―資料:厚生労働省―
認可保育所、東京都認証保育所、横浜保育室の比較
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認可保育所 |
東京都認証保育所 |
横浜保育室 |
A型 |
B型 |
定員 |
20名以上 |
20〜120名 |
6〜29名 |
20名以上 |
対象 |
就学前まで |
就学前まで |
2歳まで |
助成対象は2歳まで |
施設基準 |
乳・幼児室、遊戯室、調理室、医務室等 |
基本的に同左 |
医務室は不要 |
園庭3.3m2以上(付近の公園可) |
同左 |
- |
園庭又は付近の公園 |
0、1歳は3.3m2以上 |
0、1歳は3.3m2以上 |
0、1歳は2.5m2以上 |
0、1歳は2,475m2以上 |
入所 |
保護者と市町村の契約 |
保護者と施設の契約 |
保護者と施設の契約 |
職員 |
0歳3:1、1・2歳6:1
3歳20:1、4歳〜30:1 |
基本的に同左 |
3歳未満児概ね4:1。3歳以上は国基準と同様 |
開所時間 |
11時間(それ以上は延長保育により対応) |
13時間以上 |
11時間以上 |
保育料 |
国の徴収基準額表を上限に市町村が設定(年齢に応じた費用を基に家計に与える影響を考慮) |
国の徴収基準額表を上限に自由設定 |
月額58,100円を上限に自由設定 |
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ゼロ歳児保育と育児休業の推移
【ゼロ歳児保育】
平成8年度 |
平成11年度 |
平成14年度 |
5.2万人 |
6.3万人 |
7.1万人 |
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(厚生労働省報告例)
※数値は各年4月1日現在
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【育児休業取得率】
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平成8年度 |
平成11年度 |
平成14年度 |
女性 |
44.5% |
57.9% |
64.0% |
男性 |
0.16% |
0.55% |
0.33% |
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(労働省「女子雇用管理基本調査」(平成8年度)、労働省「女性雇用管理基本調査」(平成11年度、平成14年度))
※出産した者(配偶者が出産した者)に占める育児休業を開始した者の割合
※平成8年度は育児休業制度の規定のある事業所における調査、平成11年度は事業所の規模が30人以上の事業所
(参考)次世代育成支援に関する当面の取組方針(平成15年3月14日:少子化対策推進関係閣僚会議)における育児休業取得率の目標
男性:10% 女性:80%
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在宅育児手当制度について
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ノルウェー |
フィンランド |
デンマーク |
受給対象年齢 |
1〜2歳児 |
育児休業給付が切れた後3歳になるまで |
満2歳以上就学前クラスに入学するまで、8週間から1年間までの間支給 |
受給条件 |
国の補助金が出ている保育所を利用していない保護者若しくはパートタイムで保育所を利用している保護者 |
自治体及び民間の保育所を利用せず、家庭で子どもの世話をしている保護者 |
保育所を利用していない保護者、1世帯につき3人まで |
手当額(月額) |
約4万2千円(保育所利用時間に応じ減額)
※保育費と同じ額に設定 |
約3万円(親が週30時間未満の労働に就いている場合には約7千円)
※低所得者、多子の場合等の上乗せあり |
約5万9千円(子ども1人当たりの保育コストの85%以内) |
受給者割合 |
1、2歳児の76%が受給(全額給付が67%)(99年) |
9〜36か月の子どもの59%が受給(97年) |
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児童手当 |
在宅育児手当とは別にあり(3歳未満の場合、年間約27万円) |
在宅育児手当とは別にあり(第1子月額約1万円、第2子以降加算あり) |
在宅育児手当とは別にあり |
