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―青年部:研修会報告―
第25回全国青年保育者会議
―栃木大会・概要報告―
 去る、平成十五年七月八日から十日までの三日間の日程で、「第二五回全国青年保育者会議栃木大会」が開催されました。会場のホテル東日本宇都宮には、全国より約二三〇人の参加者があり、『子育ての未来像へS・T・A・R・T』〜変化の兆しを好機にできるか〜というテーマのもと、ジャズとカクテルと餃子の町、宇都宮で熱い議論がなされました。
 初日の開会式では、開会として堀昌浩副実行委員長、主管者を代表して阿久津均実行委員長、主催者として東口房正青年部長の挨拶の後、来賓の栃木県知事福田昭夫氏(代理 栃木県出納長堀口昭雄氏)、宇都宮市長福田富一氏、栃木県議会議長梶克之氏、栃木県保育議員連盟会長渡辺渡氏、日本保育協会常務理事菅原善昭氏、日本保育推進連盟常務理事上村芳夫氏より祝辞を頂戴しました。
 
 
 初日に基調講演「保育の動向と課題について」というテーマで、厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長高井康行氏をお招きし、次世代育成支援対策に係る厚生労働省の取り組みについて、経済財政諮問会議の主要スケジュールを示して説明されました。
 次に鼎談が「今後の社会福祉の動向・・・」というテーマで、厚生労働省健康局国立病院部企画課 国立病院・療養所組織再編推進室長 古都賢一氏、社会福祉法人神戸副生会理事長 中辻直行氏、社会福祉法人翠燿会グリーンヒル施設長 津川康二氏により富士保育園高橋英治氏がコーディネーターとなり行われました。
 夜の懇親会では、栃木県厚生常任副委員長岡本治房氏より乾杯の挨拶を戴き、南野陽征&Quartetと松岡美代子氏によるボーカルのジャズ、日本一を受賞したバーテンダーの作るカクテル、フランス料理、特産の餃子に舌鼓しながら、栃木県日本保育協会青年部による和太鼓集団『打撃』による激しく力強い太鼓の響きを身体に感じて、楽しいひとときを過ごしました。
 第二日目は午前より、四つの会場に分散して分科会が行われました。第一分科会(経営研究委員会)では、「消費財としての保育サービス」〜変わる福祉の認識〜をテーマにグループ討議とディベートが行われました。第二分科会(保育研究委員会)では、「うちの保育園では・・・企業秘密大公開!!」〜保育園が保育園であるために〜をテーマに、自園の取り組み自慢できる保育についてグループ討議と事例発表をしました。第三分科会(情報研究委員会)では、「新世代保育園論〜これからの保育園を考える〜」〜いま、保育園において何が必要とされているのか。保育園がより求められる存在になるためには〜をテーマに保育園を考える親の会代表普光院亜紀氏、目黒区健康福祉部保育課長白鳥千恵子氏、遊育編集長吉田正幸氏、慈紘保育園副園長松山益代氏をパネリストに山口委員長がコーディネーターとなりパネルディスカッションを行いました。第四分科会(青年部執行部)では、「維持か変革か・・・」をテーマに衆議院議員田村憲久氏の国会報告を発題として熱い議論を交わしました。
 
 
 第三日目は、記念講演「これからの保育」と題して、衆議院議員津島雄二氏による講演がなされました。続いて分科会発表が、第一分科会竹内経営副委員長、第二分科会藤先委員長、第三分科会山口情報委員会委員長、第四分科会高橋英治前主星部長により報告が行われました。
 閉会式では、主管者・主催者挨拶の後、阿久津均実行委員長より次期開催地である中村潤子青森県支部事務局長に大会旗が渡され、青年部員藤田俊彦氏らによる弘前弁でのユニークなPRがされ盛会のうちに全日程を終了しました。
(森川)
 
 
 
子どもと「かぜ」
全国保育園保健師看護師連絡会 岡田恵美子
 普段、大人は高熱が出ることが年間何回あるでしょうか。たぶん一回か多くても二回くらいではないでしょうか。ところが子どもは本当によく熱を出します。幼児期のある時期には毎月毎月熱を出すこともあって、何か特別な病気があるのではと心配されたり、仕事の都合をつけたりと大変な思いをされた経験をお持ちの保護者の方は少なくないでしょう。発熱時に受診すると、そのほとんどが「かぜ」と診断されることが多いかと思います。
 
