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―保育園を考える親の会から[30]―
「保育サービス」の評判
保育園を考える親の会
 二〇〇二年の保育園を考える親の会会員アンケートでは、利用したことのある保育サービスをすべてあげてもらい、「特によかったこと、悪かったこと」を記入してもらうという項目を設けました。
 今回は、その結果について概略を振り返ってみましたので、ご紹介します。総回答数は二〇九通で、利用したことのある保育サービスの種類は、下表の通りでした。
 
認可保育園を軸に
 こうして見ると、回答者のほとんどが公私立の認可保育園を利用しており、特に公立利用者は六五%を占めています。これまでの保育園を考える親の会のアンケート結果も同様でしたが、認可外保育園や保育ママは待機児になりやすい低年齢児期の利用が多く、ベビーシッターなどの個別保育は認可入園後の二重保育や病後児保育として利用されることが多くなっていることがわかります。
 保育サービスの利用は認可保育園を軸にしながら、さまざまな種類のものに広がっているという状況です。
 
公私立認可保育園の評判
 「特によかったこと」「特に悪かったこと」の項は、回答者が特に書きたい保育サービスを選んで記入しています。認可保育園について、どのくらいの割合で「特によかったこと」「特に悪かったこと」が記入されたかという記入率(*)を比較すると、「特によかったこと」の記入率は、公立が二五・六%、私立が二五・三%、「特に悪かったこと」の記入率は公立が一四・〇%、私立が一六・七%と、公私立でほぼ同じくらいの比率になっています(*記入率=その保育サービスについて記入した人の数/その保育サービスを利用した人の数)。
 一般に単純に満足度をたずねると、民間のほうが数値が高くなる傾向がありますが(この背景には利用者の権利意識の違いもある)、ここではほぼ同率、わずかに公立のほうが好感度が高い結果になりました。
 公立保育園の「特によかったこと」では、「安心して預けられる(自治体の直営であること、保育士の経験、人数など)」といった内容が最も多く見られました。また、職員の質のよさにふれた内容も同じくらい多く、「職員や園長が親身だった」「よく話をしてくれた」など園を身近に感じている感想、「保育内容(自由にのびのびなど)」や、「給食の内容」をほめた記入も複数見られました。
 私立保育園の「特によかったこと」では、「個々の事情にフレキシブルに対応してくれる」といった内容が最も多く見られました。また、「園長や職員が熱心」「園と信頼関係ができている」「人数が少なくアットホーム」など園を身近に感じている感想、「保育内容(豊かな体験など)」をほめる記入も複数見られました。
 公立保育園の「特に悪かったこと」では、「職員の印象・態度・質が悪い」「保護者との連絡が悪い」という指摘が複数見られ、「融通がきかない」「公務員の限界」など、昔ながらの批判もありました。
 
回答者が利用したことのある保育サービス(複数回答)
(1)公立保育園 136名
(2)認可私立保育園 83名
(3)東京都の保育室 17名
(4)東京都の認証保育所 8名
(5)横浜市の横浜保育室 8名
(6)その他の自治体の助成を受ける認可外施設 35名
(7)厚生労働省認定の駅型保育所 3名
(8)事業所内(院内・企業内)保育所 5名
(9)託児所・ベビーホテル 24名
(10)公的保育ママ(家庭福祉員など) 19名
(11)民間保育ママ(エスクなど) 19名
(12)ベビーシッター 50名
(13)その他(*) 33名
無回答 5名
 
*(13)その他33名の内訳(複数回答)
ファミリーサポートセンター(サービス) 18名
NPO 2名
21世紀財団の保育サポーター 1名
シルバー人材センター 3名
生協ヘルパー 2名
個人契約の保育ママ 1名
病児・病後児保育室 3名
ほか  
 
 私立保育園の「特に悪かったこと」では、「園長のカラーが色濃く出過ぎる」という批判や、「保育方針が偏っている(管理的、鼓笛隊や習い事中心)」という内容が複数見られ、園長の個性や園の特色づくりが不満につながるケースがあることを示していました。「職員が若い・定着が悪い」という批判もありました。
 
