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――速報(4月〜5月)――
――日保協速報15・4・1――
保育サービス価格に関する報告書を公表
 内閣府物価政策課「保育サービス価格に関する研究会(座長:八代尚宏日本経済研究センター理事長)」では「保育サービス市場の現状と課題」と題した報告書をまとめ、三月二八日に公表しました。
 この報告書は、高品質・低コストの保育サービスを目指すために、保育サービスの需要と供給について、効率性の観点から独自のデータをもとに実証分析を行い、客観的分析に基づいて保育サービスの現状と課題を明らかにすることを目的としています。現状の問題点として、
○保育サービスの供給面
(1)賃金は公立→私立→認可外の順で公立が高い。
(2)サービスの質の比較では、保育士の資格・能力、保育所設備で公立が、それ以外では私立の方が高い。
(3)公立は、私立よりも約二割から三割コスト高で非効率的。
(4)認可と認可外で保育料負担にかなりの格差があり、認可への需要が集中している。
○保育サービスの需要面
(1)首都圏の潜在的な保育需要者数は二四万人存在する。
(2)保育サービスの拡充は女性就業へ明らかな刺激効果があり、就業確率は四〇%上昇する。
(3)幼稚園利用者の保育サービスヘの需要は大きく、幼保一体化施設への利用希望者は合計七四万人と試算される。
 として、以上のことから制度見直しへの提言を、
○低年齢児問題としての待機児童解消と供給政策の充実
(1)公立保育所の効率化を推進する。
(2)規制緩和徹底による競争条件の整備・新規参入を促進する。
(3)三歳以上児は幼稚園の設備・人材活用等幼保一体化運営の推進で対応する。
○保育サービスの質の向上
・補助金の有効活用、サービスの質の評価のための評価機関を設置する。
○保育料の適切な設定
・事業者間の格差縮小、低年齢児利用世帯の直接補助を検討する。
○情報開示・データ整備の必要性
としています。(太字:日本保育協会
 この「保育サービスの価格に関する研究会報告書」の全文については保育情報ファクシミリサービス官庁の報告34番、図表等については35番に掲載しています。
 
 
 
――日保協速報15・4・10――
総合規制改革会議における幼保一元化について
 総合規制改革会議では、十二の重点検討事項を審議するために「アクションプラン実行ワーキンググループ」を設置し、四月九日午後に文部科学省、厚生労働省と幼保一元化に関しての公開討論を行いました。
 主な論点は以下のとおりです。(構造改革を加速する「十二の重点検討事項」二月十七日経済財政諮問会議提出資料と同主旨)
1、規制改革の方向性
 幼稚園と保育所については、単に両者の併設と連携を推進するということにとどまらず、「幼児教育・保育サービスを総合的に提供する機関」として、同一の設置主体・施設・職員による運営が可能な「真の幼保一元化」を実現するため、例えば、以下の「制度統一」を実施。
設置主体の統一施設設備基準の統一資格・配置基準の統一入所(園)要件の統一
2、文部科学省・厚生労働省の反対理由
 幼稚園・保育所にはそれぞれ異なる機能・役割があるため、制度の統一(一元化)は困難。運用の改善により、両者の「連携強化」を推進することで、一体的な運営が可能。
3、これに対する当会議の考え方
 幼稚園・保育所に求められる機能・役割は、むしろ地域毎に異なるのが当然。根拠に乏しい「保育所における調理室設置義務」などについては全国規模での規制改革を推進するとともに、例えば特区においては、幼稚園と保育園に関する様々な「制度の統一」を断行すべき。
 当日は、厚生労働省岩田局長から保育所制度の基本的な考えが述べられ、その後、八代尚宏委員(財団法人日本経済研究センター理事長)から「幼保の制度が違うため現場が混乱している。一元化運用が必要」「保育に欠けるを保育を必要とするに改めるべき」「調理室を外注することはなぜできないのか」などの発言があった。(概要は本誌六月号の八頁〜十二頁を参照)
 厚生労働省から提出された関係部分の資料については(別紙1、2)のとおり。
 
[保育所の調理室について]
(別紙1)
 
保育所の調理室については、子どもの健やかな育成を図るという観点から、下記の理由により必要であると考えている。
 
 
[(1)一人ひとりの子どもの状態に応じたきめ細かな対応]
 保育所では、0歳児を含めて低年齢児の保育を行っている。特に、低年齢児については離乳食への対応が必要であることや体調が変化しやすいこと、また、食物アレルギーへの配慮など、食事においてきめ細かな対応が必要。

