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保育時評
子どもの心は私の宝物
石田 裕子
 
 自然の中での遊びが不足がちといわれる今日ですが、園のまわりや園内には遊び心をくすぐる“保育の素材”がいっぱい潜んでいます。私たちは日々の保育の中で子どもたちの「表情や声」を大切に受け止め、多くの経験や体験ができるようにと心掛けています。
 雨あがりのある日のこと、子どもたちは目を輝かせて園庭にとび出して行きます。そして、重い植木鉢をずらしてダンゴムシ探しが始まりました。
 「先生、すごいおるよ!白い点があるで、これメスだよ」「ほんとだ」「透明の赤ちゃんもおるよ」「ワー!可愛いね」「枯れ葉を食べるんだよね」・・・物知り博士の子がいます。すると、今度は園庭の端から「先生、来て!寝とるでシーだよ」そっと見ると、アマガエルが生け垣根の葉っぱの上でじっとしています。「喉が動いているね」「息してるの?」「これってお腹?」不思議を発見する子、お部屋に図鑑をとりに行く子。子どもたちは生き物探検隊としてハッスルしています。「先生、これやっぱり喉だよ。ゲコゲコ言ってるもんね」「すごいね、発見しちゃったね」・・・私も仲間入りをし、一緒に発見を楽しみました。
 生活の中で伸び伸びと遊んでいる子どもの姿や、発見や感動に目を輝かせている子どもの表情を見ると、何とも言えない喜びと安堵感に浸ります。私は、そんな子どもたちを“ゆとりある心”で受け入れ、共感していく中で明日の保育へとつなげていくようにしています。それゆえに、どんな時でも、純粋な「子どもの心」が私の宝物なのです。
 保育士の人間性、専門性が問われる今、保育の現場にいる私たちはプロとしての意識をより高める時です。原点となる“子どもの心”をしっかり受け止め、保育の信念を再確認するとともに、時代の流れに沿える柔軟な考えで、子どもの育ち、保護者、地域など、色々な方面での支援に力を注ぎ、努力していきたいと思います。
(愛知県豊橋市・植田保育園保育士)
 
 
 
日保協情報 <全国保育議連>
幼保一元化と一般財源化問題で活発な議論が展開
 去る四月二三日十三時から自民党本部で全国保育関係議員連盟(橋本龍太郎会長)の世話人会が開催され、幼保一元化と一般財源化の問題等について活発な議論が展開された。
 当日は厚生労働副大臣、局長をはじめ、内閣官房、総務省、財務省からも担当官が出席。日本保育協会からは予対委員と役職員が同席した。
 
自由民主党全国保育関係
議員連盟世話人会(議事概要)
 
平成十五年四月二三日
出席議員(本人・敬称略・順不同)
(衆議院) 橋本龍太郎 津島雄二 丹羽雄哉 塩崎恭久 佐藤勉 太田誠一 笹川尭 江藤隆美 長勢甚遠 持永和見 田村憲久 伊吹文明 熊代昭彦 林義郎 宮腰光寛
(参議院) 斎藤十朗 金田勝年 阿部正俊 真鍋賢二 清水嘉与子
厚生労働副大臣 木村義雄 鴨下一郎
厚生労働省雇用均等・児童家庭局 内閣官房 総務省 財務省 日本保育協会
 
熊代昭彦 時間でございますので、自民党全国保育関係議員連盟の世話人会を始めさせていただきます。始めに、橋本会長からご挨拶をいただきたいと思います。
 
橋本議連会長
 
橋本龍太郎 本日は保育所運営費などを巡る状況について、政府側からその現状を説明いただくとともに、我々の意見もきちんと申し上げておこうと思う。地方分権改革推進会議等の話を伺っていると、我々と全く基本要件を異にした考え方で物事を進めているようにみえる。これは全く受け入れることが出来ない部分を含んでいることから、お集まり頂いた。関係各省庁にも出席頂いているのはそうした観点からで、出席の方々(各省)に対して苦言を申し上げるつもりはないが、地方分権改革推進会議などに対して、きちんと私たちの意のあるところを伝えていただきたいということを申し上げておきたい。
熊代 会長からお話もありましたように、今日は厚労労働省のみならず、本件は地方分権推進会議で議論されているわけですので、事務方の内閣官房伏屋副長官補に話をしまして、内閣官房福本参事官に来ていただいております。財務省からは杉本主計局次長の代理ということで向井主計官、総務省からは林財政調整局長の腹心の原調整課長に来ていただいております。それぞれ意見を言う立場、段階にないと言うことでございますが、十二分にこの段階で先生方のご意見をしっかり聞いて帰っていただこうと言うことです。場合によってはコメントをいただこうと思います。
 
