日本財団 図書館


――「食育」をすすめる実践活動(6)――
子育て支援と栄養士の取り組み
――他機関との連携 離乳食・幼児食講座を通して――
仙台市長命ケ丘保育所主査栄養士
遠藤とく子
はじめに
 
 平成十二年にスタートした仙台市長命ケ丘保育所の子育て支援事業は、四年目を迎えました。
 当保育所は、仙台市の北西部泉区にあり、昭和五九年度に定員六〇人で開所、平成十二年度には九〇人(在籍九九人)に増設し、支倉、蒲町保育所につづき仙台市三番目の子育て支援センターとして併設され、現在に至っています。
 
子育て支援事業内容
 
 平成十五年度の長命ケ丘保育所子育て支援事業内容を掲げてみました。
1 育児不安についての相談と指導
(1)すくすくひろば
(2)フリープレイ・スペース(ひなたぼっこ)
(3)親子のつどい
(4)すくすく育児相談
(5)体験保育
(6)行事への招待
(7)すくすく育児講座
(8)すくすく離乳食講座・幼児食講座
(9)あそびのひろば
(10)子育て通信の発行と情報提供
2 子育てサークル等の育成支援
(1)子育てサークルの育成支援
(2)子育てボランティアの支援
3 仙台市家庭保育福祉員(保育ママさん)への支援
4 他機関との連携
(1)泉区保健福祉センターとの連携(年三回)
(2)市民センター・児童センターとの連携(年六回)
(3)泉区公立保育所・私立保育園との連携
5 その他
(1)一時保育との連携
(2)地域活動事業との連携
 以上のような事業計画を立て、進めています。
 栄養士が関わる事業の中でも、〈すくすく離乳食・幼児食講座〉が最も連携の多い事業となっています。
 〈離乳食・幼児食講座〉は、離乳食作りがわからない、子どもが喜んで食べてくれるにはどうしたら良いのだろうかという、食事に関しての悩みに応え支援することを目的に計画が立てられたものです。
 
他機関との連携への経過
 
 仙台市のすべての公立保育所では、栄養士が一人配置され、一施設一栄養士の原則が守られています。その中で栄養士部会が組織化され、全体での活動と五つのブロック(青森・若林・太白・宮城野・泉)に分けての独自研修等も行っています。また支援事業保育所、市内児童センターがおこなう講座に講師としても出席しています。
 平成十年に、青葉区支倉保育所に仙台市初の支援センターが開所になりました。その支援事業の一つ「離乳食講座」が開かれました。助言者として参加した泉区の一栄養士が、自分達の区にも必要性があるのではと強く感じてきたことが他との連携のはじまりです。
〈平成十一年度〉
・青葉区の講座に、泉区内の子育てのお母さん方の申し込みが特に多かったことから、参加した栄養士が、泉区での離乳食講座の必要性を提案(十一月提案 二月実施)
・年度途中の計画だったが、仙台市保育課の承諾を得られた
・調理会場となった泉婦人会館の了解と連携が得られた
・泉区保健福祉センターへのチラシ配布依頼
・仙台市政だよりへ申し込み要綱掲載
・所長会を通して泉ブロック保育所保育士へ託児の依頼
・泉ブロック九か所全栄養士担当
☆約三〇人の参加者で離乳食講座が実施された。申し込み初日でいっぱいになり、このような講座を求めている人の多さを実感しました。
〈平成十二年度〉
・五月長命ケ丘保育所子育て支援センターオープン
 
 
・離乳食・幼児食講座はセンター内ミニキッチンにおいて計画
*所内栄養士による講話と実演
*食事相談
*所内給食室調理の離乳食を親子で試食
・参加者から実際に調理実習をしたいという声が聞かれるようになってきた
・ブロック内の栄養士から、講座へ前年度の経験の継続と協力の申し出があり追加講座二月に計画
・他の事業で連携のある長命ケ丘市民センターに会場の申請
・市民センターから共催の申し出があった
・泉ブロック内栄養士四人がグループの調理指導として協力を得た
・泉ブロック内保育士の協力を得た
・市民センター職員の託児の協力を得た
☆十八人の参加者と離乳食(初期と中期)(中期と後期)(後期と完了期)の調理実習を実施し、試食は大人のみとしました。
 
