――保育園を考える親の会から[28]――
保育園で感心したこと・学んだこと(2)
保育園を考える親の会
前回に引き続き、二〇〇二年五月に実施した会員アンケートで、「保育園の保育や子どもの生活ぶりを知って学んだこと、勉強になったこと」をたずねた結果をお伝えします。
どの回答も、子どもを保育園に通わせるなかで、親が実感していることで、今、保育園の果たしている役割がよくわかる回答内容となっています。なお、コメントは自由記述欄に書かれた回答を、ほぼ原文のままテーマに分けたものです。
集団保育・多数の大人の中で育つメリット
○子ども同士の育ちあいです。
○集団生活は貴重。ありがたく思っている。
○子どもは親だけが育てるものではないということ。
○幼稚園に入る前の年齢でも大勢で遊ぶことにより、子どもの社会性が向上する。
○保育園に行きはじめて、友だちとのかかわり合いを身につけてきたと思う。友だちが困っていると感じたときは、何かしてあげようと手伝う(マネ)をしたりする。子どもでも(二歳になる前後のことだったと思う)こういうことがわかるのか、と感心。
○ゼロ歳から通っているせいか、社会性が身についている(きまりを守る、友だちに自己主張する、ゆずるということができる)。言葉の数がものすごく多い。毎日外遊びをしているので、運動能力が発達しているなど、自宅で母子二人で保育していたら、できなかっただろうと思います。
○友だちとのかかわりがとても深いものだと感心した。
○子どもどうしの社会性(友だちのけんかを仲裁したり、なぐさめたり)を伸ばすように大人は見守るようにしていると知り、集団生活を送ることができて本当によかったと思った。
○行事のときのクラスの出し物を決めるとき、全員の意見を出し合って子どもたちで決めて実行させていた。見守るほうが大変だと思うが、根気よく指導してくれていて、おどろいた。
○集団という単位の中での協調性を育てていく方法(他園対抗ドッジボール大会など)
○ともかく友だちの力はすごい! 親が着替えなどをやらせようとしても全然ダメだったが、四月の入園以来、「自分で自分で」と、いろんなことを自分でやろうとするようになった。
○保育園はやはり保育のプロだと思う。子ども同士の関わりのなかで、学んでいくことも非常に大きい。トイレトレーニングも、ほとんど保育園で自然にできるようになった。
○何でも勉強になりました。特に、集団生活のなかで、嫌いなものが食べられるようになったり、家庭よりもきちんとした生活習慣をつけてもらえてよかったです。家庭で一人で子育てするよりよっぽど安心だし、物質に振り回されない暮らしができると思います。
○保育に関して、私も保育者として目標にしたいと思う保育士さんが数名いました。子どもは信頼できる大人が家族以外にもこんなにたくさんいて、あたたかく見守られ、幸せだったと思います。
きょうだい体験
○長男が年下の子の面倒見のよいこと。
○小さな園のため、否応なく縦割りになっており、家では甘ったれだが、園ではそれなりに年長らしくふるまっているらしいこと。
○保育園の入園時はほんとうに「赤ちゃん」だったうちの子も、同じ年齢のお友だちやお兄ちゃん、お姉ちゃんたちと接して、ずいぶんよい刺激を受けているようです。
○どんなに小さい子でも、自分より小さな子がいると大事にしたり、世話をしてくれたりするので感心しました。
○家庭保育の子より面倒見がよいと思う。
○一・二歳でも友だち、クラスというまとまりをつくれていること。先生のおかげだと思っている。また、年長児も乳児たちにとてもやさしい。小さい園ならではのまとまりがあって好きです。
○大きい子や小さい子とのかかわり合い(人数の少ない早朝・夕は合同保育なので)。兄弟ができたようにふるまっている息子を見て感心。もう小さい子をかわいがれるのか、とか、毎日大きい子と競争して頑張っているな、とか。
○部分的に異年齢混交保育です。大きい子が小さい子を自然とかばうようになり、感心します。
心の目が届いている
○各先生が子どもの体と心の両方にとてもこまやかに気を配っていただいているのに、いつも感謝しています。教わることばかりです。
