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――子どもと食生活(38)――
知っておきたい食品衛生法・健康増進法改正のポイント
武蔵丘短期大学学長 実践女子大学名誉教授 藤沢良知
 
はじめに
 平成十五年の通常国会(第一五六回)で、「食品衛生法等の一部を改正する法律」及び「健康増進法の一部を改正する法律」が五月二十三日に成立、五月三十日公布された。
 これは、近年BSE(いわゆる狂牛病)の発生、偽装表示、無登録農薬の使用、中国産冷凍ほうれん草の残留農薬基準違反、ダイエット用食品による健康被害、大企業による食中毒事件などが、相次いで発生し、食の安全・安心への関心が高まってきていることから、国民の食の安全に対する不安解消をねらいに法改正が行われたものである。
 本誌九月号で述べた食品安全基本法の成立と並んで食の安全への取り組みが強化されることになったものである。
 保育園は、小規模給食施設とはいえ、乳幼児といった食の安全・衛生が最も大切な対象であるので、そのあらましを知っておきたいものである。
 ただ、内容が普段の業務とは関係のない事項が多く、難解な面も多いが、乳幼児の食の安全・安心の確保のためにも理解しておきたい。
 
A、食品衛生法の改正関係
一、食品衛生法の目的の改正
 法の目的に「食品の安全性を確保することにより、国民の健康の保護を図る」という趣旨が明確化された。
 即ち、食品衛生法第一条には、改正前は「この法律は飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする」となっていたものを、改正では「この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的とする。」と改められた。
 
二、国や地方自治体の責務の明確化
 今回の改正で国や地方自治体の責務の明確化が図られた。即ち、国の責務としては、(1)情報収集等・研究・輸入食品等の検査に係る体制整備、(2)国際的な連携の確保、(3)地方自治体に対する技術的援助等である。
 地方自治体の責務としては、(1)教育活動等を通じた正しい知識の普及、(2)情報の収集・整理・分析・提供、(3)研究の推進、(4)検査能力の向上、(5)人材の養成・資質の向上等となっている。
 また、国と地方自治体との総合的・迅速な施策の実施のための相互連携が重視されている。
 
三、食品等事業者の責務の明確化
 今回の改正により、食品を供給する事業者は自らの責任において販売食品等の安全性を確保するため、知識及び技術の習得・原材料の安全性の確保・自主検査の実施等の措置を講ずるように努めなければならないことが、法律に明確化された。
 自主的な安全確保の措置としては、製造過程の衛生管理や輸入業者による輸入食品の食品衛生法への適合確認、仕入れ元の名称など、必要な情報を記録・保存するよう努めなければならないことや、危害発生時に、その記録の国・自治体への提出、販売食品の廃棄などの措置を的確・迅速に講ずるよう努めなければならないこと、事業者の記録保存の義務など事業者の責任の強化が図られている。
 「トレーサビリティ」という用語が浸透しつつあるが、トレーサビリティとは、生産・加工・流通等のフードチェーンの各段階で、食品とその情報を追跡(トレース)できることをいい、「誰がどこでどのように作ったか」といった消費者の疑問・要望に答えるために、導入が進められているものである。
 
四、リスクコミュニケーション
 リスクコミュニケーションとしては、BSE事件など踏まえ、食品の安全性に関する情報を公開し、消費者や事業者等の関係者が意見を表明する機会を確保し、行政と消費者・事業者等と双方向性の対話を図ろうとするものである。
 法律では、厚生労働大臣は規格基準の策定等において、都道府県知事等は監視指導計画の策定等において、必要な事項を公表し、広く国民の意見を求めること、また、食品衛生に関する施策の実施状況を公表し、国民・住民の意見を求めなければならないとされている。
 参考までに、最近よく使われるリスク評価、リスクコミュニケーション、リスク管理の用語解説をあげた。(参照)
 
用語解説
リスク評価:食品の摂取が人の健康におよぼす影響について、科学的な評価を行うこと。
リスクコミュニケーション:消費者、生産者、事業者、行政などの関係者が互いに情報や意見を交換して、施策への反映を図ること。
リスク管理:国民の食生活の状況などを考慮し、リスク評価に基づいて、行政が関係者と協力し、健康に重大な悪影響が生じないようにリスクを抑える対策を決定・実施すること。
 
五、残留農薬等のポジティブリスト制の導入
 近年輸入食品の増加に伴い、輸入食品の安全性に対する関心が高まっている。食品中に残留する農薬、動物用医薬品、飼料添加物等については、食品衛生法に基づいて、残留基準が定められている。
 法改正で残留基準の定められていない農薬、動物用医薬品、飼料添加物か残留する食品の流通などを原則として禁止する措置(いわゆるポジティブリスト制)が導入されることになる。
 国内で食用農作物に使用できる農薬は、農薬取締法で約三五〇農薬の登録であるが、食品衛生法で残留基準が定められている農薬は、その半分にすぎない。
 また、国際的に食用農作物に使用されている農薬は約七〇〇といわれるが、食品の残留基準が定められている農薬は二二九にすぎないなど、国際的動向を参考にしながら、残留農薬基準の早急な整備が必要であるとされている。
 
六、安全性に問題のある既存添加物の使用禁止
 食品添加物は、厚生労働大臣の指定を受けなければ販売できない制度である。今回の見直しで安全性に問題があることが確認された添加物、あるいは既に使用実態のない既存添加物について、使用を禁止する制度が導入された。
 この制度導入により、今後既存添加物の毒性試験等が計画的に実施され、安全性の確認が、一層すすむことになる。
 
七、特殊な方法により摂取する食品等の暫定流通禁止措置
 昨年夏以来、中国で製造された痩身目的の食品を摂り、肝機能障害などの健康被害を起こした事例が都道府県等を通じて問題となった。このため今回の見直しでは
 (1)一般食品であって、成分を濃縮するなど通常と著しく異なる方法で飲食する物について、人の健康を損なうおそれがない旨の確認がない場合
 (2)いわゆる中国製ダイエット茶の一部にみられたように、食品によると疑われる重大な健康被害を生ずるおそれのある物が含まれていることが疑われ、食品衛生上の危害防止の必要があると認められる時は、薬事衛生審議会の意見を聴いた上で、食品の販売を禁止することが出来ることとされた。
 
八、その他の食品衛生法による改善措置
 食品衛生法の一部改正措置により、以上あげたほか、国及び都道府県等における食品の監視指導、輸入食品の検疫所における検査の徹底、輸入時検査体制の強化・食品の製造過程における危害分析重点管理点方式(HACCP)の徹底、食品衛生管理者の責務の追加等の法的措置がなされている。
 
九、罰則の強化
 偽装表示事件等を踏まえ、表示違反については、改正前は六か月以下の懲役又は三〇万円以下の罰金となっているが、改正により二年以下の懲役又は二〇〇〇万円以下の罰金が、法人については一億円以下の罰金が課せられるなど、罰則が強化されることになった。
 
B、健康増進法の改正関係
●健康の保持増進効果等の虚偽・誇大広告等の禁止
 平成十五年五月から栄養改善法が廃止され健康増進法が施行されている。その健康増進法の一部改正で、健康増進効果などについて、著しく事実と相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならないとされた。
 規定に違反する者には、厚生労働大臣は必要な措置をとるよう勧告し、更に勧告に従わない時は命令し、命令に従わない場合は、罰則が適用される。
(六か月以下の懲役又は一〇〇万円以下の罰金)
◇ ◇ ◇
 以上今回の法改正のあらましをあげた。乳幼児の食の安全・安心の確保は最優先されるべき問題である。保育所給食関係者として、必要な情報のひとつとして、また身近な問題として受けとめて欲しいものである。
 
引用文献
一、図解食品衛生法改正のポイント、食品衛生研究会監修・中央法規刊、二〇〇三、七、三〇
二、食の安全・安心のための政策大綱―食の安全・安心をめざした農林・水産省の取組
三、平成十五年五月三十日は医薬発〇五三〇〇〇一号厚生省医薬局長通知、「食品衛生法等の一部を改正する法律及び健康増進法の一部を改正する法律の施行について」
 
 
 
児童福祉法による児童入所施設措置費等及び保育所運営費負担金における平成十五年度事務費保護単価(保育単価)の改正について
 (事務連絡 平成十五年十月十日)各都道府県 指定都市 中核市児童保護措置費(保育所運営費)担当者宛 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係長 保育課運営費係長)
 標記については、例年国家公務員の給与改定に準じ改正を行っているところですが、本年度も昨年度に引き続き事業費保護単価(保育単価)の額が改正後に減少することが見込まれます。
 正式な改正は、補正予算の成立後速やかに通知することとしていますが、改正後の単価は支弁上、年度当初に遡って適用されることとなりますので、以後の国庫との精算事務等に適正な事務処理を期されますとともに、施設職員の給与の支払い等に関して不備が生じることのないよう、事前に管内市町村及び児童福祉施設へご周知くださいますようお願い申し上げます。
 なお、参考までに国家公務員の給与改定の概要を添付いたします。
注)児童入所施設措置費担当者が受理した場合には保育所運営費担当者に、保育所運営費負担者が受理した場合には児童入所施設措置費担当者に情報提供して下さい。
 
(参考)
国家公務員給与改定の概要
 
1 俸給表
 官民給与の逆較差是正のための俸給の引き下げ(△一・〇七%)
(四月からの差額については、十二月期の期末手当で調整)
2 扶養手当
 配偶者に係る支給月額の引下げ
3 住居手当
 自宅に係る住居手当を新築・購入から五年間に限定
4 期末・勤勉手当
 年間支給月数 四・六五月分→四・四月分(△〇・二五月分)
 
 
 
―8頭目のBSE牛
道野英司
 
 秋は運動会シーズン、娘の卒園した保育園からも十月十一日に運動会を開催するとの案内状が届いた。当日は残念ながら応援に行けなかったが、来年の春に六年前の卒園のときに埋めたタイムカプセルを掘り出す予定なのでその時はぜひ伺ってみたいと考えている。その娘も小学六年生、今年の運動会が小学校生活最後となるため、今年こそ娘の活躍する姿を見ることができると楽しみに期待していた。私自身、勉強はともかく、運動会で結構活躍した記憶があるので、つい娘にも期待してしまうのだが、運動会での活躍は昨年までパッとしない。
 さて、当日朝起きると天気は上々、組体操、障害物競走、リレーなど六年生の思い出となるようシャッターチャンスを逃さないぞと早起きして張り切っていた。すると、あとから起きだして来た娘がぽつんと「熱がある」と言い、体温計を見ると三七度四分だった。普通の子供は多少熱があっても親には言わずに無理しても運動会に出るのでは・・・と思いつつも、それを悟られないように「大丈夫か、診療所に行こう」ということになった。病状が大したことがなかったら、欠席者が出ると友達に迷惑がかかる午後の組体操とリレーに遅れて参加しようと娘をけしかけていた。ところが近所の診療所で虫垂炎、いわゆるモウチョウの疑いがあると言われ、大急ぎで近くの病院に連れて行き、レントゲンや超音波の検査をすることとなってしまった。さんざん待たされて検査を終え、結局は軽い扁桃腺炎ということで無事に帰ってきたのであるが、その時間には運動会は予定通り終了しており、我が家の運動会は診療所と病院を親子でハシゴした思い出深いものとなった。
 ところで今月の「食べものの話」であるが、日本で八頭目のBSEいわゆる「狂牛病」の牛が発見されたことについてご紹介する。
 去る十月六日、九月二九日に茨城県のと畜場に搬入された生後二三か月のホルスタイン種の雄牛がBSEいわゆる狂牛病であると診断された。ご存じのとおり、一昨年九月に日本で最初のBSE感染牛が発見されたことから、同年十月十八日から食肉処理されるすべての牛を対象として、都道府県の獣医師がBSE検査を実施し、疑わしいものについては、国立感染症研究所や帯広畜産大学で確認検査を実施し、厚生労働省で最終診断を行っている。九月までの約二年間に約二四〇万頭の牛が処理、検査され、BSEと診断された牛は今回のものを含め、通算八頭となった。
 ところで今回BSEと診断された牛は、いろいろな面でこれまでのBSEと診断された七頭の牛と比較すると、異なることがあり、マスコミにも大きく取り上げられた。
 まず年齢、いや月齢が二三か月齢と極めて若い。今までBSEと診断された牛は六七か月齢から八三か月齢と生後五年以上たっており、欧州でもBSEの発症年齢は五歳を中心にプラスマイナス二年程度である。
 また、BSEは感染牛の肉骨粉を食べることにより感染するとされている。この肉骨粉は食肉処理の際にでる骨や臓器などの残さを加熱して油脂を除去したもので、栄養価が高いということで欧米や日本で飼料に使われ、感染が拡大した。そこで、欧州では二〇〇〇年、日本でも二〇〇一年十月に肉骨粉などの動物性タンパクを飼料に使用することが禁止された。この牛は、肉骨粉の給与が法的に禁止された二〇〇一年十月生まれであり、肉骨粉の給与禁止措置が適切に行われたのかという問題も生じるおそれがあり、マスコミ報道も大きく扱われる要因となった。
 また、今回の検査結果は厚生労働省のホームページでも写真を掲載しているが、従来欧州やわが国で見つかったBSE感染牛と異常プリオンの性状が若干異なることがわかった。さらにこの八頭目の検査結果を公表した直後にドイツのミュンヘンで開催されたプリオン病の国際学会で従来と性状が異なる異常プリオンによるBSEがイタリアやフランスでも発生していることが報告されている。
 BSEという病気は発見されてから二〇年近くが経過したが、発病するまで数年かかり、異常プリオンが生体外で培養ができないため、研究には長い時間が必要となる。このため、今だ未解明の部分が多い病気であり、今後もいろいろな新しい知見が得られると思うが、そのつど的確な行政対応が求められるものと考えている。
(厚生労働省食品安全部監視安全課課長補佐)
 
