――保育園総合保険Q&A(その8)――
☆地域活動事業等の参加者
Q この三月一日の改定では、地域活動事業等で、園児・職員以外の参加者の傷害事故を補償するには園児・職員とは別個に傷害保険に加入することとなりましたが、ここにいう「参加者」とはどの範囲までをいうのでしょうか。
A 行事に関係する者で、行事に参加した関係者すべて、と考えてください。たとえば保育園主催の園児運動会であれば、園児・職員、保護者や招待客等が行事の参加者であり、このうち園児・職員を除いた参加者の年間延人数(毎月の人数の年間合計)が「地域活動事業等参加者傷害保険」の加入者数となります。参加者であれば、行事参加中ならびにそのための往復途上(通常の経路であること)の事故や熱中症について、死亡・後遺障害、入院通院の補償がなされます。ただ、通りがかりにたまたま運動会をのぞいた人など、まったく保育園と関係しない人については行事参加者とはなりません。
Q 往復途上での「通常の経路」とはどういうことでしょうか。
A 住居から行事開催場所までの最短距離をいいますが、一般には社会通念上誰しもが選択する合理的な経路と考えるのが妥当でしょう。したがって園児の保護者がデパートで買い物をした後に運動会場に行った場合等では、住居と運動会場との通常の経路での事故とはいえず、途中の路上で事故に遭っても、保育園総合保険の補償は受けられません。運動会場に到着以降の事故については参加者として補償の対象になりますし、参加後まっすぐ帰宅すれば帰宅途中の事故も対象となります。
Q 園児・職員以外の参加者が、事故や熱中症ではなく食中毒に罹った場合などは補償できませんか。
A 園児や職員、学童は、ケガや熱中症に加えて食中毒や特定感染症を補償する契約もありますが、園児・職員以外の行事参加者については、ケガと熱中症のみが補償されます。ただし、食中毒などの原因が保育園にあることが明らかであるならば、保育園は法律上の賠償責任を負うことになり、保育園総合保険の賠償責任保険から治療費や慰謝料などの賠償金、場合によっては裁判費用などの支払いがなされることになります。
(医師の治療とは)
Q 事故や食中毒などで医師の治療を受けた場合には、障害保険金の請求を行うことができますが、鍼(はり)や灸(きゅう)など古来からの治療も対象になりますか。
A 整骨院(柔道整復士)の治療については「医師の治療」と見なします。また鍼灸師、あんま、指圧師、マッサージ師などの治療をうけた場合は、医療上の必要があって医師の指示に基づいたものであれば、「医師の治療」に準じてお支払いの対象となります。温泉病院での入院治療なども同様に考えてよいでしょう。しかし、整体術やカイロプラクチックなどは、医療とは認められておらず保険金のお支払い対象にはなりません。
(園外学童保育と保育園総合保険)
Q 放課後の小学校教室で、特定の学童を対象とした保育を行っていますが、放課後集合時間になっても児童の一人が集合せず、その後その児童は放課後の校内で遊んでいるうちに転倒負傷していたことが判明しました。学童の保護者から、学童は保育園の監督下にあるので、保育園総合保険の支払請求を行いたい旨、申し出がありました。保険金の支払いはできるのでしょうか。
A 園外保育の場合、いつの時点で保育園の管理下に入るか、が問題の起点となります。この場合は学童の集合時点をもって集合した学童に対し、保育園の管理責任が生じる、と解されます。従って集合まえの校内での学童の行為は未だ学校の管理下にあるものと解すべきであり、保育園の管理下にない事故については保育園総合保険ではお支払いの対象になりません。また、園内の学童保育であっても、保育士が学童を学校に迎えに行く場合などは、保育士が学校を学童とともに出た時点では保育園の管理下に入ります。
※総合保険についてのお問い合わせは、「有限会社日保協」まで。
TEL 03-5226-0025
FAX 03-5226-0026
――子ども総研から――
日本子ども家庭総合研究所
「小児保健研究」第六一巻第五号六六一−六六八、二〇〇二 「双子育児の実態と育児支援に関する研究」(第一報)−双子と単胎児の母親の比較を中心にして−北岡英子(神奈川県立衛生短期大学専攻科)、杉原一昭(東京聖徳大学)
