3. 当日までの話し合いの過程
10月5日 第1回ミーティング
<テーマ>取り上げたいテーマを挙げた。以下が挙がった意見
・介助について
・障害者の自立生活について
・障害者の自立生活を実現する会(以下、実現する会)の活動内容について
・障害者を“かわいそう”と思うことについて
・地域、障害者の親、障害者当人の関係性について
・障害者と学校教育について
<フォーラムに呼びたい人>以下が挙がった意見
・統合教育に興味のある先生
・障害者学級の担当の先生
・養護学校の先生
・障害者の親
・障害者当人
10月17日 第2回ミーティング
※授業案レジュメ(金城南さん作)提出
第一回ミーティングで挙がった意見を参考に授業案を作成してもらった。その授業案をたたき台に授業内容についての具体的な意見を出し合った(以下、挙がった意見)
<授業時間>
・10時間程度の連続授業
・土日の課外授業も考える(学校外の施設の訪問など)
<授業内容>
・初めのステップとして、生徒が障害者をどう捉えているかを聞き出す→ここから問題点を掴む
・障害者を授業に呼ぶ
・複数人の障害者に来てもらう。いろんな障害者がいるということが分かるから
・一度会っただけでは理解できない。
・毎週違う障害者に来てもらっても、理解することはできない。同じ障害者に継続的に関わってもらう必要がある
・障害者の自立生活について話す
・障害者施設訪問
・生徒には将来の選択肢として考えてもらいたい。介助の実践まで目標にしなくてもいい
・介助の方法を教えるのではなく、一緒に生活をする方法を教えたい
<授業方針>
「心の壁を無くそう」
<分科会の発表>
・自立生活について
・分科会参加者に質問。「自立生活という言葉を聞いたことがあるか?」
・実現する会の活動紹介
・介助をすることで変化した自分たちの気持ちを話す
・障害者との交流
・障害者の自立生活についての思いを聞く
・分科会参加者との対話の時間を設ける
11月9日 第3回ミーティング
授業で伝えたいことを紙に書き出し、意見をカテゴライズした
・分科会の発表についての意見を紙に書き出し、意見をカテゴライズした
※分科会の発表、授業案、それぞれ分担してミーティングを行い、次回の全体ミーティングまでに意見をある程度まとめてくることにした
11月22日 第4回ミーティング
※授業案レジュメ提出
授業案を分担したグループがレジュメを作成。レジュメに沿って説明した後、意見を出し合った
<授業の流れ>
障害者と健常者との違いを理解→違っても共に生きていけることを理解
(以下、挙がった意見)
・理解とは具体的な発見の積み重ねであることを、レジュメに補足するとよい
<授業案>
対象:小学校高学年
導入:イラストを用いて、障害者に対するイメージを生徒から聞きだす。出された意見を「障害者マップ」にまとめる
展開(1):障害者から話を聞く。話を聞いた上で生徒に意見を出させ、新たに「障害者マップ」を作成。最初に作成した障害者マップと比較
展開(2):グループに分かれ、障害者と交流。事前に各生徒に「発見ノート」を配り、交流時間内で発見したことを記入させる。交流後、「発見ノート」を元に意見を出させて、「○○さんマップ(障害者個人マップ)」にまとめる。出来上がったマップをグループ毎に発表
発展:障害者とのメール等での交流
(以下、挙がった意見)
・見る者に強いイメージを持たせるイラストの使用は避けるべき
・知的障害者や精神障害者はイラストで示しにくい
→実現する会で扱えるのは身体障害者に限られる。他の障害者についての授業は提案すべきでない。よって、イラストは身体障害者を示すものを用いる。
・提案する授業案では、障害者とは身体障害者をさすことを、レジュメに補足するとよい
・「○○さんマップ」発表の前に、グループ内で話し合う時間を設けるとよい
・展開(3)として、作成した全てのマップを比較し、生徒の意識の変化を確認する時間を設けるとよい
※分科会導入案レジュメ提出
分科会の発表案を担当したグループがレジュメを作成。レジュメに沿って説明し、意見を出し合った
<配布資料>
自立生活をしている、あるいはしようとしている障害者へのインタビュー回答
インタビュー内容:なぜ自立生活をしようと思ったか、実際に自立生活をしてみてどうだったか(あるいは自立生活に対する期待は?)
