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――子ども総研から――
文献情報(19)
日本子ども家庭総合研究所
 小児保健研究第六十二巻三号 三六五−三七二 二〇〇三年 三月 「川崎市保育園における熱性けいれんの調査―特に有病率と治療の現状について―」清水晃、重永博登志、野矢淳子、杉浦宏政 隅田展廣(川崎市医師会保育園部会)
 医療や保健に関する知識、情報がほしいと保育の方々からいわれることが多い。そこで、母子愛育会・愛育病院では本年度より保育士を対象に、「医療・保健」を中心とした研修会をはじめた。
 本論文を紹介する意図もここにある。特に乳幼児が集団で生活する場である保育園は感染症が流行しやすく、在宅児よりも罹患しやすいと指摘されている。本研究は、発熱に伴って生じる熱性けいれんについて、川崎市内の保育園児一〇、三九一人の保護者にアンケート調査を行ったものである。
 その結果、一次調査でけいれん有りの児は一〇・三%、このうち熱性けいれん児は九・三%である。三歳児健診での有病率の報告と比較すると、本調査の三歳児では一〇・四%に対し、一〇%以上の報告はない。従って、保育園の三歳児有病率は、一般小児集団より高いことが明らかであるとされている。また、一歳児においても、一歳半健診の有病率と比較して高率であるとしている。このことは、けいれん素因があっても、発熱の機会が少なければ熱性けいれんをおこさずに経過する児が、保育園に通うことにより発熱機会が多くなり、一般小児集団より有病率が高くなっていると推測されている。
 このほか、保育園児の発作回数、熱性けいれんの治療についても調査されている。
 ここに、その結果を紹介する余裕はないが、この熱性けいれんだけではなく、集団生活により感染症を中心に病気にかかりやすいこと、それだけに子どもが病気にかかったときの適切な対応が保育園に求められているといえよう。医療・保健の知識とその活用が重要であろうし、地域の医療・保健機関との連携が大切である。今回、別に保育園児が病気にかかったときの保護者の対応の実態を示した論文を紹介した。これとあわせ検討されることを期待したい。
 最後に、長く乳児院の院長をされ小児科医であった二木武先生が、保育には「保育看護」が必要であると提起されたことを記しておきたい。つまり、看護の力も保育には必要なのである。
 
 小児保健研究第六十二巻一二号 三五〇―三五八 二〇〇三年 「保育園児の病気時の保育の実態と保護者の支援ニーズ」 大木伸子(東邦大学医学部看護学科)
 母親が働きながら子どもを育てること、その的確な支援がなければ今後子どもを生み育てることの困難は増し、そして、少子はますます進行するであろう。
 その支援のひとつに、園児が病気の時どのような支援を必要としているのか、保護者のニーズを含め明らかにすることは重要である。本論文はこの課題に答えるべくその実態と何より重要な保護者のニーズを取り上げており、ここではこのニーズを中心に紹介したい。
 まず、子どもの具合が悪くても仕事が休めず無理に保育園につれていったことのある人は四六・七%もあることに注目したい。そして、「子どもが病気の際の対応が困難で仕事を辞めようと思ったことがある」人は三三・六%にのぼっている。「無理に保育園に連れていったことがある」と回答した人の自由記述をみると、「申し訳なさと心配でたまらない」「罪悪感と心配でいっぱい」である。子どもが病気の時、身近にサポートをしてくれる人がいるかどうか、この調査では多くは祖父母のサポートを受けており、五六%である。当然このサポートの受けられない人が多くいることに留意すべきである。一方、仕事を休める状況にあるかどうか、職場の対応が重要である。
 職場の反応:病気なのだから休むのは「当然の権利」という人もいて、自由記述では「自分の子どもなのだから看病するのは当然」「日頃から休んでも支障のないように仕事をするように心がけている」という。職場に対して申し訳ないと思う人は、自分が休むことによって職場の人たちに負担や迷惑をかけていることへの具体的なエピソードが記述されている。母親の気遣いが多いことに留意したい。仕事を休んだことへの職場の反応に対する母親の認識をみると、「好意的」四七・四%、「どちらかというと休みにくい」三四・三%としている。仕事の性質や組織の事情もあろうが、安心して休める状況があってほしい。
 保育園の第一希望も「子どもの病気の時の保育(四六・○%)」である。ここに「病児保育」への希望が五七・三%と最も多く、母親たちの願いが読みとれる。医療、保健、保育の各領域に求められている大きな課題である。
 子どもが病気の時への対応は、現実的には困難を伴うが、少なくとも母親たちの苦悩への思い遣り、配慮は必要かつ不可欠であり、この論文に示されたような「母親の声に耳をすませる」ことが先ずなされなくてはならない。
(川井尚)
 