木村副大臣
 
木村義雄副大臣 世話人会の皆様におかれましては、日頃より保育状勢のご支援を賜り、誠にありがとうございます。本日は保育を取り巻く状勢がめまぐるしく変化する中で、昨年来、地方分権推進会議で議論されております、保育所運営費負担金と施設設備費の一般財源化について議論されるということであります。大変貴重なお時間を、皆様お集まり頂きまして、真剣に討議されていることに、心から感謝申し上げます。誠にありがとうございます。保育所運営費等の一般財源化の問題につきましては、少子化が進行する中で我が国の重要な基本施策、即ち国策である子育て支援策に関する国の関与をやめろとか、保育所の運営ひいては子どもの保育に影響を与える問題であり、大変懸念されるところであります。又、地方分権推進会議における議論は、幼保一元化を進めるために、国の関与をなくす、という観点から一般財源化を行うべきとするものでありまして、到底納得できるものではございません。そういうわけで、先生方のご指導を頂戴したく考えている次第でございます。保育は、我が国の将来を担う子どもたちの健やかな育成にとって、欠かすことの出来ない重要政策であります。皆様方におかれましても、特別のご尽力を頂いているところでありますが、引き続き、より一層のご指導ご鞭撻をいただきたいと思う次第でございます。先生方を頼りに致しております。どうぞよろしくお願い致します。
 
鴨下副大臣
 
鴨下一郎副大臣 今日は先生方のご意見を賜りまして、厚生労働省としては先生方と同じような歩みをして参りたいと思っております。木村副大臣とともに、しっかりとこの問題に取り組んで参りたいと思っております。よろしくお願いします。
高井保育課長 ―資料に基づき説明―
橋本 政府側のどちらに伺えばいいのかよくわからないが、幼保一元化については何回も今まで議論し、そのたびにその議論の中で、それはするべきではないという結論が出された。特に臨教審でその問題が議論されたことは皆さんの記憶にも新しいと思う。厚生省ではなく、むしろ内閣官房なのか、総務省なのか財務省なのか知らないが、幼保一元化を前提として、政府の各種会議において議論させる権限は誰にあるのか。内閣総理大臣が指示して幼保一元化というものを前提として議論させたのか、それとも経済財政諮問会議が独自に議論させたのか。それとも、地方分権改革推進会議が幼保一元化を前提として、議論することを決めたのか。
内閣官房 我々が承知しているところでは、それぞれの会議で、その場で議論が起こってきて、一定の結論が出されたようですが。
橋本 ただこれだけの問題を取り上げる以上はそれだけの、事務方も資料を提出しておられるだろうし、ヒアリングもしておられるだろうし、過去の積み重ねも研究しておられるはずだ。その紹介はどういう具合にされたのか。きちんとされていたとすれば、幼保一元化の話がこういう格好で取り上げられる話ではない、ということは先ず明らかなはずだ。そして、一方で国は保育所の機能をフルに使いながら、子どもの数をいかにして増やし、家庭に代わるべき環境を与えようとしているわけであり、台所のない家庭なんてあるのか。そんなものをわざわざ作ろうと勧告する会議が正気の会議だと思うのか。そんな施設に子どもを預ける気になりますか。これは私は正直、感情的になるくらい腹が立っている。
 そして、子どものためにどちらがいいのか、少なくとも、私の知っている限り、幼保一元化というのは今までさんざん議論をやってきた。その問題の所在、論議の中心は何かと言えば、幼稚園を是とする方も、保育園を是とする方も、子どもにとってどちらが幸せな環境を与え得るか、ということであった。お金から子どもの問題を議論するほど、政府はいつから落ちぶれたのだ。少なくとも今まで、幼稚園、保育所、いずれの形態も、子どもたちの暮らし、子どもたちの幸せな環境を守るためには必要ということが政策展開の前提だった。今回、その議論を全く無視して、お金から議論している、私は大変下劣な議論だと思う。
 
 
 