育児に苦楽はつきものとはいえ、多胎児の育児ともなればその困難さは、想像に余るものがある。本研究はその双子育児の実態を把握し、支援のあり方を検討することを目的としている。調査は双子の育児グループに参加している父母と単胎児の父母を対象に行われ、その結果、双子の場合、母親の日常生活時間では睡眠や自由時間が単胎児より有意に少なく、育児に費やす時間が長かった。
また単胎児に比べて、平日と休日の区別がなく、心身ともに負担を感じていることが推察された。また、父親に生活の変化についてたずねたところ、「子どもの成長を楽しみ」とし、「毎日が楽しい」と思う反面、「父親として責任を感じ」ていた。これは単胎児の父親も同様であった。しかし双子の父親の場合は、「育児の負担」を感じ、「仕事がおろそか」になったと答えるものが有意に多く、父親自身協力しながらも負担を感じていることが明らかとなった。これらの結果から、双子の育児生活は夫婦ともに時間的拘束や心理的負担が大きいという実態が明確となった。
以上の知見から子どもに関わる専門家が、母親だけでなく父親へも育児に関する具体的な情報を提供したり、さまざまなサポートをうけることをすすめる等、支援していくことが必要であると今後の課題を提起している。
「小児保健研究」第六一巻第五号六六九−六七六、二〇〇二 「双子育児の実態と育児支援に関する研究」(第二報)−母親の希望サポートの分析を中心にして−北岡英子(神奈川県立衛生短期大学専攻科)、杉原一昭(東京聖徳大学)
双子育児の実態と育児支援に関する研究(第一報)において、双子育児は単胎児の育児にくらべて育児に費やす時間が多く、母親の睡眠時間や自由時間の確保が難しいこと、そのために心身ともに疲労困懸していることがわかった。本研究はその第二報であり、双子育児の実態を把握し、支援のあり方を検討することを目的に、双子の父母と単胎児の父母を対象に、それぞれの母親が求めているサポートと父親が実際に行っているサポートの評価を調べている。
その結果、双子の母親は「実体的」サポート(おむつを替える、外出時に同行するなど)、「情報的」サポート(授乳方法、抱き方など)、「情緒的」サポート(グチを聞いてほしい、大変さを理解してほしいなど)を単胎児よりも有意に必要としていた。
一方、父親のサポートに対する母親の評価では双子、単胎児の母親の半数以上が「もっと協力してほしい」としていた。それに対して父親自身は、どちらの場合も約六割が「協力したいが疲れてできない、時間がない」と答えている。
これらの結果から双子の妊娠が確定し多胎が判明した場合妊娠期からまず母親に対しての情報的、情緒的サポートが必要であること、出産後にはまず実体的サポートが必要であり、ことに父親の協力が求められていることが明らかであると指摘している。
注)「実体的」サポート、「情報的」サポート、「情緒的」サポートはSchetterのソーシャルサポート概念を活用しているとのことである。
「小児保健研究」第六二巻第一号六五−七二、二〇〇三 「看護職・保育職が関わった子ども虐待ケースと援助の特徴」 林有香、石川紀子、伊庭久江、中村伸枝、小宮久子(千葉大学看護学部)丸光恵(北里大学看護学部)、内田雅代(長野県立看護大学)
本研究は、子ども虐待の実態と、虐待ケースに対する援助を明らかにするために、子どもに関わる専門職である看護師保健師、助産師と保育職を対象に質問紙調査を行ったものである。
その結果、虐待を受けていた子どもは複数の種類の虐待(身体的虐待、心理的虐待、養育拒否・放棄)を受けており、特に成長発達の遅れのある割合が高かった。保育士から回答が有意に多かったのは、情緒行動的な問題がケースの半数以上にみられたこと。また看護師からは、視聴覚障害、脳波異常などの子どもの身体、精神面に重大な影響を与えるケースの回答が多く見られた。虐待を行っていた養育者も様々な問題(養育者自身が過去に虐待を受けた、近隣、友人、親類からの孤立、経済不安、夫婦不和等)を抱えていることが明らかとなった。