 日本保健福祉学会誌第九巻一号 二〇〇二年 「長時間保育の子どもの発達への影響に関する研究」 丸山昭子、鈴木英子、安梅勅江
 少子化対策(新エンゼルプラン)により、保育対策は強化され、親の就労支援として延長保育も進められている。長時間保育と子どもの発達への影響についての研究は、保育に携わる者や親にとって重要なテーマである。
 この研究は、保育時間、育児環境と子どもの発達についての関連を明らかにし、今後の保育サービスの課題を検討することを目的として実施された。認可保育所(二〇か所)の保護者の保育時間・育児環境調査と担当保育士による発達評価をペアにしたデータを使用している。その結果、質の高い保育サービスは子どもの発達に影響を及ぼさない可能性が示唆され、育児環境と子どもの発達には関連が認められたことから育児環境の重要性が再確認されたと報告されている。また、長時間保育利用者は社会的繋がりが希薄で、育児相談者が得難い状況にあることから、社会的サポートのあり方について検討の必要性が提起されていた。今後の継続研究の成果が期待される。保育サービスの提供に当たって参考となる資料である。
 
 日本保健福祉学会誌 第十九巻二号 二〇〇三年 「乳幼児を持つ母親の子育て意識・困難に関する研究―青森県及び北海道における少子化の要因を事例として―」 佐藤秀紀、鈴木幸雄
 少子化対策プラスワンでも示されている「地域における子育て支援」では、子育て当事者の意識を充分把握し、地域による違いを考慮したきめ細かな政策が求められている。また、支援に当たる専門職の支援や対応も同様である。
 この研究は、地域の特色を踏まえ、母親の子育て意識・困難を研究し、少子化現象と地域間格差を検討する目的で行われた。調査対象は、北海道と青森で保育園・幼稚園に通園する子どもの母親二八○○人を対象とし、回収された二二八七人(回収率八一・七%)の北海道一九四六人、青森三四一人のデータである。その結果、家族構成、住宅事情、母親の晩婚化、地域社会の血縁的・地縁的絆、育児サービスの充実度、子育てに関する意識の相違が、女性の出産行動に影響を及ぼし、出生率の地域格差を生じさせていることが明らかとなり、地域の実情に応じた子育て支援に関する取り組みが重要であると提起されていた。
 特定の地域の研究であるが、子育てにおける相談相手、子育てを支える人、求められている育児サービスの実態や地域性の違いを知るうえで有効な資料となろう。
(斉藤進)
 
 子育て環境整備に向けて
――仕事と家庭の両立支援・保育サービスの充実――(2003・7・22 日本経済団体連合会)
 日本経団連は、重要な課題の一つとして少子化問題を取りあげた。その中から、第3章社会的インフラである保育サービスに関する提言を紹介する。2、今後の保育サービスの提供体制(具体的な提言)として、(1)現状の保育サービスの提供体制を改革するための方策(行政への要望)(1)認可保育所制度の規制改革(実際に参入した民間企業が未だわずかにとどまる。公設民営方式の促進、民間企業の参入促進、一部特区で実現される見込みの幼保一元化などを着実に実行するべき)などについて、「運営費補助の余剰金の使途制限の撤廃」「施設整備費の支給対象となる設置主体の拡大」「調理室必置義務の見直し」「屋外階段設置義務等の見直し」など。(2)地方公共団体独自の認定制度の拡大(東京都の認証保育所や横浜市の横浜保育室、仙台市のせんだい保育室など、地方公共団体が独自に保育施設の設置・運営基準を設け、その基準を満たした施設を認定し、助成を行う制度)について等。
 
 
 
