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厚生労働省広報室・発
☆なかなか梅雨があけず、蒸し暑い日があったり涼しい日があったりの不順な天気ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。この文章が活字になる頃は、夏らしい太陽が照っていることでしょうか。夏はやっぱり暑くなくちゃあ、なんて今は思ったりしますが、その頃はきっと、先月は涼しくて良かったなどと言っているかも知れません。
 私ども広報室の仕事も、SARSなど冬の感染症の関係がおさまり、次の波は八月末の概算要求かな、というところです。省全体、来年に向けての仕込みの作業が始まります。特に年金制度の大きな見直しが予定されていますので、これについて広く国民に知っていただき、合意形成に向けて議論を深めていくことが必要になって来ます。これもまた、暑い夏の来る予感、というところでしょうか。
☆さて、月刊「厚生労働」、第二号となる八月号では、特集に「生きがいの見つけ方」という、ちょっと気どった題をつけてみました。
 人間は誰でも、社会や地域と関わりを持ちながら、そしてその中で役割を持ち、また支えられながら、暮らしています。その関わりの持ち方、役割の見つけ方を手助けする仕事というものを、われわれ厚生労働省は実にさまざまな形で、行っています。それを横断的にご紹介してみようではないかというのが、今回の特集のねらいです。
 巻頭にご登場いただいたのは、さわやか福祉財団理事長の堀田力さん。堀田さんのお考えになる「生きがい」や「自己発見」について、そしてそれを自分のものにするための方法や考え方について、語っていただきました。またそれに続いて日本労働研究機構の小杉礼子さんにご登場いただき、フリーター問題なども言われることの多い、特に若い人のライフスタイルと職業感について、実証的なデータも交えながら、お話をうかがいました。
 お二人のお話をうかがって私に特に印象深かったのは、ポジティブ・シンキングと言うか、いたずらに世を憂えるのではなく、現状を更に良くするために何をしたらよいか、という考え方の姿勢であったように思います。もちろん話の中味もとても示唆に富む良いお話でしたが、それだけでなく、誌面を通じてこうした考え方の姿勢をお伝えすることができれば嬉しいと思います。
 特集の記事、このお二人に続いて各局執筆の稿が続きます。「適職発見」について職業安定局、「若者の就職支援」について職業安定局や職業能力開発局、「高齢者の雇用と生きがい」について老健局と高齢・障害者雇用対策部、「家庭と仕事の両立支援」について雇用均等・児童家庭局、「ボランティア活動の支援」について社会・援護局と勤労者生活部、といった具合です。旧厚生・旧労働省各部局いり乱れての原稿執筆で、頼むわれわれにとってもいい経験になりました。これからはこれが普通になるのだろうと思っている次第です。
☆先月号ではお休みしてしまったインタヴューの頁も無事復活です。今回ご登場願ったのは宇宙飛行士の向井千秋さん。とても気さくなお人柄で、こういう方々とお目にかかれるのはやっぱり広報室長の役得だなあと改めて思いました。「宙返り何度もできる無重力」という「上の句」についてご記憶の方も多いと思います。これに「下の句」をつけるコンテストをしたときの話(これがどんなふうに面白いかは、是非本誌でお読み下さい)とか、宇宙でしばらく暮らして地上に帰って来るとどう感じるかとか、心臓血管外科医から宇宙飛行士に転じたいきさつとか、興味深い話が満載です。ご期待下さい。
(厚生労働省 大臣官房広報室長 樽見英樹)
 
雑誌「厚生労働」年間購読料・八、二〇八円(送料込)
お申し込みは、中央法規出版(株)
電話〇三−三三七九−三八六一
 
 
 
ふたたび
 幼保一元化
 生まれて初めて、大きな地震を体験した。地震国に住んでいると少しの揺れには慣れっこになっていて「オッ地震!」としか思わないで過ごしてきたが、今度の地震は半端ではなかった。鉄筋コンクレート造りの園舎が、がたがたと悲鳴を上げて揺れた。夕方の六時二四分、延長保育の園児もたくさんいる時間帯だったので、小さな命を守るあらゆる術が頭の中で沸騰していた。幸い大事に至らず、だけどたくさんの教訓を得た。
 翌日が「こどもを守る総決起大会」で上京する予定になっていたが新幹線が完全にストップしてしまった。当日の朝五時、時刻表と首っ引きでどうにかして仙台まで行き、そこから新幹線に・・・とも思ったが、余震が続き「プレートの下の震源でこれが影響してプレート地震になるかも知れないから一週間は警戒するように」との報道を聞くと、「園児の側を離れるわけにはいかない」と上京を断念した。
 保育界には今、人為的な地震が起ころうとしている。
 日本の経済がここまで逼迫しているのかと、世相に疎いおばさんもさすがに驚いている。かつて、何度もあんなに議論して「幼保一元化」はすべきではないという結論を得ているにも関わらず再々度の一元化議論である。三位一体の経済構造改革の中に補助金の見直しが三本柱の一つであり、同じ就学前の子どもに関して二つの省庁がそれぞれ無駄な補助金を使っている、そんなものは一つにして補助金を削ってしまえと・・・だけど一つにするには保育所設置の最低基準という目の上のたんこぶがたくさんある、それは、先人たちが「子どもは大切に育てよ」と熟考の上に作られた、子どもの育ちを守るための「最低」の基準である。
 その中でも大きなこぶは保育園の調理室である。これがなければ現行幼稚園も直ちに施設整備の費用も罹らず一元化できると考えたのが、規制緩和という名の下に保育園の調理室設置義務の見直しである。それはとても短絡的で危険な発想である。保育園という長時間にわたって家庭保育の補完をし、幼子の心身を健全に育むという目的をもっている場所にとっては調理室は家庭のお台所と同じ役割を果たしているのだから。
 保育界の六月号に総合規制改革会議が、幼保一元化について厚生労働省に対して行ったヒアリングの内容の一部が掲載されている。児童家庭局長さんの実情説明に対して委員さんたちのご質問の的の曖昧さを強く感じた。それは「初めに結論ありき」で、どうでも「近くの給食センターでいいではないか」の一点張りに聞こえ、こういう方々に日本の保育園のきめ細やかな保育の実体を理解していただく事の難しさを痛切に感じた。
 どんなに議論しても、幼稚園と保育所の存在意義は全く異なり、それぞれに大事である。だから保護者の教育観、家庭の事情で選択できるのである。二者は競争する必要はない。どちらも子どもの育ち、親のニーズにそれぞれの立場で的確に対応している。
 日本経済の危機を打開しようとするなら手当たり次第の削減ではなく長期的な展望でしっかりと見極めていただきたい。そして日本の未来を担う人作りに心を込めている保育施設を維持存続し、今こそ少子化に歯止めをかけることを国策としなければ、りっぱな道路や橋をつくっても、それを渡る人も高齢化社会を支える労働力もなくなることに気付いてほしい。
 梅雨空の下、「そうしたら、保育園のこどもたちはいったいどうなるの」と先の見えない不安に、頬杖とため息の日々である。
(ふくろうおばさん)







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