[(2)多様な保育ニーズヘの対応]
 保育所では、延長保育、夜間保育といった多様な保育ニーズに対応している。この場合、保育所では、昼食のみならず、おやつ、夕食を含め、また、子どもの年齢に応じ、複数回にわたる食事の提供に対応することが必要。

[(3)「食事」を通じた子どもの健やかな育成]
 子どもの栄養状況の悪化や食生活の乱れといった状況に見られるように、子どもの食の状況が悪化している。乳幼児期においても、子どもの心身の健やかな発育・発達の観点から、食事を通じた子どもの健やかな育成を図ることが必要。
 
 また、待機児童の増加等の課題に対応し、保育所整備を推進する観点から、下記の規制緩和について、実施・検討。
 
 
[(1)保育所の調理室において、スプリンクラー又は自動消火装置及び延焼防止装置が設置されている場合においては、調理室以外の部分と防火区画を設けなくともよいものとする規制緩和を実施(平成15年1月施行)]

[(2)併設された社会福祉施設の調理室を兼用する場合と同様に、余裕教室に保育所を設置する場合において調理室の兼用を可能となるよう検討し、平成15年度中に措置]
 
[保育所と幼稚園の両施設を制度的に単一の施設として位置付けることについて]
 
 就学前児童に係る多様な子育て支援ニーズに対しては、保育所、幼稚園、地域の子育て支援事業といった多様なサービスによる対応が必要であり、保育所と幼稚園の両施設を制度的に単一の施設とすることでは、就学前児童に係る多様な子育て支援ニーズは応えきれない。
 
 地域の実情に応じた保育所と幼稚園の設置運営に係るニーズに対しては、施設の共用化、資格の相互取得促進等の両施設の連携を図ることにより、このようなニーズに応えてきたところ。
 さらに、保育所と幼稚園の一層の連携を強化するため、構造改革特区における対応を行うこととしている。
 
 なお、厳しい財政状況を踏まえると、下記のような問題点がある。
・ 就労等の特段の理由もなく保育に欠けない児童を含め、すべての児童に対して公費負担を行う理由がないこと。また、待機児童ゼロ作戦の推進のため、待機児童に対する対策をより優先すべきであること。
 
[保育所と幼稚園]
(別紙2)
○ 保育所は、親の就労等の事情により家庭における保育を受けられない児童に対して、保育(養護+教育)を行う福祉施設であるのに対して、幼稚園は、親の希望により幼児教育の観点から教育を行う学校である。
 
区分 保育所 幼稚園
施設の性格 児童福祉施設 学校
対象児童 0歳児から就学前の保育に欠ける児童 満3歳から就学前の幼児
入所 市町村と保護者の契約(入所希望者を配慮) 保護者と幼稚園の契約
開設日数 300日以上(春、夏、冬休みなし)
※休日、祝祭日も対応
39週以上(春、夏、冬休みあり)
保育時間 11時間以上の開所
※延長保育 10,600か所(平成14年度交付決定べース)
夜間保育 55か所(平成14年度交付決定べース)
休日保育 354か所(平成14年度交付決定べース)
4時間を標準
※預かり保育 8,473か所(平成14年8月)
保育士(教諭)の配置基準 0歳 3:1
1・2歳 6:1
3歳 20:1
4・5歳 30:1
1学級 35人以下
保育料 ・市町村ごとに保育料を設定
・所得に応じた負担
・私立幼稚園は各幼稚園ごとに、公立幼稚園は市町村ごとに設定(低所得者に対する公的助成有(就園奨励費))
施設基準 保育室、遊戯室、屋外遊戯場、調理室、便所 保育室、遊戯室、保健室、運動場、便所、飲料水用設備、職員室等
保育内容 保育所保育指針(養護+教育) 幼稚園教育要領(教育)
 
 近年における地域の子育てニーズの多様化については、保育所、幼稚園、地域の様々な子育て支援という地域における子育て資源をいかに活用するかという観点から、総合的に対応していくことが重要と考えている。
 その中で、保育所と幼稚園については、地域の実情を踏まえた相互の連携をより一層強化することが重要。
 







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