自治体の助成を受ける認可外
 (3)東京都の保育室、(4)東京都の認証保育所、(5)横浜市の横浜保育室、(6)その他の自治体の助成を受ける認可外施設は、どれも自治体の独自施策による認可外保育施設です。回答者には(3)と(6)の区別がつきにくかったようすが見られ、(6)にも(3)の利用者がかなり含まれているものと推測されました。
 それぞれの母数が小さいため、種類別に比較することは意味がありませんが、比較的人数の多い(3)東京都の保育室と(6)その他の自治体の助成を受ける認可外施設で、「特によかったこと」の記入率が高く、利用者のおよそ半数が記入している点は注目されます。これらには、個人立や共同保育所を原点とした小規模な施設が多くなっています。
 これらの施設の「特によかったこと」では、「小規模で家庭的」「保育内容がよい(熱心、のびのび、目が行き届いていた)」という感想が最も目立ち、「親が支えられた、信頼関係があった」などの記入が目立ちました。反面、「特に悪かったこと」には、「園庭がない」「設備が悪い」「人員的にギリギリで熱意と誠意だけでカバーするのはむずかしい」といった指摘もあり、これらの保育施設では、保育者の献身的な努力で質のよいアットホームな保育を提供しているところと、施設の貧しさ、人員の少なさがそのまま保育の質に響いているところがあることがうかがえます(自治体による補助金の差も関係あるかもしれません)。
 親にとって子どもが低年齢児期の不安の大きい時期に、小規模で家庭的な保育を受けられることは安心感があり、保育士との距離も近くて支えられるという面があります。また、そういった施設が苦しい運営をしていることを目の当たりにして、深い感謝の気持ちをいだく親が多いことは、毎年、会員アンケートで感想をとる都度感じられることです。
 利用者は少数になりますが、東京都の認証保育所では、「特によかったこと」として「保育時間などの柔軟性」や「少人数」など、「特に悪かったこと」として「保育士の態度・年齢層」などが挙がっていました。横浜市の横浜保育室では、「特によかったこと」として「保育士がよい(幅広い年齢層、熱心)」「環境(自然が多い)」などが挙げられ、「特に悪かったこと」の記入はゼロでした。
 
託児所・ベビーホテル
 託児所・ベビーホテルの利用者の場合、記入数はわずかでしたが、「特によかったこと」は「遅くまで預かってくれる」や「緊急時に預かってもらえる」などの利便性に集中しており、「特に悪かったこと」は「避難路が確保されてなかった」「外遊びがほとんどなし」「テレビを見せっぱなし」「ベビーベッドに置きっぱなし」「狭く環境が悪い」「食事が市販のベビーフード」など、低質な保育を連想させる内容になっていました。
 
個別保育について
 このほか、保育ママ、ベビーシッター、ファミリーサポートセンターなどの個別保育も広く利用されています。これらのうち、公的な保育ママ以外は、料金や人の手配の不安定さなどがどうしても問題になります。毎日・長期間預けるような場合は、やはりどこかの時点で良質な施設保育が軸として確保できなければ、働く親は苦しくなります。
 個別保育については、マンツーマンでフレキシブルな対応をしてもらえることをよかったとする感想、わが子をじっくり見てもらえて支えられたという感想がある反面、人による質のバラツキが大きかったり、ベビーシッターなどは同じ人を常時確保しにくいなどの悩みがあり、また、信頼関係もマンツーマンだからこそうまくいく場合と、反対にどうしても信頼できず安心を得られない場合があることがうかがえました。
 
まとめ
 複数の施設を経験した人からは、「それぞれにいいところもあり、悪いところもあり、子どもとの相性も兄弟で違っていた」「結局は担任の先生+園長次第だということがよくわかった」なども感想がありました。
 保育施設には、それぞれ個性や特色があってよいのですが、基本的にどうしても求められることがあって、それがあるかないかで、親たちの感想はずいぶん違ってくると思います。月並みな言葉になりますが、「安心」「信頼」「コミュニケーション」は、ともに子育てをする間柄には、どうしても必要です。そしてそこに、一人ひとりの親子を大切にしてくれる保育、子どもをいきいきと豊かに生活させてくれる保育があれば、とても恵まれた環境だと思います。
 今回は施設の種類別に親たちの感想を紹介してみましたが、親たちの満足や不満は、施設の種類に限らず似通ったものです。今、保育について、民間企業の手法に習い、「個性・特色をもつ」ことが課題であるかのように言われていますが、私はそれよりもまず、ベーシックに必要とされるものを備えてほしいと思っています。それがないために、施設に苦しめられている利用者は少なくないのではないでしょうか。
(保育園を考える親の会代表 普光院亜紀)
 
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。
 
 
 