〈平成十三年度〉
・講座予定は、幼児食の調理実習の要望もあり、市民センターでの調理実習二回、ミニキッチンで二回計画
・泉区保健福祉センターにて、従来行われていた“離乳食教室での試食提供”が、今年度から実施できないという背景を受け、実習中心の当保育所講座と共に行うことでより充実した子育て支援の取り組みができるのではと保健福祉センター栄養士に提案した。
 保育所栄養士との相互の指導力を生かした離乳食講座の共催が実現した
・その後、ブロック栄養士会においても、保健福祉センター栄養士と離乳食指導の統一など、話し合う時間を持つようになった
・幼児食講座は、手づくりおやつの調理実習をおこなった
・新たに、保育関係の大学へ託児の学生ボランティアを要請し、近隣大学との連携が実現
・また新しく、長命ケ丘児童センターと加茂市民センターの託児への協力を得た
☆計二七人の参加があり、離乳食と手作りおやつの調理実習を実施し、大人のみ試食としました。調理以外の育児不安などもグループ内でだされるようになってきました。
 
〈平成十四年度〉
・前年と同じ回数で内容に変化を持たせた講座の計画
・特に、講師の各栄養士を中心に食事に悩み、疑問、不安やその他、情報交換の時間を十分に取れるよう調理内容を工夫
 
 
・その場で解決しにくい育児不安の場合は、支援担当者に連絡し、次の支援につなぐ方法を取った
・新しく、地域の一般ボランティアと、泉区保健福祉センター開催の“ボランティア養成講座”“ボランティア体験”を共催として取り組み、その受講者が託児ボランティアとして参加した
☆計二四人の参加でした。子どもへの試食希望がありますが、衛生管理面から大人のみの試食としました。
 
利用者の感想
 
・実際に離乳食やおやつを作ってみてその固さ、やわらかさ、味、分量の目安が理解できた
・薄味でも美味しかった
・さまざまな調理法があることがわかった
・楽しみながら作れば、離乳食作りも苦にならないし、思ったより簡単にできることを知った
・いろいろなお母さん方と一緒に作れて楽しかった
・グループのお母さんとも、子育てについて同じ悩みもあり、お話ができて良かった
・親同士の情報交換ができて良かった
・身近に栄養士のアドバイスが受けられてとても良かった
・悩みを聞いてもらえただけですごく安心した
・講座を受けてる間、専門の職員に子どもを見てもらえるので安心して受けられた
・気分転換になり参加して良かった
 
実施しての感想
 
 離乳食講座終了後、お母さん達はメールの交換をしたり、お話の続きをしたりとなごり惜しそうな場面がしばしば見かけられました。
 短い時間であっても、託児があり自分の時間が持てたことで、子どもたちのところへ戻ってくるお母さん達の表情が、参加する前とは違ってより生き生きと変わっていることを感じます。託児のある講座の意義を感じるひとときでした。
 離乳食・幼児食講座では、調理指導や食事相談の他に子育て家庭のかかえている悩みや不安を受け止めて応えていくことも求められてきています。栄養士自身の専門性を高めるとともに、どうすることがより良い支援なのか、支援担当者と常に連携を取り合う大切さも理解できるようになりました。
 
これからに向けて
 
 それぞれの機関が持っている専門性と施設設備を活用しあうことで、より大きな力となり、地域の子育て支援をささえていくものと思われます。
 他機関との連携(参加協力)も定着しつつあり、それぞれの役割も意識しながら取り組めるようになってきました。また、子育て支援センター以外の保育所も、地域活動としてそれぞれ独自の子育て支援に取り組んでいます。
 これからも、地域子育て支援センターとして同じ泉区の保育所やそれぞれの機関と連携し、相互協力するネットワークづくりができるよう、栄養士の立場からも取り組んでいけたらと感じています。
 







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION