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―子供の健康を考える(5)―
歯科診断と歯の健康
全国保育園保健師看護師連絡会 蛭田 優子
 
 六月は歯の衛生週間にちなんで、歯科健診や、歯みがき講習など、歯の衛生に関した行事を行う園が多いと思います。
 当会では、会員対象に「保育園児の歯科健診と歯科保健活動についてのアンケート調査」を数年ごとに行っています。
 
図1 虫歯罹患児率
 
虫歯罹患児率について(図1)
 過去三回による調査の結果、虫歯罹患児率を年齢別で見ると、歯の生えそろう時期の二〜三歳児で急に高くなっています。また五歳児では、園児の半数以上が虫歯になっています。しかし、この十年間で虫歯罹患児率はどの年齢においても着実に減少していることがわかります。
 この結果を保健所での全国幼児歯科健診と比べてみると、一歳園児(二・六%)、一歳六か月保健所(四%)三歳園児(三二・四%)、三歳保健所(三四%)と、いずれも保育園児のほうが虫歯は少ない傾向になっています。
 
表1 歯科健診実施回数別虫歯状況
  罹患児率(%) 処置歯率(%)
1992年  1996年 2002年 1992年 1996年  2002年
  1回 2回 1回 2回 1回 2回 1回 2回 1回 2回 1回 2回
  6.1 7.3 4.4 3.8 3.8 3.2 18.1 22.5 8.3 10.8 11.8 23.2
  24.8 24.9 19.2 16.5 16.7 12.8 17.0 31.6 13.3 24.1 16.4 20.8
  50.4 47.0 43.2 37.3 33.2 30.2 29.8 36.9 26.0 31.4 18.5 29.9
  67.4 61.2 58.9 51.3 49.1 42.9 38.1 45.7 39.5 43.3 31.8 41.2
  76.2 65.2 69.4 59.0 56.6 54.8 47.9 53.5 51.1 50.7 38.9 48.6
 
健診実施回数別状況(表1)
 健診の回数による虫歯と処置の状況を見ると、実施回数は年一回が約六割、年二回が約四割あって、年二回健診を行うほうが、虫歯罹患児率は各年齢とも少なく、処置歯率は高くなっています。
 回数の多いほうが、子どもの歯に対する保護者の関心を高め、治療をよりうながすことに効果があるといえます。
 
歯科保健指導(図2〜7)
 園児に対しては歯みがき指導が一番多く行なわれ、紙芝居や絵本を利用したり、歯垢テストを行うなどがありました。
 保護者にたいしては、保健だよりが一番多く、歯科医師を招いて講習会をしたり、歯みがきカレンダーを配布するなど工夫している内容があげられています。
 歯科保健に関した良い教材や資料がほしいという記述もありました。図2・3のグラフによると、十年前に比べて、保健指導を行っている園が減っていますが、多様なニーズに対応するために忙しい保育現場において、より合理的で効果的な方法を手探りしている状況をうかがい知ることができます。
 
昼食後の歯みがき
 八割以上の園で歯みがきが行われていました。その開始年齢は三歳児から始める園が一番多く二八%以上でした。
 ゼロ歳児から始める園が約二二%、一歳が約一九%でした。
 保育者によるみがき直しは、五割の園で行われています。その六割以上がゼロ〜一歳児からみがき直しをしていました。
 予想以上に、低年齢から昼食後の歯みがきとみがき直しを行っている園が多いことがわかりました。
 しかし、次々とみがき直しをしていく過程で、子どもの唾液による保育者の手の汚れに対する消毒や、歯ブラシの消毒はどのようにしているのだろうかと問題も感じます。
 
歯科保健活動結果
 
図2 園児向け歯科保健指導
 
 
図3 保護者向け歯科保健指導
 
 
図4 具体的内容
 
 
図5 具体的内容







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