――保育園を考える親の会から[27]――
保育園で感心したこと・学んだこと(1)
保育園を考える親の会
二〇〇二年五月に実施した会員アンケートでは、会員の皆さんに「保育園の保育や子どもの生活ぶりを知って学んだこと、勉強になったこと」について聞いてみました。多くの回答があり、親たちの保育園に対する思いがそれぞれに書かれていました。これらを読むと、各保育園での努力が垣間見られるとともに、これから保育園が大切にしていかなくてはならないことがわかります。本号と次号の二回に分けてご報告しましょう。
なお、以下のコメントは自由記述欄に書かれた回答を、ほぼ原文のままテーマ別に分けたものです。
[保育園を訪れて]
○保育参観で子どもとともに行動すると、その子の普段のようすが見えてきて有効であるな、と思いました。
○保育参観時の子どもの顔が家庭での顔と違い、とてもにこやかな顔でした。家では早く早くという言葉で生活していて、気がつかない部分だったと思います。
○希望者は随時、一日体験保育士をすることができる。まる一日クラスの子と付き合うと、いろんな子どもがいることが実感できる。自分だけの(ひとりよがりの)悩みなど、小さなことだと気づき、子育ての意欲がわく。
○家庭の中での子どものようすと、多くの子どもたちとかかわる集団保育でのようすはまったく異なり、わが子の姿を新発見した。ほかの父母と話したり、ほかの子どものようすを見て、自分の育児に自信をもったり、見つめなおしたり、考え方をかえたり、と多くの刺激が与えられた。
[給食がすばらしい!]
○保護者懇談会で、給食のレシピの紹介と試食があり、実際に子どもが使っている食器も見せてもらったこと。
○園の食事が充実していて感心する。
○保育園での離乳食はすばらしいメニューでありがたいと思った。
○食事は、忙しい親がつくるよりもずっと栄養のバランスが良くて助かる。離乳食も、だしを取って薄味で風味豊かなものを作ってくれている。
○食事が薄味でも、大人が食べてもおいしく、子どもは家で食べないものも食べているようです。
○園に常勤の栄養士さんがいるため、子どもの健康に配慮した給食になっている。魚や高野豆腐、海藻類などをたくさん使い、調理方法も紹介してくれる。
○とても給食に力を入れていて、年に二回、親子夕食パーティをひらいてくれます。
[野菜を育てて・・・]
○子どもたちが園庭にきゅうりやピーマンの種をまき、育て、収穫し、命の大切さを学んでくれた。
○園児全員が一つずつきゅうりの苗をもらい、植付け、水・肥料やりから収穫まで親子で育てています。子どもも、日に日にきゅうりが育っていくようすをとても楽しみにしています。スーパーで売っている食べ物しか知らない子どもにとって、ほんとうに貴重な体験でした。
[保育園では頑張れるんだね]
○食事時に使用するエプロン。適当なタオルで柄もまちまちなものを使っているのに、子どもたちは一つの箱から自分のものをしっかり見つけてとっている。
○子どもは園ではそれなりに意識して振舞っているもよう。自宅では甘えてばかり(嫌いなものは食べないなど)
○家の中では王様で何もしない子が園では決まりを守ってきちんとしていたのでびっくり。
○家では動きのにぶい子なのに、すべり台にするするのぼってぴゅーっと降りているのにびっくり。人見知りする子が友だちと仲良くできているのを見て安心しました。
○家では親が手伝っていたのに、自分ひとりで服の脱ぎ着をしていたので、感心した。
○保育園でのビデオを見て、家でできていないこと(できないと親が思っていること)ができており、びっくりすることが多かった。根気よく見守ってくれている保育者に感謝!
