――地方版エンゼルプラン――
とくしま子ども未来二十一プランについて
――安心して子どもを生み育てられる社会づくり――
徳島県保健福祉部参事
(こども未来課長事務取扱)
河上美代子
1 徳島県の概況
徳島県は、海岸線で太平洋・瀬戸内海に接し、県土の約七割を山間部が占めるなど自然色豊かなところです。また、阿波踊りや人形浄瑠璃に見られるように、古き良き伝統芸能の残る土地柄でもあります。
県内人口は、平成十五年四月一日現在八十三万人弱となっていますが、総じて減少基調にあり、都市部への人口の流入が緩やかに進む一方、多くの農山村地域では過疎化が進行しています。
人口構成上の問題に目を向けると、全国を上回るペースで高齢化が進む一方、出生率は依然として低下傾向にあり、総合的な少子化対策が喫緊の課題となっています。
出生率の低下に伴い就学前の児童数は減少していますが、全国的な傾向と同様に、核家族化や女性の社会進出の増大、就業構造の変化等の影響を受け、保育ニーズは増大・多様化の傾向にあります。このため、一部地域においては保育所入所待機児童が発生し、その解消が急がれています。
(表1)県内人口等の推移 各年4月1日現在
区分 |
平成11年 |
平成12年 |
平成13年 |
平成14年 |
平成15年 |
県内総人口 |
835,781人 |
833,408人 |
831,241人 |
829,185人 |
827,086人 |
出生児数 |
7,135人 |
7,224人 |
7,038人 |
6,836人 |
- |
合計特殊出生率 |
1.39 |
1.45 |
1.39 |
1.36 |
- |
高齢化率 |
20.82% |
21.38% |
21.95% |
22.51% |
23.05% |
|
|
※住民基本台帳及び県統計調査課の推計値による。
|
(表2)保育の実施状況等 各年4月1日現在
区分 |
平成11年 |
平成12年 |
平成13年 |
平成14年 |
平成15年 |
就学前児童数 |
44,447人 |
44,280人 |
42,402人 |
42,253人 |
41,647人 |
保育所入所定員 |
15,600人 |
15,600人 |
15,590人 |
15,605人 |
15,740人 |
保育所入所児童数 |
12,909人 |
13,103人 |
13,381人 |
13,612人 |
13,780人 |
待機児童数 |
196人 |
163人 |
41人 |
83人 |
88人 |
幼稚園児数 |
10,391人 |
10,167人 |
9,905人 |
9,701人 |
- |
|
|
※保育所実態調査、学校基本統計による。
|
2 とくしま子ども未来二十一プランの見直し(「徳島県子育て支援計画」から「徳島県少子化対策計画」へ)
徳島県では、このように多様化・高度化する保育ニーズに適切に対応し、仕事と子育ての両立を支援するため、計画期間を平成八年度から平成十六年度までとする「徳島県子育て支援計画」(とくしま子ども未来二十一プラン)を定めていましたが、その後の社会情勢の変化や国の新エンゼルプラン等を踏まえ、少子化対策を更に積極的に推進するため、平成十二年度に従来のプランを見直し、新たに「徳島県少子化対策計画」を策定しました。
新しい計画では、「安心して子どもを生み育てられる社会づくり」を基本理念に、(1)「子育て家庭の支援」、(2)「就労と子育ての両立支援」、(3)「子どもの育成」の三つの視点から、保健・福祉・医療・労働・教育などあらゆる分野に渡る子育て支援施策を総合的、計画的に整備・充実していくこととしています。
3 重点施策の設定と進捗状況
また、プランでは、こうした基本方針を具体化するため、「保育対策の推進」、「放課後児童対策の推進」、「就業環境の整備」、「医療体制の整備」をはじめとする具体的施策三十五項目について達成目標を数値で設定しています。
この三十五項目の内容と平成十四年度末における進捗状況については、表3のとおりです。
保育対策関係では、「保育所の開所時間の延長」、「保育所地域活動事業」、「地域子育て支援センター事業」、「幼稚園における預かり保育」等の分野が順調に進んでいます。なお、ここに上げた「地域子育て支援センター事業」には、県単独事業の「わんぱく教室」が含まれています。「わんぱく教室」は保育所、児童館等三十五か所で実施され、地域の児童に広く利用されています。
保育所整備も順調に進んでいますが、施設整備が新たなニーズを喚起し、なかなか待機児童の解消につながらないのが実情です。
また、幼保の関係に目を向けると、近年、就学前児童数の減少や市町村の財政事情から幼稚園と保育所のあり方を見直すところが増えていますが、こうした中には、共用施設の建設等、一体的運用に向け工夫を凝らした取り組みも見られるようになってきました。
4 県単独補助制度について
徳島県も他県と同様、大変厳しい財政状況にありますが、次代を担う児童の健全育成分野については最重要事項と位置づけ、子育て支援に関する県単独の補助制度を設けていますので、簡単に紹介させていただきます。
(表3)とくしま子ども未来21プラン進捗状況(平成14年度末)
内容 |
分野 |
11年度末 |
14年度末 |
16年度末目標 |
1 |
乳児(0歳児)保育 |
福祉 |
30市町村 |
38市町村 |
45市町村 |
2 |
保育所開閉所時間の延長(10時間30分以上) |
福祉 |
26市町村 |
34市町村 |
45市町村 |
