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保育界(平成15年9月号)

 事業名 保育活動の推進
 団体名 日本保育協会 注目度注目度5


――資料研究――
保育所と幼稚園との費用の比較
――公費負担と保護者負担――
 「幼保一元化」に関連した論議が再燃しつつある。教育・保育を一体とした総合施設の検討、構造改革特区での一体的な運営等の具体的な動きもある。
 一元化論は何を一緒にすることなのかが曖昧なままに行われることが多い。中央及び地方における所管官庁、対象児童の年齢及び入所要件、保育内容、職員及び施設設備の基準、公費助成及び保護者負担等の費用面等のうちいくつかが俎上に載せられているが、いずれについても保育所と幼稚園とに違いがあるのは施設の設置目的に由来するものであろう。中には施設の設置目的そのものに及ぶ議論さえ見受けられる。
 この機会に私立の保育所と幼稚園との費用関係の状況について、新しい資料によりなるべく分かりやすくご紹介したい。
利用者負担はどうなっているか
公費負担、とりわけ自治体の支出はどうなっているか
 世間一般にこれらの点についての認識が不十分なのではないか、誤解があるのではないかと懸念するからである。
 保育所に「国費」が四千億、幼稚園は四百億との表現が保育所には幼稚園よりも格段に多い「公費」が投入されているのではないかと連想させる。(*(2))特に、利用者負担は保育所の方が少ないだろうとの認識は一般化しているのではないか。
 議論・検討は利用者中心の立場に立って行われ、かつ、国民一般の理解が得られねばならないし、また、地方自治体の納得が得られることが前提となると考えるからでもある。
 結論を先にお示ししよう。グラフ1は保育所と幼稚園の園児一人当りの公費負担状況を保護者の収入階級別に表示したものである。グラフ2は同じく保護者負担状況を見たものである。二つのグラフをじっくりご覧頂きたい。意外だと思われたでしょうか、当然そうなっていると予想されたでしょうか。以下、順を追って今回の作業経過を含めてご説明したい。
 
グラフ1 保育所と幼稚園の収入階級別・保護者負担額
 
 
グラフ2 保育所と幼稚園の収入階級別・公費負担額
 
一 費用の流れ
 保育所と幼稚園とでは保育料公費助成等の費用の流れ方が異なっている。
 本誌の読者には保育所の費用についての詳細な説明は不用であろう。費用に関し市町村の関与が大きいのは、そもそも児童の保育が市町村の責任で行われることになっているために他ならない。市町村の支払額と徴収額との差額が純公費負担額であり、それを国、都道府県、市町村が二対一対一の比率で分担する。(図1
 私立幼稚園に関する事務は、地方行政段階では保育所と異なり都道府県が私学行政の一環として所管している。都道府県は幼稚園に対して園児数に応じ経常費助成費を支出し、保護者にはその所得に応じて就園奨励費を助成する。実際の費用の流れでは就園奨励費が幼稚園に支払われるので、保護者は幼稚園の定めた保育料から就園奨励費を控除した額を幼稚園に納入する。経常費助成と就園奨励費の合計が公費負担であり、国はその一部を都道府県に補助する。(図2
 
二 費用比較試算の方法
 制度や仕組みの違う保育所と幼稚園の費用を計数的に比較するためには、いくつかの前提条件を設定せざるを得ない。その上で、一般に公表され誰でも利用可能なデータを用いて算出を試みた。
1 データの選定と算式
 夫々の費用項目に該当するデータは平成十五年度の国庫助成基準等に拠るか、公式の調査による数値を採用した。
保育所
保育経費:乙地域、九〇人定員施設の四歳児の保育単価三七七八○円(*(3))
保護者負担:国の徴収基準による金額(*(5))
公費負担:保育経費と保護者負担の差額
幼稚園
保育経費:文部省「子どもの学習費調査」に基づく費用二四〇〇〇円(*(4)*(7))
保護者負担:保育経費と公費負担の差額
公費負担:就園奨励費、経常費助成費の国庫補助金及び地方交付税計上額(*(6)*(7))
2 共通の尺度
 保育所の費用徴収基準と幼稚園の保育料減免基準とでは所得状況を把握するための尺度を異にしているので、そのままでは比較が困難である。両者同じく税制転用方式を採用しながらも、保育所は主として国税である所得税額を基準にし、幼稚園は地方税である市町村民税を採用している。そこでモデル世帯を設定し税額を収入額に置き換える作業を行った。(*(8))
 
三 公費負担及び保護者負担の状況
 これまで述べてきた条件に基づいて試算した結果が表1及び表2である。言うまでもなくこの二表をグラフ化したのが冒頭のグラフ1グラフ2である。
 保育所における公費配分は、所得面では低所得者に、年齢的には低年齢児に、極端に傾斜配分されている。幼稚園の公費助成は、保護者に対する就園奨励費と施設に対する経常費助成の二本立てになっており、金額は園児全員に均霑する後者の方が格段に大きい。
 そのため四歳児について両者を比較してみると、保育所の場合には年収五〇〇万円世帯には公費負担が働かず、保育費用は全額自己負担となっている。ここでいう年収は、各種の所得控除、税金等を差引く前の「粗収入」であり、夫婦の合計年収五百万円は決して高額世帯とは言えまい。
 一方、幼稚園では八八○万円以上の世帯でも保育費用の半額を越える公費を受益している。
 
四 一元化論争の前に
 幼保問題を考える際には是非ともここで取り上げた費用の問題を踏まえた上で進めていただきたい。保育所と幼稚園の公費負担には大きな相違点が存在する。公費負担と保護者負担とは正に裏腹の問題であるから、保護者負担にも大きな相違点が持ち込まれている。あるいは所管官庁の違いがここまで違いを大きくしてしまったのかもしれない。
 
