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保育界(平成15年9月号)

 事業名 保育活動の推進
 団体名 日本保育協会 注目度注目度5


――保育所における子育て相談(9)――
面接相談
福井県総合福祉相談所 吉田修次
1 はじめに
 最近は都市化、核家族化が進行し、家族や地域住民の相互扶助機能と育児機能が低下してきたため、近隣から孤立し、子育てに不安を持つ親が増えていることが指摘され、育児について身近で相談できる場所が求められています。
 そのため、保育所は日常の保育を通じて蓄積された子育ての知識、経験、技術を活用し、また保育所の場を活用して子育て家庭の支援を図る目的で平成九年に児童福祉法が改正され、保育所は保育に欠ける乳幼児の保育だけでなく、一般家庭から子育ての相談を受け、指導するという業務が努力義務として規定されました。
 さらに平成十三年の児童福祉法の改正により、保育士については名称独占や守秘義務等の規定がなされ、保育士の業務が児童の保育だけでなく、保育に関する保護者指導を行うこととなりました。
 今回は、保育所における子育て相談のうち、相談室において相談者と対面して行う面接相談について説明します。
 
2 相談の場所について
 相談は落ち着いて話のできる場所が必要です。相談を主な業務としているところでは、面接室または相談室が設けられていますが、保育園では相談専用の部屋がない場合がありますので、相談コーナーを設けます。ただし、人の出入りがあり、話の内容が聞こえるような場所は避け、間仕切り、カーテンなどで中にいる人が見えないようにするなどの配慮が必要です。
 
3 相談にかける時間と間隔
 相談時間の制約や次の相談日まで待つという制限は、必然的に相談者自身が自分で考えたり、整理していくことにつながります。この制約がなく、相談者の望むままに面接していると、相談者は自分の問題を相談担当者に預け、解決策も任せることになります。相談者は相談担当者の意向に沿った生活となってしまいます。
 このような状況にならないように相談は可能な限り予約制とし、相談時間を伝えます。相談担当者も約束の時間は守らなければいけません。相談者の信頼を失うことになります。
 通常は、一回の面接に要する時間は五〇分から一時間が適当で、次の面接までの間隔は一〜二週間です。ただし、緊急のときは別です。
 
4 面接の技術
(1)話しやすい雰囲気をつくる
 問題解決の場であることを意識し、真剣に考えようとする姿勢になるためには適度の緊張が必要ですが、過度の緊張は相談者の自由な発言の妨げになります。やさしく温かい語調で「どんなことでお困りですか」「今日、お話しなさりたいことはどんなことでしょう」などと、すぐに本題に入った方がよい場合が多いようです。相談担当者自身も緊張をほぐし、余裕ある姿勢が必要です。
(2)傾聴
 耳を傾けて相談者の話をよく聴く、言葉を聴くよりも相手の心を聴くことを目的に集中して聴くことを傾聴といいます。じっくり話を聴いてくれる相談担当者に対して相談者は「本気で話を聴いてくれる人」「自分を理解しようと努力してくれる人」という気持ちを抱きます。
(3)単純な応答
 相談者の話を「聴いていますよ」という意思表示として、「はい」「そうですか」「なるほど」などと短い応答をします。相談者はよく話を聴いてくれていると思い、さらに話を続けようという気持ちになります。
(4)繰り返し
 相談者の話の語尾を相談者担当者が繰り返し言うことにより、話が発展したり、深まったりします。
 相談者が話を止めようとか迷っているときとか、感情がこみあげて、うまく言葉で伝えられないときには、有効な手段となります。
(5)感情への応答
 話している出来事よりも、その話に伴って出される相談者の感情に応答するようにします。好ましくないと思っている人の言動は否定的に受け取れ、逆の場合は何をされても好ましく思えるものです。
(6)沈黙への対し方
 相談中に相談者が何も話さなくなることがあります。相談担当者は「何か話をしなければならない」とあせり、一方的に質問したり、意見を述べたりしますが、そのような努力はほとんど意味がありません。沈黙の意味を考える必要があります。
・何を話したらよいか相談者が整理できない場合
 繰り返しの技法を使って、沈黙直前の相談者の言葉を繰り返す。あるいは率直に「どうなさいましたか」「沈黙になっちゃいましたね」と状況を言葉に出してみる。
・話をしているうちに感情がこみ上げてきて、言葉が続けられなくなった場合
 相談者の気持ちが落ち着くまで静かに待つ。
・相談に来ることが不本意であったり、相談担当者に反感や好ましくない感情を抱いている場合
 「ここへはどなたに勧められてきましたか」「あまり気が進まない御様子ですね」「私に何かありましたら、遠慮なくお話ください」などと現状を打開する努力が必要です。
(7)信頼関係樹立に向けて
 いままで相談の技術を説明してきましたが、特別な技術を身につければ相談ができるというものではありません。もっとも重要なことは、相談者と相談担当者の関係のあり方です。相談者と相談担当者との間に人間として信頼しあえる関係が樹立できたかどうかです。
 実際、具体的な生活問題の解決には、情報を提供したり、適切な社会資源を紹介するなどの指示は必要になってきますが、相談者と相談担当者の信頼関係なくしては活用されません。
(8)守秘義務
 また、秘密を守るということも相談を受ける時の前提というべき原則です。この相談担当者に何でも話して何とかこの状態を打開しようと打ち明けられる情報を他人に漏らさないという相互信頼関係が相談活動を展開していくためには大変重要です。相談者が人に知られたくない内容を話すのは、相談担当者に対して信頼関係が出てきたからです。この守秘義務は相談担当者の倫理的義務でもあります。もし、秘密が守れないと相談者と相談担当者との信頼関係がなくなり、相談が続かなくなります。
(9)相談・援助の技術を磨く
 援助は適切であったか、相談者のニーズを把握できたか、今後どのように展開していくかなど、相談が終わるごとに検討することが必要です。
・相談・援助に熟練した人から指導を受ける(スーパービジョン)。
・検討して欲しい問題点を明確にして、会議で他の人の意見を求め、自分とは違う見方や対応法があることを発見したり、自分が取った方法が適切であったことを確認し、自信をつける。
・研究会や勉強会を持ったり、外部から専門家を招いて研修に努める。
 以上、面接指導について説明しましたが、保育所における子育て相談は、地域における身近な相談窓口であるといっても、その存在が地域住民に周知されていなければ意味がありません。平成九年の児童福祉法の改正により、保育所は保育に関しての情報を地域住民に情報提供することが義務づけられていますので、同時に相談事業についての広報が大切です。
(児童相談課 児童福祉司)
 
