――日保協速報15・7・11――
次世代育成支援対策推進法・改正
児童福祉法が成立
少子化の進行を踏まえ、次代を担う子どもたちが健やかに育成される環境を整備するための次世代育成支援対策推進法が、七月九日に参議院で可決され、成立しました。これによって国は基本理念に基づいた行動計画の指針を、地方公共団体は地域における子育て支援などの環境整備の行動計画を、企業は従業員の仕事と家庭の両立に関する行動計画を、それぞれ策定することが義務付けられました。
あわせて成立した改正児童福祉法では、子育て支援事業が法定化され、また保育の実施への需要が増大している自治体は、保育の供給体制の確保に関する計画を定めることとされました。両法の概要と衆議院、参議院の附帯決議については以下の通りです。
次世代育成支援対策推進法案の概要
我が国における急速な少子化の進行等を踏まえ、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備を図るため、次世代育成支援対策について、基本理念を定めるとともに、国による行動計画策定指針並びに地方公共団体及び事業主による行動計画の策定等の次世代育成支援対策を迅速かつ重点的に推進するために必要な措置を講ずる。
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1 概要
(1)目的、国・地方公共団体・事業主・国民の責務等
(2)基本理念
次世代育成支援対策は、保護者が子育てについての第一義的な責任を有するという基本的認識の下に、家庭その他の場において、子育ての意義についての理解が深められ、かつ、子育てに伴う喜びが実感されるように配慮して行われなければならないこととする。
(3)行動計画
(1)行動計画策定指針
主務大臣は、基本理念にのっとり、地方公共団体及び事業主が行動計画を策定するに当たって拠るべき指針を策定すること。
(2)地方公共団体の行動計画
市町村及び都道府県は、(1)の行動計画策定指針に即して、地域における子育て支援、親子の健康の確保、教育環境の整備、子育て家庭に適した居住環境の確保、仕事と家庭の両立等について、目標、目標達成のために講ずる措置の内容等を記載した行動計画を策定すること。
(3)事業主の行動計画
ア 一般事業主行動計画
・事業主は、従業員の仕事と家庭の両立等に関し、(1)の行動計画策定指針に即して、目標、目標達成のために事業主が講じる措置の内容等を記載した行動計画を策定すること。
・事業主からの申請に基づき、行動計画に記載された目標を達成したこと等の基準に適合する一般事業主を認定すること。
・厚生労働大臣の承認を受けた中小事業主がその構成員からの委託を受けて労働者の募集に従事する場合の職業安定法の特例を定めること。
イ 特定事業主行動計画
国及び地方公共団体の機関は、職員の仕事と家庭の両立等に関し、(1)の行動計画策定指針に即して、目標、目標達成のために講じる措置の内容等を記載した行動計画を策定・公表すること。
(4)次世代育成支援対策推進センター
事業主の団体を「次世代育成支援対策推進センター」として指定し、行動計画の策定・実施を支援すること。
(5)次世代育成支援対策地域協議会
地方公共団体、事業主、住民その他の次世代育成支援対策の推進を図るための活動を行う者は、次世代育成支援対策地域協議会を組織することができること。
2 施行期日等
公布の日から施行。ただし、1の(3)(1)の行動計画策定指針の策定は、公布の日から六月以内の政令で定める日から、1の(3)(2)の地方公共団体の行動計画及び1の(3)(3)の事業主の行動計画の策定は平成十七年四月一日から施行。なお、本法案は、平成二七年三月三一日までの時限立法である。
児童福祉法の一部を改正する法律案の概要
我が国における急速な少子化の進行等を踏まえ、すべての子育て家庭における児童の養育を支援するため、市町村における子育て支援事業の実施、市町村保育計画の作成等に関する規定を整備する等の措置を講ずることにより、地域における子育て支援の強化を図る。
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1、市町村における子育て支援事業の実施等
(1)市町村における子育て支援事業の実施
市町村は、児童の健全な育成に資するため、次に掲げる事業(以下「子育て支援事業」という)が実施されるよう必要な措置の実施に努めることとする。
(1)保護者からの相談に応じ、情報の提供及び助言を行う事業
(2)保育所等において児童の養育を支援する事業
(3)居宅において児童の養育を支援する事業
※(1)の事業の例:地域子育て支援センター事業、つどいの広場事業