図1 保育所における費用の流れ
(1)と(2)の差額が純公費負担額である
 
図2 幼稚園における費用の流れ
(3)と(4)の合計が公費負担である
 
表1 児童1人当り公費負担、保護者負担の月額(保育所)
  推定年収 4歳児 2歳児(参考)
保育
経費
(1)
保護者負担(1) 公費負担
((1)−(2))
保育経費(11) 保護者負担(1) 公費負担
((11)−(12))
第1
生保世帯
2,300,000 37,780 0 37,780 91,670 0 91,670
第2
市町村民税非課税
〜2,544,000 37,780 6,000 31,780 91,670 9,000 82,670
第3
市町村民税課税
〜3,288,000 37,780 16,500 21,280 91,670 19,500 72,170
第4
所得税〜64,000
〜4,688,000 37,780 27,000 10,780 91,670 30,000 61,670
第5
64,000〜160,000
〜6,345,000 37,780 37,780 0 91,670 44,500 47,170
第6
160,000〜408,000
〜9,263,000 37,780 37,780 0 91,670 61,000 30,670
第7
408,000〜
9,263,000〜 37,780 37,780 0 91,670 80,000 11,670
 
表2 児童1人当り公費負担、保護者負担の月額(幼稚園)
推定年収 保育
経費
(1)
公費負担 保護者負担
((1)−(4))
就園奨励費
(2)
経常費助成(3) 合計(4)
((2)+(3))
I
生保世帯、
市町村民税非課税世帯
〜2,544,000 24,000 11,475
(137,700)
12,463 23,938 62
II
市町村民税所得割非課税世帯
〜3,038,000 24,000 8,741
(104,900)
12,463 21,204 2,796
III
市町村民税所得割
〜3,613,000 24,000 6,700
(80,400)
12,463 19,163 4,837
IV
市町村民税所得割
8,800〜
〜8,829,000 24,000 4,708
(56,500)
12,463 17,171 6,829
市町村民税所得割
102,100円〜
8,829,000〜 24,000 0
(0)
12,463 12,463 11,537
 
 保育所については、現在の保育料基準が所得状況によってあまりにも傾斜がきついので平準化すべきだと言われながらも是正は進んでいない。
 幼稚園について、このように多額の経常費助成が支出されているのは私立保育所を片目で見たからではなく、私学助成の一環として公立幼稚園との均衡を意識したからであろう。また、都道府県の支出が大きい割に国庫予算が少なくて余り目立たなかったためかもしれない。私立幼稚園の園児数約一四〇万人に経常費助成の年額約十五万円を単純に掛け合わせても二一〇〇億円になる。この他に就園奨励費がある。保育所の四〇〇〇億は私立よりも児童数の多い公立分を含めた数字である。とても四〇〇〇億対四〇〇億の語感とは掛け離れている。
 幼保問題という形ではあるがこどもの問題、子育ての問題が大きく取り上げられることになりそうな機会に懸案事項の見直しが進むことを期待する。今回は規制緩和というスローガンが発端のようであるが、観念的な議論ではなく実際に即した検討が必要である。問答よりゼニ問答。
 試算に当って採用した資料及び算定経過を巻末に一括掲載した。より適切な資料の存在や計算方法等についてご意見があればご教示いただきたい。
(fujimotok@jcom.home.ne.jp)
(藤本勝己)
 
(参考)
*(1)経費試算のモデル
 夫婦共働きの4人世帯、4歳児1名が通園。保育所の所在地域と定員規模によって公費支出等に差が生じるので、標準的と考えられる乙地域(中規模の市)所在の90人定員の施設を想定
*(2)平成15年度国家予算(主要なもの) 単位:百万円
 
保育所 幼稚園
保育所運営費 422,035 就園奨励費 17,823
特別保育対策   経常費助成費補助 29,226
延長保育 30,091 一般補助 24,546
休日保育 254 特別補助 4,680
乳児保育推進 1,761    
地域子育て支援センター 4,710    
保育所地域活動 1,180    
 
*(3)保育所における保育経費(乙地域・保育単価:月額)
 
  0歳 1・2歳児 3歳児 4・5歳児
20人 202,960 139,340 91,690 85,300
21〜30 181,780 118,160 70,510 64,150
31〜45 170,880 107,310 59,720 53,370
46〜60 164,420 100,850 53,260 46,910
61〜90 155,240 91,670 44,080 37,730
91〜121 148,460 84,890 37,300 30,950
121〜150 146,140 82,570 34,980 28,630
151〜 145,370 81,800 34,210 27,860
 
社会福祉法人の指導監督に関する行政評価・監視結果に基づく勧告
(抜粋)
 総務省は七月二五日厚生労働省に対し、社会福祉法人の運営状況及び社会福祉施設・設備に係る補助事業の実施状況を調査し、適正化等について勧告を行った。運営状況については、
〈社会福祉法人の運営の適正化〉
○調査した一四二法人のうち一三〇法人が不適切とされたものとして
・理事会に全く出席していない者を理事に選任している。・法人の行う事業は定款をもって定め、その実施が義務付けられているが、記載されていない事業を実施している。・法人会計基準に基づいた経理規程が策定されていない。
○所轄庁の法人監査で不適切事例への指導・処分が厳正に行われていない
・法人監査担当職員が、審査基準、定款準則等法令に不知。法人監査時に調査書の不備により不適切事例を把握できなかった。
・法人監査担当職員が法人監査において把握した不適切事例とこれに対して特段の理由もなく指導・処分が行われていない。







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