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―― 子どもと食生活(31) ――
和食のすばらしさを幼児期から
――平成十三年度食料需給表を中心に――
武蔵丘短期大学学長 実践女子大学名誉教授
藤沢良知
はじめに
 前号では、厚生労働省の国民栄養調査成績について述べたが、国民栄養調査は、食生活といった消費面からの統計であるのに対し、ここに述べる食料需給表は、生産面からの食料供給統計であり、両者は二大食料統計といわれるものである。
 今回は、平成十四年十二月に農林水産省から平成十三年度食料自給レポート・食料需給表が公表されているが、これをもとに食料需給の実態をみてみたい。
 食料需給表はフード・バランスシートともいわれ、FAOの統一的な作成の手引に基づいて毎年度農水省が作成。FAOやOACDに報告されている。
 作成方法は、わが国で供給される食料の生産から最終消費に至るまでの総量を明らかにするとともに、国民一人一日当たりの供給純食料及び栄養量を示したものであり、食料供給の全般的動向、栄養量の水準、食料消費構造の変化などを把握するのに活用されている。
 
表1 食料需給表の算出方法
 
 このように、供給される純食料を求め、更に食品成分表の栄養量を乗じて供給量からみた栄養量が算出されている。(表1)
 食料需給表は、世界のおよそ一六〇か国でもほぼ同じ方法で作成されており、国際比較やその各年変化、各国の栄養水準などをとらえることができる。
 
表2 国民1人・1年当たり供給純食料
(単位:kg)
  穀類 うち米 うち
小麦
いも類 豆類 野菜 果実 肉類 鶏卵 牛乳・
乳製品
魚介類 砂糖類 油脂類
昭和
50年度
121.5 88.0 31.5 16.0 9.4 109.4 42.5 17.9 13.7 53.6 34.9 25.1 10.9
平成
12年度
98.5 64.6 32.6 21.1 9.0 101.5 41.5 28.8 17.0 94.2 37.2 20.2 15.1
平成
13年度
97.1 63.6 32.1 20.1 9.2 101.0 44.1 27.7 16.7 93.0 38.7 20.0 15.1
 
一、国民一人当たり供給純食料
 平成十三年度の食料消費の動向をみると、米の消費が減少するという従来からの傾向が継続する一方、BSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)発生等の影響により肉類の消費量が減少し、代替需要により魚介類の消費量が拡大した。(表2)
 
二、供給栄養量
 国民一人一日当たり供給熱量は、平成十三年度で二七八〇kcal、たんぱく質八六・二g、脂質八三・九gとなっている。(表3)
 最近は景気低迷を受けて供給栄養量の減少傾向がみられる。
 供給エネルギーに占めるたんぱく質、脂質、炭水化物の割合であるPFC熱量比率をみると、昭和六〇年度に比べ、たんばく質、脂質エネルギー比が増加し、食の洋風化傾向の進んでいることを示している。
 なお、脂肪エネルギー比は成人で二五%以下にすることが目標とされているが、平成十三年度は二八・八%と過去最大の数値となっており、適正水準を超えている。このため、脂質を多く含む品目の消費減と、米など炭水化物を多く含む食品の消費増が期待されている。(表4)
 
表3 国民1人・1日当たり供給栄養量
  熱量
(kcal)
うち
米の比率(%)
たんぱく質
(g)
うち動物性
比率(%)
脂質
(g)
昭和60年度 2727 28.0 82.1 50.2 75.4
平成2年度 2787 25.9 85.5 52.9 79.7
平成12年度 2800 23.8 86.8 55.1 84.2
平成13年度 2780 23.7 86.2 55.6 83.9
 
表4 
たんぱく質、脂質、炭水化物の供給熱量割合
(PFC熱量比率)
(単位:%)
  たんぱく質(P) 脂質(F) 炭水化物(C)
昭和60年度 12.7 26.1 61.2
平成2年度 13.0 27.2 59.9
平成12年度 13.1 28.7 58.2
平成13年度 13.2 28.8 58.0
 
三、食料自給率
 食料自給率は、国内の食料消費について国産の食料でどの程度賄えているかを示す指標であり、特定の品目について、その自給度合いを重量ベースで示す品目別自給率、基礎的な食料である穀類の自給度合いを示す穀物自給率、各品目を基礎的な栄養素であるエネルギー、または経済的価値である金額という共通の物指しで総合化して、食料全体の総合的な自給度合いを示す総合自給率とがある。このように食料自給率は三つの示し方がある。
 このころ、通常わが国の食料自給率として最もよく使うのがエネルギベースの食料自給率(供給熱量総合自給率=熱量自給率)である。
 
図1 我が国の食料自給率の推移
(飼料)「食料需給表」
 
 わが国の熱量自給率は、昭和六〇年は六三%、平成二年は四八%であったが、その後減少傾向をたどり、平成一〇年度以降四〇%となっている。(図1)
 特に自給率の低い食料としては、平成十三年度で大豆五%、小麦一一%、砂糖三二%といった状態である。
 このようにわが国の食料自給率は、主要先進国中最低水準である。平成十二年度でアメリカ一二五%、英国七四%、フランス一三二%、ドイツ九六%、オーストラリア二八○%となっている。
 また、世界一七五の国・地域の穀物自給率(平成十二年度)は、日本は一二八位、OECD加盟の先進国の中では、三〇ヵ国中二九位でアイスランドに次ぐ低さで、人口一億人を抱える国の中では最下位となっている。
 