かぜとは
 「かぜ」とは、種々の病原菌が主に鼻や喉に繁殖し、鼻水や咳、熱などをもたらす病気の総称です。かぜの原因菌のほとんどはウイルスで、八〇種類とも一〇〇種類ともいわれるほどいろいろあります。子どもは発達の過程で初めて出会う細菌やウイルスと戦い続け、身体に備わった免疫系を発動して一回一回の感染に対抗し、その相手を記憶し続け、やがて大人になってそれぞれの感染症の「免疫学的記憶」をもとに自動的に対抗できるよう学習しているのです。発熱は困ったことと思われるでしょうが、そうやって自分の体でウイルスをやっつけようと頑張っているのです。抵抗力のある丈夫な体が育つためには、どうしても通らなければならない過程のひとつなのです。
 
かぜの治療・家庭での対処法
 かぜの原因菌のほとんどはウイルスですので、根本的に治す薬はありません。かぜ薬といわれるものは、熱、咳、鼻水などの症状を和らげる対症療法に過ぎません。
 例えば、解熱剤を使っても、元の病気が治っていなければ再び熱は上がります。その際悪寒や震えが起き、子どもはかえって苦しい思いをします。発熱は病原体を退治する防御反応なので、熱を下げると病原体の勢いを助けることになりかねません。
 熱の出方は、病気の種類を知るのにとても大切な症状です。むやみに下げると「熱型」がわからず、診断が難しくなる場合もあります。
 熱の上がりはじめは悪寒や震えがあるので、布団をかけるなどして体を温めてあげます。しばらくすると、体が熱を逃がそうとするため、手足が熱くなり、顔がほてり、汗をかいてきます。この場合は、風通しをよくし、着替えさせたりするなど涼しくしてあげます。解熱効果は乏しいですが、子どもが心地よいようなら、アイスノンや冷えピタシートで冷やしてあげるのもよいでしょう。また、発熱によって呼吸が速くなり、呼気から多量の水分が吐き出され、汗によっても水分が喪失しますので「脱水」を起こしやすくなります。脱水症の初めの兆候は、元気がなくなる、尿の回数が減る、唇が乾く、唾液がねっとりする・・・などです。水分の補給は「少量を頻回に」が原則です。
 熱性痙攣の既往のある場合は、医師の指示に従って、抗痙攣薬や解熱剤を使用する必要があります。熱の上昇に伴って、急に意識がなくなり、体や手足を硬く突っ張るようにしてふるわせ痙攣を起こします。一歳から五歳くらいまでが好発年齢ですが、脳に異常があるわけではなく、未熟な脳が熱に反応して痙攣を起こすと考えられています。熱性痙攣は起こしやすい体質があり、親兄弟に既往があると発生率が高くなるとされています。熱性痙攣は数十秒から数分間でおさまりますが、十五分以上続くもの、何回も繰り返すもの、発熱してから一〜二日たってから起こした場合には、別の病気を考えてすぐに受診する必要があります。
 咳も病気に対する防御反応で、痰を出して病原体や炎症物質を排除する働きをしています。咳止めでむやみに止めると、長引かせたり、こじらせたりする可能性があることも頭におかなければなりません。
 咳には湿気が効果的です。加湿器(カビが生えないよう定期的に掃除する必要あり)を使ったり、室内に濡れたタオルや洗濯物を干すだけでも湿度が保たれます。胸を蒸しタオルで湿布したり、起坐位にしたり、水分の補給も頻回にしてあげましょう。
 かぜであれば、基本的に、治すのは薬ではなくて子ども自身の体力です。本人の気分がよいように、ゆっくり過ごせれば、それが一番回復に役立ちます。しかし、かぜによく似た別の病気に注意しなければなりません。かぜのウイルスに抗生物質は効きませんが、溶連菌やマイコプラズマの感染など、抗生物質が必要な場合もあります。一つのポイントとして三日以内に治らない場合、別の病気の可能性を疑って、受診をする必要があります。医師にかかる目的は、薬をもらうことではなく、重大な病気かどうかの診断をしてもらうためです。
 