3 |
午前7時30分以前の開所 |
福祉 |
145ヵ所 |
178ヵ所 |
161ヵ所 |
4 |
午後6時30分以降の閉所 |
福祉 |
76ヵ所 |
89ヵ所 |
111ヵ所 |
5 |
休日保育 |
福祉 |
2ヵ所 |
2ヵ所 |
4ヵ所 |
6 |
障害児保育 |
福祉 |
22市町村 |
28市町村 |
45市町村 |
7 |
保育所地域活動事業の実施 |
福祉 |
38市町村 |
40市町村 |
45市町村 |
8 |
保育所の整備 |
福祉 |
- |
16ヵ所 |
24ヵ所 |
9 |
保育所待機児童数 |
福祉 |
163人 |
88人 |
0人 |
10 |
乳幼児健康支援一時預かり(病後児保育)事業 |
福祉 |
4ヵ所 |
5ヵ所 |
10ヵ所 |
11 |
一時保育 |
福祉 |
22ヵ所 |
35ヵ所 |
48ヵ所 |
12 |
地域子育て支援センター |
福祉 |
31ヵ所 |
63ヵ所 |
69ヵ所 |
13 |
子育て支援短期利用事業 |
福祉 |
22市町村 |
14市町村 |
44市町村 |
14 |
児童家庭支援センター |
福祉 |
- |
- |
1ヵ所 |
15 |
放課後児童クラブ |
福祉 |
44ヵ所 |
80ヵ所 |
95ヵ所 |
16 |
幼稚園預かり保育の実施 |
教育・総務 |
39園 |
60園 |
56園 |
17 |
乳幼児医療費助成 |
保健 |
3歳未満児 |
入院の対象年齢を6歳未満 |
入院の対象年齢を6歳未満 |
18 |
第3子以降保育料軽減 |
福祉 |
1/3軽減 |
1/2軽減 |
1/2軽減 |
19 |
ファミリー・サポート・センター |
労働 |
1ヵ所 |
2ヵ所 |
5ヵ所 |
20 |
県の審議会等への女性委員の選任 |
参画 |
19.1% |
23.7% |
30% |
21 |
小児救急医療支援 |
医療 |
- |
3圏域 |
1地域 |
22 |
市町村保健センター整備 |
保健 |
18ヵ所 |
20ヵ所 |
25ヵ所 |
23 |
産婦・周産期・新生児死亡率 |
保健 |
- |
- |
減少 |
妊産婦 |
|
- |
- |
|
周産期 |
|
6.4% |
5.5% |
|
新生児死亡 |
|
2.2% |
2.6% |
|
24 |
神経芽細胞種検査検診率 |
保健 |
87.1% |
- |
100% |
25 |
歳6ヵ月・3歳児健康診査受診率 |
保健 |
- |
- |
100% |
1歳6ヵ月健診 |
|
91.4% |
92.1% |
|
1歳6ヵ月歯科検診 |
|
91.3% |
92.0% |
|
3歳児健診 |
|
87.9% |
88.2% |
|
26 |
市町村乳児健康診査事業における心理相談員の配置 |
保健 |
8市町村 |
12市町村 |
35市町村 |
27 |
周産期医療ネットワーク |
保健 |
- |
- |
整備 |
28 |
不妊専門相談センター |
保健 |
- |
1ヵ所 |
1ヵ所 |
29 |
すこやか家庭教育支援事業
(家庭教育指導者の養成) |
教育 |
100人 |
403人 |
600人 |
30 |
スクール・カウンセラーの配置 |
教育 |
17校 |
20校 |
52校 |
31 |
子育て支援統合補助金の活用 |
福祉 |
18市町村 |
27市町村 |
50市町村 |
32 |
児童館等の整備 |
福祉 |
55館 |
64館 |
68館 |
33 |
県営都市公園の整備 |
県土整備 |
5ヵ所 |
5ヵ所 |
6ヵ所 |
34 |
快適な農山漁村づくり(中山間総合整備) |
農林 |
24地区 |
31地区 |
32地区 |
35 |
家族経営協定の推進 |
農林 |
119戸 |
319戸 |
400戸 |
|
(1)乳幼児医療費助成制度
三歳未満児の通院医療費、六歳未満児の入院医療費に対し、二分の一の額を補助しています。
(2)第三子以降保育料軽減措置
国の保育料軽減制度の対象とならない多子世帯における三歳未満児の単独入所に係る保育料について、二分の一の額を補助しています。
(3)子育て支援統合補助金
市町村が地域の特徴に応じて創意工夫した事業に対し、二分の一の額を補助し、地域の実情に応じた子育て事業を支援しています。
平成十四年度の事業実績としては、国の制度に乗らない「軽度障害児の保育所での受け入れ」、「多子世帯に対する保育料の軽減措置」、「認可外保育施設の健康安全事業」、「認可外保育施設の子育て支援施設としての活用事業」、「幼保連携に関する検討事業」、「子育てひろば推進事業」など十一種類に及びます。
5 今後の取り組み
ところで、皆様方におかれましては、既にご承知の方も多いことと思いますが、この五月二十日、徳島県に、全国一若い飯泉知事が誕生しました。
飯泉知事は、「オンリーワンとくしま」をスローガンに、働く女性や共働き世帯をバックアップするため、「とくしま女性輝き事業」として、延長保育・休日保育・病児保育等の各種保育施策の充実に積極的に取り組む姿勢を打ち出しています。
折しも国会において、「次世代育成支援対策推進法」が成立したところでもあり、今後は、「とくしま子ども未来二十一プラン」の計画期間内における数値目標の達成に努めるとともに、更なる子育て支援策の充実に取り組んでまいりたいと考えています。
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