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保育界(平成15年8月号)

 事業名 保育活動の推進
 団体名 日本保育協会 注目度注目度5


――食育調査会から――
 去る五月十五日「食育」についてと題して自由民主会館会議室で三人の保育園長から約一時間にわたるヒアリングが行われた。
 開催したのは、自由民主党政務調査会に設置されている「食育調査会」(武部勤会長代理・元農水大臣、宮腰光寛事務局長・衆議院議員)で、これまでに大学の栄養専門家や学校給食の関係者などからのレクチャーと質疑応答等をまじえた研究会を開催し、農水、文部、厚労省の担当部局、国会議員、秘書など約五〇人が参加。日本の食環境の実情や食教育、家庭や子育て等における諸問題について意見交換を行っている。
 
左から上野、御園、高橋、武部、宮腰の各氏
 
 今回のテーマは「保育所における食育について」。厚生労働省からの推薦で、発表者は高橋保子(東京・村山中藤保育園長)、御園愛子(千葉・みつわ台保育園長)、上野隆子(富山・速川保育園長)の三氏が行った。
 以下、ヒアリングの概要の一部(抜すい)を紹介する。
○宮腰光寛事務局長
 本日はお忙しいところをお集まりをいただきまして、ありがとうございます。初めに武部勤会長代理より、ご挨拶をお願いいたします。
武部勤会長代理
 食育のことで総理も関心をお持ちのようであります。関係省の皆さん方とも我々食育調査会のメンバーとも一緒にフリーな議論をした上で、論点を整理し、総理にもお話申し上げる機会を得たいと思っております。
宮腰事務局長
 子どもの頃からの食育が非常に重要であると指摘されてきておりますが、本日は保育園の現場での食育の実践事例について伺えるものと思っております。まず高橋先生から、お願いいたします。
高橋保子村山中藤保育園長
 私どもの仕事は小さな赤ちゃん、そして学校までのお子さんをお預かりしていますが、小さな命を預かって人として育てるという非常に重要な仕事を国から委託されております。
 離乳食一つとりましても、乳児のほうでは味覚から始めまして、どのように体の中で食品を消化していくのか。例えばタンパク質に異質なものが入った時に体内の消化するところでトラブルを起こし、ミルクの違うものをあげたためにアトピーになってしまう等ということも勉強させていただいております。それほど赤ちゃんの体の中に入れる食品についても非常に責任が重く、体調を崩さないように、いろんな食品を摂り入れていき、消化・吸収していく。しかも子どもは非常に少量ですから、それを栄養過多にならないようにしながら、徐々に乳児用から普通食まで食べられるまで、段階を追って進めていくわけです。
 赤ちゃんたちには、普通食が食べられるようになるまで、ということを考えながら仕事をしております。
 例えば四歳は知的好奇心が非常に旺盛で、何でも吸収したい時です。子どもの興味に合わせて先生達がそのことをやっていくわけですが、インゲンを栽培したこともそうですし、フライパンで焼いたらどうなるか、ゆでたらどうなるか、と味比べとか会食をためしたりして遊びます。そしてゆでたものはお醤油で食べたらどうなるんだろう、ごまあえにしたらどうなるんだろうということを、ほんのわずかですが食べてみる。それが子どもの脳裏にとても焼きつくんでしょうね。で、お母さんがスーパーで買って帰り、子どもさんからどんなことをやったのかを聞いて、ごまあえとかフライパンで炒めるとか。そうすると炒めたものは硬いとか、ゆでたほうが柔らかいというあたりも全部確認していくみたいです。そういう実験的な遊びが、子どもに食事に対する関心度を高くしていくようなところがあります。
 「低下した幼児期の体力は回復できるか」について一昨年、学会で紙上討論を求められまして、食事の視点からきちんと食事を食べるということが原点であり、体をつくることも体力もすべてなので、まず食事をしっかりしなきゃいけないだろうということを書きました。
