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厚生労働省広報室・発
☆夏休み、読者の皆さんはどのように過ごされたでしょうか。今年は梅雨明けが遅く、急に暑さが来て、夏らしい期間も短かくなってしまいそうですが、海に、山に、あるいは屋内の読書にと、この夏の思い出はできたでしょうか。
 広報室のスタッフもめいめいに夏休みをとりました。この仕事をして改めて成程と思ったのですが、夏休み時期は新聞も薄くなりますね。恐らくそれはそれで良いので、むしろこういう時期こそ、自分にとって本当に必要な情報とは何なのかを考え直してみる良い契機なのかも知れません。
 考えてみれば大きな事件やニュースがない時というのはそれなりに良い時である訳で(広報室が忙しくないから、というだけではありません)、そういう時には、普段ニュースにならないようなちょっといい話、国民に勇気や明るさを与えてくれるような話題といったものを、もっとマスコミも取り上げてくれないものだろうか、そうすればいくらかでも世の中を明るくするのに役立つのではないだろうか、と思います。悪いことをする人と同じくらい、いやきっともっと沢山、良いことをする人もいる筈ですが、こちらはなかなかニュースにならない。これはマスコミばかりでなく、広報に携わる我々にも通じる課題かも知れませんけれども。
☆さて月刊「厚生労働」九月号のご案内です。九月号の特集は、先日とりまとめられた平成十五年版の厚生労働白書。例年この時期には白書の特集をするのですが、今度から広報誌が厚生・労働ひとつになって、広報誌の編集作業も楽になりました。その分内容が濃くなるように努力したつもりです。
 今年の白書の総論部分は子育て世代、高齢世代のそれぞれの生活実態の分析と、今後のより良い関係づくりに向けての提言です。これまで例年、「白書特集」の時には白書のとりまとめ担当者による解説記事で誌面をつくってきたのですが、今回はまず、「世代間の新たな関係の実現を目指して」と題する座談会を組んでみました。外部の方を五人、企業の人事担当の方や高齢者向けサービスの関係者などを含めお招きしての座談会です。これにより、白書をそのまま読むのとはまた違った切り口から、ポイントを理解していただけるのではないかと思っています。もちろん例年同様の解説もこれに続けて掲載しています。
 このほかの単発記事としては、社会保障審議会が先日とりまとめた「今後の社会保障の方向性に関する意見」についての解説、平成十四年度の育児休業・介護休業等の実施状況調査結果についての解説、「データブック」欄では平成十四年簡易生命表(日本人の平均余命)、平成十三年度国民医療費の紹介など、今回も盛り沢山な内容となっています。
☆恒例のインタヴューは女優の市毛良枝さんです。実を言うとこの稿を書いている今、まだ肝心のインタヴューが終ってないので内容のサワリを書くことができないのですが、私自身、今回のインタヴューをとても楽しみにしているんです。と言うのは、「健康日本21推進国民会議委員」ということでご協力下さっている、またそのご縁でとてもお忙しい中をインタヴューに応じて下さった、というだけでなく、この人の文章――例えば「山なんて嫌いだった」(山と渓谷社)など――を読むと、山登りやウォーキングが本当にこの人の生活の一部になっていて、そしてその生活を楽しむということを本当の意味で身につけている人だという感じがするからです。インタヴューは広報室長職の役得、とよくやっかまれるのですが、今回こそ、思う存分やっかまれるものにしたいと思っている次第です。どうかご期待下さい。
(厚生労働省 大臣官房広報室長 樽見英樹)
雑誌「厚生労働」年間購読料・八、二〇八円(送料込)  お申し込みは、中央法規出版(株) 電話〇三−三三七九−三八六一
 
 
 
――地方版エンゼルプラン――
長崎市福祉部
こども課長
松本憲明
1 人口構成の動向等
 本市の人口は、昭和五九年の四五〇、六一九人をピークに、年々減少を続けており、本年7月では四一八、七七三人となっています。
 人口構成では、平成十四年十二月と同規模の人口である昭和四五年と比較すると十五歳未満(年少人口)で約半減しており、六五歳以上(老年人口)では約三・三倍になっており、三〇年の間に急速な少子・高齢化が進行しています。
 また、合計特殊出生率では、平成十四年本市は一・二六と最低であった平成十一年以降○・〇三増加しているものの、全国一・三二、長崎県一・四八を下回っている状況であります。
 
