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―保育園を考える親の会から(26)―
保育園オリエンテーション(2)
保育園を考える親の会
 
 前号に引き続き、今年二月十六日(日)、東京渋谷区の東京ウィメンズプラザで保育園を考える親の会が開催した「はじめての保育園」の記録をご紹介しましょう。保育園入園希望者(またはその予備軍)が保育園に関してどんな興味や心配を抱いているか、それに対して先輩である会員・スタッフがどんなアドバイスや情報提供をしたか、親同士のやりとりを垣間見てください。なお、文章は要旨のみになっていますが、実際にはいろいろな体験談をまじえながらの受け答えが行われました。
 
預けることに迷いはないの?
Q 子どもを産んでみたら、すっごくかわいくて、預けることに躊躇している。みんなメンタルな部分ではどうしているのか?
A 「子どもがかわいい!」という気持ちって保育士さんに理解してもらえる。初めて預けた認可外では、そんな私の気持ちが伝わって保育士さんが信頼してくれたようなところもあって、「頑張って仕事してらっしゃい!!」とエールをもらえた。ただ、次に預けた認可園では入園式から「ダメな親とは」というスピーチから始まり、つらかった。認可外の中にも使命感を強く持っていい保育をしているところがあり、認可園でも疑問を持つような場合もなきにしもあらず。ただ一般的に認可園は施設面で完備されていること、人的にも資格や研修制度などが確立されているという安心面がある。
Q ようやく入園。そのときの親の心構えは? 周囲の理解はどうやって得たか?
A 子どもが体調を崩すことが多いので、余裕をもって。
A おじいちゃん、おばあちゃんの偏見を吹き飛ばし、協力を得るには保育園の行事に積極的に連れてきて見てもらうのが一番。
A 保育園に預けるということは、「自分の人生をどうするかを決めること」にもつながる。「何を言われるか」ではなく「自分が人生をどう生きるか」ということを考えて自信をもって預けよう。子どもは親の迷いを敏感に感じる。
A 最初に「がんばらなくてもいいからここでいっしょに子育てしていきましょう」という保育園の園長からの言葉があった。よい保育園では親も育つ。おやじも育つ。一生懸命いい園を探しましょう。親にとっては都合のいい園だけではなく子どもにとってもよい園を。(男性スタッフ)
Q 新しくできる認可園に入るので不安だが?
A 父母会をつくることをお勧めします。親の友達、ネットワークもできて、預け合いもできるような関係ができる。ただ、今は父母会がないとか連絡網や名簿もない園も多い。園があまり父母会を好ましく思っていない場合もある。だから園や先生には、親のネットワークをつくって協力したいというノリでアプローチしてはどうか? 親の協力は園にとってもうれしいはずだから。
 
保育園とのトラブルは?
Q せっかく入った保育園。でもトラブルがあったときどうしたらいい?
A 担任の先生にまず相談を。お互いに伝え方がうまくいかないだけのこともある。担任の先生が話を聞いてくれそうもないとか、信頼できないというときは、主任か園長に相談する。主任・園長は保育園全体のことに責任をもっているので、対応してくれるはず。それでも難しいときは役所に相談するしかない。認可保育園については「苦情解決のための窓口」を設けて、保護者の苦情などを受け付け話し合わなくてはならないことになっている(児童福祉法で義務づけ)。苦情を言う権利があることを覚えておこう。
Q 保護者がクレームを言ったために保育を断られたりすることはあるか?
A 税金から出ている補助金で運営されている以上、あってはならないこと。残念ながら一部の私立園などでは聞かれるけれども、基本的に退園強要は園長の権限ではできない。
 (関連した発言) 上の子は、下の子の産休後、保育園を辞めさせられた。私立認可園だった。公立園だったら育休中の一年間は在園できたのだと後から知った。保育園申し込み時にそういうことを知らされていなかったのでショックだった。知らない人が損をするようになっている。今回の申請では、二人の子どもを申請しているので、入れるか不安。
 
