農業分科会
スタッフ:
安島千穂、松本明日香、横山このみ
コーディネーター:
真木彩子
アドバイザー:
河口宗央さん
スペシャルサンクス:
久松達央さん、茎崎第一小学校 関口幸男先生
コンテンツ
1. 授業提案内容
2. 当日の流れ
3. 当日の意見交換
4. 反省点
5. 発表者の感想と今後の目標
農業分科会報告
1. 授業提案内容
主旨
テーマ:農業と教育
食は生活の基盤である。よって食を支える農業は生活のあらゆる面と関連している。政治、経済、環境問題、倫理問題などさまざまである。この多面的な職業である農業はぜひ教育の場に持ち込むべきであると私は考えるが、実際の農業教育(食農教育と言い換えても差し支えない)は生徒に何を学ばせたいのか、結果に何を期待するのかがはっきりしていないこと、時間的、場所的な制約に縛られるなど問題が多いため部分的な活動で終わってしまうようである。本プレゼンテーションは上記を背景に、私が考える農業教育プランを提案し、一貫した農業教育について討論することを目的とするものである。
具体的授業案
●実習全体の計画
(計18時間)4月〜10月 授業は月3回の計算、ただし観察・手入れは毎週
(1)ナスの栽培方法(教室) ・・・1時間
(2)良い畑の土とは(教室) ・・・1時間
(3)畑の土作り(実習) ・・・2時間
(4)定植(実習) ・・・2時間
(5)日本の農業の現状 ・・・1時間
(6)マルチング(実習) ・・・2時間
(7)地方特有の品種の違い(教室) ・・・1時間
(8)農家訪問 ・・・2時間
(9)整枝・誘引(実習) ・・・2時間
(10)収穫(実習)反省・まとめ(教室) ・・・2時間
(11)片付け(実習) ・・・2時間
●実習の各時間の目標
(1)単元のはじめと終わりに農業についての印象を語らせ、日本の農業の大まかな現状を理解させるとともに、自分自身の食生活について考えさせる。
(2)日ごろ食べている代表的な野菜であるナスを例にとり、栽培暦と品種の特徴を理解させ利用目的と栽培暦は密接な関係にあることに気付くようにする。
(3)ナスの栽培を例にとり、栽培する野菜によって適した畑の土の構造や成分があることを大まかに説明し、植物にはそれぞれ適した環境が必要であり、農家はそれをうまく利用していること知る。
(4)土作りの作業をとおして、講義の復習をするとともに、実際に目で見て確かめる。
(5)普通、農家では接木苗を利用するので接木苗を用意し、接木をする目的を理解させる。特に、種から育てることをしない理由から生産の工夫に注目するようにする。
(6)泥はね、雑草防止のマルチングの目的を理解させるとともに、農作業の工夫と手順を知る。
(7)野菜にはそれぞれの地方の環境に合わせた品種が多様にあるのでそれらを調べることで生産者側の工夫を分かるようにする。
(8)農家訪問をし、ナスの栽培について質問することを中心に農業生産についてお話を伺う。(畑を荒らす恐れがあるので、講義形式で学校へ来ていただくか、グループに分かれて数件の農家を各自訪問する形をとる。) →もしくは教師が訪問し、デジカメで写真をとって投影もしくはプリントアウトして講演してもらう。
(9)なぜ整枝、誘引をすると収量向上に効果があるのかを考えさせ、生き物としての野菜の特徴を理解させる。(ここで理科の授業を関連させても良い。)
(10)収穫作業をしながら作業の成果を実感させ、その後全体の反省をさせることで農家の工夫を理解できたか、生き物としての食べ物を意識できるようになったか確認する。
(11)次の作物を作れるように畑を整備し、最後の片付け(苗の取り除き、マルチはがし、畑の整地作業)まできちんとさせて実習は終了する。
●(5)を例にとって実際の授業展開
i. 指導目標
(1)ナスの品種の特徴を紹介し、栽培暦から、この品種を利用する目的が分かるようにする。