かぜの予防
 手洗い・うがいで物理的に洗い出すこと、バランスのとれた食事、十分な睡眠・休養、部屋の換気と湿度などの当然のことを心がけることが予防につながります。特に、生活リズムを正しく作ってあげることは重要なことだと思っています。毎日の家庭での生活の様子の記録から、夜型になっている子どもの多いことに気づきます。しかも、ゼロ歳児クラスでさえ、しっかりとした睡眠時間がとれていない子もいて、保育園での午前中は休養の時間になってしまっている現実です。生活リズムは四〜五歳で完成するといわれています。自然にできていくものではなく、大人が作ってあげなければならないものです。特に十分な睡眠は成長に必要なホルモンの分泌や、病気から身を守る抵抗力を作るのに欠かせないものです。
 また、周りの大人もウイルスを家庭に持ち込まないように予防に心がけることが大切です。インフルエンザの流行の場合ですが、成人の流行が落ちつきかけた頃に学級閉鎖がピークを迎えたというデータがあります。地域全体としては大人から子どもに感染したことになりますが、家庭の視点で眺めれば「親」から「子」にうつしたともいえます。忙しい毎日ですが、大人も生活リズムを見直す必要があると思います。
 
 以前に「あいち小児保健医療総合センター」で行っている電話相談の内容について話を伺う機会がありました。開設から一年間での相談件数は二六五四件で、最も多かったのは「子どもの病気、手当て」に関する相談で、九九七件ということでした。下痢をしているがどのような食事にしたらよいかとか、昼間受診したが発熱が続いておりどうしたらよいかといった内容が多かったそうです。電話で様子がわからない分、かなり丁寧に状況を聞く必要があり、その会話の中でお母さん方が自分で納得されているようだと伺いました。保育園では、病気で欠席の場合電話連絡をもらいますのでそこで子どもの様子を伺いながら、手当てのアドバイスをするようにしています。子どもの病気によって起こったお母さんなど家族の「不安の解消」に少しでも役立てばと思っています。
 社会の厳しい情勢もあり、かぜ程度で休めないのが保護者の現実です。しかし、薬で抑えて無理な登園を続けると、重症化したり、合併症を起こしたりと結局は長引いてしまうことも多いものです。病気でつらい時、家族や周りの大人に心配されて優しくしてもらったことは、きっと子どもの心が豊かに成長する糧になると信じています。
 
第15回全国保育園保健研究大会のお知らせ――子どもの健康と保育―
主催 全国保育園保健師看護師連絡会
日時 平成16年1月24日(土)PM1:30〜5:00
1月25日(日)AM9:00〜PM4:00
会場 仙台福祉プラザふれあいホール
仙台市青葉区五橋2-12-2
TEL 022-213-6237
参加費 4000円
対象 保育園の保健師、看護師、園長、保育士、栄養士、調理師、学校養護教諭、保育士養成校の教職員、その他乳幼児保健に関心をお持ちの方。
内容 1月24日(土)
○特別講演1「保育行政の展望」
(厚生労働省保育課)
○特別講演2「育児に悩む心に寄りそって」(大日向雅美)
1月25日(日)
○シンポジウム〈子どもの健康と保健〉基調講演「保育園保健のめざすもの」高野陽 シンポジスト(園長、看護職、嘱託医等の立場から等)
連絡先 全国保育園保健師看護師連絡会
TEL 03-3754-8613
 
 
 