両立のコツ、父親の役割
Q 仕事と子育ての両立にあたっての父親の役割について。
A 父親として半年間育児休業と(復帰してから)育児時間も取った。夫婦で仕事の繁忙期などをみながらどっちが何をやるかを調整している。(男性スタッフ)
A 送りはパパなら迎えはママとか、役割を徐々に決めていったらいい。迎えだと子どもがニコニコ喜んでくれる顔が見られるのでパパには好評。ただ迎え担当はその後の夕食、入浴、寝かしつけもやることにもなる。はじめからスッとできるパパはあまりいないかも。夫婦でけんかしながら徐々に慣らしていくものでしょうね。
Q 送り迎えはパパ、ママ、どっちが分担?
A 保育園に慣れていない父親だと持参する物、園から持って帰る物が分からず、忘れ物も多い。パパにはしっかり教えてあげたほうがいい。月、金は特に持ち物が多いから持ち物点検が必要かもしれない。
Q 両立の際の心構えについて。
A たぶん職場に復帰すると前みたいに一〇〇%仕事できないし、子育ても大変なはず。でも自分を責めないで。
A パートナーのことも責めない。パートナーがやってくれる家事・育児に対して文句はいわない。
Q 保育園のお迎えに間に合うためには、仕事を夫婦どちらかがやりくりしていかねばならないが。
A やるしかありません。わが家は、夫婦で都合のつきやすい方がお迎えで、逆にお迎えが出来ないほうは朝担当するなど、工夫している。仕事を早く切り上げた分、他の日にその分の残業をするなどして、仕事のやりくりをしている。
A 週に決まった曜日をシッターさんにお願いするなどして、負担の軽減する方法もある。
A 親ががんばり過ぎて倒れたりしたら元の子もないので、無理しすぎないようにしましょう。
Q 夫婦のバトルはどうかわす?
<パパスタッフから>
A スケジュールを入れるとき。上司に相談する前に妻に確認する。連絡は密にする。
A 夫婦協力のポイント
 ポイント(1)自分ができないことを減らす。これができないあれができないと言っていると時間が効率よく使えない。
 ポイント(2)相手のしたことを責めない。
 ポイント(3)相手への目標レベルをさげて、今できなくてもあとでしてもらえば良しとする。
A 便利な機械はフル活用。乾燥機。食洗器は必須。家事は手抜きでも子どもと過ごす時間は楽しく。
A 男性は子育てについて職場の理解が得にくい。そのため飲み会にも、いったん保育園に子どもを迎えにいって往復三時間かけて連れて行って、周囲の理解を得た。男性だから大変な部分があることもわかってほしい。逆に女性は仕事をしたいのに子育て中はまわりに気を遣われてしまうつらさもある。
<ママスタッフから>
A 初めから家事が得意でない夫はほめておだてて、子どもといっしょにパパを持ち上げる。感謝の気持ちを忘れずに。
Q 保育園にも慣れてきたが、職場に復帰してからお迎え時間に間に合うのが大変。そんなとき利用できる二重保育について教えて。
A 初めはベビーシッターを利用していた。必ず手配できる人をキープしておくと安心。子どもが大きくなってきたら、親同士の預け合いも可能。
A ベビーシッターは子どもが元気なときに利用して、親子で慣れておくことをお勧めする。
 
最後に普光院からアドバイス
 保育園に通わせることのメリットとはたくさんありますが、何と言っても生活のリズムが自然につくられ、遊んで休んでというめりはりのある生活が自然にできるところが素晴らしいところ。
 そして、親が活き活きと元気に自分の人生を生きていることが子どもにとっては大切。親の姿から人生への希望を学んでいくと思う。ポジティブな気持ちで共働ぎというライフスタイルを選んでいきましょう。
 