 
 前回、「在宅サービス提供費用の支援」という方式を用いれば、「重度障害児を保育所で受け入れることが可能になるのではないか」との提案を行った。具体的に論じよう。
 障害児保育を考える場合、次の三点が前提となる。第一に(1)障害児を健常児と共に保育することに意義があること。次に(2)健常児におけるマイナス要因(例・障害児から怪我をさせられる)や(3)障害児におけるマイナス要因(例・健常児から怪我をさせられる、自傷する、療育の時間を失う)を除去するための体制を整える。
 その上で、(4)建物や設備(5)職員配置を考察するわけであるが、その障害児が通常、家庭で生活している場合には、過大な配慮は必要ではなく、その障害児の特性を理解し、主治医との連携がとれる看護師が配置されていれば十分ではなかろうか。
 こう考えてみると、問題は看護師の配置の方法であり、その費用の支払い方である。これまでの「施設サービス提供費用の支援(いわゆる措置費)」であれば、障害児がいない場合にも「受入体制整備」費用が必要とされ、あるいは「受入体制整備」費用が特定の保育所に支払われることから、障害児は遠距離の保育所を利用することにならざるを得ない。
 「在宅サービス提供費用の支援」という方式は、必要な場合に「訪問看護」を購入することにより、この問題を解決しようとするものである。購入する者は、その障害児であるが、保育所であっても構わない。要するに、必要とされる時に看護師が「その場所」に出向ければ良いのである。「訪問看護ステーション」が整備されつつある現在、そして日本看護協会も積極的に「訪問看護ステーション」の整備に取り組み始めていることから、その費用を、どのようにして「訪問看護」の費用から制度的に支出できるようにするかが今後の課題であろう。
 
第七回こども未来賞〈あなたの子育て体験を募集します〉のお知らせ
主催 こども未来財団、読売新聞社
後援 厚生労働省、全国社会福祉協議会、日本経済団体連合会
応募規定 (1)自作の未発表・未投稿作品に限ります。(2)応募は一人一作品に限ります。(3)四〇〇字詰め原稿用紙四〜六枚(一六〇〇字〜二四〇〇字)。(4)作品の上に用紙をつけ、作品の題名、住所、氏名(フリガナ)、生年月日、性別、職業、連絡先電話番号(FAX)を明記。(5)入賞作品の著作権は主催者に帰属します。(6)応募作品は返却しません。
応募資格 どなたでも応募できます。
募集期間 二〇〇三年八月十五日〜十一月十四日(消印有効)
 こども未来財団賞=一編(賞状、楯と賞金三〇万円)。読売新聞社賞=一編(賞状、楯と賞金二〇万円)。入選=五編(賞状、楯と賞金五万円)。佳作=五編(賞状、楯)。
発表 二〇〇四年二月中旬に読売新聞紙上で発表。
応募・問合せ先 読売新聞東京本社事業開発部「こども未来賞」係
〒104-8325 東京都中央区京橋二−九−二
TEL 03(5159)5886
FAX 03(5159)5878
 
 
 