※(2)の事業の例:放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、乳幼児健康支援事業、一時保育事業、特定保育事業、幼稚園預かり保育事業
※(3)の事業の例:出産後等の保育士等派遣事業
(2)市町村における子育て支援事業のあっせん等の実施
市町村は、子育て支援事業に関し情報の提供を行い、保護者が最も適切な子育て支援事業の利用ができるよう、相談に応じ、助言を行うとともに、子育て支援事業の利用のあっせん、調整、子育て支援事業者に対する要請を行うこととする。
2、保育に関する計画の作成
保育の実施への需要が増大している都道府県及び市町村は、保育の実施等の供給体制の確保に関する計画を定めることとする。
3、その他
(1)児童養護施設等は、地域の住民に対して、児童の養育に関する相談に応じ、助言を行うよう努めることとする。
(2)都道府県に必置することとされている都道府県児童福祉審議会について、行政処分等に係る事項以外の政策審議は、任意に行うことができることとする。
4、施行期日
平成十七年四月一日から施行。ただし、3、(2)については、平成十六年四月一日から施行する。
「次世代育成支援対策推進法案」及び「児童福祉法の一部を改正する法律案」に対する附帯決議(衆議院)
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 仕事と子育ての両立を推進するため、子どもの看護休暇については請求すれば取得できるよう、早急に検討に着手すること。各事業所における子ども看護休暇制度の導入を促進するため、事業主に対する格段の相談・指導・援助に努めること。
二 男性の育児休業取得を促進するため、数値目標の達成に向けた取組みや子どもが生まれたら父親が休暇を取得することを促進するなどの有効な措置を講ずること。
三 仕事と子育ての両立のための雇用環境を警備するために、政府目標である年間総実労働時間千八百時間の実現へ向けて、関係省庁間の連携・協力を一層強化し、政府が一体となって労働時間短縮対策を総合的に推進すること。特に、子育て期間における残業時間の縮減に取り組むこと。
四 保育所の待機児童の解消を目指して、保育所等の整備、受入れ児童数の拡大を図るとともに、延長保育、休日保育、夜間保育、障害児保育、病児保育、乳幼児健康支援一時預かり事業、放課後児童クラブなどを少子化対策推進基本方針及び新エンゼルプランに基づき着実に推進すること。
五 現在、縦割り行政の中で機能が分かれている保育所と幼稚園の連携を一層強化し、希望するすべての子どもたちに家庭以外のコミュニティの役割と育児支援の場として機能する.ようにすること。
六 子どもの権利条約の趣旨を踏まえ、児童福祉法の理念及び在り方について早急に検討し、その結果を踏まえて必要な措置を講ずるとともに、施策の実施に当たっては、児童の最善の利益を考慮した取扱いが図られるよう努めること。
七 男女労働者がともに職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするため、ILO第百五十六号条約の趣旨を踏まえ、職場における固定的な役割分担意識や職場優先の企業風土の是正に向けた労使の努力を促すよう努めること。
八 次世代育成支援対策に対処するための施策を総合的に推進するため、各般にわたる制度の充実、必要な予算の確保等に努めること。
次世代育成支援対策推進法案及び児童福祉法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
(平成十五年七月八日 参議院厚生労働委員会)
政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 行動計画策定指針を定めるに当たっては、地方自治体及び事業主が行動計画を策定しやすいよう配慮すること。また、地方自治体及び事業主が策定する行動計画については、できる限り具体的な目標が設定され、実効ある次世代育成支援対策が行われるよう支援・指導を行うとともに、行動計画の内容の把握に努めること。
二 行動計画の策定が努力義務とされている従業員が三百人以下の中小事業主についても、できる限り行動計画が策定されるよう支援を行うこと。
三 新エンゼルプランが平成十六年度に終了することを踏まえ、各地域における行動計画の内容を十分反映させた新たなプランの策定を検討すること。
四 子育てと仕事の両立を推進するため、子どもの看護休暇については請求すれば取得できるよう、早急に検討に着手すること。また、各事業所における子ども看護休暇制度の導入を促進するため、事業主に対する相談・指導・援助に努めること。
