福祉分科会
スタッフ:
小野翔、鈴木徹、川瀬健太郎、里内龍史、南崎恵、篠田愛、櫻井侑子、芝田若葉、平木真理
コーディネーター:
松井由佳
アドバイザー:
飯塚拓也さん(竜ヶ崎幼稚園長)
スペシャルサンクス:
徳田克己助教授研究室の皆様、石元洋子さん、金城南さん、中嶋千尋さん、草間多佳子さん、菊池秀之さん
コンテンツ
1. はじめに
2. 授業提案内容
3. 当日までの話し合いの過程
4. 当日の意見交換
5. 反省点
6. コーディネーターの感想
福祉分科会報告
1. はじめに
地域で自立生活をする障害者の介助をするという目的で、多くの学生と地域の人々が集まっている団体が、「障害者の自立生活を実現する会」である。この団体は、定期的な勉強会を実施しており、「伝える」ということにも力を入れている。もうすでに障害者とともに小中高校生への授業を行なった経験があった。しかし、学生が一から企画をして学校教育に参加するという機会はまだなかった。前々からつながりのあったこともあり、働きかけたところすぐに強力なチームができた。そして多くのミーティングを重ねて、「学生が」「介助者という立場で」行なう授業という新しい形の伝え方が完成したのである。
地域で自立生活をしている障害者の介助をする団体。筑波大学、県立医療大などの学生と地域の人々とが一緒に活動している。メンバーは「自立生活とは、障害者が介助者を募りその介助者を使って地域で生活すること。」「障害者が主体となって、やりたいことができる環境を作りたい。」といっている。
里内龍史さんの紹介
滋賀県で生まれ、現在茨城県の神立で自立生活をしながら、ノーマライゼーションやバリアフリーのための障害者運動をしている。脳性まひ身体障害。
飯塚拓也さんの紹介
2. 授業提案内容
「害者の自立生活を通して」こんな人も、あんな人も、そんな人も〜
○方針
「心の壁をなくす」・・・一方的なやさしさではなく、相手を理解した上での思いやりや助け合いができること「相互扶助」
○授業の流れ
障害者と健常者の違いを理解
「人間の多様性を認め合う」
→時間を共にした上での、具体的な発見の積み重ね
→違っても共に生きていけることを理解「共生」
○授業案 対象:中学二年生〜 ※ここでは障害者とは身体障害者と設定
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授業案 |
発表 |
導入 |
障害者に対するイメージを聞きだす
*イメージでの『障害者マップ』の作成
・生徒に車椅子に乗った人のイラストを見せる
→障害者に合わせたイラストを用意。高齢者、感情を強く表すイラストは避ける。できれば中性的なものを。
・イラストから障害者の一日の生活をイメージしてもらい、意見をひとつずつ、吹き出し型の紙に書き出させる
→いくつかの設問をするとイメージしやすい
(例)趣味、住んでいる所など
・イラストの周りに出た意見を貼り付ける
→同じような意見は近い場所に貼る |
→会場にイラストの一例を紹介。イラストを選ぶ上での注意点を付け加える
→「お風呂はどのように入っていると思いますか?」「一日の一番の楽しみは何だと思いますか?」など、参加者に問いかけ、口頭で答えてもらう
質問の具体性が、生徒のくいつきを左右するということを伝える |
展開(1) |
障害者から話を聞く
→2〜3時間の連続したコマの授業がよい
・障害者に自らの生活(自立生活の様子、趣味など)について話してもらう
※生徒に障害者の生活についての質問をあげてもらい、挙がった意見について、障害者各人に実際の様子を説明してもらってもよい
→障害者観が偏らないように複数人の障害者を呼ぶ
→事前に障害者に、前回の授業で作った『障害者マップ』を見せるとよい
・障害者の話を聞いた後、再び障害者の様子を吹き出し型の紙に書き出させる
・最初の授業で用いたものと同様のイラストの周りに、出た意見を貼り付ける
→同じような意見は近い場所に貼る
・最初の授業で作成した『障害者マップ』と比較し、どのようにイメージが変化したかを確認
→教師側で話をまとめないこと
→一辺倒な障害者観ではなく、幅のある障害者観になることを目指す |
→障害者を理解するには、実際に会って、触れて、話すことが重要であると説く。共に時間を過ごす中で、自らつかんでいくことが、大切。また、障害者を呼ぶことを考えると、来る回数はより少なく、いる時間はより長くしたほうが現実的であることを説明。