石川賢司
イラスト・松村隆
 
 夏休みに入って間もなく、幼稚園で水泳教室が開かれた。体育専門の先生方が、水に慣れることから水泳の基本に至るまでを六日間にわたり指導して下さるとのことで、任意参加であったが、申し込んだ。
 妻の話によれば、最初に、どれだけ水に親しんでいるかによって三つのチームに分けられたそうだ。予想では、あきは初級コースの「赤チーム」なるだろうと思っていた。ところが、あきの前の順番だった子が思い切り潜ったために後に引けず、勢いで潜れてしまったため、中級コースの「青チーム」に決定した。
 教室の四日目と五日目が週末と重なったので、私も見学に出かけた。午後の強い日射しの中、幼稚園の屋上の真新しいプールの脇で待っていると、黄、青、赤の水泳帽をかぶった子どもたちが列になって登場。その中に混じった青い帽子のあきはニコニコしていて、楽しみな様子。
 準備体操の後、子どもたちはプールに入り、真っ黒に日焼けした三人の若い男性の先生と一緒に、チーム毎にレベルに応じた練習をしていった。青チームは、まず、歩く競争や電車ごっこを通じて水に慣れてから、棒やビート板につかまって、水に顔をつけながら先生に引っ張られたり、バタ足をする等の練習をしていった。最後には、全員が一人ずつ、先生に抱えられて水に投げられたりもしていた。
 一通りのメニューをあきは頑張ってこなしていたが、水に顔をつけるのが苦手のようだった。先生からは、「ほっ!」というかけ声で目と口を閉じ、水中で三つ数えてから顔を上げて、「ぱっ!」というかけ声で目と口を開ける、という風に教わっていたが、あきは水中で三つも待てない。
 そこで、その日の夜の入浴の際、洗面器に湯を入れて、顔をつける特訓をした。なかなかうまくいかず、ついには「できない〜!」と泣き出してしまったが、それでも繰り返すうちに、何とか三つ数えるまではできるようになった。
 その翌日の午後、五日目の練習。私にとっては直接見られる最後の日で、親バカかもしれないが、ビデオカメラを持参して、ずっと撮影した。やはり顔をつけるのがうまくいかず、ビート板につかまっても、顔がすぐに上がって下半身が沈んでしまっている。ハラハラしながら見ていたが、先生の熱心な指導のおかげと、前夜の特訓を思い出したのか、最後の最後になって、ビート板につかまって顔をつけ、泳ぐ姿勢を何とかとることができるようになった。本当に感激し、うれしかった。
 あきにとっては厳しかったかもしれないが、とてもいい経験になったと思う。私も早速水着を買い、長らくごぶさたしていた水泳を、あきと一緒にしようか、と思っているところだ。
 
 
 
事務局から
▽日本保育協会は本年十月をもって四十一年目をむかえ、左記のとおり創立四十周年記念式典を行います。
期日 十月二三日(木)〜二四日(金)
場所と内容(本誌七月号付録参照)
☆十月二三日 シェーンバッハ砂防(千代田区平河町二丁目)
○厚生労働大臣表彰、日本保育協会会長表彰、記念講演等。
○記念祝賀会(赤坂プリンスホテル)
☆十月二四日 シェーンバッハ砂防
○基調講演、シンポジウム等。
 
日保協 活動日程
8月(報告)
8日(金)14時〜17時 日本保育協会理事会〈渋谷区:青山ダイヤモンドビル石山記念ホール〉
30日(土)13時〜31日(日)11時 平成15年度永年勤続職員表彰並びに職員全体研修会
〈花巻市:ホテル花巻〉
9月(予定)
2日(火)13時30分〜5日(金)13時 平成15年度北海道・東北地区保育所主任保育士
       (初任者指導保育士)研修会
〈宮城県松島町:ホテル松島大観荘〉
4日(木)13時〜5日(金)12時 第24回日本保育協会九州地区保育所長・主任保育士研究大会
〈大分市:大分全日空ホテル〉
11日(木)13時〜12日(金)12時 第25回日本保育協会関東地区保育者研修会
〈東京都昭島市:フォレスト・イン昭和館〉
17日(水)12時30分〜19日(金)11時30分 平成15年度保育所長ゼミナール
〈江東区:ホテルイースト21東京〉
25日(木)13時〜26日(金)14時 平成15年度日本保育協会北海道・東北地区役員及び会員研修会
〈秋田市:ホテルメトロポリタン秋田〉
30日(火)13時〜10月3日(金)12時 平成15年度初任保育所長研修会〈熱海市:ホテル大野屋〉
 
平成十五年度保育所保育実践研修会のご案内
 「保育所保育指針」が求める「ひとりひとりを大切にする保育」を追求し続けるこの研修会は高い評価を受け、毎年参加者には大変喜ばれております。今年も以下の要領で実施致します。参加をご希望の方には募集要項をお送りしますのでお申し込みください。
主催   日本保育協会東京都多摩支部
開催日 平成十五年十一月十二日(水)、十三日(木)
会場   立川グランドホテル
  東京都立川市曙町二−一四
講師   小沼 肇(静岡英和学院大学教授)
事例発表園
せいがの森保育園・東京都八王子市
つぼみ保育園・福井県丸岡町
費用   参加費一万円、宿泊費一万円(朝食付)
申込方法 募集要項をお送りしますので電話またはファックスでご連絡ください。
事務局 わかくさ保育園 西川
TEL   〇四二(五四四)〇〇五五
FAX   〇四二(五四五)九四四四







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