 
 
民間委託についての親の意見
保育園を考える親の会
 
 都市部では公立保育園の民間委託の動きが、目立ってきました。受ける側の民間事業者としては、事業拡大のチャンスととらえておられる向きも多いかと思われますが、公立保育園に子どもを通わせている保護者の間では、大きな不安が広がっています。
 二〇〇三年五月に行った保育園を考える親の会のアンケートでの会員の意見を紹介してみましょう。
 なお、この質問は、現在公立保育園に子どもを通わせている保護者に限定して回答してもらったため母数は多くありませんが、保護者の一般的な思いをよく表していると思われます。
 
民間委託への賛否
 公立保育園の民間委託について、「反対したい」「賛成したい」「条件付き賛成」の三つの選択肢を設けて回答してもらったところ、下表のとおりとなりました。なお、回答総数一五九通のうち、有効回答は七七通でした(私立保育園の在園者等は無回答に含まれる)。
 
反対したい 46人 59.7%
賛成したい 4人 5.2%
条件付き賛成 27人 35.1%
有効回答 計 77人 100%
 
 設問は「現在、公立保育園に子どもを預けている方にお聞きします」となっており、最も影響が大きい当事者の意見を聞いた結果となっています。積極的賛成は、わずかに五・二%。反対が約六〇%で、残りのほとんども条件付きの賛成という結果でした。
 公立保育園については、「効率が悪い」「サービスが悪い」「ニーズ対応ができない」など世間からのきびしい評価がありますが、在園している多くの家庭にとっては、子どもの生活の場としてかけがえのないものであることには変わりありません。満足している保護者はもちろんのこと、多少の不満がある保護者でも、民間委託を両手を挙げて受け入れられないのは当然です。しかし、待機児問題の深刻さを肌身に感じながら、保育の受け皿を広げ、内容を充実させるための民間委託ならやむをえないと考えている保護者もあることがわかります。
 それぞれの選択肢別に、その理由や条件を聞いてみました。その内容を集約すると、次のようになります。
 ( )内は同様の意見の数。記述の中に複数の要素が含まれていた場合は、重複してカウントされています。
 
自由記述:「反対」の人が危惧することは?
○保育(士)の質の低下(24)
○営利目的になるのでは(8)
○保育士の数が減ること(6)
○給食が園内手作りでなくなる(5)
○ベテランの先生がいなくなる(5)
○採算に乗らないことが全て切り捨てられる(5)
○売り物っぽい保育になる(3)
○保育料のアップ(3)
○保育士(職員)の待遇が悪化する(2)
○サービスになってしまうこと(2)
○一部の親にアピールするような特別プログラムが組まれ本来の保育が軽視されること(2)
○園の雰囲気が変わること(2)
○合わなくても転園できない(2)
〈以下、各一票〉
○今の保育士を信頼しているので変わることは考えられない
○園庭
○アウトソーシングが増える
○保育園全体でのかかわりが少なくなる
○職員が年度途中でやめること
○教育的な保育がないがしろになること
○子どものことを考えていない
○保育内容の説明がなく移行すること
○親の意見に振りまわされる
○福祉は役所にやってもらいたい
 