―最初の暫定販売禁止措置制度の適用―
道野英司
 わが国の六五歳以上の高齢者人口は二千四百万人にのぼり、全人口の一九%に達したと先日、総務省が発表した。私事ではあるが、本年六月末に義父が六九歳、五年前に義母が六五歳で亡くなっており、少し早かったのだなと改めて思った。余談ではあるが、義父は表具店を営む傍ら、詩の同人誌を発行したり、詩集を出版をするなど文才に恵まれ、私のように原稿の締め切り直前に四苦八苦している人間にとってはうらやましい人だった。
 さて、長寿社会ということもあり、消費者のいわゆる健康食品に対する期待も非常に大きくなってきているようである。以前にもこのコーナーで触れたが、健康食品にはメリットがあるものもあるが、健康被害の原因とされるケースもあり、その際の迅速な因果関係の究明は困難な場合が多い。厚生労働省では、昨年、中国産ダイエット食品が原因と考えられる健康被害事例が多発したので、前国会の食品衛生法改正の際に、必ずしも食品と健康被害との間に相当の科学的因果関係が確認されていなくても、健康被害の未然防止や拡大防止のため、その食品の流通禁止措置を行えるようにした。
 具体的には、原材料が一般に飲食されている食品であっても健康食品のようにカプセルや錠剤に濃縮加工されている場合に、厚生労働大臣が食品安全の観点から、内閣府食品安全委員会及び厚生労働省薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売を暫定的に禁止できることとした。
 この制度は去る八月二九日にスタートしたが、二週間後の九月十二日にアマメシバという植物の錠剤やカプセルが本制度の最初の適用事例となった。
 アマメシバという植物は、マレーシアなど東南アジア原産のトウダイグサ科の樹木で、国内では沖縄県が主要な生産地となっている。従来は野菜として加熱調理して食べるのが一般的であったが、最近は粉末形態の食品として販売されるケースが出てきた。
 そのアマメシバの乾燥粉末によるものと疑われる重度の健康被害事例が二件報告されたのである。一件目は鹿児島県の四〇代の女性がアマメシバ粉末をジュースとして昨年十二月から今年四月まで一日四回計八グラムを約一三〇日間摂取したところ、今年二月頃より階段の上り下りの際に息切れ感や湿性のせきが見られたが、医療機関では呼吸困難の明らかな原因が確認できず、さらに症状が悪化したため担当医師が因果関係を疑った。またもう一例は七〇歳代女性と五〇歳代女性が一昨年に数か月間に三〇〇グラムから四〇〇グラム程度を摂取し、その後、両名とも閉塞性細気管支炎を発症した。担当医師は外に薬物や健康食品は摂取していないこと、家族内発症、同期発症していることなどにより、アマメシバ粉末が原因であると疑われるとした。
 閉塞性細気管支炎は、肺胞に近い膜様細気管支と呼ばれる部分が閉塞し、せき、「ぜいぜい」という喘鳴、呼吸困難などの症状が出る稀な呼吸器疾患で、原因は、感染、薬物、喫煙、有毒・刺激性ガスの吸入、有機塵の吸入、膠原病、臓器移植などがあるが、原因が不明な場合も多いようである。また、治療での薬剤に対する反応性が低いことから、治療による病態の改善が期待できない場合が多い疾病とされている。
 諸外国での被害の状況を見ると、台湾でも、アマメシバのジュースをダイエット目的で摂取した女性など二〇〇〜三〇〇人に閉塞性細気管支炎が発生(うち十人前後死亡)したとの報告がある一方で、マレーシアでは、野菜として炒め物などとして食べているが、閉塞性細気管支炎の報告はない。
 結論的には、アマメシバはマレーシアでは野菜として加熱調理して食され、健康被害の報告は把握されていないので、このような通常の摂取方法では、現段階で問題があるとは考えられないが、錠剤、カプセル剤、液剤といった濃縮加工された形態で摂取された場合には食品衛生上の危害の発生を防止する必要があると考えられたため、内閣府食品安全委員会と薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて販売禁止の措置をとることとなった。
 厚生労働省ではこの事例を踏まえて、販売禁止措置をとるだけではなく、アマメシバの有害成分を特定するための成分分析、動物試験のほか、被害状況の詳細を調査するための疫学調査の実施を検討している。また、このアマメシバの錠剤、カプセル、液剤の販売禁止措置の解除は、科学的データにより食品衛生上の危害が発生するおそれがないと認められ、内閣府食品安全委員会や薬事・食品衛生審議会の意見を聴いた上で、販売禁止の解除が決定されるしくみとなっている。
(厚生労働省食品安全部監視安全課課長補佐)
 
 
 
環境にやさしい“食”への取り組み
―平成十五年版循環型社会白書を中心に―
武蔵丘短期大学学長
実践女子大学名誉教授
藤沢 良知
はじめに
 環境省から第三回目の循環型社会白書が、平成十五年五月公刊された。その中から保育所給食等をすすめるに当たって心掛けたい、地球環境にやさしい“食”への取り組みについて考えてみたい。
 
一、循環型社会とは
 大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会のあり方や国民のライフスタイルを見直し、生活全般の物質循環を確保することにより、天然資源の消費が抑制され、環境にやさしい循環型の社会の形成を目指して、平成十二年六月に循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)が公布され、平成十三年一月から施行されている。
 同法では、第一に製品の廃棄物等となることを抑制し、第二に排出された廃棄物等についてはできるだけ資源として適正に利用し、最後にどうしても利用できないものは適正に処分し「天然資源の消費が抑制され、環境への負荷ができる限り低減された社会」の実現を図ることがねらいとなっている。
 平成十四年版循環型社会白書ではリ・スタイル(Re-Style)ということばが提唱されたが、これはリデュース(Reduse・発生抑制)、リユース(Reuse・再使用)、リサイクル(Re-cycle・再生利用)の三つのリ(Re)を推進し、循環型社会におけるライフスタイル、ビジネススタイルの構築を図るものである。
 リデュース(発生抑制)は、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)に優先されるものである。
 リデュースのためには、消費者は使い捨て製品や不要物を購入しない、過剰包装の拒否、良い品を長く使う、食べ残しを出さないなどライフスタイル全般にわたる取り組みが必要になる。
 