育児休業制度 |
休業前の収入の80%の手当で52週若しくは100%の手当で42週 |
3歳まで。ただし、給付は生後11か月までで休業前の収入の66% |
6か月の親休暇期間後、8歳まで父母それぞれに52週。所得保証期間は1歳未満26週、1歳以上13週 |
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※「育児保険構想」の池本美香氏作成の表を基に作成
※スウェーデンでは、「子どもが小さい間はできる限り親が養育すべき」とする保守政党政権時に、3歳まで月額約3万円(保育所利用時間に応じ減額)の在宅育児手当を導入したが、「女性の就労を阻むべきではない」とする社民党政権への交代により94年12月に廃止
スウェーデンにおける保育サービスへの国の財政支援について
【現行制度の概要】
○保育サービス(チャイルド・ケア)はコミューン(基礎的自治体)の責任により実施されている。
○保育サービス(チャイルド・ケア)に要する費用(約400億クローネ(約6000億円))の20%弱は利用者負担であり、残りは、コミューン税、国からの一般国庫交付金、保育料軽減措置(Maximum fee、2002年〜)のための国の補助等により賄われている。
【保育サービスへの国の財政支援制度の経緯】
○1993年、保育サービスに使途を限定した国庫からの補助金は原則として廃止され、使途を限定しない一般国庫交付金の中に統合された。
○総費用に占める保育料収入の割合は、従来の10%から19%に上昇した。
○制度変更に伴う総費用の変動がない中で、保育サービスの利用児童数は増大。一人当たり費用は約20%減少したが、これは、保育のグループ規模の拡大、保育者一人当たり児童数の増によるものであり、保育の質に大きな影響。
○保育サービスに関して、コミューン間の差異が拡大。特に、保育料に顕著であり、同一の所得階層に対して最も高く徴収しているコミューンと低く徴収しているところでは、約70%の格差が生じている。
○コミューン以外の多様な主体による保育サービスが増大。
○コミューンが徴収保育料に上限を設定する場合、保育料収入の減少分について国から補償が行われる保育料軽減措置(Maximum fee、2002年〜)が講じられた。
(参考)
・「高福祉・高負担国家スウェーデンの分析」(井上誠一著 2003年3月)
・OECD Country Note Early Childhood Education and Care Policy in Sweden
血液サラサラ
中高年の皆様、血液のサラサラ度合いが気になりませんか。
若かりし頃の不規則の生活、不適切な食事、運動不足、ストレス等々が因で、それこそ生活習慣病の総合商社と化し、七年前には、軽い脳梗塞までを追加。爾来、薬物療法。血圧の薬や血液サラサラのための薬などを、診療報酬の増嵩に気兼ねをしつつ、毎日服薬。その後、仕事も変わり、住まいも変わり、それ故、環境もかなり改善。お陰と若かりし頃の活力も年齢相応までにリターン。
この間、医師をはじめ家族や友人などから「運動しろ」の大合唱。特に、エアロビのインストラクターをしている娘のうるささは格別。テレビのチャンネルを回せば、いろいろな健康番組が「アルアル」で、血液ドロドロを「おもいッきり」警鐘。その時は「ガッテン」するも、コツコツやる運動は苦手で、結局多忙を理由にネグレクト。
そんな中、今年の一月のことであるが、掛かり付けの病院から血圧脈波検査とやらを勧められた。この検査で、血圧、動脈の詰まり、動脈の硬さなどが分かるとのこと。検査結果の所見ではA(正常)からD(高度動脈硬化)の四段階のうち、C(中等度動脈硬化)と烙印された。B位かなと思っていたので、かなりのショック。
まだまだ現世で、いろいろと楽しみたきこともあり、そう易々と三途の川は渡る訳にはいかない。そんなことで、川向こうの市内のスポーツクラブに行くことを、決心。受付に行き、案内嬢からシステムについての説明を受け、各種のマシーンを置いてあるジムやプール、そして各トレーニングルームを見学し、いろいろなプログラムの紹介を受けた。「三日坊主にならないか」「費用対効果は」とか、頭の中での検討が始まった。「家で風呂を沸かしたりする時間と費用のことを思えば」と考えたり、ベルトの上で「“ハツカネズミ”の如く、歩いたり走ったりして“何になるの”」とかを考えたりした。結局、オリエンテーションして呉れた可愛いお嬢さんの「父と同じ年なのに、とてもそんな年代には見えませんネ」の一言が、躊躇う背中をプッシュ。いろいろな手続きを経て、直ちにゲッツ。