 
 
子どもたちの豊かな育ちあいをめざして
〜小・中学生の保育体験ボランティア〜
こどもの城
保育研究開発部
山田道子
 幼児や小・中学生が被害者や加害者になる胸を痛める事件が起きています。その度ごとに、子どもたちが育つ環境についての議論が各方面であがります。家庭の教育力、学校・家庭・地域社会の連携や協力の重要性などが叫ばれます。
 少子化が進み、核家族化した家庭で育つ子たちが増え、人とかかわる力が弱くなりつつあることが懸念されています。〔こどもの城〕に遊びにくる子どもたちに聞くと、子どもたち自身は最初からそのような環境で育っているので、隣近所に知りあいや友だちがいなくても、特別な意識はないといいます。都市部という立地条件もありますが、人は生まれたときからずっといろいろな人とかかわり、その中で人として自然に成長していくという、誰もが当たり前と思っていたことが、実はそうではなくなってきていることを実感させられます。
 保育研究開発部では、十数年前から、ささやかですが幼児と小・中学生がふれあう場――保育体験プログラムを始めています。保育研究開発部で行っている保育プログラム(幼児グループ、保育クラブ)の卒業生を対象にしたもので、スタート当初から小・中学生の教育プログラムという性格と同時に、卒業生に対するアフターフォローという意味合いを強く意識したものです。
 小・中学生にとっては、幼児とかかわる楽しさ、おもしろさを体験するだけでなく、自分の存在や成長を素直に認める機会となっています。また、保育に参加することで、かつての自分がいろいろな人の愛情のもとで育ったのだということに気付く子どももたくさんいます。思春期の入り口にいる子どもたちにとっては、この気付きが大きな自信となるようです。
 一方、幼児にとっては自分の年齢に近いお兄さん・お姉さんの荒削りな遊びの魅力、ぶっきらぼうな言葉に秘められたやさしさ・あたたかさに触れることが新鮮な喜びになります。
 なによりも、幼児にとって効果的なことは、近い将来の自分の姿を予測できるということです。例えば、四歳児が「ぼく、年長さんになって保育園が終わりになったら、お兄さんの小学校にいくんだよね」と納得する場面もありました。保育園が大好きなこの子は、なかなか保育園の次にある小学校のイメージが持てないでいたのでした。
 小・中学生の保育体験ボランティアプログラムは、毎年、主に夏休みを中心に行っています。今年の夏も二十人(延べ五十人)の子どもたちが参加しました。以前〔こどもの城〕の保育プログラムに参加したことのある子どもたちがほとんどですが、参加した子どもが楽しかったからと、翌年から友だちを引き連れてくることもあります。小学五年生から中学三年生までを対象としていますが、年々学年をもっと引き下げて実施してほしいという声が保護者から寄せられています。
 親や大人の子どもに向ける期待感が感じられるとともに、本来は家庭・地域・学校で子どもたちが得たであろうことが、保育の場などにも求められてきており、保育の果たす役割の大きさが改めて明確になってきています。
 
