日本財団 図書館


斎藤十朗 先ほどから、地方分権改革推進会議での話が出ているが、もともと最近における幼保一元化の話は、総合規制改革推進会議から始まったと思う。この小泉内閣になって以降の話だ。この問題は、二〇年も三〇年も前の、私が初当選した頃からある話で、これはうまくいかないのでダメだということで、ずっと来ていたのだが、小泉内閣になってから、また改めてでてきたのが、規制改革会議だ。そして合意は出来ないのだけれども、ここでスパッと切ってしまえばいいのだが、切りきれないで、尚引き続き検討すると引っ張っている。それを横目で見ながら、地方分権改革推進会議だとか、経済財政諮問会議だとかが、違う角度からいろいろ言っており、地方への一般財源化すれば、一元化しやすいだろうとか、調理室を設けなくていいならば、それは一元化しやすいだろうとか、調理室を設けなくて良いという事は、要するに最低基準が違うのだということだろう。幼稚園と保育所の性格が違うから、最低基準が違うのだという事。根本の違いがあるから最低基準が違う、それをネグレクトしてしまって、一緒にすればいいだろうと、そういう話が進んできていると思う。
 
 
 
内閣官房 時間の流れから言えば、おっしゃったとおりです。
熊代 柱書きと中身が全然合っていない。幼保一元化と書いてあるけれど中身は何も書いてない。調理室の話も何も無い。
伊吹 斎藤先生がおっしゃったとおりだ。幼保一元化をやりたいというのがまずあって、それについて各省が反対するから、各省の反対を封じるために財源の話を持ってきただけのことだ。
斎藤十朗 岩田局長が言ったように、地方で幼稚園と保育所を一元的に運営しようとしたときに、調理室が邪魔になるからという理由があった。現実には両方が連携して合築していくという現実的な対応は二つの違う制度でありながら、同じ敷地で一体的にやっていこうというのは既にやっているわけだ。そのことは事務局として、これらの会議の委員にはっきり申し上げたのか。だいたい各省から来て、ヒアリングで言うことは、低抗している役所が言うから、そんなことは聞かなくて良いという態度ではないのか。
阿部正俊 幼保一元化ということが改めて出ているが、斎藤先生のおっしゃる通り保育所と幼稚園は違うカテゴリーにあるわけで、現実は違う。それでも、ただ機械的に分けるのではなくて、融合できるものは融合したり、例えば役割分担をするとか、そんな風に各市町村では、それなりに棲み分けと地方分権が出来つつあるのが現実でないか。もう少し現実的に解決していく方策を採るのが一般的ではないかと思う。いかにも幼保一元化というのを、制度が別々であることが邪魔しているという前提で物事を考える必要が果たして今の段階であるのか。地方では預かる年齢や時間など色々な形で保育園と幼稚園の棲み分けが行われているのも現実ではないかという気がする。だから、一回、市町村の現状というか、意見を聴取する機会を設けて頂けるとありがたい。
 一般財源化というのはわけのわからないものだと思う。一般財源化という表現になっているが、端的にいえば、負担する、という事とどこが違うのか。市町村が独自に、原則的に、財源を探して補佐する、というのが地方分権の本来の在り方ではないか。財源だけは国が取ってきてくれて一般的に流してくれて、使うのは自分勝手だという考えは問題だという気がする。基本から議論していかないと、一般財源化ということだけで、話を進めようとするのは違うのではないか。
津島 阿部さんの発言に、根本的に反対だ。第一に、私は地元で東北各県を見ているが、幼稚園と保育所が乳児期とその後、というような分け方で分けられてはいない。しかも、歴史的に違う。これが第一点。二番目は、保育に欠ける子どもをどうするかという事は、地方に任せられるような甘い問題ではない。これは生活保護に続く、非常に重い問題だ。地方の財源で、地方でうまくやりなさいというレベルの話にするのは、絶対に賛成できない。
伊吹 財務省に言いたい。一般財源化というのは極めて抽象的な言葉で、塩川財務大臣が言ったとおり、どの権限を与えるのか、地方に判断してもらうのだと言っていたが、もし、今保育に対して出している財源を一〇〇%地方にそのまま配分するという話が決まったとしたら、財務省には赤字国債だけが残るのだ。その辺のことが全然詰まらないままに、総務省、財務省が関係ないふりをする事は、補助金という形で各省が持っている財源を、地方に移して一般財源化するという事は、例えば岩田局長が持っている一〇〇の財源が、地方にいったら六〇になるか、七〇になるかという思惑があるから黙っているだけだ。
 ところが、片山総務大臣が一〇〇%それをもらうのだとこの前言ったものだから、塩川財務大臣は怒ったわけだ。だから、そこを財務省と総務省で完全に詰めてからだ、この話は。詰まる前に一般財源化するという話はダメだ。だから、岩田局長が持っている一〇〇%を都道府県知事に渡して、財務省は赤字国債だけでやっていく、という決心をするなら、この話でもいいが、全然詰まっていない。
財務省 幼保一元化に関しては、主計局としては、幼保一元化が良いとか悪いとか言った覚えはありませんが、局として、省としてはっきりした方向性があるわけではない。保育所の一般財源化をとっても、これをやるべきだというコンセンサスが省の中にあるわけではない。ただ、現在の総理のいう「三位一体」の中でどうしていくか、という問題はありますが、この保育所の運営費用を一般財源化すべきという事は主計局が発信したことは一度もない。一般財源化ありきで物事を進めているわけではない。若干申し述べると、幼稚園と保育所というのは基本的には一元化という場合、制度を一緒にしろという話と、ある程度自治体の運営上特に公立などは似たような部分があるので、そこをうまくやれ、という話が二つ混同して議論されているような気配があると思います。そこはアプリオリに保育所の一般財源化という事まで、私どもは考えていません。