それに対応する各専門職の援助の特徴としては、看護職の場合、入院などによる安全の場の提供や基本的生活の保障のための援助が多い。しかし、子どもや家族が来院しなくなってしまうと継続的に援助することが難しかった。保健師の場合は、養育者や他施設から、育児上の相談にのり援助してくれると認識されていることが推測され、地域機関のネットワークのなかで継続的に援助を行っていることが特徴的であった。保育士の場合は、子どもに対する援助として、基本的信頼関係の確立や遊びの促進など、毎日の生活のなかで行う精神的援助を中心に行っており、家族に対しても、訴えや相談を傾聴し信頼関係の構築を行っていた。しかし、虐待を見極められなかった、どうしてよいか分からなかったという理由で対応できなかったという回答もみられたとしている。
今後の課題として、子ども虐待を早期発見するためには、子どもと接するなかで身体的、発達的、精神的に何か問題を感じた際に、多方面からアセスメントすること。今回の調査では看護師、保育士は保健師に比べて援助を継続している割合や、他職種と連携をとっていた割合が低く、早期対応をはかるためには他機関の役割を理解し連携をとりながら対応する必要性があるとしている。
(武島春乃)
「小児保健研究」第六一巻六号 七八二−七八七 二〇〇二「子どもが病気のとき家庭でどうする?」
−子育て支援の観点にたつ、親への啓発活動の検討−福井聖子
小児の救急体制が危機に直面している現在、子どもの病気に親は通常以上に敏感で、懸念している。平成十二年度「幼児健康度調査」で、急病で病院が見つからず困ったことがあると答えた親は一八%で、特に五〜六歳児では二二%にのぼっている。また、困った時間帯は平日夜間六七%、休日五五%であり、将に救急体制の整備は急務といえる。
本論文は、このような急病の場合ではなく、ごく普通の病気のとき、親がいかに的確に対応する力を育てるか、そのための講座を開きその効果を検討したものである。この親の対応力を育てることは、日頃から子どもの身体の状態をよく把握し、病気のとき親がどこまで対応できるかの判断を引き出し、できないとの判断も容易にする。ここから、通常の医療機関へ、あるいは救急への判断も生じ、救急体制の整備にも寄与するものと考え、ここに紹介する。方法は、一般健常児の親を対象に「子どもを家庭で見守るために〜病気への対応〜」という講座を開き、終了後アンケートをとっている。この講座の内容を紹介する紙幅の余裕はない。その結果を一言で表すと「病気のとき、親はどう対応するか」について、九割以上の親が「わかりやすい」「安心・やや安心」と答え、講座がよい効果をもたらしたとしている。育児における親の最大の役割は子どもを守ることであり、その主たるものが病気である。まず、親が守り、守りきれないと判断したとき専門機関を的確に受診することが、また、子どもを守ることにつながる。親は常に最前線におり、だからこそ専門機関は、親を支援しなくてはならない。保育所での病後保育を含め、保育士の方々のさらなる親への支援も必要であると考えここに紹介した。
(川井尚)
「日本公衆衛生雑誌」第四九巻第十一号 二〇〇二、「一一四二〜一一五一頁「産後一か月前後の母親に対する看護職による家庭訪問の効果」
−母親の不安と育児に対する捉え方に焦点を当てて−都筑千景・金川克子
近年、子育て支援対策として、各種の政策が実施されているが、育児不安の解消も大きな課題となっている。本研究は、保健師の新生児期の家庭訪問が育児不安の解消に役立っているのか評価することで、今後の効果的な新生児家庭訪問事業のあり方を検討する目的で実施された。初産婦の産後一か月前後の不安内容を知ることや家庭訪問時に期待される内容を知ることは、その後の母親と接するうえで有効と思われるので紹介する。
大都市郊外の母子保健法による新生児家庭訪問事業を実施している地域で、第一子を出産した母親を抽出し、介入の有無により研究訪問実施群と非実施群の二群に分け、育児不安の内容や訪問の効果について介入前と後の二回の調査により、まとめたものである。その結果、訪問を受けた母親は、受けない母親より不安の程度が有意に減少していた。また、訪問が全般的役立っていると評価している母親は九割を超え、「不安が減った」「自信がついた」「育児知識が増えた」等の九項目の評価内容で六割以上が役立ったと回答していた。
これらの結果から、新生児期の家庭訪問は、不安の減少と育児を楽しいと思う気持ちを増加させるなど有益なサービスであることが明らかとなった。また、今後の課題としてサービスの提供時期や対象者の把握方法、カウンセリングに重点を置くなどの訪問内容の転換が、今後の課題として提起されている。