四、フード・マイレージと食料自給率
 フード・マイレージとは、英国の消費者運動家ティム・ラングが一九九四年に提唱したもの(Food Miles)で、生産地から食卓までの距離が短い食料を食べた方が、輸送に伴う環境への負荷が少ないであろうという仮設を前提とした概念である。
 具体的には、輸入相手国からの輸入量と距離(国内輸送を含まず)を乗じたもので、この値が大きいほど地球環境への負荷が大きいという考えである。
 平成十二年で一人当たりのフード・マイレージは日本が四〇〇〇トン・kmであるのに対し、韓国は三二〇〇トン・km、アメリカ五〇〇トン・kmと大きな開きがある。
 もとより二酸化炭素の排出量等は、距離だけでなく、トラックの輸送や海運等の輸送手段にもよるところが大きく、フード・マイレージが大きいことのみが環境負荷が大きいとは言えないにしても、地球温暖化要因である二酸化炭素の排出抑制、輸入食料・肥料による国内の窒素供給過多の抑制といった面からも食料自給率の向上は重要である。
 最近食と農の距離の拡大、食農不一致の傾向が指摘されているが、農業は食業といった視点にたった「食農一致運動」や「地産地消」といった生産者の顔の見える関係を深めたいものである。
 
五、幼児期からの和食の奨め
 二〇世紀の後半から、二一世紀にかけてのわが国の食の様変わりは世界でも例をみないといわれる。特にこのところ次第に食の洋風化が進んでいるものの、世界に冠たる平均寿命・健康寿命を誇っている。
 特に先進国の中でも心筋梗塞やがんによる死亡率は最も低い状態にあるが、食と関連づければ、洋風化の中でも根強い人気のある和食がその決め手となっているように思われる。
 WHOもバラェティとバランスに優れた日本食のすばらしさに注目している。
 米を主食として位置づけ、魚介類・豆類・野菜類を主菜・副菜として組合せてとることのできる和食は、良質のたんばく質に富み、炭水化物や食物繊維が多い反面、脂肪や単糖類・二糖類の摂取が比較的少なく、バランスのとれた健康食としての評価が高まっている。
 わが国は生活習慣病の時代といわれるが、この生活習慣病予防のためには、食の占める意義と役割は極めて大きいものがある。
 そのためにも、食習慣形成期にある幼児期から、ごはんを中心とした和食を毎日の保育所給食献立の基本に位置づけ、主食+主菜+副菜のバランスのとれた毎日の給食献立を通して健全な食習慣の基礎が養われるようにしたいものである。
 資料:農林水産省、平成十三年度食料自給率レポート・食料需給表、平成十四年十二月
 
 
 
立つ鳥跡を濁さず
 昭和の初期においても、経済的に成り立たなくなった離島の人達が集団移住を余儀なくされ、今まで築いて来た町を捨て島を離れ、島は無人島になってしまったということがあった。
 女性の就労が進む中、待機児童数が一向に減少しない都市部では、保育所の数を増やすのみならず、選ばれる保育所になることへの努力を続けている。逆にどんなに努力しても、先の例の様に子どもそのものがいない過疎地では、経営的に成り立たない状態まで追い詰められている。
 特別保育事業を次々打ち出し、社会の需要を満たすと共に経営の安定化につなげようという意図も大切だが、あくまでも子どもがいての話である。どんなに良い保育所でも、子どもがいなかったら成り立たないのだ。
 過去において、保育所が少なかった時代、適正規模・適正配置ということが言われ、過当競争をなくす意味からも乱立は避けられて来た。もし新規保育所の設立に制限を設けていなかったなら、少子化時代の保育所の混乱は、もっとすごかったに違いない。
 話は唐突だが、関連性はある。
 ネコを飼っていると称する人でも、ネコの排泄の世話をきちんとしている人は、めったにいない。排泄をもよおしたら外でしておいでと外に出し、どこかでやって帰って来る。可愛いからと餌は与えるが、決して排泄の世話はしようとしない。これでは、餌付けとは言えても飼っているとは言えないだろう。
 「飼う」という行為は、最初から最後まできちんと対処し、いいとこ取りをせずに、責任を全うしてこそ言えることなのだ。
 社会福祉法人の経営の在り方についての研修会は多々ある。「これからの社会福祉法人の在り方」とか「望まれる社会福祉法人」など、尻を叩き、いかに存続させるかに重きをおいた内容となっている。もちろんそれなりの補助をもらいながら望ましい活動をしていない法人は、大いに奮起しなければならない。しかしいくら奮起しても、需要がなくなればやめざるを得ないのだ。
 ただここで考えねばならないことは、やめるに当たっての心構えであろう。整然と、職員・並びに地域住民になるべく迷惑のかからないような状態で引き下がることが大切だと思う。そして正しくそれを実行することが、本当の意味の『経営者』たるべき姿ではないだろうか。そのためには、やめるに当たっての必要な手続き、手順のノウハウ、合併のやり方等々、知っておくことは大切である。これからの研修会では、このような内容をぜひ考えて頂きたい。
 かつての日本の教育では、いかに生きるべきかと同時に、いかに死ぬべきかを教えてきた。不様な死に方をすれば、「なんだその死に様は」と軽蔑した。死に方にこだわると、不思議とそれは生き方に跳ねかえってくる。
 今の時代、死に方にこだわらず、また生き方ではなく「生き様」にこだわるから、かえって命を粗末にしているようでならない。物事の初めと終りにこだわる人は、途中経過にも必ずと言っていいくらいこだわるものだ。だから引き際を考えることは、必ず日頃の運営の在り方を考えることにもつながってくる。決して無駄にはならない。
 保育所の関係団体の中にも、整理統合のための相談窓口を設けるなど、適切なアドバイスが出来るようにすべき時代がきていると思う。
 いかがだろうか皆様は。
(夢井仁・フリーライター)S







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