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――シリーズ・保育研究(13)――
明治生まれの言うこと
 明治生まれの女性は、芯がしっかりしていて、心身ともに強い方が多いようです。そこに頑固がつく人も多かったようです。そして、頑固の言うことは、良くも悪くも、今も昔も変わらないもののようです。
 そんな明治生まれの保育に関わる人の姿勢は、今の時代にも生かされることがあるように思います。
かあちゃんのための保育
 「かあちゃんのために保育しろ」と言われれば、今は「保育は子どものための保育であり、親のためではない」と言われるでしょう。
 保育所に入所している子どもの親は、家庭と仕事で忙しい毎日を過ごしています。イライラもするし、些細なことで怒り、余計なことも言ってしまいます。親が今望んでいるのは、延長保育、乳児保育・・・。親の素敵な笑顔を我が子に向けられるために、保育者として何ができるのでしょうか。
 愚痴や悩みにも心を傾け、親が心にゆとりを持って子育てができる手助け(人的環境)も保育であると思います。子どもの笑顔に繋がる、そんな関わりも大切ではないでしょうか。
出世の頭
 子どもには、多くの未来があり、可能性もあります。お昼寝をしている子どもの頭の上を平気で歩くのはどうでしょうか。出世の可能性を持った子どもの頭の上を歩くものではないと思われます。
 布団につまずいたらどうなるでしょう?荷物を持っていたらどうなるでしょう?子ども同士の頭を向かい合わせたり、壁側に頭を向けるなどの配慮が必要だと思います。子どもの頭の上でなければ歩いてもいいと言うことでなく、子どもの寝ている間を歩くためには、布団の敷き方や位置など工夫で危険を回避することが大切です。
タンコブから大きくなる
 子どもは見ていてもケガをします。しかし、保育者が見ていたケガと、見ていなかったケガでは大きな違いがあります。知らない間にケガをしたでは済みません。タンコブ、スリ傷のケガは私たちに教えてくれます。軽く考えてしまうと大きなケガに繋がります。原因や対策をみんなで話し合い、未然に防ぎたいものです。
よなべ(夜業)のかかあ
 「かあさんがよなべをして、手袋編んでくれた・・・」そんな歌があります。最近では夜業して生活を支えている方は少ないでしょう。
 毎日夜まで働いて家計を助けていた母ちゃんに、父ちゃんが「かかあ、早く寝ろ。お前は夜業した次の日は必ず子どもらを怒鳴ってるぞ。」と言ったそうです。親も寝不足のままで子どもの前に立てば、眉間にしわも寄ります。保育者も同じことで、大事な仕事もたくさんあることでしょう。しかし、早めに取り掛かり、終わらせて、保育者として笑顔で子どもたちの前に立ちたいものです。
 又、遊びも余暇も大事です。でも夜遊びなど過ぎて心身ともに疲れきった状態でどんな保育ができるでしょうか。保育者としての自覚を、自問自答することも時には必要です。
子ども、見ているぞ
 「よく子どもは親の背中を見て育つ」と言われますが、保育者の姿も見ています。両手がふさがっていても、足で戸を閉めて良いのでしょうか。机の上にお尻を乗せて座っても良いのでしょうか。何気ない動作を子どもたちは見ているのです。言い訳は聞きません。自分の言動、行動が悪いお手本になっていないか、意識していたいものです。
もらい上手
 お歳暮、お中元、プレゼントを人様に戴くことがあると思います。戴きものでうれしいものは喜び、理由まで述べて御礼を言うことでしょう。では、うれしくないときはどうでしょう。
 感謝の気持ちを表す言葉は、ものに対して言うのでなく、相手が私を思って頂いた行為に対して感謝するのではないでしょうか。
 「ありがとう」の言葉は感謝を伝える良い言葉だと思います。折り紙を配ったとき、オムツ替えをしたときなど、私に「ありがとう」ではなく、してもらった行為に「ありがとう」と言えるように、私は子どもたちに伝えたいと思っています。保育者や大人の方にも感謝の気持ちが持ち続けられるよう期待したいものです。
親が笑われる
 スーパーや飲食店などで、子どもが店内を走り回ったり、商品のいたずらをしたり、人様に迷惑を掛けていても素知らぬ顔をしている親がいるのではないでしょうか。今は注意した大人が親に怒られてしまいます。昔は、どんな躾をしているのかと他人様に笑われると言われたそうです。