(斉藤進)
石川賢司
イラスト・松村隆
ある日、妻がスキーに行こうと言い出した。テレビで見てから、あきがやりたがっているのだという。もっとも私も妻もスキーの経験はあまりないので、スキーが趣味である義兄の一家とともに行くことになった。
この話が出て以来、あきはずっと楽しみにしていて、スキーはもちろん、いとこの亮ちゃんやまーちゃんと一緒に出かけることが持ちきれない様子だった。
当日は、早朝の出発にもかかわらずハイテンションで、車内では大変な騒ぎようだった。スキー場に到着し、着替えてゲレンデに出ると、一面の雪景色を見てあきは大はしゃぎし、雪の上を転がり回って、スキーのことはすっかり忘れたかのようだった。そこへ、同じ年くらいの子がソリを引いていく姿を見て、あきは「ぼくもソリがしたい!!」とねだり始めた。ふと見ると、ゲレンデの脇にソリ滑り用のコーナーがあり、たくさんのソリが斜面をスピードをつけて降りてきていた。結局、いとこの二人も加わり、みんなでソリ滑りをすることになった。
まず、二人乗りのソリを借りて、あきと一緒に滑った。ソリを持ち、あきの手を引きながら、滑りやすい斜面を登りきったら、三〇メートルくらいの斜面を一気に滑り降りていく。スピードは意外に速く出るし、途中にはでこぼこがあって、下手をすると転倒するリスクもある、また、他の人にぶつからないように気をつける必要もある・・・などと神経を遣って滑る私に、ソリが下で止まると、雪まみれになったニコニコした顔で「もう一回、やろう!」と言いながら、私の手を引っ張って斜面を登っていこうとする。こんな感じでいとこの二人もあわせた三人が交代で斜面を登って滑り降りるのにつき合ったため、汗だくになってしまった。
ひとしきり楽しんだ後、今度は雪遊び。誰かが作った大小の雪の玉を見つけたあきは、いとこと一緒にそれをせっせとソリに乗せ、引いて運ぶ遊びをしていた。
午後には、同い年のまーちゃんがスキー板を借りたことに触発されたのか、まーちゃんが滑った後、板とストツクとシューズを借りる、とあきが言い出し、ようやくスキーを体験することになった。あきの体をしっかり支えながら滑らせると、最初は、へっぴり腰で「こわいよー、助けてー!」との悲鳴を上げていたが、やがて慣れると、まーちゃんから返すように催促されても、嫌がってだだをこねていた。スキーが気に入ってしまったようだ。
スキーについては、一回すれば飽きるくらいに妻も私も考えていたが、毎年すれば趣味で楽しめるようになるかも・・・、と新たな計画が持ち上がっているところである。
事務局から
▽一昨年にスタートした保育問題検討委員会は今年六月に任期が満了となる。現在は平成五年に日本保育協会が発表した「保育所の機能を強化するために」を見直し、これからの保育の方向を具体的に提案するための協議を続けている。五月に開催される理事会において報告し、本誌にも掲載を予定している。これは結果ではなく、ここで答えを出すものでもない。公開されたのちには、皆さんの率直なご意見をお寄せいただきたい。
日保教 活動日程
3月(報告)
6日(木)9時〜11時 全国保育関係議員連盟世話人会との懇談会〈千代田区:自由民主会館〉
7日(金)13時30分〜15時30分 日本保育協会理事会〈千代田区:ルポール麹町〉
17日(月)11時〜13時 日本保育協会理事会〈同上〉
17日(月)13時30分〜15時30分 日本保育協会評議員会〈同上〉
26日(水)14時〜17時 平成15年度保育所職員研修企画委員会〈日本保育協会資料室〉
4月(予定)
21日(月)15時〜22日(火)12時 日本保育協会青年部定期総会〈渋谷区:こどもの城研修室〉
23日(水)13時〜24日(木)11時30分 日本保育協会新潟県支部第47回定期総会並びに第39回園長研修会〈新潟市:ホテルオークラ新潟〉
平成15年度 厚生労働省・日本保育協会の共同主催による研修の初回
保育所乳児保育担当者研修会の日程が決まりました。
期間:平成15年6月24日〜27日
場所:千葉県浦安市 東京ベイホテル東急
3泊4日の全員合宿方式で行います。
*注)詳しい実施要領は4月上旬、都道府県・指定都市・中核市児童福祉(保育)主管課に郵送いたします。申し込み及び問い合わせは4月下旬から各主管課へどうぞ。
申込〆切は5月下旬です。 |
|
|