二、一般廃棄物(ごみ)
 平成十二年度の一般廃棄物の総排出量は約五二三六万tで、これは東京ドーム一四一杯分に相当し、国民一人一日当り一、一三二gとなっている。
 一般廃棄物は、直接あるいは処理を行って資源化されるもの、焼却などによって減量化されるものに大別される。
 一般廃棄物の生活系ごみと、事業系ごみの排出割合をみると、生活系ごみは約七四〇g(六六%)、事業系ごみは約三九〇g(三四%)となっている。なお、ごみの排出量は人口規模の大きい都市が多くなっている。
 平成十二年度の生活系ごみに占める容器包装廃棄物の割合は、容積比で約六二%、湿重量比で約二四%で容器包装をいかに簡略したものを購入することも大切なことである。
 また、循環型社会においては、できるだけ資源化を進め、減量化可能な廃棄物の直接埋立ては減らすことが重要である。
 
三、食品廃棄物
 食品廃棄物は、食品の製造、流通、消費の各段階で生ずる動植物性の残渣等であり、加工食品の製造過程や流通過程で生じる売れ残り食品、消費段階での食べ残し・調理くずなどである。
 これら食品廃棄物は、食品製造業から発生するものは産業廃棄物に、一般家庭・食品流通業及び飲食店業から発生するものは一般廃棄物に区分されている。
 食品製造業から出る食品廃棄物は再生利用がしやすく、堆肥に二二%、飼料化二二%、油脂の抽出等に二%、合わせて四六%が再生利用されている。
 食品流通業、飲食店業等から発生する食品廃棄物(事業系一般廃棄物)は堆肥化八%、飼料化三%及び油脂の抽出その他が二%で計一三%が再生利用されている。
 一般家庭から発生する食品廃棄物は、多数の場所から少量ずつ排出され、組成も複雑であるので一%が再生利用されているにすぎない。
 その結果、食品廃棄物全体では、一一二%が堆肥・飼料に再生利用され、残りの八八%は焼却して埋立処分されている。
 食品リサイクル法は、平成十三年五月に施行されているものの仲々、実効を期待するのはむずかしい状況にある。
 
表1. 循環型社会の形成に関する世論調査(上位10位)
・「家庭で出たごみはきちんと分けて、分別して定められた場所に出している」:82%
・「リサイクルしやすいように、資源ごみとして出すびんなどは洗っている」:57%
・「詰め替え製品をよく使う」:47%
・「古着を雑巾とするなど、不要になったものでも他の目的で使用する」:40%
・「すぐに流行遅れになったり飽きたりしそうな不要なものは買わない」:37%
・「壊れにくく、長持ちする製品を選ぶ」:34%
・「買いすぎ、作りすぎをせず、残り物は上手に使いきって、生ごみを少なくするなどの料理方法(エコクッキング)に心懸けている」:32%
・「買物の時、買物袋を持参したり過剰な包装を断ったりしている」:29%
・「物は修理して長く使うようにしている」:29%
・「生ごみをたい肥にしている」:28%
・「使い捨て商品はなるべく買わないようにしている」:23%
・「びん牛乳など再使用可能な容器を使った製品を買う」:18%
(資料)内閣府「循環型社会の形成に関する世論調査」(平成13年、N=3,476)
 
表2. 家庭から排出するごみの削減について
取組の例 1人1日当たりの
ごみ削減量
1人1日当たりのごみ排出量に
対する削減割合
○計画的に食品を購入し賞味期限内に使い切り
○料理は残さず食事(作る分量を工夫)
20g 3%
○買物袋の持参を促進
○量り売りや簡易包装の利用を推進
○詰め替え製品の購入
7g 1%
○地方公共団体や販売店・回収団体での分別回収に協力
(びん、缶、新聞、雑誌、段ボール等)
120g 18%
合計 約150g/630g* 約20%
* 家庭から排出される1人1日あたりのごみの量は630g(1人1日当たりに排出するごみの量1.1kgから事業系ごみ、資源ごみなどを除いた値)
(資料)環境省試算、平成15年版循環型社会白書
 