[うれしい生活習慣]
○生活習慣が身につく。家でできないことができている。
○お箸の使い方など、家で教えたことがないのに、いつのまにか上手になったこと。
○食の教育。
○日常の基本的なマナーをきちんと子どもに伝えている。たとえば、あいさつする、脱いだ靴をそろえるなど。
○食事のマナーをしつけられているようで、子どもに「お皿に手をそえて」と注意されます。頼もしいです。
○名前を呼ばれたら返事をする。食事のときテーブルに座るなどあたりまえのことですが、私が教えたわけではないのに、きちんとできているのは保育園のおかげです。
○給食のお当番で、テーブルふきから片づけまでしているようです。家では時間もなく、さっさと私がしてしまうが、ある日自分から手伝うと言い出し、あまりにも上手で絶句した。本当にありがたいことです。
○乳児でも、食事の片付け(食器を運ぶ)をしたり、ていねいにパジャマをたたんでいるのを知って感心した。
○服を着替えたり、たたんだりが急にできるように・・・。おかげで洗濯物をたたむのをよく手伝ってくれるようになった。
○「着替えを自分でする。着ていたものをたたむ」という家ではやったこともないことを保育園ではきちんとできていたこと。
○年長さんになってから、上ばき使用&上ばきを自分で洗いましょうと先生が子どもたちに言ってくれて、小学一年生の今でもきちんと自分で上ばきは洗っている。
○まめに交通安全指導をやってくれること。
○年少〜年長をとおして、園長先生や先生の話をみんなしっかり聞けること。
○土曜や日曜も子ども自身にきちんと生活サイクルができているので、子どもに合わせていればいいことと、食べることに関してもまったく心配なし。虫歯もなし。規則正しい生活ってすばらしいと思います。
○生活習慣(しつけ)について保育園ではゲームにしたり、給食の先生やお医者さんにお話をしてもらったり、実に上手くやっていると思う。親より先生の言うことの方がよく聞くのはなぜ?
○親では「まあいいか」ということを、きっちり習慣づけしてくれて、気付いたらいろいろなことを自分でできるようになっていました。子ども同士刺激になるのか、言葉も日に日に増えていきます。
[自主性・やる気から育てる]
○子どもの自主性を重んじる保育(全員で何か同じことをするということが少ない)
○子どものやる気を尊重し、失敗しても評価してくれていることにびっくりし、「そういう見方もあるのか」と教えられた。けんかも発達段階の途中の一現象と見てくれたことは、一番印象に残っている。
○「何事も強制しないこと」「本人がやる気を出すまで待つ」「やりたいことはとことんやらせる」「友だちとのよい意味での張り合い(自転車、なわとびなど)」
○汚れたら洗えばいいし、ある程度自由に食べさせ、遊ばせること。
○最初の共同保育所での製作物、どろんこ遊び等で子どもの本来の力って親が思っている以上だなといつも感心していました。一人目だったので、特に親がまだ早いかなと思うことが、ことごとく園ではできているということがありました。
○以前の保育園は、恫喝して言うとおりにさせていたが、今の保育園(実際は幼稚園)は、音楽や歌を多用するなど、巧みに、自発的にやるようにしむけている。
○お迎えのとき、担任の先生が毎日必ずひとつ子どものことをほめてくれる。
○保育士があまり手を出さない。
○子どもが何でも自分でできるように成長しつつある点(親より自立しているかも!?)。
○幼児クラスになれば自立の方向へ、(朝の支度など)母親が手出ししすぎずにと、きちんと話をしてくれること。
○手伝いはもっとやらせていいんだと思った。家だと親が一人でやりがち。小さい子にやさしく!は徹底していると感じた。
○他の子よりも早く給食を食べおえたわが子に、担任の先生が他のクラスヘのおつかいを頼んだそうです。快くおつかいに応じた息子は、いっぱいほめてもらい自信をつけました。決まったことだけではなく、臨機応変に保育してくださり、保育士に感心、感謝です。
〇一番上のクラスでは、給食当番、布団敷きにも当番等があり、うちのはまだ年中クラスで当番はないのですが、上のクラスが外出の折、その当番を代わりにやりました。先生がよく観察し「しっかりやった」と連絡帳や掲示板に書いてくださったのを読んで、保育園では、よくいろいろ見て手伝いや仕事も積極的にさせるのだな、と感心した。
