次の時代の社会保障の支え手であることから、社会保障制度において子どもや子育て家庭に対する配慮を行うことについて検討する。
 また、社会保障制度改革に当たっては、制度を支える将来世代の負担が過重とならないよう、現行の給付や負担を見直すなど支えられる世代との負担のバランスを考慮するものとする。
 
○多様な働き方の実現と併せて、育児期間において、収入が下がり又はなくなる場合に、将来の年金額計算において配慮を行うことなどについて、平成十六年の次期年金制度改正の際に検討する。
 
カ 教育に伴う経済的負担の軽減
 
 教育に伴う経済的負担の問題が少子化の背景にあると指摘されていることを踏まえ、若者が自立して学べるようにするため、育英奨学金の充実を行うとともに、新たな貸付制度等についても検討を行う。
 
(ア)学生が安心して学べるよう育英奨学金を充実する。
(イ)世代間扶養を基本的な考え方に運営している年金制度において、若者が次代の「支え手」となることを社会全体で支援する観点から、新たな貸付制度も含めてどのように取り組んでいくか、平成十六年の次期年金制度改正の際に検討する。
 
(3)次世代を育む親となるために
ア 親になるための出会い、ふれあい
 
 将来の親となる世代が、子どもや家庭を知り、子どもとともに育つ機会をつくることにより、人への関心や共感を高める。
 
○保育所や乳幼児健診の場、幼稚園、児童館などを活用し、中高生が乳幼児とふれあう機会を広げる。
 
イ 子どもの生きる力の育成と子育てに関する理解の促進
 
 子どもの豊かな人間性や他人に対する思いやり等の「生きる力」を育むとともに、社会全体が家庭や子育ての意義についての理解を深められるようにする。
 
(ア)子どもの「生きる力」を育むための体験活動、世代間交流を推進する。
(イ)子育ての楽しさや男女が協力して家庭を築くこと、子どもを生み育てることの意義に関する教育・広報・啓発を推進する。
(ウ)幼児期の成長の様子や大人たちの関わり方について理解を深め、社会全体で幼児を育てていくために「幼児とともに心をはぐくむキャンペーン」を実施する。
 
ウ 若者の安定就労や自立した生活の促進
 
 若年者の能力開発や適職選択による安定就労を推進し、若年者が自立して家庭を持つようにする。
 
(ア)若年者に対する職業体験機会の提供や職業訓練を推進する。
(イ)不安定就労若年者(フリーター)対策として、就労支援を行うとともに、若年者の試行雇用を推進する。
 
エ 子どもの健康と安心・安全の確保
 
 食を通じた健康づくり、家族形成や人間性の育成(食育)、性に関する健全な意識の涵養と正しい理解の普及など、子どもの健康と安心・安全の確保を図る。
 また、妊娠・出産の経過に満足することがよい子育てにつながることから、安全で快適な「いいお産」の普及により、出産の喜びを高め、子育ての楽しさを広める。
 
(ア)国民の食生活の改善を目的とした「食生活指針」の推進、子どもの食生活に関する支援マニュアルや学習教材の開発、「食を考える国民会議」の活動強化、「食を考える月間」の推進などにより、「食育」の普及を図る。
(イ)思春期の発達に応じた教材開発の研究や相談援助のモデル実施など、性に関する健全な意識の涵養と正しい理解の普及を図る。
(ウ)「いいお産」に関する情報提供のためのプログラム開発など、「いいお産」の普及を図る。
(エ)モデル中学校における自転車の安全利用に係る交通安全教育の実施、自動車安全運転センターにおける小中学生等を対象とした交通安全研修の受講促進等により、子どもの交通安全を確保するための施策を推進する。
 
オ 不妊治療
 
 子どもを持ちたいのに子どもができない場合に不妊治療を受けるケースが多くなっていることを踏まえ、子どもを生みたい方々に対する不妊治療対策の充実を図る。
 
(ア)不妊治療について、倫理面・技術面、医療機関の体制整備などの課題に取り組むとともに、経済面を含めた支援の在り方について検討する。
(イ)不妊に関する医学的な相談や不妊による心の悩みの相談等を行う「不妊専門相談センター」を各都道府県に整備する。







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