 保育園は食事を二回食べますが、夕食が十九時でございます。体の中でどのように消化吸収されていくのかということを考えたときに、胃の中に三時間食事が残っていることがあるので、三時間過ぎないと空腹感は出ないということを勉強しました。
 そして四時間おきにしたらどうだろうということをやっておりますが、家庭でもそれを理解して、三時に食べて帰ったあと夕食七時までの間に駄菓子などをあげなければ肥満児にはならないのです。成人病にももちろんならない。私どもは、預かったお子さんをきちんと育てるということに非常に責任を感じまして、とことん考えて実践しています。
宮腰事務局長
 ありがとうございました。次に御園先生のほうから、よろしくお願いいたします。
御園愛子みつわ台保育園長
 私どもは「食は命」という職員の共通理解のもとに、食事の狙いを楽しくおいしく食べるということで決めました。そして子どもには、いっぱい食べて、いっぱい遊んで、ぐっすり眠って健康な子になろうということでわかりやすい説明をしております。
 私のところも、朝の七時から二〇時までの保育時間です。大半を保育園で過ごしている子どもたちの食というものは、本当に命にかかわっているなと思います。
 食欲不振、食べたがらない子が増えてる。食べる意欲がない。どうしてだろう、遊び方にも子どもの意欲がないというのもあるから、もっとしっかり遊ばせようとか。調理員からは楽しさやにおいまで伝わる料理を作ることが子どもの食育になる、と。保育士だけではなく、調理する人も子どもの発達を知っていなければいけないので、そのことを学ぼうということもしています。
 そのなかで調理員から、毎日の給食のお手伝いを年長さんにしてもらったらどうだろうかということで、毎日少しずつ代わりばんこに給食のお手伝いをすることになりました。例えばタマネギの皮をむくとか、タケノコの皮をむくとか、卵を割るとか豆をむくとか、トウモロコシをむくとか。
 先日は保育園の庭でタケノコ掘りをして、そのタケノコを給食に食べることにしました。栄養士が皮をきれいに洗ってくれて、梅干しを包んで子どもたちに配ってくれたら、それがとってもうれしくて、お父さんお母さんに話したそうです。するとお父さんが「『お父さん、食べたかったな』といって、お家で会話が盛り上がって楽しかったです」と連絡帳に書かれてありました。そういう風に作ってもらって並べて楽しく食べるというのが大事だと思います。
 いま私の園に、胃食道逆流のお子さんがいます。鼻から管が入っています。三歳になりますが、全然かむことができないのです。これは離乳食のときの与え方がまずかったのでかむことができない子になってしまったんです。いま三歳ですが、離乳食の段階まで戻して、調理員と栄養士が細かく刻みながら、その子はラコールというのを管から入れていますけれども、それだけではなく、できるだけかませようとそういうのもしております。それは一人ひとりに対応するというか、その子一人の食育ではあるのだけれども、とても大事なことだと思います。
 いま保育園の食事というか食育をしっかりしなかったらば、二一世紀の大人になったときにこの子たちがどうなるのかなというのが、私はとても心配です。
宮腰事務局長
 ありがとうございました。上野先生よろしくお願いいたします。
上野隆子速川保育園長
 保育園は零歳から就学前の子どもたちを預かっており、乳幼児の場合ですが、生まれて初めて大きな集団の生活を体験いたしますので、できるだけ家庭的な雰囲気の中で自然に生活に慣れられるようにと、いろいろ工夫をしております。
 午前のおやつは、スキムミルクと三グラムの炒り干しです。炒り干しというのは、煮干しの小さいお魚のことです。
 この煮干しですが、咀嚼力も向上する食品です。タテ割の異年齢児保育ですから、ゼロ〜一歳児は別ですが、二歳児から六歳児までみんな一緒におやつをいただきます。二歳児のリュウイチ君が、煮干しをなかなか食べることができず、いつまでもいつまでも口の中でモグモグやっていましたら、お隣に座った年上児のコウタ君が「リュウ君、顔と足だけ食べてあげるから、背中だけ食べてごらん。僕もね、小さいころ、ひよこクラスのときは食べられなかったけど、いま大丈夫だよ。お兄ちゃんみたいに強くなるんだから」と、力こぶを出して見せておりました。「うん」と、にこにこして食べ始めました。