[子ども同士のかかわりを大切にしてもらえる]
○保育士が子ども同士のかかわりをとても大切にしてくれること。
○子ども同士、軽いケンカがあっても、先生は落ち着いて見守ってくれている。
○子ども同士のケンカにどう介入するかについて。親や素人はその瞬間しか見ていないが、保育者はその前のいきさつをさりげなく見ていて感心したことあり。
○子どもどうしの衝突があっても、すぐに保育士が割って入らず、なるべく子どもに解決させている。多かったケンカも年度末には減少してきた。
○ケンカなどがあったとき、みんなの前で説明して、本人たちが納得いくように話し合ったり、小さい子どものお世話を大きい子がする機会があったりして、集団生活でなければできない経験をさせてもらっていると思う。
まとめ
親にとって子育ては、驚きと感動、迷いと不安に満ちた体験です。特に、第一子は手探り状態。
そんな親にとって、保育士さんが子どもに向き合う姿、保育園生活のもろもろ、集団の中でのわが子、そしてその成長を見て学ぶことは、とても多いのです。
子どもの数が減って周囲に子育てのモデルが見つけにくくなり、ひとりっ子が多くなって親自身の体験も少なくなる中で、保育園が提供しているものの価値はたいへん大きいと思います。
今、「保育園への満足度」が調査されることがふえていますが、そこで満足度の尺度はたいてい「サービスの快適さ」や「利便性」を問うものばかりです。しかし、ここに現れた親たちの「満足」はそういったものとは違う面をもっています。
この続きがまだあります。次号では、「さすが保育士さん」といううれしい項目もありますので、お楽しみに。
(保育園を考える親の会代表 普光院亜紀)
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。
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人材開発コンサルタント
塩川正人
「人が育つ保育園」とは?その答えは「主任のリーダーシップがあること」「チームワークが良いこと」「毎週勉強会をすること」などの〈あるべき論〉が多いです。私は、一番大切なのはマイナス状況をプラス状況に変える保育園だと思います。
マイナス状況とは、不平・不満が支配する状況です。
プラス状況とは、不平・不満を、改善のパワーに変えてしまう保育園です。
例えば保護者からの苦情(マイナス状況)を、保育改善のきっかけにしたり、ミスがあると皆で反省し、二度と同じミスを繰り返さないことでプラス状況に変える保育園です。
マイナス状況のまま、保護者の苦情を無視したり、ミスを隠したり、放置している職場がありませんか?自己革新とは「マイナスをプラスに変える生き方」に変わることです。
人間が他の動物と決定的に違う点がここにあります。
ここに気付くと、根本的に人間観が変わります。そして「人の育つ保育園」になります。
人が育つ保育園と人が育たない保育園の比較
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過去への見方 |
これからへの見方 |
人の育たない 保育園 |
・良かったこともある
・悪かったこともある
・良かったことが6、悪かったことが4なら、6-4で、2のプラスとなる |
・良いこともあるだろう
・悪いこともあるだろう
・常に良いことと悪いことをプラスマイナスで評価 |
プラスをマイナスで消してしまうため、プラスの積み上げができない |
人が育つ保育園 |
・良かったことを積み上げる
・悪かったことも「教訓」「反省」としてプラスに換算する
・良かったことが6、悪かったことが4なら、6+4で10のプラスとなる |
・過去は良かったことの連続
・良かったことを積み上げて過去がある
・今は過去を積み上げてきた最高の状態と考える
・今までを積み上げた頂点に今があり、これからも頂点を積み上げ続けると考える |
過去は常に耀き、現在は今までの頂点にある。常に今が未来。今も未来も耀いている |
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