レポート
幼稚園の窓から(39)
幼稚園と企業の協同で子育て支援の接点を
片岡 進
「月刊・私立幼稚園」
編集長
立川市私幼協の「子育て教育フェア」
 残暑の厳しかった九月の土曜日、東京のJR立川駅前では幼稚園児の親子約一万人が集まって、「子どもがいる楽しい街並光景」を繰り広げ、市民の注目を集めていた。市内十二園で組織する立川市私立幼稚園協会(須崎平吉会長=立川双葉幼稚園)が、「幼稚園の“子育て教育フェア”」を開いていたのである。
 場所は、西武ドームや多摩動物公園を結ぶ多摩モノレールの高架下。そこに立川市は昨年、細長いイベント広場を整備した。路上ライブやフリーマーケットのような市民手作りの憩いの場が週末ごとにできるのを期待してのことだった。しかし不景気による元気ダウンのせいか、その期待に応える団体はほとんどなかった。そこで同協会が「親子が喜んで集まり、子育ての役に立つフェアを開こう」と、広場活用の呼び水役を買って出た。
 フェアの中身は、各幼稚園が何かをするのではなく、地元企業に、子育て家庭のための情報と品物(サンプル品)の提供を呼びかけるものだったが、その趣旨と心意気に賛同して、青年会議所、ボーイスカウト連盟、立川警察署などを含む三十数社・団体が協力を申し出、細長い広場の両側に約四十のテントが並んだ。そのほか人寄せのために一流の大道芸人を八組招き、その費用は幼稚園協会が負担した。
 幼稚園の教職員は、清掃や救護、放送・案内など、準備と運営管理の裏方に回ったが、「幼稚園が何もしないわけにはいかないだろう」と、丸太切り、宝さがし、パラパルーン、教育相談室などのコーナーを担当した。
 やってきた親子は、祭りの露店を見て歩くように、ひとつひとつのテントを覗きながら無料配布の品物を集めたり遊びに参加していく。配布されるのはスポーツドリンク、お茶、絵本、折り紙など体に良い飲食品か子どものための教材に限られ、それ以外のものは宣伝チラシを含めて禁止された。そして各企業はそれぞれのテントで、割り箸鉄砲、竹トンボ、鬼ごっこ、手作り紙芝居など遊びの伝授に精を出した。
企業が親子との付き合い方を学ぶ場にも
 企画した幼稚園関係者が驚くほど企業側が積極的に協力してくれたとのことだが、これは「子育て支援に企業も参加すべきとの呼びかけを聞いて、何かしなければと思っていた。しかしその気持ちはあっても、日常の仕事に追われて具体化することがなかなかできなかった。そんなときにこの話があったので、動き出すきっかけになればと思って手をあげた」というように、企業側の気持ちをうまく吸収できたためのようだ。
 それを考えると、今後、幼稚園・保育園は自分の園だけで行うイベントでも、地域での子育て支援の輪を広げていくためには、こうした企業や地元サークルが参画できるような視点が必要だろう。産学協同の子育て支援の第一歩と言えるものでもある。
 さてフェアの様子をよく見ていると、面白い中身なのにちっとも人が集まらないテントがある一方で、珍しくもない中身なのに押すな押すなで列を作るテントがある。場所のせいではない。それはどうも、楽しさを演出する場の雰囲気づくりと、人を呼び込むスタッフの語りかけの違いにあるようだ。日ごろ子どもとの付き合いに慣れている保育用品企業などは、やはりその点が上手だった。つまりこうした幼稚園が主催するイベントは、子育て支援や少子化対策に取り組む企業・団体にとって、子どもや若い親との付き合い方を学ぶ場を提供することにもなるようである。
 
 
 
誌上研修「人材育成」(22)
「保育と人生」を豊かに生きるヒント集 第92回
保育に生きる3つの幸せ
人材開発コンサルタント
塩川正人
 保育に生きる皆さんは、他のどんな職業でも得ることのできない「3つの幸せ」に恵まれていると思います。製造業、商業、事務、サービス、技術、開発、公務員などのどれにもない、「親と子」を支えている幸せです。保育園がなかったら「家族」と「生活」が維持できない人たちを支えている幸せです。これはすごい社会貢献であり、人間愛です。保護者のわがまま等でご苦労も多いでしょうが、例えば以下のような幸せを、もう一度確認してみましょう。
1 こどもとともに生きる幸せ
(1)子どもという「天使」と人生を生きている幸せ。
(2)子どもの「育ての親」のひとりになれる幸せ。
(3)子どもの人格形成に、決定的影響を与える幸せ。
(4)子どもの悪い習慣を直す役割を、指導できる幸せ。
(5)保護者の十分でない部分を補い、子どもを支えてやる幸せ。
2 保護者とともに生きる幸せ。
(1)保護者が仕事を続けることで、生活を支えている幸せ。
(2)保護者の子育てを支援する幸せ。
(3)保護者のわがままを気付かせ、反省を促し、健全な子育てに誘導する役割を持てる幸せ。
(4)保護者の子育ての悩みについてカウンセリングを担当できる幸せ。
(5)保護者とともに、子どもの未来を創造する仕事をする幸せ。
3 自分の幸せ
(6)仕事の全てが「学習」として自分の成長を確認できる保育の仕事の幸せ。
(7)純真無垢の子どもとともに生きるため、自分のなかに「純粋な心」を持ち続けられる幸せ。
(8)社会的責任も大きいが、社会への貢献のもっとも大きな仕事をしている幸せ。
(9)自分だけの満足でなく、職員、子ども、保護者、地域社会などと「大きなチームワーク」で仕事をしている幸せ。
(10)一生を貫いて「保育に生きる誇りと達成感」を持ち続けていける幸せ。
 ある人は「きれい事で保育はできません」と言い「肉体も精神もギリギリまで使う“労働”が保育の現実」という意見もあるかもしれません。しかし「保育に生きる幸せ」を感じる時が、上記のような時であることも事実だと思います。そしてこの幸せを、職員全員で話し合うことが、とても大切なことのように思います。







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