 保育士の質の低下を危惧する声が圧倒的多数でした。熟練した保育士が多い公立園の保護者から見ると、企業の受託園などで、保育士が一年契約であったり、民間園の保育上の勤務年数が全体に短いことなどは安心できない点となっているといえます。
 また、民間の児童獲得競争により、うわべだけの特色づくりや保護者サービスになっていくことを心配する声も聞かれました。
 
自由記述:「賛成」の人が期待することは?
○保育士のレベル向上(2)
〈以下、各一票〉
○保育時間の延長
○親の立場になって考えるようになること
○ニーズに合わせて柔軟な対応
 
自由記述:「条件付き賛成」の条件とは?
○保育内容の維持・向上(8)
○保育者の人数(5)
○保育士の総入れ替えしないこと(4)
○決定までのプロセスを明確に(3)
○延長保育の実施(3)
○保育(士)の質が低下しないこと(2)
○園の施設、設備、業務を明示(2)
○保育料(2)
○民営化に保護者も議論に参加できること(2)
○しっかりとした監視体制(2)
○体制が代わらないこと(2)
〈以下、各一票〉
○営利目的にならないこと
○職員採用について、必ずしも資格が必要とは思わないが、子育て経験がある人などを一定期間様子を見て採用するなど、慎重を期してほしい
○予算が減らないこと
○コスト削減のみでは納得できない
○条件が悪くならないこと
○子どもと保育士の人数バランスを現状よりあげること
○三歳児以上は質を保てる保証が有ればOK。ゼロ歳児は反対
○経営不振になったときの対応を明確に
○問題が出たときの対応を明確に
○責任の所在を明確に
○第三者機関による定期的なチェック
○保育士の質を明示
○合理化はやめてほしい
○内容次第
○今の雰囲気が変わらないこと
○充分な研修
○職員が半数以上残留すること
○保育士が幅広い層であること
○園長が交代しないこと
○デメリットの改善
○働く親の立場を理解してくれること
○サービスの向上
○子どもの育ちを重視すること
○最低基準の現状維持
○保護者会の設立許可
○宿泊保育の実施
○保育士の身分保障
○ハード面の改善
○病児保育の実施
 
 当然ですが、保育内容の維持・向上を条件に挙げる声がもっとも多く、保育士の質や人数について書いている意見も、それによって保育内容(質)が変わってくるととらえているのだと思います。
 現在の園長や職員の一定数が残ることを条件に挙げている意見も目立ちます。子どもの心のよりどころとなっている保育者がガラリと替わってしまうことは、非常に不安だと思います。
 また、監視体制や責任の所在などをはっきりしてほしいという条件も多く、民間委託によって行政の責任が後退してしまうことが心配されています。
 決定までのプロセスを明確にすること、保護者も議論に参加することなどを挙げている意見もあり、保護者を無視して進めようとする自治体の動きに警戒感が高まっています。
 なお、ひとくちに「民間」といってもいろいろなイメージがあり、中には認可保育園制度が堅持されるかぎりは心配する必要のない事柄も含まれていますが、それだけ保護者の不安が大きいことはわかります。
 
まとめ
 私自身、たいへんすばらしい社会福祉法人立の認可保育園にお世話になりましたし、その後も質の高い保育をしながら保護者の就労支援もしっかりやっている私立保育園に多く出会いましたので、民間の力には大きな期待があります。また、現状、財政的制約の中で、保育の量的な充実のために民間委託がどうしても必要になっている地域もあります。慎重な準備を重ね、保護者や子どもの納得を得て行われる民間委託であれば、それは現状改善への切り札になるだろうとも考えています。
 しかし、一方で、独善的におそまつな保育をしながら地域での権力のうえにあぐらをかく私立保育園があったり、保育の商業サービス化に拍車がかかりそうな昨今の状況を見ていると、大ざっぱな「民間万能説」には異論を唱えたくなります。少なくとも、現在のいくつかの自治体の動きには、一方的な性急さを感じます。
 また、さまざまな保育サービスが登場している時代だからこそ、公立保育園の存在意義も見直すべき部分があると思います。多様な保育サービスというのであれば、その中に行政の直営施設が混在していたほうが、いろいろな意味で地域社会におけるメリットが大きいと考えるからです。会の中でも、今後議論が高まっていくと思われます。
(保育園を考える親の会代表 普光院亜紀)
 
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。







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