→里内さんに自立生活について話してもらう。具体的な生活の様子(起床、食事、就寝など)も話してほしい。
→複数の障害者が呼べない場合は、事前に何人かの障害者に対してインタビューを行い、授業の中で紹介するという方法をとることを提案。障害者と接する機会のない生徒にとって、来てもらう障害者のイメージは強烈であるため、障害者観が偏りやすいことを注意する
→会場に吹き出し型の紙を配る
→里内さんの話の中から分かった、障害者(里内さん)の様子を書き出してもらう
→紙を回収出た意見を読み上げながら、イラストの周りに実際に貼っていく。
『障害者マップ』完成形を披露
→障害者に対する偏ったイメージがあることに気付いてほしいと思い、このような授業を提案したということを伝える。
→教師側が言ったことを鵜呑みにしてしまうからだということを説明する |
展開(2) |
障害者と交流する
→2〜3時間の連続したコマの授業にする
・各生徒に『発見ノート』を渡しておき、交流をしながら新たに気付いたことを書き記してもらう
→情緒的なものではなく、具体的な発見。食事の仕方、会話の仕方など
・生徒を5人程度のグループに分け、各障害者に割り振る(各障害者に介助者がつく)
→障害者をよく知ってもらうために担当障害者の交代は行なわない
・給食を一緒に食べる(食事介助含む)、一緒に遊ぶ、周辺を一緒に散策するなど
・障害者との話し合いの時間を設ける
※話すテーマを与えてもよい
(例)恋愛について
→対話の時間は長めにとること
→「介助」「自立生活」といったテーマは避け、身近なテーマを選ぶ
*『○○さんマップ(障害者個人マップ)』の作成
※対障害者ではなく、対○○さんという認識に至ることを目指す
・生徒に担当の障害者の似顔絵を書かせる
・吹き出し型の紙を配布。『発見ノート』をもとに、担当障害者の様子を紙に記入させる
・似顔絵の周りに出た意見を貼り付ける
・グループ毎に、自分たちの作った『○○さんマップ』を見て、グループ内で出た意見について話し合わせる
・グループ毎にマップの発表※様々な障害者がいるという認識に至ることを目指す |
→里内さんの例で説明。
「左から食べ物を入れたほうが食べやすい」など
→情緒的なものだと「関わってみたら、思ったより面白い人だった」というような感想で終わってしまうので注意。また、障害者の個人評価になってしまう恐れも。何ができて何ができない(やらないほうがいい)のかを知ることが、理解につながっていくということを伝える
→介助者が進行役も兼ね、交流の手助けをする。介助者と障害者の関係を見て、学ぶ部分も大きいことを説明
→話し合うことが、相手を知るために重要であると説く
→より活発な話し合いにするために、事前に障害者、介助者、現場の教師で、話すことをいくつかピックアップしておくとよい。
→似顔絵の一例(里内さん)を紹介。
→「電車でGO!」で出た意見を紹介。紹介する意見は、事前に吹き出し型の紙に書いておく
→吹き出しに書かれる意見や、発表の際に出る意見の中に、ねらいとは違う方向のもの
(※)が出てきた場合の対応について
(※「障害者はかわいそう」「障害をもっているのに偉い」「障害を持っていて大変そう」などの意見)
一日程度の交流では、一時的に上記のような意見をもってしまうのは仕方のないこと。授業終了後も、交流を続けていくことが大切 |
発展 |
・障害者とのメール等での交流
→他のグループの担当した障害者に対してでもかまわない
授業で作成したマップをコピーし、障害者に送る |
→メール等での交流を通して、生徒が障害者を取り囲む環境に興味を持った場合、アクセスを薦める団体の紹介。実現する会、美咲子の会、チームのりこ、ほにゃらなど |
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○補足
・全体を通しての注意点を述べる
「障害は個性」「障害者は“かわいそう”ではない」などと、指導する側が結論を出さないこと。長い時間をかけて交流する中で、生徒自身が自ら学び取って行ってほしい
・里内さんが現場の教師へ注意点を述べる
《概要》養護施設にいた頃、交流授業だということで、年に一回、近くの普通学校の生徒が養護学校を訪れたが、本当の意味での交流はできなかった。ただ、交流すればいいという考えではいけない。効果的な交流のやり方、交流の目的をよく考えるべきだ
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