 この子の言う、顔、というのは、煮干しの頭のことです。足というのはしっぽのことです。なんと説得力のある説明の仕方でしょう。私たちも、この子の教え方にはかないません。そして喜んで食べられるようになりました。ごく自然な思いやりの心がこういう場面で育っていきます。また二歳児のリュウ君にとっては、「お兄ちゃんってすごいな。強いんだな。なんでもできるんだな」という気持ちが、やがて人を敬う、大きい人にあこがれる心に育っていきます。
 こんな例は、保育の場にたくさんあります。家庭的な雰囲気の中でこそ育つ体と心の保育です。まさに、これは食育そのものだと思っています。
 私の保育園の園庭の周りに六〇〇平方メートルぐらいの菜園があります。地域のお年寄りと一緒に季節の野菜を作っており、昨日は、年上児と一緒にジャガイモの芽出しの作業をいたしました。五月二〇日は夏野菜とサツマイモの植えつけをいたします。また六月の初めにはイチゴの収穫時期になりますので、小学生を招いてイチゴパーティーをする予定です。これは昨年、年長児だった小学生が作っていってくれたものです。とれたての野菜とか果物とか、必ずここでとれたものは給食に使っております。ですから、偏食はたちまちに治ってしまいます。作業を体験することで、食べ物を大切にするという心も養えます。
 先日、三歳のミサちゃんがとってきたヨモギをしっかりとロッカーに入れておりました。帰り際にはだいぶしおれてしまっていましたが、お母さんのおみやげにすると思っておりましたので、担任が「ミサちゃんの今日のおみやげです。しおれているけれども、捨てないでくださいね」とカードに書きました。そしたら翌日、「夕食のてんぷらにヨモギを使いました。いつもより十倍もおいしかったです」と返事が戻ってきました。小さな小さなことですが、家族団欒の大きな収穫になったと思っております。
 台所のない家庭は、家庭とはいわないと思います。当然のことながら、調理室のない保育園は保育園とはいえないと思っています。子どもたちの育ちと調理室は切ることのできない関わりがありますから、「保育の中心は食にあり」は決して大げさな言葉ではないと思います。
宮腰事務局長
 どうもありがとうございました。それでは先生方のご意見をお願いいたします。
田村憲久議員
 本当に素晴らしいお話をありがとうございました。
 いま家庭とのかかわりというお話をしていただきました。保育園での食育も大事ですが、最後は家庭ですよね。重要なのは、保育園と家庭がどう接していくか。保育園が家庭に対し、子育て、食育も含めてどうアドバイスしていけるかという点だと思いますが、どのような家庭との付き合い方をされているのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
高橋園長
 私どもも子育て支援センターがございまして、小中学生に料理教室を開いています。保護者を育てていては間に合わないということで、いまの小中学生は土曜日お休みなので、その子たちに作り方から、食品の管理までを教えていこうということです。
 ここで是非申し上げたいのですが、保育園の調理室を取り上げられたら、離乳食を作れません。一人ひとり違うんです。その一人の子どももずっと一か月いくんじゃなくて、これが食べられてきたからここを少し上げていこう、もう少しこうしていこうと。みんな同じ誕生日じゃないので、十五人いたら、十五人全部違うんです。その子たちに全部合わせて作っていく。そこであたたかいものをあげられる。その子に合わせて作っていきますから、調理室がなかったら保育できません。
御園園長
 私は、今日の食事が大事だと思っています。一年先、二年先にどうということではなくて、いまが大事、今日が大事だと思っております。ですから保育園では、お母さんたちに毎日の献立表をお配りして、今日の食事の展示をして、目に見えるように、こういうものを今日食べましたというのをお見せします。
坂本剛二議員
 全国の保育園でこれやっているの?