家族に入会した旨を報告したら、大層喜ばれた。ムスメから、各々の運動の特徴、有酸素運動の効用、メニューの立て方など得意顔での講釈を受け、室内シューズなどのスポーツグッズまで、揃えられてしまった。そこまでされると、真面目に行くしかない。かくして、「今夜もお風呂クラブですか」と職場の連中に揶揄されながらも、暇さえあれば行くようにしている。
最初の頃は、いろいろなマシーンにトライ。最近では、「ランニング(ウオーキング)マシーンを約四五分、その後にプールで約四〇分、最後はお風呂とのコースが定着。通い始めは、ウオーキングも五分と持たなかった。今では、時折、ランニングを交えたりするまでになった。距離にして約四キロ、自分を褒めてやっている。プールでは、専ら水中ウオーキング、そしてジャグジーに浸ってプールサイドを行き交う老若男女を眺め、蒸気の室でおよそ一〇分。
プールと言えば、子どもの頃から泳ぎは苦手。要するに、呼吸が上手く出来ず、長続きしない。その旨、行き付けの家庭料理のお店で話したら、常連の方とママさんのご主人とで呼吸法を巡り、アルコールを交えての大激論に発展。結局プールと海では若干異なることで落着。両方とも当然の如く、述べていたのは、「呼吸の途次、水を口の中に入れることで」、清潔好き(?)の筆者はこれには驚愕。中高年の皆様も身に覚えがあろうかと思うが、海の中でモヨオシ、我慢できずに○○を出してしまい、その時の快感は今でも忘れられない。そんなことを思い出すと、とてもできない。
ともかく、クラブの中は、「元気」が溢れている。老若男女、いろいろなタイプ(体型etc)の方がおられる。ピチピチギャルもおれば、トドのごとき方(失礼)もおられる。オトコも同様。エアロビの部屋で、汗一杯に、一コマ四〇分をひっきりなしに身体を動かしている中高年や、マイクをヘッドに声を出しながら指導しているインストラクターに敬服。改めて、ムスメの仕事のハードぶりを、実感。
こうして、若い方から、「生気」を一杯頂戴している。お蔭と、ウン十年ぶりに参加した同窓会で臨席の女性から「生き生きとしているのは、お仕事のせい?」と聞かれたり、前の職場のトップの方から「ハツラツとしているが、何かやっているの?」と聞かれたりもした。早速の効能に、ニンマリ。
スポーツの秋です。皆さんも、サラサラに向けて、頑張りましょう。
(S・O)
―子ども総研から―
日本子ども家庭総合研究所
「母子保健情報」第四五号二〇〇二年五一〜五五頁 母子免疫の低下が問題となり始めた感染症(麻疹、水痘等)小田 慈(岡山大学医学部保健学科)
公衆衛生状態の改善、抗生物質の開発などにより、先進国では感染症は過去のものとなりつつあった。しかし、今まさに現代社会は、制圧したと過信していた感染症に手痛いしっぺ返しをうけ、感染症に対する認識の甘さを痛感しているのではないだろうか。
本稿では、ワクチン接種率が低く、今後感染流行が懸念されている麻疹を例に、その背景、免疫力の低下についてわかりやすく解説している。保育園児は幼稚園児よりもワクチンの接種率が低いともいわれており、保育士の方には正しい知識をもち、是非その啓発普及に努めていただきたいと思う。
従来は麻疹、風疹などに幼少時にかかると、生涯免疫を獲得していた。また、予防接種をうけていれば同様に生涯免疫を得ると考えられていた。しかし、ワクチン接種率が高まり、必然とその感染症の流行がなくなると、自然株のウイルスによる反復刺激(ブースター効果)の機会が減少し、感染を阻止するだけの生涯免疫の維持ができなくなっているという。また麻疹の場合、母親からの抗体が乳児期には存在し、移行抗体が低下、消失する生後八か月移行に感染しやすいといわれていたが、母子免疫の低下も報告され、乳児期麻疹罹患が増加しているともいう。現在日本の麻疹ワクチン接種率は七〇%にとどまっており、麻疹罹患患者のほとんどはワクチン未接種者である。これらの背景からワクチンの二回接種や接種時期の見なおしが検討されており、よりワクチン接種の徹底が求められよう。
同様の問題は麻疹のみならず、他の感染症にもいえることであり、筆者は「人類は感染症と長い間付き合ってきた。上手な付き合い方もあれば、下手な付き合い方もある。よい薬ができたから、ワクチンが開発されたから、などと、ゆめゆめ油断してはならない」と警告している。そして腸管出血性大腸菌の集団感染、結核の再興、薬剤耐性菌による院内感染、新感染症SARSなど、今まさに感染症を考え直すときであるといえる。
「保健の科学」第四五巻九号・二〇〇三年 六六〇〜六六四頁 よりよい保育をめざして 川合貞子 井桁容子(東京家政大学家政学部児童学科)