五 地域における小児科医療の重要性にかんがみ、小児科専門医の確保に努めるとともに、小児救急医療の充実に向けた取組を一層強化すること。
六 男性の育児休業取得を促進するため、数値目標の達成に向けた取組や子どもが生まれたら父親が休暇を取得することを促進するなどの有効な措置を講ずること。
七 子育てと仕事の両立のための雇用環境を整備するために、政府目標である年間総実労働時間千八百時間の実現に向けて、関係省庁間の連携・協力を一層強化し、政府が一体となって労働時間短縮対策を総合的に推進すること。特に、子育て期間における残業時間の縮減に取り組むこと。
八 労働者が男女を問わず、ともに家庭生活と職業生活を両立できるようにするため、労使双方に対し、職場における固定的な役割分担意識や職場優先の企業風土の是正に向けた努力を促すこと。また、ILO第百五十六号条約の趣旨を踏まえ、家族的責任を有する労働者が、差別を受けることなく、できる限り家族的責任と職業上の責任を両立できるよう必要な措置を講ずること。
九 今回の児童福祉法の改正において子育て支援事業が法定化されたことに伴い、市町村における子育て支援サービスをより充実させるため、必要な予算の確保に努めること。
十 現在、縦割り行政の中で機能が分かれている保育所と幼稚園の連携を一層強化し、希望するすべての子どもたちに対して必要なサービスを提供できるよう努めること。
十一 子どもの権利条約の趣旨を踏まえ、児童福祉法の理念及び在り方について早急に検討し、その結果を踏まえて必要な措置を講ずるとともに、施策の実施に当たっては、児童の最善の利益を考慮した取扱いが図られるよう努めること。
十二 保育所の待機児童の解消を目指して、保育所等の整備、受入れ児童数の拡大を図るとともに、延長保育、休日保育、夜間保育、障害児保育、病児保育、乳幼児健康支援一時預かり事業、放課後児童クラブ等の少子化対策推進基本方針及び新エンゼルプランに掲げられた各事業を着実に推進すること。
右決議する。
――日保協速報15・7・11――
「アクションプラン重点12項目」を決定
総合規制改革会議では、本日、規制改革推進のためのアクションプラン・12の重点検討事項」に関する答申」を独自にまとめ、公表しました。重点十二項目については、先の「基本方針2003」において閣議決定がされていますが、その議論の過程において各省庁と合意に至らなかった点についても、「総合規制改革会議としての現状認識及び今後の課題」として公表しています。七月十五日に首相に答申する予定とし、幼保一元化に関しては以下の通りの見解が示されました。同時に、厚生労働省はこの答申に対する考え方を公表しました。その内容は別紙のとおりとなっています。
なお、前回の速報でお知らせした通り、「次世代育成支援対策推進法」「改正児童福祉法」が今国会で成立しました。会員各位のご協力に感謝いたします。
「規制改革推進のためのアクションプラン・12の重点検討事項」に関する答申(抄)
―消費者・利用者本位の社会を目指して―
(平成十五年七月 総合規制改革会議)
5、幼稚園・保育園の一元化
【「基本方針2003」における決定事項】―第2部1、具体的手段(1)(4)―
〈新しい児童育成のための体制整備〉
近年の社会構造・就業構造の著しい変化等を踏まえ、地域において児童を総合的に育み、児童の視点に立って新しい児童育成のための体制を整備する観点から、地域のニーズに応じ、就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする(平成十八年度までに検討)。
あわせて、幼稚園と保育所に関し、職員資格の併有や施設設備の共用を更に進める。
【総合規制改革会議としての現状認識及び今後の課題】
1 少なくとも構造改革特区において講ずべき措置
構造改革特区において多くの提案が寄せられている事項(第一次・第二次の提案を合計すれば、文部科学省関係が五〇項目、厚生労働省関係が六〇項目。六月の「規制改革集中受付月間」においても、構造改革特区の提案は二八項目、全国規模の要望は九項目。)であることにも鑑み、幼稚園と保育所については、職員資格の併有や施設設備の共用を進めるのみならず、少なくとも構造改革特区においては、両施設に関する行政を一元化し、施設設備、職員資格、職員配置、幼児受入などに関する基準を統一化すべきである。
また、行政の一元化、基準の一元化に到達する前段階として、幼稚園と保育所のどちらか一方のみに課されている規制について、緩和・撤廃すべきである。
例えば、保育所のみに義務付けられている調理室の設置義務については、規制の趣旨に照らして合理的ではないことから、廃止すべきである。また、就業していない専業主婦であっても、その生活・ニーズが一層多様化していることにも鑑み、保育所について、「保育に欠ける子」のみならず誰もが入所できるよう、入所要件を緩和すべきである。
