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コラム
保育関係者が描く「専門家への道」
 先日おもしろい話を耳にすることが出来た。一つは園長先生からの話で保育士についての愚痴である。「周りの状況を判断し子どもにも保護者にも適切に対応ができる保育士もいるが、経験年数に関わらずいくら教えても成長しない保育士もいるので、事細かにマニュアルをつくり対応しようかと考えている」と言うものだった。二つ目は保育士からで「保育園の先生は子どもを並べて見ているだけで、駐車場係の人と同じような仕事じゃないのか」と一般企業に勤める男性の友人に言われ、あまりの認識の無さに腹が立ち議論をしたがその友人とはそれ以来口をきいていないということだった。そして三つ目はファミリーレストランで耳にしたもので、それぞれ別の保育園へ子どもを通わせていると思われるお母さんたちの会話である。「うちの保育園には男の保育士がいるのよ。世の中男と女がいるし、家庭にはお父さん、お母さんがいるから、保育園に男の先生がいるほうがいいわね」というものだった。男性保育士の保育効果をどこまで深く考えて言ったのかは定かではないが、自分の考えに同意を求めながらもちょっと自慢げに言っているようにも聞こえた。
 これら三つの話を聞いたときに一つの質問を思い出した。それは保育士は他の職種から専門家と思われているのだろうかというものだ。これら三つの話から推測する限りでは他から見て保育士を専門家と認識してくれている人はそう多くないような気がする。
 例えば同じ子どもを扱うことの多い看護師や医師であれば一般の人が簡単に出来ない特殊な技術をどれだけ充実させているかなど目に見える部分からも専門性やその高さを容易に判断することが出来る。しかし保育士の仕事は家庭の子育ての延長線上にあり、やろうと思えば誰にでもできてしまうように見える状況であれば、専門職ではあるが専門家として認識してもらうのはそう簡単なことではない。
 多くの人に専門家として認識してもらうためには養成校と有効な連携を持ち、学級教育の充実を図ることもさることながら、保育園や保育者の何が専門家としての基準、価値なのかを確認し文章として提示していくことである。そして提示されたものを達成するために保育者は必要とするマニュアルなり研修のプログラムを作成していく。但しここで難しいのは形に見えるものだけを重視するのではなく、形に見えないものをどう見せていくかということである。
 例えば、子どもにかける一言一言に注意を払い、知識と知恵と経験をもとに、その言葉が与える影響とその後の子どもの育ちを想像でき、それらを理論づけ文章として残す。このようなプロセスを繰り返し継続しながら資料として積み重ねられたものを保育士が共有し保育園から保護者や地域社会へ発信していく。これらの過程も今後保育園や保育士が専門家と言われるために必要な一つの条件となるのではないだろうか。
 保育園、利用者そして社会には保育園への認識にまだまだ温度差を感じるが、今後益々保育の専門性が強く求められることを考えれば、目に見える形で専門家への歩みを一歩一歩進めていくための大きな努力が必要なことはいうまでもない。 (幸苗)
 
 
 
――お知らせ――
 平成十五年度永年勤続保育者表彰式典は、十月二三日(木)東京千代田区内の砂防会館別館で開催されます。
 次の推せん要領に該当する表彰希望者は、所属支部の支部長あてにご連絡下さい。
平成十五年度 永年勤続保育者被表彰者推せん要領(概要)
表彰予定人員 五五〇人程度とする。
推せん基準
 被表彰者の推せんに当たっては、現に日本保育協会の会員(平成十五年三月三十一日現在)であり、長年、保育事業の発展に寄与し、その功績が顕著な者で、次の各号のいずれかに該当する者から推せんすること。
(保育所長)
(1)原則として保育所に通算三十年以上勤務し、平成十五年三月三十一日現在保育所長の職にある者
(2)児童福祉事業に三十五年以上勤務し、平成十五年三月三十一日現在保育所長の職にある者
(3)その他上記に準ずる者
(職員)
(1)保育所に常勤職員として通算二十年以上勤務し、平成十五年三月三十一日現在職員である者(保育所長を除く)
(2)児童福祉事業に常勤職員として二十五年以上勤務し、平成十五年三月三十一日現在職員である者
(注)非常勤職員として勤務する期間がある者については、上記に勤務状況によって換算した期間を上記年数に含めることができる。
推せん留意事項
 すでに本協会より永年勤続保育者(所長の場合は協会創立○○周年記念表彰を含む)として表彰された者を除くこと。
推せん者
(保育所長)
日本保育協会各都道府県(市)支部長(職員)
(1)直属の保育所長(法人の場合は理事長)
(2)日本保育協会各都道府県(市)支部長
社会福祉法人日本保育協会創立四〇周年記念永年勤続保育所長被表彰者推せん要領(概要)
表彰予定人員
 表彰予定人員は、選考委員会において、選定された人員とする。
推せん基準
 被表彰者の推せんに当たっては、現に日本保育協会の会員(平成十五年三月三十一日現在)であり、長年、保育事業の発展に寄与し、その功績が顕著な者で、次の要件に該当する者を推せんすること。
 原則として保育所に通算二〇年以上勤務し、平成十五年三月三十一日現在、保育所長の職にあり、概ね六〇歳以上の者。
推せん者
 日本保育協会各都道府県(市)支部長
社会福祉法人日本保育協会創立四〇周年記念感謝状贈呈者推せん要領(概要)
贈呈人員
 選考委員会の議を経て、理事長が決定する。
贈呈基準
 現に日本保育協会の会員(平成十五年三月三十一日現在)または会員であった者で、長年、日本保育協会の事業の発展に寄与し、その功労が顕著で、次の各号のいずれかに該当する場合に、感謝状を贈呈するものとする。
(1)日本保育協会の組織の拡充強化に功労のあった者
(2)支部長または支部役員として多年に亙り、支部の事業の推進に功労のあった者
(3)多年に亙り、日本保育協会の事業に協力し、功労のあった者
(4)その他上記に準ずる者
推せん者
 日本保育協会各都道府県(市)支部長
 
推せん締切
平成十五年六月二十日(金)(支部長から本部に推せん書を送付する締切りの日)







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