<導入>
実現する会流の自立生活の捉え方、介助とは何かを説明する
(以下、挙がった意見)
・(原稿「・・・障害者の代わりに出来ないことを介助する・・・」について)「出来ないこと」というのはどうか。やろうと思えば出来るが、介助者に頼んだ方が効率的だから介助を頼むのだ
・(原稿「・・・障害者がワガママを言える環境がある・・・」について)「ワガママ」という言葉はよくない。「やりたいことをやれる」に変更
・「福祉」という言葉について考えるべきではないか。障害者問題は「人権」というジャンルで取り扱うべきではないか
11月24日 第5回ミーティング
実際に総合的な学習の時間の授業を行ったことのある、筑波大学心身障害学研究科ヒューマン・ケア科学専攻の院生に意見を頂いた
※授業案レジュメ第二弾提出
前回のミーティングで出た意見を参考にレジュメを訂正。レジュメに沿って説明し、意見を出し合った
(以下、挙がった意見)
・対象学年は適当か。小学生には難しいのではないか
・抽象的概念の提示は理解が難しい。具体的な設問をする必要がある
・障害者との交流をする際には、介助者が生徒と障害者の間に入り、有意義な交流が出来るようサポートをするとよい。また介助者の障害者への接し方が、生徒にとって接し方のヒントになるのではないか
・生徒たちの授業目標への達成度を測るポイントを考えておく必要がある
・授業をする側で意見をまとめることは厳禁。生徒が与えられた意見を鵜呑みにしてしまうため
・間違った方向へ意識が変化してしまった生徒へのフォローアップを考える必要がある
(分科会の発表に関する意見)
・発表の最後に、障害者から交流の大切さ、また交流の方法についての意見を言ってもらう
・発表の中で、提案する授業の模擬体験として、実際にマップを作成してもよい
・分科会参加者から出るだろう意見を予測し、それに対する回答を考えておくとよい
11月26日 第6回ミーティング
※授業案レジュメ第3弾提出
前回のミーティングで出た意見を参考にレジュメを訂正。レジュメに沿って説明した。
※分科会発表の流れをレジュメにまとめたものを提出
分科会の流れをレジュメに沿って説明。流れを確認しつつ、補足点を挙げた(以下、補足点)
・障害者から分科会参加者へ向けたメッセージを言ってもらう
・交流の方法について
・統合教育のための環境の整備について
・発表の最後に、なぜ、私たちが障害者と関わりつづけるのかを述べる(意見をまとめたものを当日配布資料として用意する。
4. 当日の意見交換
★障害者マップについて
「(最初の)障害者マップ」;
・障害者に対する偏ったイメージを固めてしまうのではないか
「(障害者の話を聞いた後での)障害者マップ」;
・話を聞いた直後では、なかなか意見がまとまらない
「○○さんマップ」;
・個人マップを作られて嫌な気分になる障害者もいるのではないか
・周囲に障害者がいない今の社会で「障害者マップ」を作ることは、ある意味“挑戦”である。自分の中の障害者観を否が応にも確認することになるのだから
・障害者だけがその人間像を固められるのはフェアじゃない。健常者も自分像を見直すべき
・「障害者マップ」作成後に、「自分マップ」「友達マップ」を作成してはどうか
★自立生活をする障害者を取り上げたことについて
・養護学校での交流との違いを出すとよいのではないか。例えば、障害者と生徒の話し合いの話題に地域の話を取り上げるなど
・授業の流れの中で「共生」、「自分らしくあっていいという発見」という結論はどこに持っていくのか?
・カリキュラムを通して自分たちが変わり始めたことを、多くの人にも体験してほしい。
★総合的な学習の時間について
・障害者の生活の様子を伝えることに主眼を置いたのはよいと思う。車椅子体験や一時間だけの障害者の話では、障害者の生活の様子は伝えきれない
・授業に関わる人は障害者をよく知る必要がある
・現場の教師は忙しいので、介助者のサポートは重要だと思う。
・人権という部分での子どもたちに対するアプローチが必要。なぜ自立生活をしているのか、人権教育も含めば、子どもたちも正しく理解するのでは?
・おもしろいと思うが、実際に行なう先生の理解がないと成り立たない。そこをどうしていくか。
・福祉の分野の授業ははとても難しい。実際にやってみて、そこで感じたことをそのままにせずに、ぶつけ合える場所があることが大切であると思う。
☆私たちが障害者と関わり続けている理由。
→介助をすることでその人の生活が成り立つ。障害者との関わりを楽しみとしている。障害者自身から学ぶことがたくさんあり、またそこで自分を見つめ直すことができる。
5. 反省点
(1)授業案に関して
・現実化していきたいと思う。
現実化するにあたっての問題点と対策
・現場の教師とのコミュニケーションを図ることが重要。前年度からの打ち合わせなど
・「いばらきマナビィ・ネット」への登録
・障害者の自立生活を実現する会に、今後、継続的に総合的な学習の時間に取り組んでいけるだけの受け皿があるか?→担当者を決める、他の団体との連携を図る
・授業に協力してくれる障害者が見つかるか?
・教師と学生との間で調整を図る役を担うコーディネーターの存在が絶対必要
・授業案を再考する段階で、地域の人たちの意見を伺うとよい
・授業案の内容について、もっと練っていく努力をする。
再考するにあたっての留意点
・障害者を扱うにあたって、「人権」という視点も必要だと思う
・意図しない方向へ意識が変化してしまった生徒に対するフォローアップ体制について、もっと考える必要がある
・生徒の達成度を測る指標を設定するとよい
・授業内容の発展の可能性は示した。継続した取り組みの中で、地域での障害者との交流、障害者問題へのアプローチを行っていけるとよい
(2)分科会発表に関して
(よかった点)
・伝えたいことを伝えられたと思う
・インタビュー回答をまとめたものや、「障害者マップ」のサンプルなどを使ったので、参加者の理解のための手助けになったと思う
・自分自身の言葉で思いを伝えられたのがよかった
・障害者がスタッフとして発表に参加したのがよかった
・資料の準備など、スタッフの動きはよかったと思う
(問題点)
・参加者に「障害者マップ」作成をしてもらった際、こちらが望むような意見が出なかった。説明が不十分な面もあったし、授業案を考え直す必要もあるだろう
・発表の時間が足りなくなってしまい、参加者からの意見を十分に聞けなかったのが残念
・参加者の意見をうまく議論に生かせなかった
・現場の教師の参加がなかったのが残念。教師に授業案の実現性についての意見を伺いたかった
・事前に発表の概要を参加者に知らせておければ、より有意義な議論ができただろう。
(3)その他、反省点
・伝えたいことは初期の段階から決まっていた。スタッフの間に共通した思いがあったのがよかった
・分かりやすい発表になるように、資料、サンプルを用意したのはよかった
・大学の教官や院生、吾妻中の教員にアドバイスをもらいに行くなど、スタッフ以外の人から話を聞く機会を持つことが出来た
・担当者全てが集まれる機会が少なく、準備の進行が遅れがちになってしまった
・発表者がなかなか決まらず、リハーサルを行なえなかった。
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