(2)接木された苗を利用するため、接木の目的、手法を知る。
(3)移植の方法、注意点を理解しようとする。
(4)記録をつけさせるなどして、次回からの作業につながるようにする。
ii. 指導過程
区分 |
教師の指導内容 |
生徒の学習活動 |
教師の指導上の留意点 |
資料 |
導入 |
ナスの栽培方法の復習をかね、生徒にナスの栽培に関する発問をする。 |
|
生徒が発言しやすい雰囲気作りに心がける。 |
前回までの記録用紙 |
今回の授業の流れを説明する。(5分) |
今回の授業の流れを知る。 |
展開 |
今回扱うナスの苗について栽培暦、管理の注意点などを説明する。(10分) |
接木した苗なので、なにもしない苗とどう違うのかに注目する。 |
質問があれば丁寧に答える。
接木苗であることに生徒にきづかせるようにする。 |
定植用の接木苗
普通の苗 |
台木の利用目的、効果の説明、実際に接木をして見せる。(20分) |
なぜ接木をするのか、考える。 |
生産における工夫となる部分なので、詳しく説明する。しかし一方的に説明せず興味をもたせるように発問しながら説明する。
生徒の行動に注意を払い、話しかけたり一緒に活動したりする。 |
接木の説明プリント |
実際に定植する。
(40分) |
まとめ |
今回扱った千両二号の特徴、接木の目的などについて復習として発問する。(5分) |
種名、特徴、栽培方法、接木目的を復習する。 |
実習風景の感想も交えながら発問することで発言しやすい雰囲気作りをし、生徒の理解度を確かめる。 |
|
作業記録(15分) |
作業内容を記録用紙に記録する。 |
次回の作業につながるように記録する。 |
記録用紙 |
|
iii. 評価
(1)定植作業中に質問をし、作業の理解度を確認する。
(2)記録用紙を参考にし、栽培暦、栽培における工夫についての理解度を確認する。
●その他
・手入れ(草取りなど)は毎日当番制で行い、観察は定期的に行なう。
・ナスの栽培を紹介する際、接木苗を使用するので、発芽の写真を見せておく。
・土作りが命であるので、対象が中学生ではあるが、団粒構造、N・P・Kの効果程度は説明する。
・追肥は様子をみて行なうこととする。
・農薬は必要であれば施すことも考える。→素人に判断は難しい
・マルチはドロはね、雑草防止にビニールマルチを用いる。→藁だと雑草抑制に不十分
・知識の提供は一方的な作業になりがちなので、出来る限り問答形式をとる。生徒に考えさせる時間を大切にする。
●問題点
・指導者の知識不足:プロの作業をまねるなら専門のアドバイザー(農家さん)が必要。
・作業の困難さ:収量目的のプロの作業をして、健康に苗を育てるにはかなりの技術がいる。計画通りに作業を進めるのは難しい?
・管理の困難さ:生徒に当番制で管理させるが、最低限はやはり教師がしなくてはならない。時間的、人力的、技術的な問題。(そもそも生徒はきちんと管理するか)
●まとめ
農家が行なう作業内容はそれぞれの工夫から各農家で異なり、一般論はあっても決まりはない。この実習がかならずしも農家の作業に即しているかといえばそうではない。しかし、農業という職業を知り、学ぶことで、これから大切なものはなんなのか、問いかける材料として私の経験や知識からこの実習案を用意した。知識をつけた後に、自分で考え、見つけることを最大の目的とした実習をめざして作成したものである。
2. 当日の流れ
以下の要領で滞りなく進行した。
(1)コーディネーター挨拶 5分
(本分科会の概要を述べる)
(2)発表者による授業提案 30分
(参考として実例を紹介、その後授業案の提示)
(3)参加者の感想発表、討論会 55分
(授業案の問題点の指摘、各分野の方々からの意見含む)
(4)まとめ 10分
|