「よりよい保育」とは、どのような保育をいうのだろうか。近年少子化が問題とされ、子どもと保育をとりまく環境が大きく変わろうとしている。しかし制度や組織がかわっても、親が一番求めるのは安心して子どもを預けられる人、「保育者の質」ではないだろうか。我が子を預けなければならない時、親は少なからず、子どもが寂しい思いをしていないか、集団の中でいじめられていないか等心配をするものである。本稿では保育者の資質が、保育の質の中核であるとし、日常の保育を丁寧にみつめなおした保育実践を述べている。保育士にとっては、基本ともいうべき内容であり、多くの保育士に親が期待したい内容の文献である。
主な内容として、著者らは一歳児の水遊びの分析をとおして以下の六点とそれら保護者と共感すること、保育者間の共通理解をもつこと、保育者自身が保育を見直すことについて述べ、考察している。((1)一歳なりに自分の状態に気付く力があることの発見、(2)一人遊びの豊かさとその大切さ、(3)楽しさを共有する仲間の大切さ、(4)集団の中でも興味のあることに没頭できる静かな時間を持つ意味、(5)子どもの力を信じて待つことの大切さ、(6)自然が子どもに与えてくれるものの豊かさ)
「よりよい保育」をめざすには、どのような視点をもって進めたらよいか、その中核はやはり保育者であり、保育者の質を高めることは急務である。保育制度や保育環境だけでなく保育者自身の労働条件等のみなおしも必要であろう。課題は多いが、子どもは未来を創造する存在であり、子どもが一日を充実して過ごせるよう考えていかなくてはならない。
(門脇睦美)
「栄養学雑誌」第六一巻四号、二二三〜二三三頁、二〇〇三年「保護者の食意識と子どもの食生活・身体状況―ライフステージ別相違点と相互関連性―」塚原康代(福井大学教育学研究科)
近年、子どもの肥満、高血圧症、高脂血症などが増加し、健康問題と密接な関係にある食生活が問題視されている。子どもの食生活管理には保護者の「食意識」が影響することから、保護者の「食意識」や「食行動」に関する研究がなされてきたが、その多くは食習慣形成時期である幼児期に焦点を当てたものであった。しかし、離乳期の食生活が不適切であった場合には幼児期の摂食に問題が生じるとの報告もあり、子どもの食生活を検討するためには、食生活のスタート時期である離乳期から幼児期、学童期、思春期までの長期的スパンで調査することも重要であると思われる。
そこで、本研究において福井県H町を中心に、子どもの食事作り担当者である保護者一二九八人(離乳期三六四人、幼児期三三三人、学童期一八〇人、思春期四二一人)を対象に保護者の食意識(食生活管理に関する意識、食事作りに対する姿勢)および子どもの食生活・身体状況(食品別使用状況、加工食品使用状況、欠食状況、食事時間のふれあい状況、肥満状況)についてライフステージ別に調査し、その相違点を明らかにするとともに、両者の相互関連性について検討した。
その結果、子どものライフステージ別に有意な差が認められたのは、保護者の食生活管理に関する意識総得点と食事作りに対する姿勢であり、子どもの食生活状況では、食品別使用状況、欠食状況であった。また、保護者の食事作りに対する姿勢と関連がみられたのは加工食品使用状況のみであった。
保護者の食生活管理に関する意識総得点は、子どもの食生活状況のすべての項目と関連しており、意識得点の低い保護者の子どもに欠食するなどの問題がみられ、子どもの食生活の改善には保護者の意識向上が重要であると思われた。しかし、保護者の意識を向上させたとしても、意識と実態の乖離(「栄養バランス」を意識する保護者が九〇%以上いるにもかかわらず使用食品のバランスに偏りがある保護者が多いなど)がみられたことを考察すると、保護者の意識と実態が乖離する原因についても今後更に検討する必要があると思われた。
「周産期医学」第三三巻六号、六八三〜六八六頁、二〇〇三年「出生時体重と生活習慣病」内山聖、菊池透、樋浦誠、長崎啓祐(新潟大学大学院医歯学総合研究所内部環境医学講座小児科学分野)
動脈硬化はすでに小児期から始まることが知られているが、さらに近年、生活習慣病の起源を胎生期の栄養障害に求める研究が多く報告されている。英国のBarkerらは、子宮内胎児発育遅延と将来の心血管系疾患発症との間に密接な因果関係があることを見出した。その後、多くの大規模研究により、子宮内胎児発育遅延あるいは低出生体重が成人の肥満、高血圧、高脂血症、2型糖尿病の発症に関係することが疫学的に明らかにされている。