参加者アンケートから
*( )は子どもの月齢
【よかったこと】
○一人で考えて悩んでいたが、いろいろと話が聞けてよかった。悩むより実行してみることになった。(四か月)
○預け先の選択、二重保育のサポート方法など聞けてよかった。事前の準備が大切なことがよくわかった。早めに準備したいと思う。(妊娠中)
○情報が色々聞けて参考になりました。夫も参加できてよかった。(十一か月)
○経験談を実際に聞けたことで「みんなどうにか工夫して大変なことも乗り切っているんだ」という気持ちになれました。(一歳)
○メンタルな部分でとても参考になり、ラクになりました。また裏技やコツもありがとうございました。この会の活動もして、育児もして・・・のスタッフの皆様のパワーを感じられて、ガンバラナクテハ!と思いました。(一歳)
○考えていなかった部分がよく見えてきた。(視野が広がった)保育園に預けようとすることに少し自信が持てました。(九か月)
○保育園に持っていく持ち物の具体例が良かった。実物を見ることができて、やはり多い! と思いました。(妊娠中)
○お父さんの意見が聞けたのはよかったと思います。(だんな様連れの参加者の方が多かったのも驚きました。)うちも協力してもらえるよう教育していきます。(九か月)
○地域の情報を含め、基本情報を得られたのが何よりのメリットでした。まったくの初心者ですので、助かりました。ありがとうございました。何を聞けばいいのか、調べればいいのか、の手がかりがみつかりました。(妊娠中)
○保育園に対して周囲の声もあり、マイナスに考えていたことが本日の参加でプラスに考えることができた。体験談が直接聞くことができたので、参考になりました。ありがとうございました。(四か月)
【足りなかったこと】
○みんな環境が違うので、時間にも制約があったので、個別に相談ができる時間があったらもっとよい。(妊娠中)
○場所がやや狭かったことと、グループでの話が聞き取りにくかったので、もう少し少人数、もしくはグループ間の間を空けてもらえればよかった。(十一か月)
○病児保育所の一覧などあれば知りたかったです。(一歳)
○もう少し時間が欲しかったかな・・・。(一歳)
○地域がみんないろいろなので、踏み込んだ話ができなかったのが残念です。(仕方ないことですが)(九か月)
 
まとめ
 こういった機会にこれから仕事に復帰する親たちと話をすると、私自身も保育園に預けるまでに、いろいろなことが不安だったことを思い出します。
 保育園入園を前に役立つ情報や知恵を交換することが、この会の第一の目的ですが、そんな話をしながら、参加者は同じ立場の人たちとふれあい、「大丈夫だよね。乗り越えられるよね」という安心感を得られるのではないかと思っています。
 保育園を考える親の会が創会して以来、二〇年間続いてきたイベントです。
(保育園を考える親の会代表 普光院亜紀)
 
*「保育園を考える親の会」は保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク。情報交換、支え合い、学び合いの活動をしている。
 
実習 保育学
監修 帆足英一
(聖徳大学客員教授 ほあし子どものこころクリニック)
 本書は保育所・幼稚園を中心とした実習生のテキストとして、同時に保育現場で実習指導にあたる保育者にも役立つ内容で構成されています。
 特に、第三部「赤ちゃんの基本的なケア」においては、初めて接する赤ちゃんへの保育をどうすればよいか、そのノウハウが丁寧に記述されています。
主な内容
1 保育の現場に出合う
2 保育の実際(0〜5歳児クラス、異年齢児保育(縦割り保育))
3 赤ちゃんの基本的なケア
4 配慮を要する子どもの保育(低体重児・病後児・虐待された子ども等の保育と心配な子どもの行動への理解)
5 乳幼児の健康と病気・事故予防(保育看護の専門性を育む、感染症を予防するために、乳幼児の事故と応急手当などについて)
二八〇頁 定価二八〇〇円+税
発行 日本小児医事出版社
TEL03(5388)5195
FAX03(5388)5193







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