 子どもの幸せをどうしたら築けるかを我々は本当に真剣に議論してきた。その視点を全く欠いて、お金だけの話で、方針をおまとめになるなら、私は全面的に抵抗する。
 そして、総務大臣のご意見(国庫負担金、補助金見直しについての資料)がそこに出ている。総務大臣はこの意見をまとめるにあたって、子どもの幸せというものを前提にしてお考えになったのか。
総務省 私ども、分権を進めなければならないという観点がありまして・・・
橋本 分権が必要ということは、私も総理として分権を進めてきた一人だ。今から言われるまでもない。
総務省 分権会議に取り上げられたものを重点に検討するという考え方にたったということであります。
橋本 子どもの幸せの部分は全く議論をしないままに、財源の話、お金の話としてだけのことで、総務大臣は考えをおまとめになったということか。
 分権を進める立場は、子どもの幸せを壊しても良い、という原則がその前にあるのか。分権は何のためにやるのか。人々の為、国民の為ではないのか。
総務省 私どもとして、子どもの幸せというのは、当然国民の幸せです。
橋本 国民の幸せが抜けている。分権会議にその視点が無いのだからそれをそのまま検討するということは、その視点は欠落しているということにならないのか。
総務省 私どもとして、地方自治団体に権限を渡して、地方自治団体の判断でやっていただくという考え方でありまして、決して、子どもの幸せを考えないとか、そういうことではないという風に理解しています。
橋本 子どもの問題は地方自治団体に投げてしまうということか。国は、基本的な方向は示さないで、投げてしまうということか。
総務省 決してそういうことではありません。もう一つ、前段に書いてありますように、この報告の中で、地方に委ねるべきとの合意が示されれば、ということです。
橋本 それなら、合意は形成されていない。少なくとも、今日ここにいる議員は誰も納得していない。作業を止めていただきたい。我々は無駄な作業に国費を費やす時間もない。お金も無い。誰も納得していない。
伊吹文明 地方分権の話と、幼保一元化の話とは何の関係があるのか。幼保の一元化については、橋本元総理がおっしゃったように、いろいろな議論がある。厚生省のいろいろな補助金について、一般財源化だとか書いているけれども、文科省の幼稚園関係の就学補助金だとか、建築補助金だとか、そのことについても同じ感覚で対応しているということなのだろう。
 地方分権推進会議というのは、国と地方との財源と在り方とか、権限の委譲のやり方とか、個別補助金と交付税の形でどういう風にして財源の偏在を調整するかとかをやるべき場所であって、幼保の一元化を取り上げたということは、総合規制改革会議、経済財政諮問会議で、各省庁が強力に反対するので一般財源化にしてしまえという風に見える。地方分権の話はそういう話ではない。権利を主張すると同時に、有権者に対してサービスをした場合の負担を民主主義のルールに基づいて、きちっと求めるということにあるのであって、各省の補助金を削除したり、補助金があると面倒だからともかく交付税でやってしまうとか、両方ともカットして、財務省的にいえば地方自治体に押しつけるとか、そういうことではないのではないか。地方分権を議論する場合には地方議会が堂々と責任を持って、支持者がきちんと責任を持ってその負担を求めていくというのが、当たり前の地方分権の第一歩だ。どうして、地方分権改革推進会議と一般財源化の問題が関係あるのか。
岩田雇用均等・児童家庭局長 保育所の運営費の一般財源化の理由の一つになっているのは、地方自治体が自立的な判断で、幼稚園と保育所を一元化した施設を設置したいと考えた場合に現行では国の関与があってそれが出来ないということが問題ですから、国の関与をなくして運営費について、一般財源化すべきであるというのが、地方分権改革推進会議の議論です。昨年秋に一三五項目について案が出されたわけですが、その中に保育所関係が何項目かあって、その中の一つに幼保一元化の問題と合わせて、一般財源化の案が出されています。施設整備については国の最低基準で、調理室を作らなければならないとなっていて、そういった国の関与が不適切であるから国の関与をやめさせる、そのために保育所のみならず、社会福祉施設全般の国庫負担金を一般財源化する、という意見です。私は二つの点において納得していない。基本の議論である幼保の一元化の議論や、保育所に何故最低基準として調理室が必要かということについて、機会あるごとに厚生省の考えを主張をしていますが、その点について理解をしていただけていないというのが残念な点と、もう一つは、幼保一元化なり、調理室の問題なり、意見を主張する方がおられるが、それと運営費、施設整備費、全体の一般財源化の間にはいかにも距離のある、理論的には飛躍している話ではないかということ。その二つの点が、私は担当局長として納得致しかねます。
津島雄二 今までの議論をふまえて、一元化の問題を地方にゆだねられない一番きついところは、保育所は憲法の二五条でいう生活権で、ここから来ている。幼稚園は二六条の、教育権(である)。一番厳しい憲法の要請に基づいてやっていることについて、地方が斟酌できることは自ずから限界がある。憲法の要請することはどういうことかを、担当委員も行政も一緒になって、ここだけはいけないとそれぞれ決めたうえで地方に判断してもらうということになるのではないか。ところが答申を読んでみると、全面的に地方に委ねるべきとの合意、これは本来あってはならないことを前提にしているのではないか。だから幼保一元化の議論は出発点から間違っている。憲法にさわっていると思う。そんな合意はない。







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