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―「食育」をすすめる実践活動(5)―
地域活動事業〜児童館への出前講座〜
「作ってみよう かんたんおやつ」
仙台市袋原保育所栄養士 佐竹 淳子
はじめに
 近年、少子化や核家族化が進むなか、子育て支援事業の一環として保育所でも地域活動事業をいろいろな形で展開していくところが求められています。仙台市の保育所では子育て支援センターを設けている保育所以外でも、どこでも地域活動事業を実施しており、保育所を開放して子育てに関する講座を設けたり、保育所がもつノウハウを出前という形で地域に還元しています。特に公立の保育所は一施設に一人栄養士が配置されているので、児童館などから調理講習会などの出前講座を要請されるケースも多くなってきています。
 今回取り組んだのは、仙台市内にある遠見塚児童館での「三歳児の幼児学級に通う親子を対象とする調理講習会」です。
 保育所の施設を使って地域の親子を対象とした調理講習会なども行っており、小さい子どもを育てながら家事をする母親たちのニーズとして、「手作りのおやつよりもおかずになるものが知りたい」ということでした。そこで、朝食にもなるような手作りおやつが良いと考え取り入れてみました。
 
実施内容
(1)・内容「ホットケーキ」「ピザトースト」
 三歳児の親子が一緒に調理できて、材料費が少なくても出来、簡単に作れるおやつで、応用の範囲が広い献立を考えた。
・場所 児童館のホール
調理室や専用の流しなどはないので水は事務室にある水道を使用した。
・準備物 調理台には長机を使用
包丁、まな板、電子レンジ(一台)、オーブントースター(二台)、ホットプレート(二台)
(2)衛生上配慮した事
 参加者には「爪を切っておく」「エプロン、三角巾を着用する」ことを、あらかじめ知らせておく。当日は子どもたちも全員エプロンをしてうれしそうにしていた。母親たちには時計や指輪などをはずすように伝え、出来る範囲で衛生面に配慮した。
 手洗いは部屋にある手洗い場と、事務室の流しを使って行った。参加人数に対して蛇口の数が少ないため、思ったより時間がかかってしまった。
(3)調理実習
 レシピを配り、簡単に献立の説明をする。応用のバリエーションについても説明を加える。
 ホットケーキについては栄養士が実際に「生地」を作って見せ、ホットプレートで児童館の職員が焼く。にんじんやかぼちゃが入っているため色もきれいで野菜嫌いの子も思わず食べてしまったようだった。
 ピザトーストについては親子で一緒にトッピングをしてオーブントースターで焼く。オーブントースターが二台しかないので焼き上がりに時間がかかった。トッピングに関しては、野菜が嫌いでハムとチーズのみパンにのせていた子どももいた。
(4)試食と相談
 時間も少ないので、できあがった親子から試食となった。試食をしながら子どもの食事で悩んでいることや、質問に対して話をするなど相談にも応じた。
 
おわりに
 子どもの野菜嫌いはどの親たちにとっても悩みの種で、どうにかして食べさせたいという思いがあります。小さな子どもの場合子どもたちが好きなホットケーキに小さく刻んだりつぶした状態で混ぜてしまったり、ピザのようにケチャップとチーズの味付けに隠してしまうという方法もあるということを知らせました。またそれを食べたとき「○○ちゃんはこの野菜が入っていても食べられたね」といってほめてあげ、自信をつけさせることが大切だということも伝えました。「うちの子は○○は食べないから」と決めつけてしまうことをせずに、食卓にその苦手な物があり、大人がおいしそうに食べている様子を見せることによって思わず食べてしまうこともあるので子どもの可能性を狭めないことが大切だと知らせました。
 食事はそれぞれの家族や子どもの個人差によって、さまざまな問題をかかえています。指導する側が日頃からそれを把握している保育所の入所家庭とは異なる児童館での調理講習と食事指導は、一般的対応になってしまいますが、参加者にとって参考になったという声を聞くとやはりこれからはこのような出前というかたちで地域に出ていくことも必要だと感じました。
 今回は幼児学級に年間を通して来ている親子が対象ということで親たちの意識も高く、調理に関してもある程度できる親たちでした。以前に調理講習を行ったときも、同じような姿が見られました。一方、調理が苦手だったり「食」の大切さに気づかずにコンビニ弁当や市販のスナック菓子ばかりを食べさせている親にどのように支援していったらよいのかが課題であると思いました。実際保育所に入所している子どもたちの話を聞いても、朝食を食べてこなかったり、朝食がアイスクリーム、菓子、ジュースなどの家庭も少なくありません。夕食もカップ麺や市販の弁当、惣菜なども多く、仕事が忙しいこともありますが、調理が苦手で作れないので惣菜を利用しているケースも増えてきている現状です。地域活動事業を取り組む中で保育所に気軽に立ち寄り、利用しやすいようにする工夫が必要であると感じています。
 仙台市では一施設に一人栄養士がいて様々な形で「食育」活動を行っており、地域活動に関しても積極的に取り組んでいます。今後もより市民のニーズに合った内容が提供出来るようにしていきたいと思います。
 







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