2 計画策定の趣旨
 近年、少子化の進行は顕著となっており、こどもと家庭を取り巻く環境も大きく変化するなど、高齢化とともに大きな社会問題となっています。
 少子化の影響として、こども同士のふれあいの減少による自主性・社会性が育ちにくいことや、社会保障負担、高齢者に対する医療・介護負担の増大、若年労働者の減少による社会の活力の低下などこども自身、あるいは社会全体に与える影響が懸念されています。
 また、子育ては夫婦や家庭の問題ととられがちですが、近年の核家族化・都市化の進展により、家族間や地域社会における連帯感・互助精神が薄れ、育児に対する精神的・身体的負担も増加してきていることから、子育ては「家庭が基本」としながらも、家庭における子育てを支援するため社会全体で協力していく体制を整備することも必要となっています。
 このような状況の中、こども自身が健やかに育っていける社会、子育てに喜びや楽しみを持ち安心して生み育てることができる社会を形成するため、保育サービスのみならず、住宅、労働、教育等の各分野にわたる総合的な長崎市の「子育て支援計画」を平成十年三月に策定し、二十一世紀に向けての子育て支援社会体制の構築を目指しました。
 
3 計画の基本的視野及び体系
(1)基本的視野
 子育ては、まず家庭を中心とした親たちが責任を持って育てるのが重要ですが、家庭における子育てを支えるため、行政の責任において支援することはもちろん、企業や地域を含めた社会全体で、こどもが健やかに産まれ育っていくための環境づくりに取り組むため、次の五つの視点に立って計画を策定しました。
(1)こどもの視点に立った福祉の向上
 こどもは、子育てサービスの直接の受け手であり、次代の長崎市の担い手です。こどもの視点を入れることにより、こどもの利益が最大限に尊重されるように配慮する必要があります。
(2)家庭環境の変化への対応
 核家族化や都市化の進展に伴い、世代間や地域からの育児知識の継承が困難になってきており、育児に対する不安・孤立感から育児ノイローゼや児童虐待も増加しています。このような育児の孤立化を避けるため、家庭における子育てを支援する必要があります。
(3)利用者の視点に立ったサービスの提供
 個人の価値観や生活様式、あるいは就業形態の多様化に伴い、子育てを含めた公的サービスに対する需要も多様化しており、利用者の立場に立った利用しやすいサービスの提供に向けて、柔軟に対応していく必要があります。
(4)総合的、計画的な施策の推進
 子育ては、家庭、社会、行政が全体で取り組む問題であり、福祉部門に限らず、保健、教育、労働、住宅、都市環境など幅広い部門の連携をとることにより、有機的なサービスの向上を図る必要があります。
(5)就労環境の変化への対応
 女性の就労の場が拡大し、就業形態も多様化しており、既存サービスだけでは子育てと仕事の両立が困難になっており、このような変化に対応して、子育てと仕事の両立が可能な環境を整備する必要があります。
(2)体系
 この計画においては、「こどもの健やかな成長と子育て支援社会の構築」を基本理念とし、次の三つの基本目標を掲げ、十二の施策、三三の具体的項目を挙げています。(図1参照)
(1)子育てに対する社会全体の協力体制づくり
 行政、教育機関はもとより企業、地域社会を含めた幅広い社会全体での取り組みを示しています。
(2)家庭における子育ての支援体制づくり
 子育て相談体制の確立や男女共同参画、健康面からの支援、経済面における援助などを示しています。
(3)子育てに適した住みやすい環境づくり
 住みやすい長崎市の都市環境の整備を行い、望ましい居住環境づくりのための取り組みを示しています。
 
  昭和45年 昭和55年 平成2年 平成12年 平成14年12月
人口 421,114 100.00% 447,091 100.00% 444,599 100.00% 423,167 100.00% 421,288 100.00%
15歳未満 108,697 25.81% 104,199 23.31% 83,766 18.84% 62,327 14.73% 59,471 14.12%
15〜64歳 286,904 68.13% 303,983 67.99% 304,120 68.40% 280,214 66.22% 276,290 65.58%
65歳以上 25,513 6.06% 38,718 8.66% 56,261 12.66% 80,480 19.02% 85,527 20.30%
不詳 - - 191 0.04% 452 0.10% 146 0.03% - -
 
合計特殊出生率の推移
 
4 「子育て支援計画」の見直し
 「子育て支援計画」の計画期間は概ね十年間としていますが、社会環境の変化が激しく、生活・就労形態の多様化している今日においては、ニーズに応じた対応を行っていくため見直しが必要となることから、中間年度である平成十四年度において見直しを行ったところであります。
 見直しにあたっては、緊急に対応すべき課題や新たな変革並びに国のエンゼルプランとの整合性を図りながら行い、残り五年間の計画期間において重点的に推進すべき事項として次のものを選定し、また各々の事項について目標プランを設定しました。
【重点的に推進すべき事項】
(1)多様な保育需要への対応
 保育所の設置(待機児童解消)、乳幼児健康支援一時預かり事業(病後児保育、病院に付設した施設の拡大)、放課後児童健全育成クラブ(児童クラブ、施設の充実)
(2)子育て相談、援助体制の整備
 地域子育て支援(多機能的な子育て支援の拠点施設の設置)、こども総合相談の充実、インターネットによる情報発信源の拡大
 