「髪の毛をなおしてあげるね」
(生活の場面でお手伝い)
 
保育体験ボランティアの実際
 〔こどもの城〕の小・中学生保育体験ボランティアのねらいは、以下の二点においています。
 一つは、幼児、小・中学生の双方にとっての異年齢交流体験の場にすること。もう一つは、小・中学生が幼児について体験的に理解することです。
 募集の方法は、〔こどもの城〕の保育で育った子どもたちに、参加を呼びかける手紙を出しています。参加を希望する小・中学生には、事前に保育活動に参加するための心構えを記した手引きを送付し、よく読んでから参加するように伝えておきます。
 手引きには、十六項目の心構えが書いてあります。一部を紹介します。
●自分より、はるかに小さい子どもたちの中で過ごすことになります。自分の過去、幼児時代を振り返ってどんなことが思い出されるでしょうか。いろいろなことがあったり、いろいろな人が周りにいたことでしょう。今度は、あなたがその「人」になります。
●小さい子どもたちにとっては、あなたたちはとても大きく頼もしい存在だとうつるでしょう。将来、あんな風に大きくなるだろうと思い描くこともできるのです。
●できるだけていねいに話しかけてみましょう。自分から名前を告げるのも忘れずに。
●遊びのときは、安全に気をつけましょう。
●歌や手遊び、紙芝居などは小さい子どもたちと一緒に楽しみましょう。
●生活の場面(洋服の着脱=プール遊びの前後、トイレの仕方=ズボンの上げ下ろし、手の洗い方=水道栓のひねり方、タオルでの手の拭き方、食事の準備=コップの出し入れなど、食事の仕方、食事の片づけ=お皿をしまう――など)では、皆さんならできない人はないでしょうが、小さい子どもたちには自分でできるようになるために、お手伝いを先生や大人がしてあげるのです。どんな風にしているのか、よく観察しましょう。
 このほか、当日の服装、持ち物、時間なども詳細に記しておきます。
 この心構えの手引きは、保育参加の当日に再度確認しながらオリエンテーションを進めます。
 
ボランティアがもたらすもの
 保育参加の活動後には、保育者も交えて感想を聞いたり、簡単な振り返りをしたりします。それを記録として書いてもらいますが、併せて当日かかわった保育者の記録も別に書いておきます。
 小・中学生の活動記録の項目は、(1)名前 (2)活動日時 (3)誰と何をして遊びましたか (4)おもしろかったこと、うれしかったことを書いてください (5)こまったこと、気になったこと(いやだったこと、驚いたこと)を書いてください (6)またボランティアをしたいですか――となっています。
 保育者用の活動記録の項目は、(1)保育者名 (2)活動日 (3)参加者氏名 (4)活動の様子・自分の役割を自覚して参加していたか・楽しそうに活動していたか (5)気になったことは――などとしています。
 保育参加が終了した後は、各小・中学生にお礼の手紙と一緒に、活動中に遊んだ子どもたちの近況を伝えるようにしています。また、保育参加していたときの写真なども同封します。
 学校との連携についてですが、〔こどもの城〕から直接学校へ活動の様子を伝えることはしていません。しかし、参加した子どもたちが学校へ報告できるような書類は用意しています。学校へ提出するかどうかの判断は、本人に任せています。
 
さまざまな年齢の子どもたちが保育を通して豊かに育ちあう
 今、各地域の保育園でも保育体験ボランティアを積極的に受け入れるようになってきています。しかし、小学生を対象としたボランティアの受け入れは、全国的にもまだまだ少ないと思います。
 〔こどもの城〕保育研究開発部では、以前から年齢的に幼児に近く、身近な存在である小学生の受け入れを考えてきました。そして、現在小・中学生の保育ボランティアとして受け入れています。対象学年を五年生以上としたのは、理性的な判断がある程度できる年齢ではないか、とプログラムスタート時の卒業生の様子から判断したものです。
 ここ数年の子どもたちの姿から、一律に小学校五年生以上とするのは難しい点があるのではないか、という指摘が現場から出ていることも事実です。小・中学生の育ちへのかかわりと対応を、受け入れ側として今後どのようにきめ細かに行っていったらいいのかなど課題もあります。
 平成十四年度から始まった、学校週五日制を念頭において、小学校からは期待する声も届いています。保育の場と学校との連携も一層必要になってくるとおもわれます。
 いずれにしても、さまざまな年齢の子どもたちが、保育を通して豊かに育ちあう保育体験プログラムは、社会的にも意義のあるものと考えることができるのではないでしょうか。







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