2 全国規模において講ずべき措置
少なくとも三歳児以上については、幼稚園教育要領と保育所保育指針との内容が同一であり、両施設が同等の教育サービスを提供しているのであれば、幼稚園のみに課されている設置主体制限すなわち株式会社等による設置の禁止について、その解禁を図るべきである。
また、満三歳から(構造改革特区においては、満二歳に達した日の翌年度四月から)とされている幼稚園の入園年齢制限については、多様化する生活者のニーズを踏まえ、構造改革特区の状況も注視しつつ、この一層の緩和を図るべきである。
なお、上記決定事項において、平成十八年度までに設置が検討される「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」については、その施設設備、職員資格、職員配置、幼児受入などに関する規制の水準を、それぞれ現行の幼稚園と保育所に関する規制のどちらか緩い方の水準以下とすべきである。
(別紙)
総合規制改革会議「規制改革推進のためのアクションプラン・12の重点検討事項に関する答申」に対する厚生労働省の考え方(抄)
(平成十五年七月十一日 厚生労働省)
1 基本的考え方
規制改革の重点十二項目については、去る六月二七日に閣議決定された「基本方針2003」に沿って、厚生労働省としても、取組みを進めていくこととしている。
今回公表された総合規制改革会議の「答申」は、閣議決定された「基本方針2003」における対応方針を超える内容を含むものであるが、このような答申を閣議決定後間もない時期に出すに当たり、そもそも閣議決定事項及びそれに基づく取組をどのように評価し、どのような議論を重ねたのかが明らかでない。
また、これらの項目については、これまでの議論の積み重ねを踏まえ閣議決定を行ったものであるが、改めて検討対象とするのであれば、総合規制改革会議として、経済活性化効果との関連を含めてその理由を定量的・体系的に示すことが、今後の議論に当たっても不可欠であると考える。
さらに、この答申に添付されている「論点整理」については、これまでの議論に基づき、客観的かつ公平に整理すべきものと考える。
個々の事項についての厚生労働省の考え方は、以下のとおりである。
総合規制改革会議の考え方 |
厚生労働省の考え方 |
(5)幼稚園・保育所の一元化
(1)少なくとも特区において講ずべき措置 |
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○少なくとも特区においては、両施設に関する行政を一元化し、施設設備、職員資格、職員配置、幼児受入などに関する基準を統一化すべき。
○行政の一元化、基準の一元化に到達する前段階として、例えば保育所の調理室など、幼稚園と保育所のどちらか一方のみに課されている規制について、緩和・撤廃すべきである。
○必ずしも就業していない専業主婦であっても、その生活・ニーズが一層多様化していることにも鑑み、保育所について、「保育に欠ける子」のみならず誰もが入所できるよう、入所要件を緩和すべき。
(2)全国規模において講ずべき措置
○平成18年度までに設置が検討される「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」については、その施設設備、職員資格、職員配置等に関する規制の水準を、それぞれ現行の幼稚園と保育所に関する規制のどちらか緩い方の水準以下とすべき。 |
○多様化する子育てニーズに対応するため、地域の子育て資源を効率的に活用することが重要であり、このような中で、保育所と幼稚園は、地域の実情を踏まえ、相互の連携をより一層強化することが重要。
○保育所の調理室は、(1)一人ひとりの子どもの状況に応じたきめ細やかな対応、(2)多様な保育ニーズヘの対応、(3)食事を通じた児童の健全育成を図る観点から、必要不可欠であると考える。
○今年度においても、「規制改革推進3か年計画(再改定)」に基づき、(1)幼稚園教諭免許所有者が保育士資格を取得しやすいような措置や(2)余裕教室に保育所を設置する場合において、安全性等が確保される場合には、調理室を共同利用することを認める方向で検討、措置することとしている。
○平成18年度までに検討することとされている「総合施設」については、子どもの幸せとともに、利用者や地域のニーズを考え、保育所と幼稚園の共用施設や、構造改革特区における合同保育の実施状況も評価しながら検討することとしている。 |
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