○保育士の子どもの心に寄りそった対応。
○若い担任だったが、子どもをよく見ていて感心したことと、どの保護者も大切にしていたこと。
○連絡帳に保育士さんたちが日中のようすをよく書いてくれていること。子どもの体調をよく見てくれていることに感心した。
○私(母)にはあまり言わないことを先生に話していることが多く、思ったよりもずっといろいろなことを考えていると知ったこと(たとえば旅行を楽しみにしていること、夫婦喧嘩のことなど)。
○保育参加中の先生の対応の仕方が勉強になった。二歳クラスの三月で、子どもたちはほとんど三歳。どう考えても理不尽な怒り方をして遊びをこわし、かみついたりしてしまう子に対して、やさしく、またやる気を出させる語りかけ方をしていた。
○親とは違う視点で子どもの良いところをほめたり、悪いところを叱ってくれたりする。
○わが子のよいところをほめてくれること(よく見ていてくれるんだなあと思いました)。
○きちんと目と手をかけてもらうことで子どもの生活が豊かに作られ支えられていること。ごくあたりまえのそんなことを、たんたんと積み重ねていくことの重み。
労を惜しまない
○アトピーということで、毎日シャワー、塗薬と、ただただ頭が下がります。
○園主催の行事(たとえば親子遠足など)。その「ねらい」をこと細かに描いたプリントを何枚も渡されます。こちらが読むのが大変なほど。ひとつひとつのとりくみに対して熱心で、すごいなあと感心させられます。
外で元気いっぱい
○外遊びが多い(家ではあそこまでできない)。子ども中心だからこそできる。
○いろいろありますが、本当によくしてもらっていると思います。特に外遊びはたっぷり、自分の好きなように遊べる時間も多いようでうれしく思っています。
○遊びのレパトリーが増える。
○けっこう遠くの公園までお散歩に行く。歩く子どもたちもすごいけど、連れて行く先生方もすごいと思う。
○母親だけではためらいがちな、体を動かす遊びをたっぷり取り入れてくれ、感謝しています。
○洗濯のことを考えずにどろんこ遊びをさせてくれる。
○毎日どろんこになって遊んでいること。自分(母)ひとりでは、(乳児もいるし)とてもできない。
たくさんの遊び・体験
○子どものイメージをふくらませる遊びが多い(ごっこの世界)
○廃材を使って楽しいおもちゃが作れること(買わなくても、何でもおもちゃに変身できる)。
○手遊び、手作りおもちゃなど、子どもとのコミュニケーションの材料を知り、勉強になった。
○衣類をたたんだり、絵をいっぱい描くようになったり、さまざまなことを園で体験し、その中で興味のあることを家でやっている。
○遊び、摂取する食品やメニュー、人とのかかわりなどすべてにおいて幅広い経験ができている。当然のことながら、改めて、感心、感謝の念を持ちます。
○(キリスト教系の保育園だからか)障害のある子、ない子、外国人のお子さんなどとともに過ごし、すべて学ぶことばかりだったと思う。
○年長組はお泊りキャンプがあります。親元をはなれてバンガローで泊まり、キャンプファイヤーやカレー作りをするのは、非常に楽しい思い出になるようです(上の子は四年生ですが、いまだに楽しかったと語ります)。子どものころの楽しい思い出は、生きていく力になると思います。
○上の子が通っていた私立園では、遠足は毎月あり、また散歩でとってきたつくしをつくだ煮にしてその日の給食にだしてくれたり、摘んできたよもぎでよもぎ餅をつくったり・・・。O157事件以降クッキングすらしなくなった公立園では、考えられないような体験を私立では行ってくれていました。
さすが、保育士さん
○食事のさせ方、トイレトレーニング。
○昼寝のさせ方、トイレヘの誘い方。
○トイレトレーニング。子どもがぐずったときの気分転換のさせ方が上手。
○おむつはずしが早かった(園の方からそろそろと声をかけていただいた)。
○離乳、トイレトレーニングなど、すべて保育園でお世話になったと言っても過言ではありません。食べ物の好みなど、保母さんのお話からわかったこともあり、家の中だけでは知りえない一面を教えていただきました。