高橋園長
 認可保育園はやっています。最低基準が決められています。
坂本議員
 こんな姿は幼稚園では見ていなかったし、公立の保育園もしょっちゅう行っていたけど、公立なんかではこんな姿を見たことない。十五人いれば十五人全員誕生日が違うので、離乳食はそれに合わせてなんて神業だと思ったね。
 日本の食育が崩れちゃったのは、家族全員で食事をとらなくなったからですね。昔は朝飯も夕飯も、農家や商家は昼飯もみんな一緒に食べたけれど、いまはムチャクチャでしょ。こうなるといくら保育園でやったところで、家庭でガチャガチャにしちゃっているから、やっぱり母親ですね。共働きをしているとか、忙しい仕事についているお母さんとなると、いまお話にあったようなことがたくさん出てくるわけで、印象を強く受けたんですけど。
武部会長代理
 僕が三人の先生に聞きたいのは、どうしてこういう世の中になったのかなと。それで食育から、お母さん教育は保育園でできるかと質問しようと思ったんですね。
 日本の場合、土日休みになったから、日曜日に料理教室を至るところでできるように政策的にできないかなと思っているんです。その際に公民館でもいいですし、田舎の商店街には空き店舗がいっぱいあるから、それを改造してキッチンつけて、若者たちの料理教室だとか、誕生日にはお父さんが料理を作るとか。その一つとして、保育園でお母さん教育とかお父さん教育とか日曜日に。負担になるでしょうけれども、何とかして場所を提供してもらう事はできますか。保育園では無理でしょうか。あるいは日曜料理教室みたいのを全国的に国民運動としてやったらいいだろうと思ってます。いかがでしょう?
高橋園長
 保護者会を動かす事と会場を提供することは可能かなと私は考えております。
大島理森議員
 トータルして、まともでない食事の出し方をしている家庭は何割ぐらいありますか。
御園園長
 私は都市部でございますので、毎日三〜四人はごはんを食べてこない子がいます。定員一五〇人で、幼児のほうが九五人ぐらい、あとは赤ちゃんです。赤ちゃんは泣きますから、ミルクを飲ませます。幼児のほうは必ず給食室の前に行きます。子どもたちは、自分がお腹すいていると給食室のところに行くんですね。言いませんがわかりますから、調理人さんが中から見て、「牛乳飲む?」とか「食べる?」と言うと、うんといいます。それが保育所の家庭養育の補完という意味で必要だと思います。
 いま、お父さんもお母さんもすごくがんばっていると思います。八時までに迎えに来る方、これから家に帰って食事を作るというのは神業。子どもは眠くなるし。そこのところをどうするのかというのは社会的な問題です。
大島議員
 いま先生方のところに預かっているお母さまお父さまは、二〇代の後半から三〇代前後でしょ。そうするとファーストフード第一世代ぐらいじゃないかな。武部会長代理がさっきお話したように家庭団欒のなかでの食事の形態がなくなったと。これは社会論としては、非常に難しい時代になったのだろうと思いますね。労働政策等もあると思いますが、ただ昔に帰れというだけではどうにもならないですね。
 保育園で勉強会とかやると、保育所にご負担をかけることになるかもしれませんが、ただ食育の問題、「食の教育」というのは、すべて人間の教育の原点だというところからいかなきゃいかん。先生方が言うのは、やっぱり家庭ですね。先生方があまり立派な食育をおやりになりすぎると、家庭がそこに頼ってしまうところもあるだろうと思います。
 どういうふうにこれから家庭の食育の重要性をシステム的に、あるいは政策としてやっていくかということは大変勉強になりました。
宮腰事務局長
 それでは時間になりましたので、本日の会はここまでにいたしたいと思います。
(文責・編集係)
 







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