 お友達の家に遊びに行って、飴玉一つでも戴いたら必ず親に言うことが大切です。親が分からなければ御礼も言えず、親が笑われてしまいます。
一人の保育、百人の保育
 「子どもが一人来れば一人を保育、百人来れば百人を保育、明日誰も来なければ休めばいい」と言われました。
 子どもは一人でも百人でも大事な子どもです。障害をもった子どもも休めません。保育園の経営、運営も大事ですが、福祉の精神は忘れないで欲しいものです。的確な表現ではありませんが、「来るもの拒まず、去るもの追わず」という言葉のように、いつでも必要としている方に、必要とする保育ができるような心がけが大切だと思います。
年寄りの言うことも聞け
 有名な調味料の売れ行きが伸び悩んだとき、会議をしても良いアイディアが出てこない。そんな時、おばあちゃんの知恵に救われたそうです。「調味料の容器の穴を少し広げてごらん。」我が子を思う母の心と年配者の知恵が会社を救ったそうです。
 年配者の話に耳を傾けることも無駄ではありません。今までに生きてきた年数の人生経験と知恵は計り知れなく、自分にないことを教えてくれます。
まず返事
 「はい」という返事。人に呼ばれたらまず返事することの大切さに、気付いていない人がいるのではないでしょうか。返事をしなければ、聞こえているか、いないかさえも分かりません。
 人に注意されたらまず返事、「だってー、でもー」はその後で良いのです。「だってー、でもー」は言い訳になってしまいます。「はい」の一言で、注意内容が伝えられたということです。素直な人は、多くの方々に教えていただく機会をたくさん持っていることになります。
ちいさい順
 何でも、小さい(幼い)順。おやつをもらうとき、大きい子は我慢できる。トイレに行くとき、小さい子は我慢できずパンツの中に排泄してしまう。大きい子(年長児)は、最後にトイレに入って、次のお友達のためにスリッパを揃えてあげられます。大きい子のすることを小さい子が見て学びます。
 自分より弱い相手に強く接するのではなく、「強いものには強く、弱いものには弱く」接することが大切だと思います。自分より弱い人には優しく接してあげられる、大人になっても持ち続けたいものです。
腰から下の物
 スーパーで会計をしてもらっている親が、食品を乗せる台に我が子を乗せている光景を見たことがありますか。お店の方は注意したくてもできないのか、気にしていないのか・・・。注意しても分からない親がいます。我が子のオムツの中に排尿、排便があるかも知れません。こんなことは、大人の常識として捕らえていて欲しいものです。
 「机は勉強するところ、ご飯を食べるところ」、脱いだ靴下やパンツを置くところではありません。腰から下の物は、机ではなく、椅子に置きましょう。
保育にこれでよしは、ない
 「子どものためにしてやる」保育は、自己満足ではないでしょうか。目の前の子どもが本当に喜んでいるのでしょうか。課題の絵を描かせた後に、「先生、絵を描いてもいい〜」と返ってくるかも知れません。
 今何を求めているのか、子どもが教えてくれます。保育に「これでよし」はないのです。子どもと共に成長していける保育者でありたいと思います。
(保育内容部会 藤岡)
 
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保育総合研究会事務局
 
ワクワク音あそび・リズムあそび
櫻田素子著
(芸術教育研究所客員研究員)
 本書は長年子どものための音楽表現活動に携わる著者によって書かれた、音楽教育の素材本です。
 インドネシアの伝統音楽「ガムラン」の演奏家でもある著者は、「音が出るもの=楽器」を使ったコミュニケーションを通じて、子どもたちの「生きる力」が培われると述べています。
「一人ひとりの感性と個性を大切に。しなやかな心とからだの子どもたち。
隣にいる大人たちも、負けないように、しなやかに軽やかに!」
本書の随所にちりばめられた、著者の願いです。
主な内容
Part 1 音との出会い
Part 2 リズムとの出会い
Part 3 アンサンブルヘのかけ橋(四、五歳以上児)
定価1700円+税/黎明書房発行
TEL 03(3268)3470







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