橋本 厚労省には答えをもらったが、財務省、総務省はそれぞれに、子どもの幸せから議論をするのかしないのか。そこは誰も答えない。今のままで、特に、お守り役をするのは内閣府なのか。子どもの幸せはどうでもいいという事から、この議論をやっていくのか。もし、そこで異論があれば、聞くし、論戦する。異論が無いなら、この話はここで終わりになるはずだ。
 もう、結論は何回も出ている。津島さんは先ほど阿部さんの意見を否定されたが、そこは一つ議論があって、フランスの幼児学校を原田さんと八木さんがわざわざそのために調べに行った。そして結局、就学前の児童の発育状況は非常に著しいし、差もある時期を義務教育に送り込むことはまずいということでやめた。そして、むしろ幼稚園と保育所の間で、低年齢児童より保育にシフトした。三歳児まで幼稚園が枠を広げるということを認めた。自民党はそれだけの調査を党としてもやってきた。今、私はこの問題について、議論できるだけの調査は過去に党としてやってきた。だから形ばかり言ってもらっても仕方ない。本当に子どもの幸せを土台に置くのなら、言い換えれば、保育指針と幼稚園教育要領の中身をきちんと詰めて比べて、それぞれの環境に当てはめ、どちらがより子どもの家庭に代わる環境を作りうるかを調べて、議論しているとは全く思えない。
斎藤 今、橋本会長がおっしゃったのと、少し角度、側面がちがうところから言わせていただくと、特に総理に言っておいてほしいが、総理が目玉にしている待機児童ゼロ作戦なんてもうやめなさいと。政府が率先してやる必要はない。自治体がやればいい。党に大型調査会として、少子化問題調査会が出来たが、そこで保育所と幼稚園の在り方や、又新しい制度がこうだと、決まるとすればそれに従った新しい方向っていうのは出てきてもいいかもしれない。そこで議論しているのだから、それをぜひ(内閣府へ)帰って伝えてほしい。現在の仕組みの中で進めて行こうというのはおかしいと思う。
笹川堯 私はプロではないが、元々幼稚園と保育所というのは全く違うものだ。違うから、厚労省と文科省に分かれている。一緒にしようとすることは、どちらに主を置こうとするのかわからないが、元々保育所というのは、『子どもはほしい。でも働かなければならないから、子どもはもてない』ということから、子どもを産むことに非常に協力的な人たちが始めた。ある程度余裕があって、専業主婦で子どもは自分で育てて、それでも三歳から幼稚園に預けて。幼稚園のシステムは学校と書いてある。保育所の方は、先ず育てる、養護する、守ってあげる、それに教育を付ける。分かれている主旨はこうだから分かれているという事がしっかり書いてある。分かれているものを何でくっつけるのか、お金の問題というよりは、元々今まで分かれていていいのだから、それで良いのではないのか。
園部日保協理事 幼保一元化の言葉が一人歩きしている。三〇年前に、橋本先生はこの問題に終止符を打った。機能と役割が別だということで。それが、未だに続くのは本当におかしいことだと思う。私どもはもう我慢できない。なぜ、保育所が朝の七時から、夜の八時、九時までやらなくてはいけないのか。幼稚園は三歳以上児だから、かかるお金が少ない。保育園はゼロ歳から五歳までみているから、金額は高い。幼稚園はこちらにもよこせというけれど、それはおかしい。お金の問題で解決しないで、子どもの幸せを考えてもらいたい。
伊吹 岩田さん、文部科学省だって反対でしょ?我々はこれだけ集まってやっているが、幼保一元化というのは、我々もおかしいと思っているが、向こうもおかしいと思っている。それは当たり前だと思う。これを地方分権の話に無理に持っていって、最後は規制改革の話に持っていくというのは、少し無理がある。だから文部科学省とよく話をして、文教関係もこういうのをきちんとやってもらいたい。
熊代 それではここで、橋本会長から締めくくりのご挨拶をいただいて、お開きとしたい。
橋本 誰も今進んでいる会議の方向に賛成の者はいない。国民の一致なんて得られていない証明だ。これはそれぞれきちんとお伝え願いたい。私は抵抗勢力と言われるのが不愉快で、あまり反対しないようにしていたのだけれど、これをやったら、私は本気で抵抗を始める。これは、最初の児童局長、初中教育局長の共同通達からはじめれば少なくとも三〇年以上関わってきた。そして党としての結論はとっくにまとまっている。小泉さんも日本保育推進連盟の会長をしたはずだ。だから内閣府の担当者にこんな作業はとっとと止めて、もっと大事なことをやってほしいと頼んでおいてもらいたい。
熊代 ありがとうございました。それでは、それぞれの責任者の腹心も来ておりますので、しっかりと報告をしていただきまして、保育議連世話人会として大体方向が出たと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。本日はお忙しいところ誠にありがとうございました。
(文責・日本保育協会)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION