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誌上研修「人材育成」(20)
「保育と人生」を豊かに生きるヒント集 第90回
お互いが認め合う、もっとオープンな保育園になろう
人材開発コンサルタント
塩川正人
 「あの人の思いが分からない」こんな関係が職場にありませんか? 相手の思いが分からないと、結局マイナス思考になり、邪推や陰口が横行します。職場の人間関係で一番大切なことは、お互いがもっとオープンになることです。オープンにすれば、他の人ともっと親しくなれます。下の表にオープンな自分を語り、お互いに交換し合いませんか。
 オープンにすること、そして認め合うことが「人が育つ保育園」のノウハウです。私は8月の岩手県日保協の総会で下のカードに書き込んで、お互いに交流する研修を行ないます。園内研修でこの紙切れを皆で作成し、オープンにし合います。全部の紙切れを使わなくてもいいです。一部を使い、何回もやるうちに、だんだん効果が現れてきます。
 
 
 
 
――レポート――
幼稚園の窓から(37)
保育園の公設民営とチャータースクール
片岡進
「月刊・私立幼稚園」編集長
公立学校再生への切り札
 このところ幼稚園、保育園関係者の間から「チャータースクール」という言葉がよく聞かれます。ご存知のようにチャーターとは飛行機、船、バスなどを一定の契約で借り切ることを意味しますが、チャータースクールとは公立学校の運営を民間の組織や会社に委託するもので、つまりは学校の借り切りです。オランダなどヨーロッパの一部で古くからあったシステムを応用して、アメリカが一九九〇年代初めから導入したことで注目されるようになりました。
 昨年夏、ビルゲイツ財団から多額の補助を受けたことで知られる代表的チャータースクール、ミネソタ・カントリースクールの校長が来日して開かれたセミナーはどこも満員盛況で、その中に幼稚園経営者の姿を何人も見つけることができました。また(社)日本仏教保育協会(上村映雄理事長=東京都・ほぜんじ幼稚園園長)は総会と併せた今年春の園長研修会で、同制度に詳しい文教学院大学の鵜浦裕教授の特別講演を行い、多くの参加を集めました。
 なぜアメリカはチャータースクールを導入したのか。それはあちこちの公立学校で学校秩序が破綻したからです。学校が荒れると、その学区の住民はわが子を荒れた学校に通わせたくないので他の学区に引っ越して行きます。学校の崩壊は地域社会の崩壊につながるわけです。何とかして学校を再生しようとしても、従来の公立学校行政では、荒れた学校を廃止することはできても再生させる力はありません。そこで株式会社を含む民間組織に運営を任せることにしたのです。
 (1)授業料を無料にする、(2)生徒を差別しない、(3)特定の宗教を奨励しない、という合衆国憲法で定められた公立学校の基本三条件を満たしていれば、教育方法も生徒募集も自由です。アメリカの公立学校は、生徒一人にいくらという単純掛け算で教育経費が支給されますので、多くの生徒を集めれば、それだけ経営余力が生まれます。看板は公立学校でも実体はかなり個性的な私立学校と言えます。ただしチャータースクールを維持するには厳しい条件があります。生徒の学力が平均レベルを超えていることと、教育コストが従来の公立学校より安いという「ベター&チーパー」の結果を出すことです。これが認められないと直ちにチャーター契約が打ち切られ、他の民間組織に移行するとのことです。
 この波は日本にも押し寄せ、学校自由選択制、校長の民間人登用、国立大学の独立法人化など国公立学校を活性化させる方策が着々と進んでいます。しかし考えてみると、保育園の公設民営化はまさにチャータースクールの思想にぴったりあてはまるもので、波はすでに日本列島を洗っていると言えます。
 「卒園した子ども達が立派に育っていく様を自分の手で確かめたい。できれば幼稚園附属の小学校をつくりたい」という思いは多くの幼稚園経営者が持っています。保育園経営者も同じだと思います。その思いが、公立小学校のチャータースクール化という形で実現する時代が、すぐそこまでやって来たということです。
 「幼稚園の力じゃ無理だよ」「日本の教育風土の中では考えられないことだ」と思ってはいけません。その気概を失った幼稚園、保育園は時代に淘汰されることになりかねません。地域の幼稚園、保育園が協力すれば大きな力が生まれるのです。幼・保の連携は、その新しい夢に向かっての大事なステップであると考えるべきだと思います。







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