四、環境に配慮した取り組み
 循環型社会においては暮しへの配慮が大切である。例えば地域で採れたものを循環して利用していくことや、良いものを大事に長く使うことで、自然と共生した、スローなライフスタイルの定着を図ることが重要である。
 最近スローフード運動という言葉を聞くようになったが、これは早さと画一性を売り物とするファーストフードに対して、「地産地消」による郷土料理や地域に根ざした質の高い食品や食文化を守ることを目指すのがスローフード運動、一九八六年北イタリアでスローフード協会が発足して以来、日本をはじめ世界各地に広がりをみせている。
 最近、スーパー等で生産者の名前・写真のついた商品が好評である。市街地と耕地が共存している地域では、いわゆる地産地消や肥飼料化された生ごみの活用がはかられ、地域内での食と農の連携が進んでいることはすばらしいことである。
 新潟県長岡市に拠点をおくNPOの地域循環ネットワークでは保育園や幼稚園なども加わり、市内全域の小中学校・ホテル・レストラン等の調理残渣を回収し、牛・豚・鶏等の飼料にしている。各園や学校では材料ごとに分別し安全性への配慮を徹底している。
 また、市内を中心に家庭生ごみのリサイクル活動や、電動生ごみ処理機で乾燥処理されたものを回収・飼料化し、その飼料で育てられた畜産物を半年に一回、家庭に還元するなどの取組をしている。
 また、買い物の際には、買い物袋などを持参し、不必要な容器や包装をしてもらわないようにする。再生品や詰め替え製品など環境への負荷の小さい環境配慮型製品の購入(グリーン製品のグリーン購入)を心がけたりする。
 最近は使い捨ての食器など良く使われるが、繰り返し使えるリユースカップを使うよう心掛けたい。リユースとは、いったん使用された製品や容器等を再使用することで、環境への配慮として大切なことである。
 
五、内閣府の世論調査から
 内閣府が平成十三年に実施した循環型社会に対する世論調査では、ごみ問題に対する関心は約九〇%の人達が持っているものの、その中で実際にごみを少くする配慮を心掛けている人は約七〇%、残りの約二〇%の人達はごみ問題は深刻と思いながらも、大量消費・大量廃棄型の暮らし方となっている。
 意識改革をすすめ、約九〇%の人達が廃棄物の減量化に取り組むことが期待される。
 具体的行動について十七のアンケート項目のうち五〇%の人達が取り組んでいることは、きちんと分別すること八二%、リサイクルしやすいよう資源ごみとして出すびんなどは洗っている五七%と、この二項目にすぎない。
 もっと環境にやさしい心を持って行動することの意識改革が大きな課題であろう。(表1
 
六、ごみの減量に向けて
 循環型社会基本計画では、廃棄物の減量目標をたて、一人一日あたり家庭から排出するごみの量及び事業所から排出されるごみの量(資源回収されるものを除く)を平成十二年度比で約二〇%減にすることを目標としている。いわばごみのダイエットである。
 私達が毎日捨てているごみの割合については、重量比では生ごみが三八%、紙ごみが三一%、プラスチック類が十四%となっている。
 このようなごみの組成について、もし分別をせずにごみとして出している空き缶・空きびん・古紙についてきちんと分別して資源回収に協力することで十八%のごみを削減することができる。
 また、冷蔵庫内で賞味期限切れとなってしまうような食品ごみを出さないことで三%、買い物の際に買い物袋を持参したり、詰替製品・再生品などの利用を心掛けることで一%のごみの削減が可能とされている。これらの取組みにより二〇%削減という目標達成が可能と考えられている。(表2
 これらは家庭におけるごみ削減の事例であるが、保育園等でのごみ削減のためにも、献立に基づく食品の計画的購入、残飯を少くする努力、計り売りや簡易包装の食材の購入、詰め替え製品の購入、分別回収等を徹底させたいものである。
 
まとめ
 私達の生命を育む母なる大地、“地球”の資源、エネルギー、食料生産には限界があり、近年では大量消費社会が生み出す大量の廃棄物が地球環境の悪化をもたらしていることが明らかにされるようになり、豊かさの見直しが求められている。
 わが国が二〇世紀後半に形成したワンウェイ(一方通行)型ライフスタイルを循環を基調としたスタイル、すなわちリデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)に転換することが、リ・スタイル(Re・Style)社会転換への最大課題である。
 資料:循環型社会白書・平成十五年版 環境省編 (株)ぎょうせい発行、平成十五・五・三〇







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