(図1)「長崎市子育て支援計画」体系図
【基本理念】子どもの健やかな成長と子育て支援社会の構築
基本目標 施策 具体的項目
子育てに対する社会全体の
協力体制づくり
多様な保育需要への対応 保育所の役割
低年齢児保育
延長保育
一時保育
保育所の地域活動
障害児保育
休日保育
夜間保育
乳幼児健康支援一時預かり事業(病後児保育)
認可外保育施設
放課後児童健全育成
広域入所
個性を重視したゆとりある学校教育の推進 心を育てる教育の推進
幼稚園教育の充実
子育てと仕事の両立のための就労環境の整備 企業に対する啓発
家庭における子育ての
支援体制づくり
子育ての相談・援助体制の整備 地域子育て支援
こども総合相談の充実
子どもの健全な育成支援
子育ての学習機会の拡大 家庭教育の推進
家庭における男女共同参画の促進 家庭における男女共同参画意識の啓発
子育てについての父親の意識啓発
母子保健・医療対策の充実 妊産婦の健康づくりと支援
乳幼児の健康づくりと親への支援
歯科保健
障害児・特定疾患・長期療養児の療育指導
ひとり親家庭への支援 ひとり親家庭への支援
母子生活支援施設の充実
援助を必要とする子どもへの支援 児童福祉施設の短期利用
子育てに伴う経済的負担の軽減 保育料の軽減
乳幼児福祉医療の充実
子育てに適した
住みやすい環境づくり
子育てに適した生活環境の整備 住みやすい環境づくり
児童館・児童センター活用の充実
住環境の整備 住環境の整備
 
5 計画の主な実施事項としての「こども課」の設置
 これまで、子育てに関する施策は、福祉、保健、教育の三つの部局それぞれで行っておりましたが、それをなるべく統合して子育てに関する施策を横断的かつ総合的に推進するため、本年四月より福祉部に「こども課」を設置しました。また、青少年の健全育成の事業を行っていた少年センターを教育委員会から移管し「こども課」と併設しました。
 「こども課」は、精神的支援、経済的支援、身体的支援、社会的支援の四つの柱でこどもや親を支えていこうと考えております。
 特に、精神的支援としての相談業務を重要な柱と考えており、教師、保健師、保育士、家庭相談員、母子相談員等十人の相談員を配置しております。
 今後は、相談窓口の一層の充実及び地域における子育てへの支援をより強化していくための出前講座や地域子育てセンター事業の拡大・充実を図っていきたいと考えており、また、子育てに係る多機能的な施設(子育て支援センター)の設置についても努力していきたいと考えています。
 なお、保育所関係及び特別保育事業、放課後児童健全育成事業については、「保育課」を設置し、保育環境の向上や待機児童解消等に努めています。
 最後に、地方自治体の財政状況は年々厳しくなっており、社会環境の変化、生活・就労環境の多様化が進んでいる状況でありますが、今後も関係団体との連携を深めながら、子育てに関するニーズの把握に努め、効果的な施策の検討を行い、効率的な実施に努めてまいりたいと考えております。
(追記)
 七月一日に発生した幼児誘拐殺人事件は、中学一年生が補導され家庭裁判所に送致される事態となり、長崎市民は大きな驚きと悲しみに打ち拉がれておりました。こどもや保護者の精神的ダメージは大きなものと思われることから、こども課としては、保健部、教育委員会と連携し、少年が補導された翌日に、従来の相談体制に新たに臨床心理士を加え「こどもと親の心のケア相談」の電話相談窓口を開設するとともに、被害者となった幼児の通っていた幼稚園に臨床心理士を定期的に派遣し、保護者の心のケアに努めました。
 
『こども課の人員体制』
課長、主幹1人
企画係17人(うち8人嘱託)
(児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉医療助成、各種計画の企画等、児童センター・児童館運営)
育成係 15人(うち10人嘱託※相談員)
(子どもに関する相談、虐待防止、母子寡婦福祉資金貸付、母子生活支援施設、各種母子自立支援事業、少年センター)
 
「少子化社会への意見、提言」募集―少子化時代をどう考え、どう生きるか―
応募規定 (1)自作の未発表、未投稿作品に限ります。(2)応募は一人一作品に限ります。(3)400字詰め原稿用紙8枚以内(3200字以内)。(4)作品に、題名、住所、氏名(ふりがな)、生年月日、性別、職業、電話番号を明記してください。(5)入賞作品の著作権は主権者に帰属し、応募作品は返却いたしません。
応募資格 十五歳以上四〇歳以下の方なら、どなたでも応募できます。
募集期間 二〇〇三年七月十八日〜九月三〇日(当日消印有効)
表彰 こども未来財団賞=一編(賞状、楯と賞金五〇万円)読売新聞社賞=一編(賞状、楯と賞金三〇万円)
入選=若干(賞状、楯と賞金五万円)
発表 二〇〇四年一月中旬、読売新聞紙上にて
応募・問合せ先
東京都中央区京橋二の九の二 読売新聞東京本社事業開発部「少子化提言」係
tel 03・5159・5886







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