胎児の成長は生後よりも遺伝的素因の影響を受けることが少なく、胎児発育遅延の主な病態は胎生期の栄養障害に集約される。胎生の臨界期に栄養障害を受けた胎児は、適応のために器官や組織の恒常的な構造および機能の変化を起こす。この適応をプログラミングといい、胎児にとっては有利に働くが、器官や組織の変化は恒久的に続くため出生後にさまぎまな影響を与える。
著者らは一九五人の三歳児の血圧と子宮内環境を検討したところ、出生時体重は三歳児の血圧と負の関係を示し、出生時体重が三五二〇g以上の児の収縮期血圧は二九九九g以下の児より3mmHg低値であった。また、母体の妊娠最終週の収縮期血圧および浮腫の存在は、三歳児の血圧とそれぞれ正の関係がみられた。三歳児の収縮期血圧は妊娠最終週の収縮期血圧が10mmHg上昇すると1.0mmHg上昇し、浮腫があると、ない場合より4.4mmHg高値であった。
高血圧の機序を以下に記す。栄養障害を受けた胎盤では11β水酸化ステロイド脱水素酵素活性が低下し、母体由来のコルチゾールの不活性化が低下する。このため胎児の血中コルチゾール濃度が高まり、動脈血管壁のアンギオテンシンIIへの感受性が亢進し、胎児の血圧が上昇する。また、胎児血中インスリンの低下によるIGF-Iの低下、さらに膵β細胞機能の発達障害が起こりインスリン分泌が低下する。また、胎児の筋肉の構造の変化が起きるため、インスリン抵抗性状態が形成される。また、栄養障害は胎児のエラスチン産生障害やネフロン数の発生障害を起こす。前者は動脈のコンプライアンスを低下させ、後者はNaを貯留させ血圧を上昇させる。このように適応した血行動態により血管壁の変化が起こり、さらに血圧が上昇する。
出生後は加齢により動脈壁でエラスチンが減少してコラーゲンに置き換わり、インスリン抵抗性ともあいまって高血圧が顕著になっていく。
これらの結果から、これまでの妊娠管理は無事な出産を目標にしてきたが、今後は妊娠中の栄養状態が産まれてきた子どもの将来の健康にまで影響を与える可能性があることを認識しながら管理を行う必要があることが明らかにされた。若い女性の過度のダイエットは本人だけでなく子どもにも多大な影響を与えると考えられ、憂慮すべきことである。小児期から栄養の重要性を教育することが、本人および次世代の生活習慣病予防にきわめて重要であると考えられる。
「母性衛生」第四四巻二号、一九七〜二〇三頁、二〇〇三年「アトピー性皮膚炎発症予防のための食事制限についての分析―妊娠・出産・育児に関する一般書を対象に―」田中惠子(神戸大学医学部保健学科看護学専攻)
近年、アトピー性皮膚炎の罹患者は急増し、母親の関心事となっている。増加の背景には大気汚染・室内汚染等の環境汚染の悪化、食生活の変化、衣類の変化、親のアレルギー疾患の増加などの要因が考えられる。
しかし、その原因・経過については、専門家の意見の統一がはかられておらず、情報の氾濫は育児不安を助長させているというのが現状である。一九九二年の厚生労働省実態調査によると、「アトピー性皮膚炎発症予防のために、母親が妊娠・授乳中に食事制限を行う場合は、育児書を読んで自主的に行うというのが最も多かった」とあり、母親の身近な情報源である育児書の分析を行う必要性がある。
そこで、本研究において一九八五〜二〇〇〇年に出版された妊娠・出産・育児についての一般書の中で、アトピー性皮膚炎発症予防について記述されていた八〇冊を対象に、母親に紹介している妊娠・授乳中の食事制限の分類基準や離乳食の方法を調査した。
その結果、以下のことが明らかにされた。食事制限を必要とする対象は、アレルギー家系の母親が八割であった。食事制限の開始時期は四つに分類され、妊娠中から授乳中まで五二冊(六五・一%)、授乳中一六冊(二〇・〇%)、妊娠中三冊(三・八%)、食事制限の必要なし九冊(一一・三%)であった。食事制限を勧める育児書は小児科医師の単著や小児科医師と他領域専門職との共著が全体の約四割を占めていた。母親の行う食事制限の方法はアレルゲン除去、症状抑制、経母乳感作、体内感作の防止の四つに分類され、アレルゲンとなる食物を与えすぎないが七〇冊(九八・六%)と最も多かった。離乳食は開始時期を遅くしたり、アレルゲンのある食物を遅めに摂取するが上位を占めていた。
これらの結果から、母親が妊娠・出産・育児について一般書から適切な育児情報を選択していくためには、施設における退院指導の充実、専門家から直接の指導が得られるようなサポートシステムの確立や、母親同志のネットワーク作りへの支援が必要と考える。
(堤ちはる)
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