〇一日を通して保育園で生活する時間が一番長いので、成長に応じた対応を提案してくれます(一人で着替えたがっているので、おむつはパンツタイプにしたらどうか、など)。一人目の子どもなので勉強になります。外部の医師をよんでの育児相談もあります。
○ゼロ〜二歳の言葉でのコミュニケーションがとれないときは、プロとしてのノウハウが大変参考になった。
○子どもと話すときは子どもの目線で話す。そうするとほかの子も寄ってきて、お話の輪ができた。
○保育士の子どもに対する言葉かけ(食事のすすめ方、トイレ、けんかのときなど)
○友達どうしのかかわりについて見守る姿勢、介入するタイミングなど。
○けんかの仲裁。わが家はひとりっ子なので。
○ブランコの順番待ちのトラブルを解決する先生の言葉かけは勉強になった。
○さまざまな状況において、保育者の言葉かけひとつで子どもの受け止め方、行動が変わること。
○子どもの話を落ち着いて聞くこと、オーバーともいえるほどほめることなど、前向きの気持ちを持たせるのが保育士の方々は上手です。
○すぐ叱るのではなく「言いきかせる」と子どもにわかるのだ、と学びました。
○年中の時、子どもたちに片づけをさせるのに「片づけをしなさい!」と言うのではなく、「時計の長い針が10のところへいったらお片づけしましょう」と言った先生。子どもたちは遊んでいて聞いているのかな、と思ったが、その時間になると、皆片づけを始めたのには、普段の自分を反省しました。
親を支えてくれる
○自分が子どもに対して楽しんでやる時間や余裕がないことでヒステリックになっていくことについて、連絡帳等で知らせ、子どものようすを聞いたとき、ていねいな返事とともに私の普段のようす等にもふれてくれ、はげまされたことがたびたびありました。
○私の仕事が異常に忙しくなったとき、子どもが敏感に感じたのか、園でよく泣くようになってしまった。私に対して苦情は言わず、「いつもおんぶしているから大丈夫ですよ」と言ってくださった。
○長男が年中組のとき、子育ての悩みを保育士さんに相談して、先生たちから励まされて心強かった。
○先生方がとても積極的に子どもと接してくださり、食事を始め何から何まで教えていただいています。一人っ子のため、わからないことは先生に相談しています。
まとめ
いかがでしょうか。保育園側としては、「当たり前」のことも多いかもしれませんが、親は、それを見ることで、子どもへの理解が広がったり、支えられたりしているのです。
ただ、親がこのように「保育園の保育を見る」「理解する」機会が少なくなりがちな現状もあり、保育園をただ「子どもを預かる施設」とだけとらえがちな社会の風潮も、残念です。
最後に、保育園の素晴らしさを語る印象的なコメントを二つ取り上げておきます。
○保育園は本当に「生活の場」なのだということをいつも実感する。「たくさんの家族」と一緒だからご飯だっておいしいし、遊びの楽しさも倍増する。ケンカだってたくさんするが、一人っ子の我が子の園でのキラキラしたエネルギーを見るたびに感心します。
○良い先生は、声が小さい。クラスの声が生き生きしている。子どもの声が聞こえるような子育てに気付かされた。また客観的に子どもの様子を見ることができました。子どもが好きになりました。今までより人も好きになりました。
「利用者満足度」なる言葉が流行していますが、本当に深いところでの満足、価値を見落とさないようにしてもらいたいものです。
(保育園を考える親の会代表 普光院亜紀)
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネツトワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。
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たべものの話(108)
道野英司
一学期の学校給食が終了する七月の半ばが過ぎたが、大きな食中毒事件もなく、そろそろ今年の夏休みの計画を立てようかと考えている。
過去に平成十二年の雪印乳業食中毒事件や平成八年の堺市学童集団下痢症のような大きな食中毒事件が発生したときは、夏休みの旅行の予約を何度も変更し、結局とりやめた苦い経験があり、我が家では夏休みの計画は七月中旬以降に立てることが正解という結論になっている。
今年も食中毒シーズンに入った六月以降、全国から食中毒事件発生の速報が報告されているが、大規模事例として、広島市で患者数三〇〇人を超えるシュークリームやケーキを原因とするサルモネラ食中毒が発生しているものの、この事件の原因究明は順調に進んでいるようである。今年は梅雨が長引き、気温が低いことが影響しているのか、ほかには特に大きな事件はないようである。
保育所の場合は学校と異なり、夏の間も給食を休むことができないため、給食を継続することが多いと思うが、食中毒予防対策に特段のご配慮をお願いしたい。
さて、七月一日に内閣府に食品安全委員会が設立された。
BSE問題が発生した際の行政対応を検証した結果、専門家の意見が適切に行政対応に反映されなかった事例や情報が適切に国民に公開されなかった事例が問題となった。このため、食品の安全性評価を厚生労働省や農林水産省から独立した機関が実施することにより、国民に対してより明確な形で食品に関するリスク評価の結果を示し、その結果に基づき、厚生労働省や農林水産省が行政対応をとっていくこととされ、昨年からこの委員会の設立が準備されてきた。
この委員会は今国会で成立した「食品安全基本法」に基づき設置されたもので、自然科学の専門家の委員が中心となって、食に関係する様々なリスクに対する科学的評価を一元的に実施し、厚生労働省や農林水産省に評価結果を通知したり、勧告を行うこととされた。委員会の構成は食の安全確保に関する有識者、すなわち毒性学や公衆衛生学などの専門家七人で構成され、四人は常勤で常に委員会に詰めることとされている。これらの委員は、元国立がんセンター総長、医学部教授、元国立研究所所長、マスコミの解説委員などが衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣に任命された。
食品安全委員会の具体的な任務は、食のリスクに関する科学的評価として、添加物、残留農薬、残留医薬品、環境汚染物質などの評価のほか、食中毒対策、BSE対策、遺伝子組み換え食品対策に必要なリスク評価が予定されている。これらの個別の評価に当たっては、さらに各分野の専門家から構成される専門調査会を設置して、詳細な検討を行う。
さらに、食品安全委員会は、厚生労働省や農林水産省の食品安全行政について、問題があれば勧告も行うこととされており、今後の活躍が期待されている。
このような政府における組織強化は食品安全委員会のみならず厚生労働省や農林水産省においても行われた。
厚生労働省では、医薬局を医薬食品局とし、食品保健部は食品安全部に改称し、食品安全行政に関する国民との意見交換や情報提供を行うリスクコミュニケーションの担当官をおくなどの体制整備を行うとともに、最重要課題である輸入食品の安全確保を図るため、検査担当職員の大幅な増員を行った。
また、農林水産省もこれまで食品のリスクの評価と業界振興を同じ部局が担当していたが、BSE問題などで生産者寄りの行政を招いたと批判されており、消費者行政や食品安全管理を産業振興などから分離し、「消費・安全局」を新設した。さらにBSE問題後に生じた不正表示問題等に対応するため、食糧庁や食糧事務所の廃止に伴い、地方農政事務所を設置して、JAS法に基づく検査を実施していくこととなった。
このようにBSE問題に端を発した食品安全行政組織の見直しが終わったわけであるが、実際に有効に機能し、国民のニーズにあった行政を進められるよう担当者ひとりひとりが努力することが重要と考えている。
(厚生労働省食品保健部監視安全課課長補佐)
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